螺旋忍法帖防衛戦~五稜郭の大攻防

作者:そらばる

●螺旋忍法帖の秘密
「正義のケルベロス忍軍に参戦してくださった方々は、螺旋忍軍の拠点に攻め込むという大任、よくぞ果たされ、無事にお戻りくださいました。本当に、有り難うございます」
 戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)はにこやかに感謝を述べると、さて、と表情を引き締めた。
「こたびの作戦にて、多くの情報を得る事が叶いました。その最たるものに、『螺旋忍法帖』がございます」
 『螺旋忍法帖』とは、螺旋帝の血族のみがその血で書き記す事が出来る、いわば指令書である。
 螺旋忍軍はこれを拝領する事で『螺旋帝の血族からの御下命を受ける』事が出来る。この御下命を果たした里や忍軍は、一族郎党、『勅忍』の名誉が与えられるのだという。
 螺旋忍軍にとって、勅忍は最高のステータスにして最終目標。しかも、螺旋忍法帖それ自体にも、御下命を必ず果たさせる精神状態へと誘導する『絶対制御コード』が仕込まれているときている。
「一度の御下命で勅忍となれる忍軍は一勢力限り。故に、抗争はあれほどまでに撃破したのでございましょう」
 だが、その螺旋忍法帖のうち二つが、今はケルベロスの手の内にある。
「シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)様、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)様が、現在の所有者として、螺旋忍法帖にお名前が記載されております」
 御下命の内容は『螺旋帝の血族を捕縛せよ』。この螺旋忍法帖さえあれば、事態の核心に迫る事も可能だろう。
 一方で、日本中の螺旋忍軍達に、不穏な動きが見られ始めている。
「ケルベロスが奪った螺旋忍法帖を、奪取せんと動き出した勢力が多数。彼奴等は螺旋忍法帖の在り処を的確に探し当てる事が出来るようで、期間を定めず護り続ける事は困難を極めます」
 だが、これは好機でもある。
 螺旋忍法帖を囮として、これを狙う勢力を誘き出し、撃破してしまえばいいのだ。守勢を攻勢に転じるのである。
 多数の螺旋忍軍をいちどきに撃破できれば、連中もケルベロスの螺旋忍法帖を奪う事は諦めるだろう。
「皆様には防衛拠点にて、襲い来る螺旋忍軍を迎撃、螺旋忍法帖を護り抜く御役目を、お願い致します」

●アウトロー・ダンディ
 防衛線の拠点となるのは、石川県の金沢城、北海道の五稜郭の二か所。
「皆様に詰めて頂く拠点は、五稜郭。対する敵は、イヴァンなる螺旋忍軍にございます」
 見た目はアウトローの雰囲気漂わせるフリーのヒットマン。ダンディな偉丈夫ながら、ボケにはツッコまずにはいられない因果な性格の持ち主だ。今回はいずこかの勢力からの依頼を受けての参戦らしい。
「イヴァンの携える武具は刀。居合い斬り相当、月光斬相当のグラビティに加え、空間に亀裂を生じさせる神速の連撃を使用して参ります」
 今回は配下として3人、黒スーツにサングラスの拳銃使いが従っている。
 敗北を喫した場合、残った敵が本陣に進んでしまう。螺旋忍法帖を守るチームに負担がかかってしまうので、注意が必要だ。
「敗北が1チーム限りならば、支えきることも可能でしょうが、複数チームの敗北は、螺旋忍法帖を奪われる危険性を覚悟しなければなりませぬ」
 また、たとえ勝利したとしても、配下の一部に突破されてしまった場合、その配下も本陣に攻撃をしかけてしまう。出来る限り突破させぬよう、全て撃破する気概で挑むべきだろう。
「謎に包まれていた螺旋忍軍、その一端なりとも垣間見えるかもしれない、絶好の好機……」
 その転換点となるであろう防衛戦が、日本の名城を舞台に繰り広げられるなど洒落が効いている、と鬼灯は淡く口元をくつろげる。
「必ずや螺旋忍法帖を護り抜き、螺旋忍軍如きがケルベロスの手より奪うなど叶わぬ事、証明致しましょう」


