俺のバットがホォォォォムランッ!!

作者:木乃

●(疲れが)溜まってただけなんです!!
 木々がひしめき合う光景は大阪城の周辺住民も慣れた様子で、すっかり日常風景に溶け込んでいる。
 部活帰りの男子高校生、仁井累(にい・るい)は林の間を縫うように自転車を走らせる。練習は日増しに厳しくなっており、授業中も居眠りしかけていた。
『キ、テ……ここ……』
 曲がり角を抜けようとしたとき、艶めかしい女性の声が聞こえた。熱っぽい声色、年頃の青少年が興味をもつにはそれで充分だった。主を確かめようと近づいていくと熟した果実の香りが鼻腔をくすぐる。甘い香りに意識は朦朧とし始め、誘われるように歩を進める。
『ン、フフ……』
 声の主はさまざまなフルーツが実る一本の木と、それと一体化したような姿のグラマーな女性だった。小さな葉で局部を隠したほぼ全裸に近い姿、青少年には刺激が強すぎるが累の関心は頭上のフルーツ。
 引き寄せられるように果実に手を伸ばす、あと三歩、あとニ歩――あと数センチで掴めそうという所で体勢を崩される。顔に押しつけられる柔らかな感触。それは母性の象徴にして、少年を男に変貌させる魔性の果実O・P・I!!
 クラスの女子にもこれほどの名品を有している者はいない。イガグリ頭を撫でる手に背筋がゾクリと震え、腰の辺りを滑るもどかしさを最後に意識が遠のいていく――。
「は、ああぁ……ぁ…………――」
 事切れた肉体は四肢をだらりと垂らす。いつの間にか下半身は剥き出しにされていた累を木の根が絡めとり、地中へと引きずり込んでいく。新たな養分を獲得した攻性植物はうっとりと溜め息をこぼした。

 オリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)は悩ましげに眉を顰める。事の発端はミルラ・コンミフォラ達の獲得した新たな情報、大阪城付近に発生している攻性植物だった。
「この通称・バナナイーターは殿方、つまり男性を魅了する『豊満な果実』の攻性植物……といったところでしょうか。15歳以上の殿方が近づくと現れ、ほとんど全裸の女性の擬態(と果実の魅力)で誘惑し、(グラビティ・チェインを)絞り尽くするようですわね」
「ほ、ほとんど全裸でし、しし、絞り尽くす……!!?」
 擬態が!グラビティ・チェインを!ね!!何故か顔を赤くする永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)を置きざりに話は進む。
「抗い難い欲望を煽り立てて利用するなんて……今の時分、好色なサキュバスすら忌避する行為ですわよ。奪われたグラビティ・チェインも次の作戦に備えて貯蔵するのやもしれませんわ」
 オリヴィアからバナナイータ―を撃破して、誘惑されてしまう被害者を救出するよう要請される。
 オリヴィアは大阪城周辺の地図を広げてポインターを当てる。
「被害者となる仁井累様は近くの高校に通っている野球部の少年ですわ。部活帰りに巻き込まれるようですが、すでに遭遇する場所は予知しておりますので先回りする事も出来ますわよ」
 件のバナナイータ―を出現させる為には、そのまま累を誘惑させるか、避難させた上で男性ケルベロスが囮にならねばならない。
「出現するときは囮の人数に応じて増減するようですわよ。1体目以降は戦闘力が低いようですので、ある程度おびきだして一気に叩くことも出来ますが……少々、問題がありまして」
 オリヴィアは心配そうに眉を寄せ、主に男性陣を一瞥する。
「バナナイータ―は大阪城から地下を通じた茎により送られていますの、出現してすぐに攻撃してしまうと地下を通って即座に撤退してしまうようですわ、少なくとも誘惑している3分間は交戦せずに接触する必要がありますわね」
 攻性植物も3分間は攻撃等せずに対象の男性を誘惑し続けるため、一般人でもすぐに死んでしまう事はないらしい。つまり、3分間ぱふぱふでムフフなことに……!?
 一部から固唾を飲む音が聞こえ、オリヴィアは小さく溜め息を漏らす。
「殿方でしたらケルベロスであっても獲物として扱われますが、囮となる場合は誘惑されているフリも必要となるでしょう。皆様いいですか、フリですわよ?」
 念押しするオリヴィア、その手の恐ろしさをよく解ってらっしゃるようで。
「このバナナイータ―、戦闘力は大したことないですが耐久性に優れているようで。自身に実るバナナやサクランボをつまんで回復したり、木の根を絡めて色々と絞り羞恥プ……こほん、羞恥心を催させたりします。近接戦闘にもちこむと捕らえて自身のたわわな胸部を押しつけて窒息させようとします。ちゃんと抵抗しないと圧殺されかねませんのでご注意くださいませ」
 なんかもう狙ってるとしか思えないチョイスだなぁー、なにがとは言いませんけど―? 狡い上にあざとい。これは今すぐにでも除草せねばなりませんなぁ。
「年頃の青少年ならば興味を持つのは仕方ないでしょう、皆様も必要でしたらわ「と、とにかく、こんな不健全な植物はほっとけないよね!頑張って倒しちゃおうね!!」
 まだなにか言おうとするオリヴィアを遮り、耐えかねた様子のエイジが強引に締めるのだった。


