螺旋忍法帖防衛戦~吸血剣チガラシ

作者:紫村雪乃


「螺旋忍軍の拠点に攻め込むという大任を無事に果たしてくれて、ありがとうございます」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は004)は集まって来たケルベロス達に声をかけた。
「今回の作戦で、多くの情報を得る事ができた上に、シヴィル・カジャスさんと嶋田・麻代さんが螺旋忍者にとって重要な意味を持つ『螺旋忍法帖』の所持者となりました」
 セリカはいった。螺旋忍法帖には『螺旋帝の血族を捕縛せよ』という御下命が記されていたようだが、この『螺旋忍法帖』があれば、螺旋忍軍の核心に迫る事ができるだろう。螺旋忍法帖を創れるのは螺旋帝の血族だけであった。
 けれど、とセリカは続けた。
「ケルベロスが奪った螺旋忍法帖を手に入れようと、日本中の忍軍の刺客が動き出しています。そして螺旋忍軍は螺旋忍法帖の場所を探し当てる事ができるらしいのです。これでは永遠に守り続けるのは困難でしょう」
 セリカは顔をくもらせた。が、すぐに目を大きく見開くと、
「けれど、これは絶好のチャンスでもあります。敵が螺旋忍法帖を狙うなら、螺旋忍法帖を囮にして誘き寄せて撃破する事も可能。守り続ける事は困難ならば、逆に攻撃すれば良いのです」
 セリカは告げた。多くの螺旋忍軍を撃破すれば、二度とケルベロスから螺旋忍法帖を奪おうとはしないだろう。
「防衛戦は、石川県の金沢城と北海道の五稜郭を拠点として行う事になります。この場の皆さんは金沢城にむかい、襲い来る螺旋忍軍の迎撃を行ってください。襲い来る螺旋忍軍は」
 吸血剣チガラシ。
 そうセリカは告げた。
 吸血剣チガラシは螺旋――DNAに眠る力を集めるために殺した相手から血液を奪うという忍びである。さらには、血を奪った相手の力を使い、またその体の自由をを奪う。吸血鬼じみた力をもつ忍びであった。
「彼は血で濡れたような朱刀を使います。そして相手から奪った業をふるう。恐るべき強敵です」
 セリカはしかし、微笑んだ。ケルベロスを信頼しているのだった。
「謎に包まれていた螺旋忍軍の謎に迫る事ができるチャンスです。螺旋忍法帖、必ず守りきってください」


参加者
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)
ソーヤ・ローナ(風惑・e03286)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)
ハインツ・エクハルト(生体魔除け・e12606)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
妹島・宴(交じり合う咎と無垢・e16219)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)

■リプレイ


 金沢城。
 石川県金沢市にある城で、かつては加賀藩主前田氏の居城であった。が、現在残されているのは石川門や三十間長屋、鶴丸倉庫や切手門等のみだ。かつての威容はのぞめない。まさに兵どもが夢の跡といった風情であった。
 その夢の跡に、今、新たに強者が乱入した。螺旋忍軍である。

 そこは、やや開けた場所であった。周囲は木々で覆われている。
「随分大事になっちゃいましたねえ……。ですが、この戦いの先に何があるのか? とても興味深いですね……」
 木々の陰から流れる声があった。少しして、声の主が姿をみせた。
 華奢な少年。黒で統一した衣服をまとっている。神経質な質なのか、髪を指で弄んでいた。
 名は天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)。ケルベロスであった。
「確かに大事だよな」
 腕白坊主めいた不敵な笑みをうかべたのはロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)という名の少年であった。
 螺旋忍法帖なる秘巻を餌とし、螺旋忍軍を誘き寄せ、撃破する。大戦ともいうべき大戦であった。胸がおどらずにいられようか。
 すると猛禽を思わせる鋭い目の若者かニヤリとした。
「ハハッ、危険承知の作戦、嫌いじゃないぜ。敵さんも相当気合入れてきてんだ、賭けるモンが大きい分面白れぇコトになりそうだよなぁ」
 若者――卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)はいった。そして自らの左腕を一瞥した。
 異形。そういって差し支えないだろう。
 彼の左腕は人のそれではなかった。廃材を組み合わせたような義手である。まさにレプリカントである泰孝ならではの代物であるといえた。
「面白い、か」
 パシリッと、その若者は自らの掌に拳をうちあてた。温厚そうな笑みをうかべているが、どこか獰猛な雰囲気がある。
「誘き出し作戦ってのは初めてかもしれないな。大事な巻物、しっかり守りきらないとな!」
 竜種である金髪の若者はいった。名をハインツ・エクハルト(生体魔除け・e12606)という。
「ええ、大切な巻物ですからね」
 長身痩躯。理知的な顔立ちの若者がうなずいた。表情が乏しいくせに、独特の色気があるのは、この若者がサキュバスであるからかもしれない。
 若者――妹島・宴(交じり合う咎と無垢・e16219)は、しかし彼らしくもなく力強い声音で続けた。
「守ることは、ぼくらケルベロスの得意分野のはずです。絶対、ここを通しませんよ」
「けれど簡単にはいかないでしょうね。敵はローナさんの宿敵ですから」
 二十歳ほどの若者がちらりと視線をむけた。気弱げな若者だ。が、その様子に似合わず、身ごなしは歴戦の兵士を思わせるものであった。
「吸血剣チガラシですか」
 若者――玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)の視線の先に立っている娘が口を開いた。戦うことが趣味というウェアライダーの娘で、吸血剣チガラシの宿敵主である。
 その吸血剣チガラシを娘――ソーヤ・ローナ(風惑・e03286)はずっと追っていた。が、追いつけない。彼女が見たのは吸血剣チガラシの背ですらなく、彼が残した死体のみであった。
「この機会に引導を渡してあげましょう」
 ソーヤがいった。
 その時だ。疾風のように迫り来る四つの影を、その少女は見とめた。
 引き込まれそうな藍色の瞳をもつ美麗な少女。動くたびに乳房が大きく揺れるのが衣服の上からでもわかった。
「来たよ」
 神宮・翼(聖翼光震・e15906)――かつてデウスエクスの楽器として調律されていたサキュバスたる少女はいった。


