螺旋忍法帖防衛戦~斑ノ蜘蛛

作者:蘇我真

「この前の東京都心を舞台にした大規模な螺旋忍軍アジト襲撃作戦、参加したケルベロスはご苦労だった。おかげで多くの情報を手に入れることができた、感謝する」
 星友・瞬(ウェアライダーのヘリオライダー・en0065)はまず感謝の言葉を述べると、具体的にどのような情報を手に入れることができたのかを説明する。
「俺の担当が出向いた真理華道のアジト、新宿歌舞伎町のオカマバーで嶋田・麻代が『螺旋忍法帖』なる巻物を手に入れたという。他の場所でも同様の書物が見つかったそうだが、そこにはこう書かれていた。『螺旋帝の血族を捕縛せよ』と」
 命令とも思える文章だ。この『螺旋忍法帖』をより詳しく調べれば螺旋忍軍の核心に迫る事もできるだろう。
「だが、どうも今はこの忍法帖をどうこうする暇もないようだ。ケルベロスが奪った螺旋忍法帖を手に入れようと、日本中の忍軍の刺客が動き出しているらしい」
 瞬曰く、全国の螺旋忍軍が動き出したという情報が入ってきているという。
「どうも螺旋忍軍は、螺旋忍法帖の場所を探し当てることができるようだな。このままずっと隠し通せるという訳にもいかないだろう。そこで……こちらも打って出ることにした」
 螺旋忍軍は忍法帖を狙って襲ってくる。それがわかっているのなら、忍法帖をエサにして彼らをおびき寄せ、罠にはめることもできると瞬は説明する。
「一度、全力で叩きのめしてやればさしもの螺旋忍軍も鼻白む。二度とケルベロスから螺旋忍法帖を奪おうなどと思わないようにしてやろう」
 大がかりな撃退依頼。その舞台に選ばれたのは石川県の金沢城と北海道の五稜郭だ。
 2巻の忍法帖をそれぞれの居城に配置し、ケルベロスたちで防備を固める。そして、忍法帖を奪いに来た螺旋忍軍を返り討ちにする。そういう算段だった。
「俺の担当は五稜郭だな。襲ってくるのは絡新婦とその麾下4名。蜘蛛の巣をあしらった着物を身にまとった、炎の女だ」
 妾口調が特徴的な彼女はかなりの手練れで、忍務をこなすついでに敵の顔を蒐集する性癖を持っている。麾下4名は男性で無口、絡新婦に絶対の忠誠を誓っているようだ。
 絡新婦は後衛からの遠距離攻撃に専念し、麾下4名は前衛で日本刀を振るう。うち1名は絡新婦を庇うように立ち回ってくるという。
「麾下は日本刀による近距離攻撃、一方の絡新婦は燃えさかる炎による攻撃や、蜘蛛の糸のような忍法で捕縛してくることが予測される。皆にはこれを止めてもらいたい」
 もし今回集まった8人で敵を止められなかった場合、絡新婦は忍法帖のある本陣へと向かってしまう。
 念のために本陣を守るケルベロスたちもいるが、複数のチームが敗北した場合、彼らだけでは支えきれない可能性もある。
「絡新婦には勝利しても麾下を取り逃してしまった場合、これも本陣の負担になってしまうだろう。できるかぎり、蜘蛛の子一匹漏らさず倒してもらいたい」
 個々の能力では上回る相手に全滅を狙わなくてはいけない、大変な依頼であることは間違いなかった。
「難しい任務だが、皆ならできると信じている。どうか、よろしく頼む」
 戊辰戦争最後の舞台となった五稜郭。そこで再び戦端が開かれる。
 ケルベロスたちの完全勝利を願い、瞬は頭を下げた。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
若命・モユル(みならいケルベロス・e02816)
樒・レン(夜鳴鶯・e05621)
千代田・梅子(一輪・e20201)
キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)