参加者
ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)
ケルン・ヒルデガント(共に歩む・e02427)
羽丘・結衣菜(ミスディレクションの少女・e04954)
コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)
一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)
メイリーン・ウォン(見習い竜召喚士・e14711)
藍川・由衣(普通の女子小学生・e34237)
ディアグス・オスクロード(自由だけを求める狩人・e36626)

■リプレイ

●事案発生
 緑あふれる五角形の史跡、五稜郭。
 その一角に陣を敷き、ケルベロス達は敵の出現を待ち構えていた。
「ヒャッハー螺旋忍軍防衛戦っス! 悪い螺旋忍軍から忍法帖を死守するっス! 燃え燃えっス!」
 のっけからテンションの高いコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)。
「一族の使命に専念すべき身ではあるアルが、同じ学校の友のために一肌脱ぐぐらいは許されるヨ。皆の回復はワタシとクロノに任せるネ!」
 ボクスドラゴンの時刻竜クロノと共に、気合い充溢のメイリーン・ウォン(見習い竜召喚士・e14711)。
「五稜郭で防衛戦か。デウスエクス相手には砦としては機能しないだろうけど、気合は入るね」
 忍者との戦いにはおあつらえ向きのロケーション。アメリカ人のファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)にとっても、心躍るシチュエーションである。
「無線も携帯電話も繋がりませんね……いざとなれば、信号弾の出番でしょうか」
 一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)は悩ましげに溜息を零した。信号弾では「敵が突破した」という大雑把な情報しか、本陣には伝わらないだろう。
「んー、しかし忍びっていいのじゃよなー。情報収集とかとっても楽できそうなのじゃよなー。本当にちゃんとしたケルベロス忍軍組織してしまうのも悪くないかもしれぬの……」
 今後に向けて思案を巡らせるケルン・ヒルデガント(共に歩む・e02427)。
「螺旋忍軍がこちらの正面決戦策に乗ってくれるとは……それだけこの螺旋忍法帖というのが、ひいては勅忍になるというのが重要なステータスになるのかしら」
 羽丘・結衣菜(ミスディレクションの少女・e04954)は思慮深く呟く。気になるのは、「絶対制御コード」とやらだ。何やら地雷の香りが半端じゃない……。
「どいつもこいつも狙いは螺旋忍法帖か……なんとも必死というか欲深いというべきか」
 ディアグス・オスクロード(自由だけを求める狩人・e36626)は呆れともつかぬ吐息を落とす。
「だがあいにく必死なのはこっちも同じでね、はいどうぞと通すわけにはいかないんだよ……!」
 鋭く視線を馳せた先には、黒いスーツをアウトローに着崩し、紫煙をたなびかせながら悠々と歩み寄る、およそ忍者らしからぬ偉丈夫。背後と両サイドを守らせるように、三人のサングラスの黒服達を伴っている。
 螺旋忍軍、イヴァン。番犬を狩るフリーのヒットマン……。
「……あん? またずいぶんと薄い防衛だなぁオイ」
 イヴァンは顎髭を触りつつ、行く手を遮るケルベロス達を見下ろした。
「ま、楽なのに越したこたぁねぇか。悪ぃが、女子供が相手でも手は抜かないぜ。全力でここを突――」
 ――ビョビョビョビョビョビョビョビョビョビョビョビョビョビョ――!
 気障に決めようとした啖呵を、けたたましい大音声がかき消した。
 虚を突かれた螺旋忍軍達の視線が集まるのは、少女の小さな手が掲げる、今どきの小学生の標準装備、防犯ブザー。
(「なんだかシリアスな雰囲気ですけどそうはさせませんよイヴァンさん!」)
 程良きところで音を消すと、藍川・由衣(普通の女子小学生・e34237)はすうっと空気を吸い込み――思いっきり、声を張り上げた。
「不審者です! ロリコンです! いやらしい目つきで見てきます! 事案です!」
「――――。はぁっ!?」
 一拍遅れて、イヴァンはあんぐりと顎を落とした。