参加者
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
神籬・聖厳(魔法の鍛冶屋ヒエロファニー・e10402)
ダスティ・ルゥ(名乗れる二つ名が無い・e33661)
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)
桔梗谷・楓(オラトリオの二十歳児・e35187)
菊地・馨(時の嘆息・e35455)
ミューズ・ヘリオス(清楚系新人アイドル・e36404)

■リプレイ

●AはアーマーのA
 仁井・塁がいつものように帰路に就くと、道中を警察官達が交通規制をかけていた。目前で一時停止する塁に小柄な二人組が近づく。
「私達ケルベロスなんですけど、この先にデウスエクスが現れるかもしれないんです」
 事情を説明する神籬・聖厳(魔法の鍛冶屋ヒエロファニー・e10402)に次いでミューズ・ヘリオス(清楚系新人アイドル・e36404)も遠慮がちに続ける。
「あ、あの……申し訳ないのですが、迂回してもらってよろしいでしょうか?」
 塁は一般人だ、ケルベロスの要請を拒む理由はないのだから搦め手で誘導するよりも目的を伝えたほうが手っ取り早いだろう。驚いた様子で塁は「解った」と返答し、元来た道を戻っていく。
「……被害者の避難は大丈夫そうですね……」
 振り向くと視界を埋めるのはカラフルな外套。菊地・馨(時の嘆息・e35455)は長い溜息つきつき遠ざかる背を見つめる。
「……警察隊もいらっしゃるので、必要ないと思いますが……ふぅ。警備の穴になりそうなところを、封鎖しました……」
 彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)が警察官と話を済ませたのを見て、後は警察に任せて良いだろうと待機する仲間の元へ急ぎ戻っていく。

 待機組は出現予測地点の手前で待っていた。
(「レディ達はオークの被害を食い止める為に体張ってんだ……」)
「ここで俺達が立ち上がらないでどうするんだ!」
 クワッ!と刮目する桔梗谷・楓(オラトリオの二十歳児・e35187)は怪気炎をあげる。一体ナニが立ち上がるんですかねぇ……。
 榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)はムッツリした表情で沈黙を貫いていた。一見して落ち着いているように見えるその心中、全く落ち着いていない。
(「これで3回目……いや、下心はない。ナイッタラナイ」)
 たまたま。たまたま紹介された任務がまたバナナイーターの討伐依頼だっただけなんだからね! 別にあの豊満な果実(意味深)をたっぷり堪能したくて来た訳じゃないんだから!など多数証言しており、大変健全な反応でありがとうございます。
 『健全な反応』という意味ではこちらも正しい。ダスティ・ルゥ(名乗れる二つ名が無い・e33661)は羞恥と緊張で思考がまともに働いていないようだ。
(「作り物を相手どるのって、なんか変な感じだ……いやでも、偽OPIにもそれならではの倒錯感が……?」)
 本物ではない、イコール合法で楽しめる。合法で楽しめるから恥ずかしくないもん☆ ――ってそういう事じゃなぁぁぁぁい!!
「落ち着け俺ェ!」
 不健全な想像が止まらず頭を抱えるダスティの背後では(一応)男性陣最年長の永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)が顔を真っ赤にして正座待機。模範的な紳士スタイルで待つ背を楓が思い切りひっぱたく。
「エイジも勿論囮役だかんな、3分間楽し……体張ってもらうぜ!」
「ふぇぇー」
 真逆な反応を見せる男達を見ていたリフィルディード・ラクシュエル(集弾刀攻・e25284)は情けない悲鳴を聞き流しつつ興味深そうに頷く。
(「役得な人もー、恥ずかしい人も同じくらい、というところでしょうかー?」)
 誰もが女体の秘密へ欲望を曝け出す訳ではない、尊重するが故に恥じらう者もいる。いい勉強になったとリフィルディードが感心していると悠乃達が合流する。
「では皆さん、陽動お願いしますね」
 悠乃のたおやかな微笑がいっそ容赦なく見える。男達は自制と本能のせめぎ合う魔の3分間が迫る――。