「待て」
 四つの影の一つから声が発せられた。
 漆黒の忍び装束をまとった男。髪は灰色であり、鬼の角を思わせる鉢金をつけている。手には血濡れたような朱刀をひっ下げていた。――吸血剣チガラシである。
 すると一斉に他の三つの影がとまった。吸血剣チガラシ配下の螺旋忍者である。
 吸血剣チガラシはニンマリと笑った。
「いるぜ、近くに。数は……七つ、いや、八つか」
「さすがは私の宿敵」
 ソーヤが木陰から身を滑り出させた。他のケルベロスたちもまた。
「ようこそ、あたし達のステージへ!」
 翼がバイオレンスギターをかき鳴らした。一瞬、敵の注意がそれる。その隙を逃さず、ロディがグラビティを発動。吸血剣チガラシの手配書を作成した。
「名のある忍びとお見受けします。お相手願いますよ」
 挑発するようにケイがいった。が、吸血剣チガラシはふふんと笑ったのみだ。
「いくぞ」
 吸血剣チガラシが命じた。すると三体の螺旋忍者が地を蹴った。
 対するに、まず動いたケルベロスは宴とハインツだ。
 宴は体内の魔術回路を使用し、一瞬で毒呪抗体を作成、仲間に投与した。
 ハインツの手からは漆黒の鎖が滑りでた。それは意思あるもののごとく地を疾り、仲間を守護する魔法陣を展開する。
 次の瞬間、間合いは詰まった。吸血剣チガラシの前に四人のケルベロスが立ちはだかる。ロディ、翼、ユウマ、泰孝の四人だ。そして、他の螺旋忍者には残る四人のケルベロスがかかった。
「おおおおお」
 ソーヤが吼えた。ただの咆哮ではない。魔力のこもった音波であった。たまらず螺旋忍者の一人が足をとめる。
 同じ時、二体の螺旋忍者の手からは手裏剣が飛んだ。それは分裂し、五月雨と化してケルベロスたちに降りかかった。
「邪魔だ」
 吸血剣チガラシがいった。が、ロディは首を横に振った。
「悪いけど、オレ達はあんたを通すつもりも逃がすつもりもない。ここで白黒つけさせてもらうぜ!」
「生憎だが、今日の俺は忙しい。お前たちの遊びにはつきあっていられねえんだ」
「なに、そう急ぐなや。折角張ったんだ、最後までここでやりあおうぜ、忍者さまよぉ?」
 嘲弄するように泰孝が笑いかけた。すると吸血剣チガラシの笑いが深くなった。泰孝から自身と同じ匂いを感じ取ったのだ。
「面白いな、お前。が、今いったとおり、俺はお前らと遊んでなんかいられねえんだよ」
 その声が消えぬうち、吸血剣チガラシの姿がかき消えた。視認不可能な速度でさらに間合いを詰めたのだ。
 赤光が飛ぶ。少なくとも、四人のケルベロスたちにはそう見えた。
 次の瞬間、泰孝の胸から血が吹き出した。斬られたのだ。
「あっ」
 呻いたのは翼であった。朱刀にまとわりついた泰孝の血が刀身に吸い込まれていく様を彼女は見たのである。
「もらったぜ。お前の血」
「何っ」
 今度は泰孝が呻いた。それきり動けない。
「さがっていただきますよ」
 ユウマがエリミネーター――鉄塊剣で薙つけた。無造作な、しかしそれ故に協力無比な一撃。
 さすがの吸血剣チガラシも躱しきれなかった。肩を切り裂かれつつ、跳び退る。
 刹那だ。吸血剣チガラシの朱刀から光弾が放たれた。着弾したユウマの身体に光がからみつく。彼は自身のグラビティが弱体化したことを悟った。
「今のは……俺のゼログラビティ!」
 愕然たる泰孝の叫びが響き渡った。


