螺旋忍法帖防衛戦~忍び寄る無形の絶望

作者:stera

「まずは、螺旋忍軍の拠点に攻め込むという大任を無事に果たしてくれた事、感謝します」
 ヘリオライダーの皇・基(en0229)は、集まったケルベロス達を前にまず謝辞を述べる。
「今回の作戦で、多くの情報を得る事ができた上に、シヴィル・カジャスさんと、嶋田・麻代さんが、螺旋忍者にとって重要な意味を持つ『螺旋忍法帖』の所持者となりました。 螺旋忍法帖には『螺旋帝の血族を捕縛せよ』という御下命が記されていたようです。そして、『螺旋忍法帖』があれば、螺旋忍軍の核心に迫る事ができるでしょう」
 しかし、この『螺旋忍法帖』がもたらしたのは、恩恵ばかりではない。
「現在、この『螺旋忍法帖』を手に入れようと、日本中の忍軍の刺客が動き出しているようです。彼らにとって、螺旋帝の血族だけが創り出せるというこの忍法帖を手に入れる意味は大きいのでしょう。彼らは、螺旋忍法帖の場所を探し当てる事ができるらしく、それを考えると私達がただこれを保管し持ち続ける、というのは困難だと思われます。そこで、これを契機に、私たちは大きく打って出ることにしました。この『螺旋忍法帖』を餌に、多くの螺旋忍軍を誘き出す……」
 石川県の金沢城と北海道の五稜郭を拠点に、この忍法帖をかけた防衛戦を仕掛ける。
 この作戦で多くの螺旋忍軍を撃破すれば、刺客達も二度とケルベロスから『螺旋忍法帖』を奪おうとはしないはずだ。

「防衛戦は二手に分かれて行いますが、君たちには金沢城の防衛にあたっていただきます。忍法帖を奪うため本陣に向かう忍軍の各個撃破が目的です。そして、これが皆さんに撃破して欲しい螺旋忍軍の情報です」
 千変万化の無形……顔を見せない卑劣な螺旋忍者で、裏切りと絶望を愉しむ根っからの鬼畜外道……。
「おおよその襲撃場所は予測できていますが……敵は、真っ向勝負を仕掛けるようなタイプでは無い様子ですので、十分に注意して下さい。どんな手を使ってくるか……人質を取るようなマネや奇襲・騙し討など、警戒が必要でしょうね。彼には、強さは彼と比べてだいぶ劣るものの、現在配下が4人付き従っているようです」
 そして彼は今回の戦いの注意点を話す。
 この戦いに敗北してしまうと、残った敵は本陣に向かってしまい、螺旋忍法帖を守るチームに負担がかかってしまう事。
 敗北が1チームだけならば、なんとか支えきれるだろうが、複数チームが敗北すれば螺旋忍法帖を守り切れないかもしれないという事。
 勝利したとしても、配下の一部に突破されてしまった場合、突破した配下は本陣に攻撃を仕掛けてしまうので、できるだけ突破させずに全て撃破できるように頑張ってほしいという事。
「城内で、一癖も二癖もある忍軍と戦う……十分に気をつけて、武運を祈ります」


参加者
朽葉・斑鳩(太陽に拒されし翼・e00081)
ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)
橘・アンシャンテ(銀髪の令嬢天使・e02785)
浦戸・希里笑(黒蓮花・e13064)
佐久田・煉三(直情径行・e26915)
リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)
紺崎・英賀(自称普通の地球人・e29007)