●BはバストのB
『来て、コッチ……』
 生い茂る草木を押し退けて進んでいくと女の声が聞こえた。熱を含んだ甘ったるい声音。慎重に近づいていくとそこには、
『は、ヤク』
『ネェ、ここヨ?』
 誘うようなしどけない眼差しと悩ましげなポーズでバナナイーター達は待ち構えていた。
「なんでら、裸体の女性が……!?」
 三度見ても慣れないものは慣れない。ほぼ全裸の女体を前に赤面する一騎をよそに楓はヒュー♪と口笛を吹く。頑なに視線を向けないエイジに気付くと肩に肘かけ寄りかかった。
「なぁ、どの子が好み?違いがよく分かんなくってさぁ!」
「僕に聞かないでよ!?」
 既に泣きだしそうなオッサン予備軍を置いてダスティは歩み寄る。効率的な作戦を実行しようと『冷静になれ』と深呼吸。
(「背中に腕を回して、顔を埋めつつ黙ってやり過ごす……怪しまれても感触を堪能してるように見せかければ良し。名付けてポリ、ネステル的なアレ作戦!」)
 化学繊維と混じっているがそこは重要ではない。
 擬態は迎え入れるように細腕を広げて待ち構えている。視線の先にはボリューム満点の偽OPI、近づくごとに実感するリアルな質量に喉を鳴らしてしまう。しかし一番槍は背後から飛び出してきた赤バンダナがかっさらった。
「ヒィィィィィィィィィィィッハァァァァァァァァァァァァァ!!」
『あ、ァ、いやァン♪』
 テンション高めに突っ込むのは援軍に来ていた日柳・蒼眞、やたらめったら揉みしだいてバナナイーターもまんざらではない様子だァ! スルスルと細い指を滑らせる蠱惑的な仕草で理性を粉砕し始めるッ!
「うぅ……は、破廉恥ですっ」
「これも作戦の一環ですが積極的なほうが悦ばれているようにも見えますね」
 草陰に隠れていたミューズはテレビウムのプロデューサーで視線を遮る。赤面する隣で悠乃は冷静に観察しているためかプロレス実況じみている、異種格闘技戦にも程がある。
「あ、ずりぃぞ!俺もお仕事頑張っちゃいますかんね!!」
 野暮なツッコミは捨て置け、紳士協定に反することが問題だ! 楓はイイ笑顔でエイジを押し飛ばすと自身もバナナイーターの深い谷間へダァァイブ☆
 嗚呼、張りがありつつ優しく包み込むような弾力、揉めばこぼれ落ちそうなたわわな肉感――これよこれこれ! 俺が求めたシリコンバレー!!
「はぁぁ……あ、待って、グイグイ来られると……おほぉ☆」
 熟練の娼婦もかくやあらんという手練手管に楓もさすがにたじろぐ。額を撫でる吐息にももどかしさを覚える。
「なんか楽しそぉ~、私もできれば囮役やってみたかったなぁ~」
「……コメントは、差し控えさせていただきます……」
 可愛らしく唇を尖らせた聖厳だが男性陣は色んな意味で必死である。聖巌のように誘惑されたフリが出来る男も早々居ないだろう。馨は白い目で見つつ深ーい溜め息を吐くが、あと半分もこの光景を見なければならないのかと思うと気が滅入りそうだ。
『コウ?ねぇ、ココ?』
「ち、ちが、違わない、けど違うぅ!」
 首を傾げる可憐な仕草に反して絶妙なタッチでバナナイーターは首筋から胸板、わき腹を通って全身を撫でまわす。足の付け根を弄られても一騎は硬直してされるがまま……あ、硬直ってそっちの意味じゃないです。
 ダスティも谷間に顔を突っ込んで耐え忍ぶが扇情的な超絶技巧に悶絶する。誘うように耳を撫でていた手は背を滑り腰へと降りていく。
「く……ぅ、っ」
『ン、フ♪』
 息苦しさとは別に臀部を揉まれるこそばゆさに背筋が震えた。尻に回していた手はするすると前へ――。
「あれはダイレクトアタックでしょうか、本能的な挙動か気になるところです」
「そもそも、なんで『男性目的です!』な見た目にしたんだろうねー?」
 実況解説が板についてきた悠乃の後ろでリフィルディードは唸る。目の前の状態を見るとえっちぃほうが確実そうに思うね、しかたないね!
 ミューズはすっかり目も当てられず顔を両手で覆っているが、肉声までは防ぎきれず茹でダコ状態。半べそかいてるエイジも魔性の果実に抱きこまれて放心状態だ!
 聖厳は時刻を確かめると間もなく3分を経過しようとしていた。
「一部が大変そうですし行きましょっか」
 馨達は頷き返すと乱痴気騒ぎが続く淫魔郷に忍び寄っていく。