日御碕・鼎(楔石・e29369)
高橋・慶(チェンジリング・e30702)
畔上・司(識師・e33916)

■リプレイ

●不安
 五稜郭は戦乱に包まれつつあった。
「しっかし、いきなり想定外の事態じゃのう」
 千代田・梅子(一輪・e20201)は爪を噛む。老いさばらえた口調とは裏腹に、若さが滲みでる仕草。
 端的に言えば、本陣とは連絡がつながらなかった。携帯電話・無線・アイズフォン、どれもが通じない。螺旋忍軍の妨害か、はたまた連絡が集中しての混線か。
「落ち着け。わからぬことが多くても、我らのなすべきことは変わらない」
 そう言う樒・レン(夜鳴鶯・e05621)は言葉通り、落ち着いた様子だ。
 理由はわからないが、結果がそう出ているのだから仕方がない。的確に現状を判断し、適切に対処する。忍びらしい冷静さだった。
「一応照明弾もあるが、これは漏らしたときの連絡用じゃし……」
「なーに、最初から漏らさなきゃいいんじゃねえの? オイラに任せろって!」
 梅子の不安をかき消すように、若命・モユル(みならいケルベロス・e02816)がことさら明るく振る舞う。
 ともすれば楽観的に聞こえそうな物言いだが、モユルの顔には歴然たる決意と熱意に満ち溢れていた。
「乱暴だが、ま、そういうことだな。めったに無い、螺旋忍軍を一網打尽にできるチャンスだ。張り切っていくぜ」
 モユルの言を支持したのは半裸で裸足の格闘家だ。相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が、自分の掌に拳を打ち据え、白い歯を見せて笑っていた。
「血気盛んじゃのう……わしはじゃな、年長者として常に最悪の事態を想定して動いとるんじゃ」
 頬を膨らませてそっぽを向く梅子。まあまあと抑えるのはキャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)だった。
「与えられた役割を果たすために、あらゆる可能性を考え、直前まで再検討する。とても大切なことですよね」
 レプリカントらしく、どことなく機械的な印象にも思えるキャロラインの所作。それは彼女の風貌がただの人とは思えない儚さ、美しさに溢れているのと同時に表情を全く変えないからでもあった。
「ですね。それにどうもここにやってくるのは、司くんの因縁の相手……なんでしょ?」
 高橋・慶(チェンジリング・e30702)はキャロラインをちらりと見て、何事もなかったのように話を振る。
 自分は心のある人として、地球人として振る舞えているだろうか? 心の裡によぎった不安など、おくびにも出さない。
「ああ……そう、だな」
 畔上・司(識師・e33916)の表情は固かった。地に立つ二本の足が小刻みに震え、彼のサーヴァントであるオルトロスが不安げに鳴いた。
「……雪代。俺は平気だ、ありがとう。先祖の借金を一つ返せるんだ、武者震いさ」
「詳しいことはわかんないし、無理に踏み込むつもりもないですけど……俺たちが支えますから。ね、鼎くん」
「……司だからどうとかは、ありません。常通り、全力で挑むだけ、です」
 話を振られた日御碕・鼎(楔石・e29369)は、やや逡巡してからそれだけを口にする。
 もちろん、出来るかぎりを尽くしたいとは思っていたが、それをわざわざ司本人へ伝えるつもりもなかった。
「別に頼んだつもりもない」
「ははは……」
 反発する司の横で苦笑する慶。慶は気づいていた。鼎がいつもよりも拳を固く握り、気合を入れていることに。
「敵部隊を発見しました。これより迎撃を行います」