●ダンディ終了のお知らせ
「……まっ、待て待て待て! 誰がロリコ――」
「アレが由衣さんが会ったいう変質者カ……アレに迫られたラ防犯ブザー鳴らすのも解るアルナ」
 気を持ち直したイヴァンの反駁を、すかさず遮るメイリーン。
「大丈夫、今日は皆も付いてるアル。由衣さんは安心するヨロシ!」
「はいっ、たよりにしてます!」
「いや勝手に納得し合ってんじゃねぇよ話を聞けっ!」
 たちまちツッコミで手一杯になるイヴァン。が、もちろん由衣は話など聞くわけもなく。
「――必殺ビーム!」
 脈絡ゼロ、禁断の開幕必殺技(ただのバスタービーム)がイヴァンのすぐ脇をすり抜け黒服の一人に直撃。あわや、下腹部の大切な場所への着弾のみは、免れる。
「外しましたか……」
「テメェ今どこ狙いやがった!?」
「股間」
「危ねぇだろ! いやどこに当たっても危ねぇ事は危ねぇけど――アブねぇだろッ!?」
 ますますヒートアップするイヴァン。が、傍らの黒服が、冷静に上司を宥めてしまう。
「イヴァン様、連中に構わず、突破を」
「お……おう、そうだったな。――抜けさせてもらう!」
 姿勢を低く刀の柄に手をかけるや否や抜刀、神速の連撃がケルベロス達の周囲の空間に幾筋もの亀裂を走らせ、前衛を威圧する。
 押し込まれた前衛を追い抜く形で、結衣菜が躍り出る。
「……これはもしかして不審者かしら。大変だー! 黒服に煙草をくわえたむさくるしいおっさんって、変態って相場が決まってるのよ!」
「決めつけんな全国の黒服に煙草くわえたむさくるしいおっさん達に謝れ!!」
「おまわりさーん、変態が居ます! もっとも、ここでは私たちがおまわりさんだがな!!」
 イヴァンのツッコミをお構いなしにぶった切りながら、虚空へと大量のトランプをばら撒く結衣菜。シュート・ザ・ムーン。月の魔力を宿したトランプは、イヴァンではなくその後方の黒服達へと降り注ぎ、躰の自由を奪っていく。
 わちゃわちゃしたボケツッコミの様子を、瑛華は静かな眼差しで横目に見やる。
(「……大将にあたっている方々は、ある意味楽しそうですね」)
 さりとて、全員が全員、イヴァンにばかり構っているわけにはいかない。瑛華は不穏な動きを見せる黒服達の進路に回り込み、立ちはだかった。
「すみません、こちらの抑え担当はわたしなので……少々、辛いですよ」
 縛霊手の掌から放たれた御霊殲滅砲が黒服達に浴びせられ、さらに動きを制限していく。
「我が姉妹達よ。この戦いを勝利で終わらせようの!」
 弓、槍、エアシューズ……ケルンの身に着ける全ての武具には名があり、彼女にとっての姉妹である。そして『栄誉にて優雅たる栄光』の名を持つ勇ましいグラビティさえ、妹であった。
「背中は預けたっスよファルケ」
「オーケー任せてスタン」
 各々の銃を構える米国人カップル。
(「さて、今回の敵も強そうだけど……それとは違う意味で、スタンの目の色がなんだかおかしいような……?」)
 轟竜砲を黒服にぶち込みながら、恋人の様子をちらりと窺うファルケ。
 事実、リボルバーの照準を合わせるコンスタンツァの瞳は何やらキラキラ輝いていた。
(「黒スーツの似合うダンディな年上のイケメン……正直ちょっとタイプ……だめだめアタシにはファルケという心に決めた運命の人がいるっス……!」)
「ダンディな流し目とハードボイルドなたたずまいで乙女のハートを誑かそうたってそうはいかねっス!」
「してねーよっ!?」
 思考の順序をすっ飛ばしてクイックドロウと共に問題発言をかますコンスタンツァにも、律儀にツッコミを入れるイヴァンであった。