●CはCHICHIのC
「皆さん、終了のお時間ですよ」
『アァンッ』
 茂みから飛びだした悠乃が飛び蹴りを食らわし木下・昇も鋭い刺突で穿つ。むしゃぶりつく蒼眞を解放させると、夢中になっていた者達も鋭い打撃音に我に返る。
 悩ましげな悲鳴をあげるバナナイーターに聖厳は杖をバトンのように回して躍り出た。
「銀の金槌、心を込めて――燃やせ希望の鍛工炉!鍛冶と製鉄の魔法少女ヒエロファニー☆バナナを食べさせに、ただいま参上です!」
 魔法少女が全裸っぽい女性にバナナを食べさせる光景、それはそれでOUTな気がするけど見なかったことにしていいですかね!? 筆者の不安をよそに華麗な右ストレートをぶち込む聖巌に続きリフィルディードは不敵な笑みを浮かべる。
「悪いけど、目的達成なんてさせる気ないからねー」
 愛刀・青桜嵐を抜くと剣筋に沿って桜吹雪が舞う。剣圧に押されたバナナイーターから次々と囮組は解放されていき、蒼眞のしがみついていたバナナイーターはあっさり崩れ落ちる。
「お、お、俺のモニュメントバレーがああああああ!!」
「発禁スレスレの記念碑とか嫌だなぁ」
 様子見していたミン・クーワンも戦線に混じって地面から突き出す根っこに向けて火炎の吐息をまき散らす。焼けた成木の臭いが立ち込める中、馨が二振りの大斧を引きずりながら現れる。
「……カイロス、行きましょうか……」
 シャーマンズゴーストを伴い白煙の中から現れる姿は幽鬼の如く。目障りとばかりに燃え残った根を叩き斬り始める。カイロスも祈りを捧げて異常耐性を施していく。
「はぁ、はぁ、だ、大丈夫だよね……」
 自身におかしなところ(意味深)がないか確かめて一騎は爆破スイッチに手をかける。七色の爆風で士気を高めると手近な根を踏み台に垂直落下の蹴りを見舞う。
『あ、んあぁっ!』
 悲鳴というか卑猥というか。身悶えるバナナイーターは一騎を両腕で捕らえる。甘く柔らかな抱擁は殺人的な膂力を以てギチギチと締め上げていく。
 別の個体も前衛めがけて根を伸ばし、大量の細い根は裾の中から紛れ込んでダスティのアレソレを無遠慮にまさぐってきた。
「や、やめっ、このままじゃ新世界の扉が開いちまうぅぅぅぅぅぅ!!?」
 こういうのは女性が受けるものでは!?ナンデ!?ナンデオトコ!?
 羞恥心を煽られ慌てふためくダスティにプロデューサーは応援動画を流す。がんばれ♪がんばれ♪
「くそ、なんか羨ま――じゃない、野郎の触手シーンとか御免だぜ!!」
 揺れるきょぬーを目で追いながら何か言いかけた楓が極光を広げて鼓舞させる、姿形だけでも女性とあって少々やりづら……いや胸ばっか見てますねこれ。
「と、とにかく援護しないとっ!」
 マイクロビキニを軽く超える露出にめげまいと自分に喝を入れミューズは歌いだす。軽やかなステップに花が舞い、そこだけ華やいだと思いきや根っこが天高く伸びる。
「きゃああああああっ!?」
 おっとミューズたん今週のサービスショットキターーーー! 宙づりになるミューズのスカートは無慈悲に捲れ、あられもない姿を晒されるが胸元に伸びた根っこはスッと空振る……誰だ放送事故って言った奴は!
「……は、はやく降ろしてくださーーーーーーーーーーいっっ!!」
 ミンに協力してもらうと恥を書き捨てるように全力で踊りだすミューズ。時として体も張らねばならぬ、芸能界とは厳しい世界ですなぁ(すっとぼけ)