■リプレイ

●残像と虚像とその答え
 『肆之顔』そう書かれた紙袋で顔を覆ったその男は、まったく表情など読み取れない。
「探しものは、ここ……」
 浦戸・希里笑(黒蓮花・e13064)は、目の前にふっと現れたところどころ血濡れたタキシードを着崩した男と、その部下を部屋に招き入れる。
 敵の数だけは確認できた、ともかく逃げ出される前に交渉に持ち込まなければ。
「……いらっしゃいませ……。待っていました……なの……」
 そう言ったリィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)の隣には橘・アンシャンテ(銀髪の令嬢天使・e02785)が立っていた。
「ご機嫌いかかでしょう? 無形さん、覚えておいでですかぁ? アンですよぉ。 ほら、花嫁衣装。 あの日の服を着ていますの」
「……あぁ、君か。 久しぶりだねぇ」
 無形は言った。
 声だけはあの時のまま……この男は、アンシャンテのかつての恋人、かつての婚約者。
 そして彼女の全てを破壊し、幸福の絶頂から絶望の暗がりへと彼女を突き落とした非道な男……。
「私、無形さんに忍法帖をお譲りしたいと思っていますの。 ただし交換条件がありますわ。 私の事を……これまでで一度でも、惜しい事をした……と思われたかどうかに、答えて下さい」
「そんな事でいいのかい? その程度の事で、忍法帖を渡してくれると?」
「私にとっては、大事なことですの。 忍法帖などよりも、無形さん、あなたからこの答えを聞くことのほうが、とても、とても大事なことですの」
「橘……! どういう事……?!」
 エディス・ポランスキー(銀鎖・e19178)が、どこからともなく突然現れる。
「……ん、敵対の意思あり……と取って構わないな?」
「信じていたのに……その敵が任務より大事なのか!? もし、君が考えを改めてくれないと言うのなら……殺してでも、止める!」
 佐久田・煉三(直情径行・e26915)と紺崎・英賀(自称普通の地球人・e29007)が、次々と現れ慌てた様子でそう告げた。
 仲間割れするケルベロス達を前に、無形は穏やかな声音で、こう話す。
「……君と別れてから、ふと、君を手放してしまったこと、哀しく思ったりしたものだよ。 惜しいことをした、今こうして対面して思う。 君を傷つけたこと、間違いだったのかもしれない……」
「無形さん、その答えは……」
 アンシャンテが、言いかけようとしたその時だった。
「クク……なんてね、言えば君は喜ぶかい? おっと、それ以上動くのはやめてもらおうか? 配下の手が、滑ってしまうかもしれないよ??」
 無形の後ろに控えていた配下の一人がおもむろに彼の横に並ぶと、着込んだコートの下からスヤスヤと眠っている赤ん坊を取り出した。
 手元を見せず後ろに控えていたのは、この人質を隠すためだった。
「白々しい芝居は終わりだ、ケルベロス。 人を騙すのが下手だね? その忍法帖が偽物だと気が付かないとでも思ったかい? 解るんだよ、本物かどうか」
 そう、螺旋忍軍の刺客達は、何故か忍法帖のある場所を感じ取ることが出来る。
 その感覚が、別の場所に彼らを引きつけていた。
 だからこそ、分かる。
 目の前の忍法帖は偽物に過ぎない、と。
「さぁ、道を開けたまえ」
 しかし、その時だった。

●人質救出
「月よりの矢羽、貫け、眠れ。闇夜を纏え」
 月光の煌めきが弓矢のごとく、敵に向かって放たれた。
 朽葉・斑鳩(太陽に拒されし翼・e00081)の放つアルテミスの金箭(ヘパイトス)が、赤ん坊を人質に取る配下の頭部を射抜く!
「鬼畜外道、俺達に卑劣な手が通じると思わないでほしいね。 本陣には、向かわせない」
 それを合図に、一斉にケルベロスの仲間たちが行動を開始する。
 もとより、卑劣な相手だと百も承知だ。
 煉三の提案から立案された囮作戦は、人質を取られていたときのことも想定していた。
(「ともかく、動きを止めるわ」)
 エディスが続けざま、配下の足元を狙い攻撃する。
 配下は崩れるように膝をつき、床に投げ出され泣き出した赤ん坊。
(「まさかこんなに小さな、生まれたばかりの子を人質に用意してくるなんて!」)
 前に立ちはだかる配下目掛けて、攻撃を仕掛ける希里笑。
 一般人が入り込まない為の事前の配慮と騙し討に関しては注意を払っていたが……まさか赤ん坊を連れ去り、人質として抱えてくるなんて。
「五月蝿いね」
 無形は、そう言うと容赦なく不気味な鋏を赤ん坊に突き立てようと振り上げた。
「ぐぬぅ!」
 身を呈し赤ん坊を無形の攻撃から守ったのは、ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)だった。
「このような幼子を人質にとるなど言語道断! この卑劣な行為、金剛破斬のディバイド・エッジが断じて許さぬ!!」
 すかさず、その懐に赤ん坊を抱きかかえる。
「……今……助けて、……あげるから……」
 リィナの放つオウガ粒子が、仲間達の感覚を研ぎ澄ます。
 しかし、そんなケルベロスの仲間達向かって、手裏剣の雨が降り注ぐ。
 カラン・カラン!
 事前に仕掛けておいた鳴子が鳴った。
 人質救出のスキを突き、配下2人が奥へと駆け出していく。
「ん、もうこれ以上、行かせはしない」
 残る配下へ、煉三の牽制射撃。
 +。Engage 。+に地獄の炎を纏わせ無形に斬りかかるアンシャンテ。
 配下よりも何よりも、自分の相手は無形ただ一人。
 しかし、その一撃をスルリとかわす無形。