●自ら突破タイミングを逸していくスタイル
 ボケでイヴァンの注意を惹き、まずは黒服から片づける。
 ケルベロス達の術中に、イヴァンはまんまと嵌っていった。
「悪いニュースともっと悪いニュースがあるんだ。まず悪いニュースだけど、君の余命は残り二日なんだよねぇ」
「ほう……それより悪いニュースがあるとでも?」
「それはね、『残り二日』っていうのを、昨日言い忘れた事だよ」
「――ってアメリカンジョークかよ!?」
 ファルケののんびりした口調に巻き込まれノってしまったイヴァンは、悔し紛れのツッコミと共に抜刀術でお返しした。
 しかしそこに、別方向からのさらなるツッコミ!
「声が小さい!」
「あァ!?」
「一度極めると決めたなら完璧を目指せ。ツッコミだろうがなんだろうがな」
「いや極めたいなんて誰も言ってねぇし……」
 ハードボイルドに指導を入れるディアグス。イヴァンは頭痛をやり過ごすように眉間を抑える。
「上手くハマってくれてるアルな……」
 ボケの応酬で気を惹く内に、メイリーンが術符を駆使して、クロノと共にそつなく治癒を振り撒き、他の者達は黒服をどんどん攻め立てていく。
「くっ……イヴァン様は完全に敵のペースに乗せられている……!」
「ここは我々が突破せねば!」
 黒服達は銃声を高々と上げ、ボケに忙しいケルベロス達の包囲に穴を開けんと奮闘する。一人が跳弾で牽制、一人が二丁拳銃で飛び込み乱射、乱された陣形の隙をついて最後の一人が飛び出す――!
 瑛華は洗練された手際で懐から取り出した拳銃を、飛び出した黒服へと容赦なく差し向けた。
「通さないと、お伝えしたはずですが」
 遠距離狙撃。拳銃の有効射程を無視し、弾丸は精密な軌道を描いて黒服の足を貫いた。
 絶叫を上げる黒服。ケルベロス達のグラビティが重ねて殺到し、その声もあえなく途切れる。
 部下の死に、さしものイヴァンも気色ばんだ。
「こっちに攻撃がこねぇと思ったら、テメェら……」
「あ、邪魔ですよ。イバンさんの相手はこのナノポンです」
 シリアスモードを完全にスルーして、由衣はブレイジングバーストを黒服に撃ち込み、ナノナノには人影からちくちくと攻撃を仕掛けさせる。
「イヴァンだっつの! くそがッ……」
 焦りを滲ませるイヴァンに、ケルンは時空凍結弾を撃ち込みながら、感心の声を上げる。
「ふむ、存外と仲間思いのようじゃの。今までの螺旋忍者のイメージを覆すシリアスでダンディなヒットマンなのじゃな」
「部下をヤられて気張らねぇボスじゃ、示しがつかねぇからな。あと、螺旋忍軍のイメージなんか知るか、趣味だ趣味」
「……っという芸風じゃろ?」
「芸じゃねーし!?」
 あっという間に元の木阿弥。そうこうしているうちに、黒服達はケルベロスの猛攻に沈められていく。
「い、イヴァンさ……ま」
 最後の一人が瑛華のクイックドロウに命を撃ち抜かれた瞬間も、
「――てかそこのガキ、さっきからちらちらスケブ見切れてんだよ、何が「ここでボケて!」だよ!? 没収すんぞゴルァ!!」
 ……イヴァンはツッコミに忙しかった模様である。

