螺旋忍法帖防衛戦~MobileNinjaGirl

作者:青葉桂都

●忍者攻城戦
 簡単に挨拶した後、集まったケルベロスたちに石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は語り始めた。
「この中にも参加された方がいるかもしれませんが、先日螺旋忍軍の拠点への襲撃作戦が実行され、一定の成果を上げることができました」
 参加された方はお疲れ様です、と芹架は頭を下げた。
「さて、襲撃時にシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)さんと嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)のお2人が『螺旋忍法帖』なる文書を入手いたしました」
 それぞれ別々の忍軍から入手したものだ。
「今回の作戦は文書を囮に用いて螺旋忍軍を誘き出し、撃退するものになります」
 前置きしてから、芹架はまず文書の解読で得られた情報について話し始めた。
「螺旋忍法帖は、螺旋帝の血族が自らの血で書き記したもののようです」
 忍法帖を手にすることで忍軍は螺旋帝から『御下命』を受けることになるらしい。
 そして、受けた『御下命』を果たした忍軍は惑星スパイラスに招聘され、一族郎党すべてが『勅忍』になる栄誉を与えられるようだ。
「これは螺旋忍軍にとっては最高のステータスであるようです。ただし、たとえ記された命令を果たしても、忍法帖を手にしていなければ『勅忍』になることはできません」
 また、今回ケルベロスが奪取したことで持ち主の名が書き換わったように、忍法帖を奪取して命令を果たせば『勅忍』になることができるようだ。
「ですが、正義のケルベロス忍軍が忍法帖を奪取したことで、当初活動していた者たち以外の忍軍も動き出してしまいました」
 ケルベロスから忍法帖を奪って『勅忍』になる機会を得ようとしているのだ。
「残念ながら、いつ来るかもわからない敵から永遠に忍法帖を守り続けることはケルベロスの皆さんにも不可能でしょう。だからこそ、忍法帖を囮に使うことになりました」
 敵を誘き寄せて一網打尽にすることで、ケルベロスから奪うのは得策ではないと螺旋忍軍に判断させるのが目的となる。
 なお、忍法帖を手にした螺旋忍軍は御下命を果たさなければならないという強い強迫観念にかられるが、ケルベロスには影響ない。
 敵を誘き寄せる場所は、北海道函館市の五稜郭と、石川県金沢市の金沢城だ。
「皆さんに担当していただくのは金沢城側になります。こちらにはシヴィルさんに、所有する忍法帖と共に向かっていただいています」
 螺旋忍軍をシヴィルのもとへ向かわせないようにするのが目的となる。
「交戦する敵は魅咲忍軍の魅咲・沙月と配下の5名です」
 先日の拠点襲撃時にも交戦した相手だという。ダモクレスから盗んだ技術で全身を機械化しており、忍者と言いつつ忍ぶ気はまるでない。
「機械化された両腕は、火器が搭載された巨大クローになっています。また、両脚は巨大なスラスターになっているようです」
 おそらくはバトルガントレットやアームドフォートに相当する武装であると推測できる。脚部はエアシューズの技を使えるかもしれない。
 もっとも武器が多くても、ケルベロスと同様に一度にすべての技が使えるわけではない。
「先日の戦闘結果が参考になるかもしれませんが、まったく同じ武装や技を使ってくるとは限りませんのでご注意ください」
 配下として引き連れている5人は、白い装束の没個性的な女性忍者たちだ。
 螺旋忍者の技を使う他、日本刀と螺旋手裏剣を装備している。
 デウスエクスとしてはあまり強い部類ではなく、練度の高い者なら1対1で互角以上に戦えるだろう。その分、連携を得意としているようだ。
「皆さんが敗北した場合、交戦していた敵はシヴィルさんのいる本陣に向ってしまいます。1チームなら本陣の防衛チームで対処できるでしょうが、2チーム以上敗北すると厳しいことになるでしょう」
 もちろん、全滅させるのが望ましいですが、と芹架は付け加えた。
「また、敵の目的は皆さんを倒すことではなく忍法帖です。配下の一部だけでも突破して奪取に向かう可能性があります」
 可能な限り、防いで欲しいと芹架は告げた。
「忍法帖を持っていると推測される魅咲忍軍が確保に動いた理由は不明です」
 とはいえ、聞いて教えてくれるような相手ではないだろうし、敵の事情は倒した後で考えればいい。
「まずは、忍法帖を確実に守りきることを考えてください。どうぞよろしくお願いします」
 芹架は静かに頭を下げた。


参加者
魅咲・サソリ(紫忍者・e00066)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)
水無月・香織(地球人の鹵獲術士・e30250)
浜本・英世(ドクター風・e34862)