 足のとまった螺旋忍者めがけてソーヤが迫った。
 その時だ。螺旋忍者の手から銀光がとんだ。それはソーヤの顔面に突き刺さり――いや、横から跳んだ小さな影を貫いた。
 声も発さず影は地に降り立った。それは退魔神器を備えた犬のサーヴァントだ。チビ助であった。しゅうとその姿が消滅する。
「ありがとう。あなたの痛み、無駄にはしません」
 ソーヤが脚をはねあげた。刃の鋭さが秘められていた蹴りを放つ。叩き込まれた螺旋忍者が身を折り、血反吐を撒き散らした。
 ケイは別の螺旋忍者に肉薄していた。ものすごい疾走速度は通常人には視認すら不可能だ。
 咄嗟に螺旋忍者は手裏剣を放とうとした。が、間に合わない。ケイは一瞬早く螺旋忍者にエクスカリバー――バール状の武器を叩きつけた。激烈な衝撃に螺旋忍者の装束は裂かれ、肉が爆ぜる。
「そう簡単に通しはしないんだぜ!」
 三体めの螺旋忍者の前にはハインツが立ちはだかった。瞬間、キラッと空間に光がはねる。咄嗟にかばったハインツの腕に手裏剣が突き刺さった。のみならず、手裏剣はドリルのように彼の腕の肉を穿った。
 が、ハインツは怯まない。自ら間合いに飛び込むと、拳を叩きつけた。
 魔を砕く鉄槌のごとき一撃。凄まじい衝撃に螺旋忍者が吹き飛んだ。

「奴は血を奪った対象のグラビティを使えるっすか!」
 驚愕に、さしもの宴の表情にも亀裂がはしった。が、それは一瞬だ。
 すぐに彼の腕は舞うがごとく動いた。体内の魔術回路で組み上げたグラビティを発動、呪術的手法により泰孝の傷を再生する。
「そういうことだ」
 吸血剣チガラシの足下の地が爆ぜ、同時に彼の姿が視界から消える。飛鳥のごとく吸血剣チガラシが迫るは翼だった。
 朱刀が疾る。翼の回避は間に合わない。が、朱刀が切り裂いたのはユウマであった。空に真紅の花が開く。クハハ、と吸血剣チガラシが笑った。
「お前の血ももらったぞ」
「俺の血も奪ってみろ」
 疾風の速さでロディが疾駆した。吸血剣チガラシの横に回り込むとファイヤーボルト――リボルバー銃のトリガーをひいた。弾丸をばらまく。
「これしき」
 吸血剣チガラシが弾丸の雨をぬって走った。が、それはロディの計算のうちだ。彼は吸血剣チガラシの疾走方向を限定したのである。
 そのポイントを狙って翼が走った。一瞬ではあるが、その速度は音速を超えている。衝撃波をまきちらしつつ、翼は吸血剣チガラシに体をぶつけた。
「くっ」
 ものすごい衝撃に、さしもの吸血剣チガラシがはじかれた。地をえぐつつ、後方に退る。
 刹那、響く轟音。
 吸血剣チガラシの背が爆ぜた。着弾したのである。
「テメーが狙うのはオレらの能力と忍法帖。こっちが出したチップがそれならテメーには命をチップにしてもらうぜ?」
 左のジャンクアームの中に仕込まれたバスターライフルから陽炎をたちのぼらせ、泰孝はニヤリと笑った。

