鎌鼬

作者:紫村雪乃


「……絶対いるんだ」
 暗い山道。少年はつぶやいた。
 街灯はない。明かりは彼がもつハンドライトの光のみだ。
 鎌鼬。彼が探しているものであった。日本に伝えられる妖怪で、つむじ風に乗って現われて人を切りつけると伝えられている。
「私のモザイクは晴れない」
 声が、した。背後からだ。
 驚いて振り向いた少年は見た。冷たい目をした女を。
 第五の魔女・アウゲイアス。それが女の名であった。
「な――」
 声を失った少年の胸を魔女は鍵で突き刺した。
「けれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 魔女は告げた。すると倒れた少年の上にぼうと何かが現出した。
 獣だ。鼬に見える。が、断じて鼬ではなかった。何故なら、それの大きは大型の肉食獣ほどもあったからだ。さらに、それの前肢は大きな鎌であった。
 ニィ。
 耳まで裂けた口を薄く開き、妖怪鎌鼬は笑った。


「あらたなドリームイーターが現れました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がいった。そのドリームイーターは妖怪を具現化したような存在であるらしい。
「不思議な物事に強い『興味』を持って、実際に自分で調査を行おうとした人間がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こりました。『興味』を奪った魔女は既に姿を消しているみたいですけれど、奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターを使って、事件を起こそうとしているようです。他の被害が出る前にこのドリームイーターを斃してください。このドリームイーターを倒せば、『興味』を奪われた被害者も目を覚ます筈ですから」
「どのようなドリームイーターなのですか?」
 人形めいた美貌の娘が問うた。リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)というケルベロスで、レプリカントである。かつて索敵及び指揮連携支援機として製造された。整いすぎた美貌の持ち主であるのもむべなるかな、だ。
「鎌鼬」
「鎌鼬?」
 リティは首を傾げた。そしてデータを検索した。
「……なるほど。日本に伝わる妖怪ですね」
「はい。ドリームイータは伝説のとおり風にのって現れます」
 セリカはいった。現れるのは昏倒した少年の近くである。時刻は夜だ。今からむかえばさらなる被害を防ぐことはできるだろう。
「ドリームイーターの武器は前肢の鎌。疾風の速さで襲い、鎌で引き裂きます。威力は絶大。一撃受けただけで半死の状態に追い込まれてしまうでしょう。強敵です。けれど」
 斃さなければなりません。セリカはいった。
「それができるのは皆さんだけ。お願いします」


参加者
楡金・澄華(氷刃・e01056)
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
城間星・橙乃(雪中花・e16302)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)
遠道・進(浪漫と希望狂いの科学者・e35463)

■リプレイ


 暗い山道をゆく八つの人影があった。
 足の運びからは想像もできぬほどの速さで彼らは進み、やがてある一点で立ち止まった。
 山道の途中。脇に大きな空き地があった。
「……ここでいいだろう」
 空き地を見回し、白髪の男はいった。端正といえなくもない顔だち。が、何を考えているのか良くわからぬところがあった。底が見えないというべきか。
 シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)。竜種であった。
「そうだな」
 漆黒の髪をポニーテールにした女がうなずいた。凛然とした娘だ。華奢ではあるが、鞭のようなしなやかさを備えた肉体をもっている。それは娘――楡金・澄華(氷刃・e01056)が忍びであるからだ。
 軒猿。かつて越後の上杉氏に仕えた忍者集団である。その軒猿の上忍こそ澄華の先祖であった。
「……鎌鼬かぁ」
 二十歳をわずかに過ぎた年頃の娘が、思わずといった語調の声をもらした。シェイと同じ白髪の持ち主で、碧の瞳を好奇心で輝かせている。
「鎌鼬には少し興味あったのよね……」
 娘――城間星・橙乃(雪中花・e16302)は微笑んだ。
 人の興味は成長していくうえで必要不可欠なものだ。それを邪魔するドリームイーターへの憤りがある。が、同時に伝承の生き物と遭遇することができるるという喜びもあった。要するに橙乃はわくわくしているのであった。
 もう一人、この戦いを楽しみにしている者があった。孤独の光を目にためた短髪の若者だ。名を遠道・進(浪漫と希望狂いの科学者・e35463)といった。
 かつて、ある街が滅んだ。が、たった一人だけ、その街で生き残った者がいた。十六歳の少年。それが進であった。
「鎌鼬?」
 シェイの言葉を耳にし、その女は首を傾げた。銀髪金瞳という妖しい美しさをもった娘だ。わずかに身動ぎしただけで乳房が大きく揺れるのは、娘が胸を特に発達させたサキュバス一族の末裔であるからで。
 と、娘――雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)は何かを思い出したのか、目を見開いた。
「ああ……カマイタチかぁ……あかぎれの犯人って言われてた妖怪だっけ? 夢喰いでも一度見て見たいなぁ。確か漫画で三兄弟って見たような……なんの漫画だったかな、あれ。……それにしても、服切られたくないな……」
 ちらりと利香は自らの胸を見下ろした。
「では」
 二十歳ほどの娘が口を開いた。流れ出た声は硬く、抑揚を欠いている。白磁の頬の整いすぎた美貌と相まって、娘を人形のように見せていた。
 リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)。レプリカントの娘であった。
「ミッション開始……具現化したドリームイーターの撃破及び少年の身柄確保。敵は前肢が鎌状になった高機動型」
「ちょっと待ってほしいの」
 ゆらゆらと柔らかい声がリティを遮った。薄紅色の髪をもつ人形めいた美貌の少女が声の主だ。名を盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)という。
「ふわりは 被害者の男の子を探していくの。だから、ここはみんなにお任せするの」
 告げると、返事も待たず、ふわりは歩き出した。まるで楽しい散歩でもするよに鼻歌を歌いながら。何を考えているのか良くわからぬ少女であった。