 キャロラインが前方上空に視線をやり、警告する。
 五稜郭の石垣を飛ぶようにして、移動してくる5つの影。その中に、凄絶な美しさを持つ女がいた。
「あの方が敵の親玉でございますか。せくしーだいなまいとでございますね」
 無表情で呟くキャロライン。進路を塞がれて、立ち止まる5人。
「幕引きの時間だ、絡新婦」
 司は告げた。
「我が名は司。畔上家三十代目当主、畔上司」
 幾年、幾世代の渡る因縁の終止符を。

●斑ノ蜘蛛
「ふふ、妾を楽しませておくれな」
 ケルベロスたちを前にしても余裕の笑みを崩さない絡新婦。彼女を守るように4人の部下が矢面に立つ。
 その中でもひとり、特に絡新婦を庇おうと位置取りを見せる者がいた。
「夜鳴鶯、只今推参」
 レンは口上と共に螺旋手裏剣を放つ。手裏剣がうねり、闇夜を舞う蝙蝠の如く螺旋を描きながら絡新婦へと向かう。前衛の部下の間をすり抜けようとしたとき、その者は身を投げ出して絡新婦の代わりに手裏剣をその身に受けた。
「やはり……!」
 布石を打ったレンが伝えずとも、ケルベロスの皆はその者が盾役なのだと理解する。
「全体方針通りに!」
 雷の壁を展開しながらの慶の言葉は、皆に事前に打ち合わせた内容を思い起こさせた。
「ほう、どのような方針かえ?」
「ふん、わざわざ敵に伝えるわけがなかろうが、たわけめ」
 絡新婦と梅子の視線が交錯し、共に不敵に笑いあう。
「全砲門オープン! くらえぇぇ!」
 モユルの叫びと共に彼の周囲から無数のマルチプルミサイルが発生し、敵前衛へと叩き込まれる。爆撃、もうもうと立ち込める煙の中から3つの影が躍り出る。
 流れる水のような斬撃。
 月の光を想起させる刀の軌跡。
 絶妙な間合い、刹那に抜かれ放たれる刀。
 三者三様の攻撃をした彼ら。彼らが、ケルベロスたちにとって最初の標的だった。
「纏めてかかってきやがれ! この筋肉が相手してやるぜ!」
 刀の一撃を素肌の筋肉で受け止める泰地。
「ヌッ……!?」
 部下の一人は日本刀を抜こうとするが、泰地の筋肉は膨張し、うんともすんとも言わなかった。
「そのなまくら刀で俺の筋肉を斬ってみろよ!」
「なんだと、この筋肉馬鹿め……!」
 怒りを覚えた部下へ絡新婦の叱咤が飛ぶ。
「うつけめ! 下がれい!」
「――は?」
「聞食せと畏み畏みも白す」
 次の瞬間、部下の網膜には狐の蒼炎が焼き付いていた。
「あ、あああぁぁッ!!!」
 絶叫。蒼い炎が部下の顔を焼き尽くす。鼎の御―狐火―だ。
「チッ……成程、妾以外から潰す手筈か」
 絡新婦はケルベロスたちの作戦を理解する。絡新婦と彼女を庇う盾役を捨て置き、先に遊軍である3人の部下を怒りで引きつけ、無力化する方針なのだ。
「貴様ら! 各個撃破される前に吶喊、包囲網を突破せよ!」
 絡新婦の檄に、前衛の部下たちは動こうとした。だが、動けない。
「逃げるのじゃ? はっはーん、わしらの力の前に怖気づいたとみえる!」
 梅子の虹を纏った急降下蹴りと嘲りの言葉も、挑発するためのものとわかっている。
「わかってはおります、ですが、無視もできませぬ!」
 攻撃を食らったひとりの部下は、湧き上がる怒りと共に梅子へと斬りかかってしまっていた。
「せめて、私だけでも……!」
 怒りに我を忘れなかった唯一の部下は、絡新婦の命を遂行しようとする。
「4時っ!!」
 慶が叫ぶ。
 情報を圧縮した短い掛け声。
 それだけで、司には充分だった。
 4時の方向、こじ開けられた包囲網へ禁縄禁縛呪を飛ばす。
 先祖からの因縁を逃がしはしない。執念にも似た御業は、見事に抜け出そうとした部下の足に巻き付いていた。まるで鎖につながれていることに気付かなかった犬のように、空中で一瞬静止し、地べたへと叩きつけられる。