■リプレイ

●忍ぶ気のない敵
 金沢城跡地の一角には、ケルベロスたちのチームがすでに陣取っていた。
「忍法帖は連中にとって垂涎の品のようだな……」
 おかっぱ頭のレプリカントが言った。
 ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)は愛用の重火器を、いつでも放てるよう準備していた。
 彼女だけではなく、他のケルベロスたちも同様だ。いつ敵が来ても応戦できるよう、それぞれ得物をすぐ抜けるように身構えている。
「機会があれば、私も自分の目で見てみたいね。忍法帖ってのがどんなものなのか」
 眼鏡の奥に笑顔を浮かべて、水無月・香織(地球人の鹵獲術士・e30250)が言う。
 けれど表情はすぐに引き締めらた。
 車のエンジンを思わす轟音がケルベロスたちへ近づいてくる。
「まるで忍んでいない者が幹部とはね。目的の為になりふり構って来ないというのは確かに忍者らしく厄介な事ではあるけれども」
 音が聞こえてくる方へ、黒いマントを身に着けた浜本・英世(ドクター風・e34862)が視線を向けた。
「ともかく、螺旋忍法帖という餌に食いついてくれたのだ。目立ちすぎるお嬢さん方は、狙い撃ちにしてあげよう」
「この前の抗争で、私は顔は合わせませんでしたが、こうして戦う機会ができたのは好都合。何とかここで決着をつけましょう」
 アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)の眠たげな目もそちらを向いた。
 一見してダモクレスと見間違いそうな、機械の四肢を身に着けた女が脚部のスラスターをふかして突っ込んでくる。
 付き従うのは白い忍者装束の少女たち……魅咲忍軍。
 ケルベロスたちの姿を認め、配下の少女たちが散開する。
 だが、機械忍者はまったく表情も変えずに突っ込んできた。
「良い機体だが目立ち過ぎるな。ここは通れんぞ」
 マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が沙月の前に立ちふさがる。
「ここを通るなら、私たちを倒してからにしてもらいましょう」
 アトもマークに並んで進路を妨害した。
 機械に近い姿をした武骨なレプリカントと激突する寸前、機械忍者の動きも止まる。
「……面倒くさいから止めないで欲しいんだけど」
 平坦な口調で魅咲・沙月が言った。
「よぉ沙月、お前相変わらずゴテゴテやな」
 話しかけたのは魅咲・サソリ(紫忍者・e00066)だ。
 機械の四肢の中央にいる青装束の女はよく見れば豊満な肢体を持っていることがわかるが、サソリは彼女に負けず劣らず良いスタイルの持ち主だった。
「ん?」
 けれど、沙月の反応はそっけない。
「お前相変わらず忍ぶ気ないなって!」
「ん?」
 スラスターの轟音で、言葉が聞こえていないのかもしれない。
「そのゴーゴーいってるやつ切れや! なんも聞こえてへんやんけ!」
「……却下、歩くのは面倒くさい」
 怒鳴りつけるサソリに冷たく沙月は答えて、後方へと加速する。
「えっ? なんて!?!」
 戸惑うサソリを無視して、敵は両手についた砲口をケルベロスたちに向けている。
 ケルベロス側もすでに仕掛ける機をうかがっていた。
「SYSTEM COMBAT MODE」
 意識を戦闘状態に切り替えつつ前進していくマークに続いて、一対の小さな翼を持つオラトリオも飛ぶように加速する。
「ふふーん、魅咲・沙月。忍法帖が欲しければ、まずこの場の皆を倒してからにしてもらおうか。鎧装天使エーデルワイス、いっきまーす!」
 ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)はツインテールの髪をなびかせて敵との距離を詰めていく。
「面倒くさい……けどやるしかないか」
 迎え撃つ沙月の砲口に光が集まっていく。その前に立ったのは1人の執事。
「お久しぶりで御座います、魅咲・沙月様……今回は貴方にリベンジさせてもらいますね」
 先日の作戦で魅咲忍軍襲撃に参加していた者もこの戦いには加わっていたが、齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)は増援に現れた沙月と直接交戦した1人だ。
 だが、返ってきたのは両腕のクローから放たれる無数の光線だけだった。