「知ってるか。鎌鼬って、傷つけられても痛み感じないんだぜ?」
 鎧を装着しつつ、男がいった。進である。
「そう言えば故郷の妖怪として、鎌鼬がいたな……」
 ライトの光に浮かび上がった女が口を開いた。凛々しい顔立ちの娘。澄華であった。
「故郷?」
 女が問うた。人ではない。神々しいといってよい姿は竜のものであった。
「新潟だ」
 澄華は女――フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)にこたえた。新潟では鎌鼬を悪霊とみなしている。
 フィストはうなずいた。
「かまいたちといえば、雪国にてその伝承が多いそうだが……確かに新潟も雪深いところだな。まあ、科学的視点からかまいたちをあかぎれによる負傷と分析している根拠の一つと見なしている話もあるが、そればかりでは面白くなかろう。……私の故郷にこんな奴はいないからな」
「そういえば鎌鼬って、前足が鎌になってるんだっけ?」
 リティが誰にともなく問うた。うなずいたのは利香である。
「漫画で見たことがあるよ。大きな?の姿をしていて、前肢が鎌に変化するんだよ」
「鎌だと歩きづらそう。だから、空を飛んだりするのかな?」
「中々物騒な妖怪だね」
 シェイが苦笑した。そして油断なくあたりを見回すと、続けた。
「どうせ切るなら、女性の服を切ってくれればいいのに……」
 シェイが言葉を途切れさせた。彼の鋭敏な近くは近寄りつつある異様な気配をとらえている。
 殺気。いや、妖気だ。
「来たな」
 武器のチェックを終えた進がいった。
「ミッション開始」
 リティの瞳が光った。その視線の先、異様なものが闇に浮かんでいる。
 人と同じほどの大きさの獣。鼬だ。
 ニィ。
 耳まで裂けた口を開くと、それは鎌と化した前肢をあげた。

「真っ赤な真っ赤なお月さま」
 鼻歌を口ずさみつつ、ふわりは夜道を歩いた。ライトで道を照らす。まだ被害者の少年の姿はなかった。
「男の子はどこかな。教えて教えてお月さま」
 ふわりは夜空を見上げた。そこには血濡れた鎌のような弦月がかかっていた。