「今のは、危なかった……捕縛できずにいれば……逃がしていた」
 客観的事実を告げながら、鼎が倒れ込んだ部下の背中へと星の力を込めた飛び蹴りを叩き込む。部下は潰れたヒキガエルのような声を上げた。
「言われなくてもわかっている……!」
 本来ならば絡新婦を狙うはずだった御業で逃げようとする部下を捕縛する。誰一人防衛ラインを突破させないための危険な賭けだったが、司はその賭けに勝った。
 オルトロスが倒れた部下へ、咥えた剣を突きたてようとして、一声鳴いた。
「ギャン!」
「雪代……!」
「狗の顔など蒐集したくはありゃあせぬがの」
 賭けの代償は、オルトロスの顔面だった。顔剥がしの毒でまるで硫酸を浴びたかのように顔が爛れ、煙が立つ。じゅうじゅうという音と共に、不快な刺激臭が鼻につく。
「くっ……顔剥ぎの毒には注意しろ! 蜘蛛の毒は一度付着すれば中々離れん!」
 これ以上、仲間が同じ目に遭うのは見たくない。そんな思いで司が注意を促す。
「なーに、戦いで出来た傷は男のクンショーだぜ!」
 モユルは泰地に向かっていた部下の背後に回り、挟み撃ちの体勢を取る。
「クモの子一匹残らないほど焼きつくしてやる!」
 毒を食らえば、その毒ごと燃やしてしまえばいい。そう言いたげに、モユルの関節から噴き出す地獄の炎。
「さあ、きやがれっ!! 俺ごとやるつもりでこいっ!」
 背後から弩級の一撃が来るのがわかっていても、部下は叫ぶ泰地から視線と意識を切り離せない。
「おおぉぉりゃあああぁぁっ!!!」
 叩きつけられる紅蓮の一撃。強力無比な斬撃は部下を背中から一刀両断して、泰地の素足、つま先スレスレの地面を抉っていた。
「いい一撃だ!」
「当然!」
 泰地が手を上げると、モユルはジャンプし、その手を勢いよく叩いた。
「やられよったか……」
 歯がみする絡新婦の傍、焔摩天の真言と共に舞い散る木の葉がいきなり爆発する。レンの攻撃に気づいた部下が庇って絡新婦を突き飛ばす。
「炎には、それ以上の炎を!」
 間髪入れず飛んでくる司の熾炎業炎砲。
「小癪な!」
 虚空に具現化する豪炎が、熾炎業炎を飲み込んでいく。
「もうよい! 妾を守るな! この程度の稚技、妾なら痛くも痒くもないわ!」
 レンと司による阻害攻撃に攻めあぐねていた絡新婦が盾役の部下の任を解く。
「突破用の駒を増やしたか……じゃが、一手遅かったのじゃ!」
 梅子のピンク色の瞳が、光の反射で紅く染まる。
 バックミュージックはキャロラインの唄う紅瞳覚醒。裁縫遊戯が、梅子へ怒りを覚えていた部下の身体をバラバラに裁断し、縫合していた。
「駒は、残り2枚じゃ。王手飛車取りなど都合のいい手など、与えぬぞ」
 裁断した時点で、部下は既に生命活動を終えていた。物言わぬ人形と化した死体に一瞥をくれ、再度ファナティックレインボウで注目を集めようとする。
「鼎くん、お願いします!」
「了解」
 慶のメタリックバーストによって神経を強化された鼎は、最初に突破を図ろうとして倒れていた部下へと立ちふさがる。
「くそっ、御業さえ、解けりゃ……!」
 捕縛された部下は逃げようともがく。それは、蜘蛛の巣に捉えられた虫にも似ていた。
「解放、してやろうか」
「え……?」
 部下は鼎を見上げ、絶句する。部下に降り注ぐ影は、鬼の形をしていた。
「ご、はっ……!」
 生命力を吸い尽くす一撃が決まり、部下は濁った声を上げて絶命する。
「現し世から、幽り世へ……」
 当初遊軍だった3名の部下が敗北し、盾役だった部下も囲まれていく。