●ツッコミの鑑
 かくして敵陣は、大将一人。ツッコミに気を取られ、完全に突破の機会を逃してしまったイヴァンのみである。
「鬼いさんこちら、銃が鳴るほうへってな!」
 ディアグスのガトリング連射が、ライドキャリバーのドラムカンのスピンが、からかうように煽り立てる。
「ナメやがって……!」
 猛攻を耐えながら舌打ちするイヴァン。部下が頭数を減らし始めた辺りから、ケルベロスの矛先も徐々にイヴァンへと移り始めていた。消耗は、決して軽くない。
 だが、イヴァンも何もしていなかったわけではない。ツッコミの片手間にも、刀を自在に振るって激しくケルベロス達に斬り込み、陣営を揺さぶっていく。
「くっ、やるっスね……ならば奥の手、忍法お色気の術っス!」
 出し抜けに襟元を緩めるコンスタンツァ。鎖骨と、さらにはスポーツ用のアレがチラリ、セクシー。
「どうっスか、アタシの色気にめろめろっスか。マリリンモンロー並のフェロモン波状攻撃っス!」
 イヴァンはまずいものを見た、とばかりにすっと視線を逸らした。
「あぁーぅん、なんだ……大きく育てよ……?」
「せめてツッコミで返してあげて……!」
 憐れみすら感じさせるイヴァンの返答に、うっかりツッコミを入れてしまうファルケ。
 じりじりと双方が削れていく戦況に、鈴を転がすような声音が響く。
「……捉えました」
 次の瞬間、瑛華による精密な狙撃がイヴァンの大腿部を貫いた。
「ぐぁ……っ」
 焼け付くような痛みに、イヴァンが姿勢を崩した。
「皆さん、今が好機です」
 柔らかく促す瑛華。ケルベロス達が一斉に動き出す。
「城には火砲が相場ではあるが用意できなんだ。代わりに我が妹をお見せしようかの!」
 ケルンに指で弾かれたコインは、裏面を閃かせたその瞬間、突然極太のビームとなって敵へと襲い掛かった。
「ゴートゥヘヴン!」
「3つ同時に火を吹くぜ!」
 アメリカンカップルは暴れ牛の如き竜巻と三連発射で絶妙のコンビネーションを発揮。
「いい歳こいた男がなにを考えて忍法帖なんて追いかけてるんだ……まさか、その歳になってまだ忍者に夢見る……いわゆる厨二病なのか?」
 しつこく煽りを入れながら、銃口で相手を捉え追撃するディアグス。
「仕、事だっ、つーの……っ」
 急所に撃ち込まれた弾丸に神経をずたずたにされ、イヴァンのツッコミにももはやキレがない。
「まんごうちゃん、行くわよ!」
 鋼の鬼へと変形したオウガメタルで殴り込む結衣菜。息を合わせた絶妙の間合いで、シャーマンズゴーストの爪が追従し、イヴァンの霊魂を抉る。
「これ成る偽符をもって竜威を招く、百八眼の混沌竜よ吠えよ!」
 偽符「混沌竜の咆哮」。メイリーンがかざした術符から、竜型の幻影が立ち昇った。咆哮。百八の因子を秘めた竜が、敵の動きを停止させる。
 由衣は大仰にガトリングガンを構えた。
「スケブを奪われた恨み! 必殺ファイヤー!」
 由緒正しいトドメの必殺技で、イヴァンを爆炎の弾幕に沈めていく。
「――ってただのブレイジングバーストじゃねぇかああああ!!」
 断末魔の叫びも、やはり全身全霊のツッコミで終わるのだった。

「お疲れ様でした。信号弾が無駄になって、何よりですね」
 どことなく艶っぽい仕草で髪の乱れを整えながら、瑛華は微笑む。
「大勝利アルな、クロノ!」
 サーヴァントと共にはしゃぎながら、メイリーンは抜かりなく仲間達の傷を癒していく。
「よくやってくれた。ご苦労じゃったの、姉妹達よ」
 身に着けた武具達を労うケルン。
「倒すには惜しい面白いヤツだったっス……あんたの芸風嫌いじゃねっスよ」
 敵の冥福を祈るコンスタンツァの傍らで、
「僕も髭、はやしてみようかな?」
 ファルケが冗談めかして顎を撫ぜてみせる。
「あとは本陣がどうなったか、だな……」
「ええ。螺旋忍法帖、無事に守り切れればいいけど」
 ディアグスと結衣菜は五稜郭の中心部へと視線を馳せる。
 こちらから本陣の様子を窺い知る術はない。が、ここでイヴァン一味を食い止められた事で、少なからず本陣の負担を減らす事はできたはずだ。
 由衣は生々しい爆炎の焦げ跡を見下ろし、ぺこりと頭を下げた。
「死後の世界では、ロリコンが治るといいですね」
 ……憐れ、結局最後まで、致命的な汚名は雪げなかったようである。

作者:そらばる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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