 ごくりと橙乃と進は唾を飲み込んだ。無意識的に二人は笑みをうかべている。が、その笑みとは裏腹に、橙乃は越雪――斬霊刀の柄を汗ばんだ手で握りした。そして――。
 最初に動いたのは橙乃であった。その手から漆黒の鎖を噴出する。
 鎖は生き物のように動いた。地に魔術的図形を描き、仲間の潜在能力を引き出す。
 先手必勝。
 そう目論んだ利香であるが、まだ間合いが遠い。敵――鎌鼬は雷迅月翔斬の殺傷範囲の外だ。
 刹那である。鎌鼬が動いた。
 ――速い!
 まさしく疾風のように、鋭く迫る妖影。一瞬後、それはもう目の前だ。
 テラ――ウイングキャットが尻尾の輪を飛ばした。が、鎌鼬は難なくすりぬけ、斬撃。テラが消滅した。
「テラ!」
 フィストが愕然たる声で叫んだ。
 テラは決して弱いサーヴァントではない。それが一瞬。瞬く間にやられた。鎌鼬が強すぎるのであった。
「鎌鼬といえば、三人の鎌鼬がいるという話があるが……。一人が人間を突き飛ばし、一人が斬りつけ、一人が痛みを感じさせない薬を傷口に塗っていくという。なぜそんなことをするのか知らないが、お前はさしずめ……二体目の斬りつけ役というところか」
 フィストが地を蹴った。闇の空に舞うのは七光をまとった神々しき半竜半人身だ。
 急速度で舞い降りると、フィストは蹴りを放った。激烈な衝撃に地が爆裂する。が、そこに鎌鼬の姿はなかった。
「秒速三百五十八メートル」
 リティが告げた。彼女が計測した鎌鼬の襲撃速度である。音速を凌いでいた。
「ほお」
 進は戦慄した。それが強敵と相対した喜悦のためであるのか、恐怖のためであるのか、彼自身よくわかっていない。
 吸い寄せられるように進の脚がはねあがった。刃の鋭さを秘めた蹴りを放つ。が、衝撃波が空を裂いて疾った。彼の蹴りは空をうったのである。
「確かにものすごい速さだね。でもそれならそれで、やりようってものがあるのさ」
 シェイの口元に小さく笑がういた。敵の動きは素早いものの、シェイには討ち取る方策があり、覚悟もある。
 そのシェイの笑みに誘われたか、鎌鼬がシェイを襲った。さすがのケルベロスたちもその動きを完全には視認しきれない。
 刃風がシェイを切り裂いた。再び鎌鼬が飛び立とうとする。
 その一瞬の隙を突き、超鋼金属製の巨大ハンマー――ドラゴニックハンマーを叩きつけた。ドラゴニック・パワーを噴射して加速させた一撃を。
 ドラゴニックハンマーはしかし、鎌鼬の身を掠めたにすぎなかった。やはり鎌鼬の起動速度は速すぎる。が、シェイの笑みは消えなかった。
「まだタイミングが遅いみたいだね」
 くはっ。シェイは鮮血を吐いた。

「あれっ」
 ふわりは足をとめた。暗い道の脇、何者かの姿がある。ライトの光に浮かび上がったのは横たわった少年だ。
「発見したの」
 瞳を輝かせ、ふわりは少年に走り寄った。胸に触れてみる。鼓動はあった。生きてはいるのだ。
 が、揺すってみても起きない。喪神しているのだった。
「ふーん」
 ふわりは少年の顔を覗き込んだ。可愛らしい顔をしている。
「眠っているのなら、キスで起きないかな」
 ふわりが少年に口づけした。意外と熱烈なキスだ。おまけに舌も入れてみた。が、少年は起きない。
「自分で歩いてほしいけど、それは無理そうなの。だからふわりが運ぶの」
 己よりやや小柄の少年を、軽々とふわりは肩に担ぎ上げた。