「わああああああやめてよして穢れちゃうからああああああ!?」
「なるほど、服の上ではなく肌に直接触れることで羞恥心を激しく煽ると」
 シャツの中から根っこをはみ出させるエイジの横でひらりと躱す悠乃が距離を詰める。
「届く範囲の世界よ、止まれ」
 ふわりと軽い足取りで通り抜けた刹那、直撃した一撃にバナナイーターの樹が音を立てて倒れていく。
『あ、ラ、メェェェェ……!』
「倒れる時までやらしい声をあげるなんて、あざとい越えて狡いですよー」
 呆れるリフィルディードの背後から昇は制圧射撃を続け、命中精度もだいぶ安定しそうだとみるや必殺の構えを披露する。光る翼に爆発的なエネルギーを込めて大きく広げる。
「吹き抜けて、プリマヴェーラテンペスタ!」
 広範囲に及ぶエネルギーの奔流を受け、バナナイーター達はご自慢のバナナ(隠喩ではない)を頬張り始める。唇を窄める姿に前屈みになりそうな一騎は必死に堪え拳を引き絞る。
「別に!下心なんて!!なかったんだからああああああああああああああああ!!」
 未成年の主張がこだまする。赤く輝くガントレットはバナナイーターの乳の房を鷲掴み破裂するように背面から木片が飛び散る。
 中衛に残る1体をカイロスと共に馨が相手する。伸びた両腕に捕らえられると顔面に白い目で見ていたアレが……馨には不快でしかなかった、お局がつけ過ぎた香水が職場に漂いまくるような猛烈な不快さだ。『くせぇよババア』と罵倒しないだけ大変良心的である。
「……はー、やめてもらえませんかねぇ……!」
 すでに大打撃を受けた直後でエイジとミンの援護もあり、ガスガス殴りつけ辛うじて制す。
 後方にいた最後の1体も一斉に飛び掛かられては自己回復も追いつかない、仕上げとばかりに聖巌は股座にグラビティを集中させる――そこに魔剣が現れるって魔法少女として大丈夫なんですか!?
「オークの魂を喰らって鍛え上げた、魔剣エクスカリバナナアッーを抜く時が来ましたね――私のバナナが勝つか、あなたの食欲が勝つか、雌雄を決しましょう!」
 筆者の不安を軽く飛び越えて聖巌は引き抜いた魔剣をひと舐め、腰を落として構えた。無防備な下半身に約束された勝利のBA☆NA☆NAが迫る。召しませ私のバナーナ(隠喩)!!
『イ、ぃぃ……クゥアああぁぁっっ!』
 輝く刃は腹部を貫き風穴をあけた。甲高い悲鳴をあげてバナナイーターは果てると一瞬で腐り落ち、柔らかな腐葉土に変貌する。魅力的な美女も腐敗すればただの汚物と変わりなかった。

「攻性植物もなんであんなん出してきたんだかねー?」
 悠乃達が警察隊に規制解除を要請する傍らでリフィルディードは疑問を零すが、元々謎が多いだけに考えるのは不毛とすぐに思考を切り替えた。
「……お疲れ様でございました、えぇとても、とても……しばらく家に引きこもります……」
 肺に溜まったモノを全て吐き出すように馨は何度目かの溜め息を吐く。妙にかしこまった様子のダスティは必要以上に頭を下げている。実はめっちゃおっぱい堪能してましたとは流石に言えない。
「ふぅ、恐ろしいおっぱ……敵だったぜ!」
「ああ、ああ……」
 爽やか過ぎて不気味な笑顔の楓となにかを悟ったように目を伏せる一騎はバナナイーターの居た方面を向いて拝んでいた。『素人は黙っとれ』と言った空気すら感じる。
 そこに乳がある限り――盛んな男達は挑み続けるのだった。

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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