● 
「やってくれるじゃねえか」
 吸血剣チガラシが蛇のように笑った。
 次の瞬間だ。泰孝の身が爆炎に包まれた。ユウマのサイコフォースである。
「くっ」
 泰孝がバタリと倒れた。凄まじい破壊力に彼の意識は空白と化している。
「まずは一匹始末するぜ」
 疾風の速さで吸血剣チガラシが泰孝を襲った。朱刀の斬撃が地を割る。しかし、そこに泰孝は姿なかった。
「ほぅ」
 邪悪な笑みを浮かべて吸血剣チガラシが見る先、そこには泰孝を抱えたハインツの姿があった。
「血を吸うなんてさながら妖刀だな、それ! が、これ以上、仲間を傷つけさせるわけにはいかないぜ」
 ハインツは泰孝を地に横たえた。金色にかがやく蔦が彼の身からのび泰孝に接触、その傷を分子レベルで修復した。
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!」
 ハインツが笑いかけた。精神を高揚させる言葉とともに。それは言霊というのであろうか。泰孝がむくりと身を起こした。
「助かったぜ」
「なるほど。面白い業を使う。なら、今度はその力をもらうぜ」
「させません」
 地をを砕きながらケイが跳躍した。吸血剣チガラシも同時に大地を蹴る。
 交錯。
 吸血剣チガラシの脇腹を銀光が薙いだ。さしもの魔忍も躱せぬ、それは練達の一閃である。
 が、同時に朱刀もまたケイを切り裂いていた。血飛沫を散らせ、二つの影が舞い降りる。桁外れの一瞬の攻防であった。
「やりやがったな」
 吸血剣チガラシが呻いた。刹那である。ケイの身が爆炎に包まれた。
「このままでは――」
 翼がギターをかき鳴らし、歌った。スピーカーを思わせる巨大な砲塔から魂すら震わせる旋律が流れ出て、戦場を席巻する。
「あなたも、キュンキュン響かせてあげる♪」
「何を――ううぬ」
 吸血剣チガラシが呻いた。身体が痺れてしまっている。魔忍ですら戦慄させる翼の調べを何と評してよいか。
 その時だ。爆炎が吸血剣チガラシを飲み込んだ。地に小太陽が現出する。
「どうですか。本物のサイコフォースの味は? 借り物とは違うでしょう」
 冷徹にユウマが告げた。その声音には普段の弱々しさは微塵も滲んではいない。
「そして、こちらには癒し手もいる」
「そういうことっす」
 宴の細く長い指が華麗に、かつ複雑に動いた。呪術的外科手術だ。爆発の衝撃で粉砕されたケイの肉体が見る間に癒着していく。
 ぎらり。魔忍の目が光った。
「治癒の力か。もらうぞ」
 吸血剣チガラシの足が地を蹴った。いや――。
 その寸前、泰孝の指が金貨をはじいた。それは空に舞い、地に落ちた。
「くれてやる、拾いな」
「ぬっ」
 魔忍が呻いた。足が動かない。金貨が発した音が彼の足を呪縛しているのだった。
「きさま!」
 吸血剣チガラシの血走った目が泰孝にむけられた。またもやサイコフォースを使うつもりだ。
「そうはさせないぜ」
 ロディが地を蹴った。魔忍めがけて馳せる。
 敵は敵。戦いは戦い。吸血剣チガラシの恐るべき技量をロディは認めている。だからこそ、ここで何としても仕留めねばならなかった。
「ぬんっ」
 疾風の速さで迫るロディを、魔忍は朱刀で薙いだ。誰が想像し得ただろうか。吸血剣チガラシの渾身の一撃が空をうとうとは。
 朱刀の一閃をくぐり抜けると、ロディは魔忍の背後に滑り込んだ。そしてファイヤー炎神――身体に装備した砲をむけ、ロックオンする。
 砲が一斉に火をふいた。砲弾が怒涛のように魔忍を襲う。
 吸血剣チガラシは朱刀で身を守った。が、衝撃はあまりに大きすぎた。魔忍が吹き飛ぶ。
 が、吸血剣チガラシは空で身をひねった。ひらりと着地する。
「くっ」
 がくりと魔忍は膝を折った。傷を負いすぎている。もはや迅雷の動きは不可能であった。
「夏が始まったからと言ってぞろぞろ集まってくるなんて、まるで虫のようですね。あえて言うのなら蚊、と言ったところでしょうか。耳障りで血を吸うようですし」
 声がした。嘲弄するような声が。
 はじかれたように立ち上がった吸血剣チガラシは見た。眼前に佇むソーヤを。
 ソーヤと吸血剣チガラシ。今、宿命の二人、相対す。
 ソーヤは告げた。
「その血を流して滅んで下さい」
「滅びるのは貴様だ」
 吸血剣チガラシが報いる。
 刹那、二影が交差した。そしてすれ違った。
 位置を入れ替え、ソーヤは手と膝をついた。縦一文字に振り下ろされた朱刀によってソーヤは身を斬り裂かれている。
 一方の吸血剣チガラシは朱刀を振り下ろした姿勢のまま動かない。すでに魔忍は事切れているのだった。
 活殺自在拳。ソーヤの業だ。触れることにより相手に特殊な力を送り込んで再生する、あるいは殺すという恐るべき拳であった。

「良い勝負でした。この一戦も糧とさせていただきます」
 横たわった吸血剣チガラシを見下ろし、ケイは目を閉じた。その背をソーヤが軽く叩く。
「他の班の手助けができるかもしれません。いきましょう」
 ソーヤが駆け出した。その後を七人のケルベロスが追う。
 螺旋忍法帖をめぐる戦いの一つが、ここに終わりを告げたのだった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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