 利香の目がぎらりと光った。彼女は鎌鼬の動きが乱れたのを見てとったのだ。掠めただけにしろ、やはりドラゴニックハンマーは効果を発揮していたのである。
「かわいい男の子に手を出す夢喰いは成敗してやらないと! 覚悟なさいよ……!」
 自らの筋肉に魔力の電流を流し込み、利香は一時的に身体能力を飛躍的に向上させた。そして鎌鼬を襲った。
 瞬間的にではあるが、利香の襲撃速度は鎌鼬と同じく音速を上回った。妖刀『供羅夢』の視認不可能な斬撃が鎌鼬を叩き切る。声なき呻きを発し、鎌鼬は再び空へと昇っていった。
「敵戦力確認……データベース照合……火器管制システム、アップデート完了。最新パッチ、配信します」
 いつの間にかリティは小型偵察無人機の群れを飛ばしていた。敵の情報を取得分析させていたのである。
「なるほど」
 澄華は小さくうなずいた。
 鎌鼬は圧倒的なスピードで空を駆け、高威力の技をしかけてくる。が、その動きは直線的だ。見切ることは不可能ではない。
 その時だ。鎌鼬が襲撃の姿勢をとった。するすると澄華が前に出る。
 刹那、動いた。一瞬間の間に澄華の前に鎌鼬が現出する。
「刀たちよ、 私に力を……!」
 迸る白光は二条。澄華が二刀――黒夜叉姫と斬竜之大太刀【凍雲】を舞わせた。
 次の瞬間、澄華の脇腹から血がしぶいた。肋骨すら切断した鎌の一撃は彼女の内蔵をも切り裂いてのけている。たまらず澄華は手をついた。
 一方の鎌鼬は再び空に。が、その胴からは黒血のごとき瘴気が噴出している。澄華が切り裂いたのだ。
「くっ。まだ見切れぬか」
 澄華が呻いた。
 その瞬間、鎌鼬が動いた。真をかぬ襲撃。妖怪も我が身を傷つけられ、怒るのかもしれない。
 鎌鼬が襲ったのは澄華であった。が、その澄華の前にするすると滑りでた者がいる。フィストだ。
「お前に本物の妖の力を見せてやろうか」
 フィストが扇を振った。すると羽根が鞭のように疾った。
 九尾扇。それはあやかしの力が宿る、魔力に満ちた伸縮自在の扇であった。
 びしりっ。
 鋭い音が空を打った。そして鎌鼬が地に叩きつけられた。舞い落ちる黒風に、フィストはただ一言、呟いた。見切った……と。
 もんどり打つ鎌鼬に、機を窺っていた利香が突撃する。たばしる妖刀の黒刃が、地上でもたつく鎌鼬の横腹を深々と切り裂く。さすがの妖しが苦痛を孕んだ悲鳴をあげた。
 その鎌鼬を進はマークした。そして全グラビティを足に凝縮させる。
「エネルギー最大。ピンポイントに形成、完了。あとは叩き込むだけ――デリャァー!」
 進は地を蹴った。空に身を舞わせ、旋転。後下しつつ、彼は蹴りを放った。赤熱化したつま先が鎌鼬の身にくい込む。と――。
 シェイが細い腕で抱きしめられた。柔らかな乳房が彼の身におしつけられる。
「お待たせしたの。だからふわりが全部癒してあげるの……痛いのも苦しいのも全部、今は忘れちゃって良いの。ふわりが愛してあげる、忘れさせてあげるの……」
 ふわりがシェイの傷口に口づけした。花びらのような唇が血で汚れるのもかまわず口づけを繰り返す。
 この少女は真実私を愛している。そうシェイに感じさせずにはいられない献身的なふわりの介抱であった。
 いや、シェイは間違ってはいない。事実、この時、ふわりは心底からシェイのことを愛していた。そして彼女はシェイを癒した。
 その時だ。吹き飛ぶ勢いを利用し、鎌鼬が空に舞い上がった。それを追って橙乃が空を舞う。そして流星のごとき蹴りを放った。空で橙乃と鎌鼬の視線がからみあう。この場合、橙乃の瞳には好奇心の輝きがやどっていた。
 鎌鼬が鎌の一撃を放ったのは、それと同時であった。煌きを宿したつま先と銀刃が闇に交差し、それぞれの身に深い傷を刻み込む。
「ターゲット、ロックオン」
 ひどく冷静な声が響いた。リティのものであるのだが――そも、このレプリカントの娘が狼狽するなどということがあるのだろうか。
 そのリティの胸部はすでに変形していた。ブラスターの砲口が覗いている。
 次の瞬間、砲口から眩い光が噴出した。膨大な破壊力をはらんだ熱光線だ。さしもの鎌鼬も避けきれない。
 空間を灼きながら光が流れすぎた。病葉のように鎌鼬が地に落ちる。全身が炭化していた。
 地に激突する間際、敵に猛追したシェイが手をのばした。するとその手の棒がさらにのびた。恐るべきことにシェイのもつ棒――武術棍は彼の意思により自在に伸縮するのである。
 稲妻のように空を貫いた棍は鎌鼬の体躯をしたたかに打ち、骨肉をひしゃげさせた。衝撃に鎌鼬の身がはじかれる。
 おびただしい瘴気が空に散った。確かな破壊の感触をシェイの腕は感得している。
 鎌鼬は空を成すすべも無く滑っていった。その先めがけて疾るのは澄華であった。
「今度はきめる」
 猛禽のごとく両腕を広げ、澄華は襲った。煌く剣光が縦横無尽に流れる。
 澄華の二刀は空間すら断ち切った。なんで妖怪ごとき切り裂けぬことがあろうか。
 切り刻まれた鎌鼬が空に舞った。耳には届かぬ、しかし魂を戦慄させる断末魔の絶叫が響いたのは、そのときであった。


 澄華が怪我人の治療をはじめたのは、鎌鼬が消滅してややあってのことだった。
「ところで少年は?」
 進が問うと、ふわりが手をあげた。その足元には少年が横たえられている。
「ここなのー」
「うっ」
 目が覚めたのか、少年が半身を起こした。すると利香が走りより、ぎゅっと抱きしめた。
「目が覚めたんだね。よかったーっ♪」
「そのままじゃ窒息死するぞ」
 フィストが苦笑した。利香の大きな乳房を押し付けられ、少年が目を白黒させている。
「家族が心配しているだろう。送っていこう」
 利香の胸から解放された少年にむかってフィストがいった。
「は、はい」
 よろよろと少年が立ち上がった。悪夢から目覚めたはずなのだが、その目はどこか哀しそうだ。
「いつかきっと会えるよ」
 橙乃が微笑みかけた。少年の胸に夢がある限り、不可能なことなどないのだった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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