●宿敵……今も愛しい人。
「これでもう、残るは貴方だけよ、色男」
 最後の配下を打ち倒し、無形に向かってそう言ったエディス。
「絶望する顔がお好みなんでしょ? なら此処で見せてみなさいよ」
「そう望むなら、存分に」
 不気味な鋏を両手に分けて持った無形。
 高速で回した刃先が竜巻を生み出し、猛烈な勢いで襲いかかる。
 それを見て、盾となるためとっさに飛び出した希里笑。
「……そう簡単に……うまくはいかないわ……」
 仲間の攻撃をいなすように受け止めて、彼女は無形にそう告げる。
 続けざま、赤ん坊を安全な後方に匿ったディバイドが無形の前に立ちはだかった。
「左様! 金剛破斬のディバイド・エッジ、この名が伊達では御座らん事を証明してみせよう」
 そう言って刀を引き抜くと、流れるような所作で円を描くように舞う。
「纏うは業炎、見せるは演舞、焼いて祓うは金剛破斬!」
 金剛破斬剣・心滅焔舞が、無形を直撃する。
 退路を断ち、幾度も攻撃を仕掛けるケルベロスの仲間たち。
 彼らを前にして、さすがの無形も徐々に押され始める。
「手当を!」
 仲間達の様子を見ながら、英賀は仲間達を適切にケアする。
(「あんなに美しい人を、平気で哀しませるなんて……」)
 過去に何があったかは詳しく知らないが、無形の着る血染めのタキシードとアンシャンテが纏う花嫁衣装……その関係が絶たれ、こうして今敵対している事に胸が痛む。
「……無形くん、……これ、受け取ってくれる?……」
 リィナが、そう言って御霊殲滅砲を放った。
 巨大な光弾が、無形を飲み込む。
 これまで、何をしても平然としていた無形の手が、ガクガクと僅かに震えていた。
 それに気づいた斑鳩が確信する。
(「効いている!」)
 リィナの放った一撃が、無形に対して悪い効果を与えているようだ。
 叩き潰すチャンスだ。
 後方から間合いを詰めると、敵の身体に拳を叩き込む。
「カハッ!」
 煉三は、仕掛け杖『道摩煉獄』手に無形の前に躍り出た。
 卓越した判断力と冷静な分析、煉三もまた、この好機を逃さない。
 避ける素振りを見せたものの、リィナから受けた一撃がそれを許しはしなかった。
 しびれる身体は言うことを聞かず、煉三の鋭い斬撃が無形を断つ。
「まさ、か……?」
 よろめき、無形は壁に寄り掛かる。
「……無形、さん……」
 アンシャンテの呼びかけが聞こえたのだろうか?
 何を思ったのか、無形は首からかけていた無数の指で飾られた装飾を眺める素振りを見せ、言った。
「……ところで、聞きたい。 ……お前の、指、どれだ??」
「え」
 この男は、何も覚えていないというのだろうか?
 括られた無数の左薬指。
 それは、この男が、何度も何度も繰り返し行なってきた非道な裏切りと罪の数。
 しかし、それは何もかも一瞬の快楽のためだけで、なんの記憶も思い出も感じるものなど何もなかったというのだろうか?
(「貴方の答えは、……私の事など、僅かも……気に留めることなど、無かった、ということなのでしょうか……」)
 心の片隅に抱えていた想いを否定するその言葉に、やりきれない表情のアンシャンテ。
「……ク、くく、アハハハ。 ……どうやら、これで……最期だが、その顔が見れて……満足、だ……」
 ドサリ、と床に倒れると、そう言い残し彼はそのまま息絶えた。

●決着の行方。
 言葉無く、複雑な表情で立ち尽くしているアンシャンテの肩を、ポンと希里笑が叩く。「……おつかれ、さま……」
 気の利いた、うまい言葉は見つからなかったが、そう告げてぎこちなく微笑んだ。
「あのね……アンシャンテちゃんも、みんなの事も、無形くんから守れて……よかったなぁって、思うの……」
 リィナは、少しだけ背の高いアンシャンテの顔を見上げながら、ふんわり微笑むとそう言った。
「ん、人を喜ばせる事を好む奴がいるんだ、人を絶望に貶める事を好む奴がいても不思議はない」
「そうだよ。 その、なんというか橘さんくらいの人が、思いつめるほどの相手じゃないというか……」
 煉三の言葉に続く言葉を探そうとする英賀。
 その時、エディスが言った。
「あんな男は、橘みたいないい女には、もったいないわよ!」
 笑顔でそう言いきるエディス。
 自らも仇敵を追いかける身だからこそ……あえて、はっきりとそう告げる。
「……ありがとう、ございます」
 仲間達の気遣いに、アンシャンテはそう言った。
「……とりあえず、突破された配下は二人か。 無形は叩きのめしてやったことだし、あとは本陣が上手くやってくれると信じよう」
 斑鳩が言った。
 全員を食い止めることは出来なかったが、一番の脅威と思われた無形を撃破することには成功した。
「うむ、今できる最善は尽くしたでござる。 それに、ほ~ら、よしよし。 安心するでござるよ、すぐご両親を見つけるでござる。 もう少しだけ、辛抱するでござる」
 ディバイドが、人質として連れ去られてきた赤ん坊を抱きかかえ、あやしながらそう言った。
 今頃、家族も心配しているに違いない。
 生まれたばかりのこの子を殺されず助け出せたことは、今回の任務の1番の成果だ。
「ともかく、これにて一件落着で御座るよ。はっはっはぁ!」
 豪快に笑い飛ばすディバイドに、アンシャンテを始めとするケルベロスの仲間達にも笑顔が戻る。
 こうして、大成功! とは言えないものの、ケルベロスの仲間達は、防衛任務に成功したのだった。

作者:stera 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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