「包囲網、狭めて!」
「傷はわたくしたちが癒しますわ」
 後衛、回復役の慶とキャロラインが全体を俯瞰するように指示を出し、サポートしていく。
「次だっ!」
 泰地は半ばやけっぱちで斬りかかってくる元盾役の攻撃をいなし、刃と化した足を旋回させる。文字通り足を刈られ、転倒したところに鼎の狐火が焼き尽くしていく。
「ぬぅ……妾の部下達を、よくも……!」
 絡新婦の美しかった顔が醜く歪む。結果だけを見れば、絡新婦は護衛役をつけずに4名全てを強行突破させるべきだったのだろう。そうすれば、さしものケルベロスたちも手数が足りず包囲網を破られていた。
 自らが蜘蛛の巣に飛び込んだ獲物になりつつあることを、もう少し早く認識していたら……だが、狩られる側の立場に立ったことが無い絡新婦からすれば、これは当然の帰結だったのかもしれない。
 摩利支天の真言の共に、レンの翔鳥の如く星の力を込めた一撃が絡新婦の足を止める。
「逃がさない」
 そこへ三度、鼎の狐火が舞い、絡新婦の橙色の炎を飲み込んでいく。
「全武装、業火合体! 全力でぶった斬ってやるぜ」
 モユルの武器が変形合体し、一振りの巨大剣となる。
 業火大斬剣。紅蓮の炎が全ての炎を焼き払った。
「おまえの炎も覆いつくす、オイラの地獄の炎の味はどうだ!」
「ぐ、ぬぅ……!」
 足止めされ、さらに回避困難な2撃をくらい、よろける絡新婦。司は御業を練り、射出した。
「……どうぞお帰り願おう、黄泉の淵まで」
 これで、全てが終わる。
 先祖代々、否応なしに紡がれてきた因縁を断ち切る一撃。
 そう、なるはずだった。
「逝って、たまるものか!!」
 恐るべき生への執念。絡新婦は残っていた力を絞り出し、己の身をのけぞらせる。
 ブリッジのように反らされた上半身、その上スレスレを御業がすり抜けていった。
 驚異的な粘りに舌を巻く暇もなく、起き上がりこぼしのように戻ってきた顔、口から金色の糸を吐く。
 狙いは司。執念の籠った金糸の一撃が司の顔面へ――。
「ぬおお、ばっちいのじゃ!」
 向かう直前、射線に割ってはいってきた梅子の顔へと命中した。
「梅子、大丈夫か……!」
「わしのことは気にするでない、キャロラインもついとる! それよりもおぬしが……司が後悔しない答えを出すのじゃ!」
 唾を吐きながらも司の背中を後押しする梅子。キャロラインの唄うブラッドスターが、梅子に付着した金糸を溶かしていく。
「まだ、まだよ……負債を取り立てるまで……妾は死ぬわけにはいかぬ!」
 更なる炎の一撃を繰り出そうとする絡新婦の肩をエネルギー光線が貫いた。肩に開いた大穴に、焼ける肉の匂い。
「……正直使いたくないんですけどね、コレ。皆には内緒、ですよ?」
 苦笑いする慶。その胸部に、大きな射出口が展開されていた。
「貴様……絡繰りか!」
 憤怒の表情を浮かべる絡新婦。そこに、眉目秀麗さは欠片もない。
「絡繰り風情が、妾の幾年にもわたる悲願に妨げようとは不届き千万!」
 怪気炎を上げる絡新婦へ、司が告げる。
「先祖が世話になった。契約のことは、すまないな……彼岸の向こうで、謝罪は。いつか必ず」
 半透明の御業が、その身に炎弾を孕んでいく。
「ただ……お前にもひとつだけ謝罪してもらう」
 放たれる炎。熾炎業炎砲。
「ぬ、ぬううぅぅ……!!」
 避けようとする絡新婦。だが、奇跡は2度も続かない。
「慶は、俺の友達だ」
 炎の蜘蛛は、炎の中で生まれ、そして炎の中で死にゆくのだった。

作者:蘇我真 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。