●沙月は面倒くさがっている!
 光闇は光線を回避しようとしたが、敵は腐っても一忍軍の幹部クラス。狙いは的確だ。
 だが、マークが自らに向けられたものと光闇に向けられたもの、合わせて二条のレーザーを食らいながら2人の間を駆け抜ける。
「援護します、沙月様!」
 2人の忍軍が、いつの間にか沙月の巨体のそばで武器を構えていた。
 沙月が2人に一瞬目をやり、2人が頷いた。なにを指示したのかまではわからないが、突破に関することだろうか。
「あくまで忍法帖が優先、ですか?」
 光闇の問いに、沙月はなにを考えているかわからない視線を向けてきた。
「忍法帖を欲しているのはあなたご自身ですか? それとも、魅咲・冴様の命令で動かれているのでしょうかね」
 挨拶程度の問いかけに、沙月は顔を歪めた。『なにこいつ面倒くさい』と、その表情がはっきりと語っている。
「戦うだけでも面倒くさいのに……帰っていい?」
「ダメです!」
 部下に言われ、沙月はため息をついた。
 答えは得られなかったが、彼女は自ら忍法帖を求めて動くようには見えない。
(「それとも、そんな沙月様さえ動かす価値が忍法帖にあるのでしょうか」)
 挨拶としては十分だろう。遊撃の役目を果たすべく、光闇は敵の動きを観察し始める。
 会話している間にも、他のケルベロスたちはすでに攻撃を始めている。
 光闇と入れ替わるように、サソリやティーシャが沙月へと接近していった。
 ティーシャが砲撃形態のドラゴニックハンマーから砲弾を叩き込む。
「RED EYE スタンバイ」
 マークのカメラアイが赤く光って、螺旋忍軍の攻撃衝動を強化した。
「この前の倉庫街では救援に来たキミにしてやられたけど、今日はこっちが待ち構える番だ。『将を射んとする者は~』ってことで魅咲・冴の前にまず君を倒させてもらうよ!」
 ジューンが九尾扇を振るうと、それは鞭のように伸びて敵を打ち据え、凍らせる。
「こちらを向いてくれたまえ、お嬢さん方」
 英世は竜砲弾を前衛の1人へと叩きつけて、足を止める。できればまとめて止められる技があればよかったが……。
 香織の呼び出した氷河期の精霊も敵に襲いかかり、氷に閉ざしている。
 ケルベロスたちの攻撃の合間に、配下の忍者たちは反撃を繰り出してきていた。
 前衛に陣取る2人の配下は、沙月を守っているようだった。マークが挑発していなければ回復に回っていたのかもしれない。
 攻撃衝動を高められた者たちはマークを狙っている。後衛の敵もそれに合わせてマークへと手裏剣を飛ばしていた。
 中衛に立つ最後の1人は妨害役で手裏剣を雨のごとく降らせていた。
「対応が早いですね。連携が得意というだけあります」
 呟きながら、アトが気をためてマークを回復している。
 連携して攻撃するばかりか、敵は隙あらば突破をはかろうとしている。
 その進路をふさぐのは光闇だ。
「来てくださいませ、魔人卸し……、あぁ、めんどくせぇ……呼ばれたんならやる事はやるよ。 おらァ!!」
 鮮血のごときオーラを纏った執事の雰囲気がワイルドなものに変化した。
(「連携阻止に突破阻止、どちらもやらなければならないね。なんにしても、本陣に皺寄せが行くことだけは避けなければ」)
 考えながら英世は懐から薔薇の花を取り出した。
「さて、諸君。薔薇の花はお好きかな?」
 紅の薔薇には術式がこもっている。もっとも、その威力は中途半端なもの。
「君達の為に用意したのだ。受け取ってくれたまえ?」
 狙いすまして放つ薔薇は前衛の1人に突き刺さる。
「……私もなんだか面倒くさくなってきました。なんですか、あの変な医者は」
 苛立ちを隠さないその反応は、正しく英世の期待したものだった。
 配下だけでなく沙月本人も隙を見て突破を図ろうとしていた。
「来んな来んな、あっちいけ!」
 サソリが縛霊手から巨大光弾を放つが、沙月はスラスターをふかして回避する。
 ティーシャはそのまま突撃しようとした敵の進路上に立ちふさがった。
 ダモクレスの技術を利用しているという相手は火力と機動力を兼ね備えているが、ティーシャも火力については負けていないつもりだ。
「ここは通さない」
 自分専用にカスタマイズしたバスターライフルMark9から、グラビティを中和するエネルギー弾を発射する。弾はかわそうとした沙月をとらえ、敵の突破を阻止した。
「……面倒くさい」
 沙月が呟いた。

●番犬の相手は面倒くさい
 ケルベロスたちがそうしているように、魅咲忍軍の者たちはうまくダメージを散らして攻撃を持ちこたえていた。
 撃破よりも突破阻止に重点を置いている者が多かったこともあるだろう。
 もっとも、そうでなければ今ごろ敵の何人かが突破していたかもしれない。
 けれど、敵も、味方も、体力は確実に消耗し続けている。
「TARGET IN SIGHT」
 銃身下にパイルバンカーを装備したマークのライフルが火を噴いて、ケルベロスたちを狙い撃つ後衛を制圧する。
 敵前衛の片方が仲間の1人をかばって攻撃を受けた。
 ジューンは傷ついた敵へと一気に接近した。
「そろそろ1人くらいは減らさせてもらう!」
 手にしたパイルバンカーから、金属がこすれる音が響く。回転する杭が魅咲忍者の白装束を貫き、内部から破壊する。
 胸元から鮮血を撒き散らして敵は倒れた。
 だが、攻撃を受けているのは味方も同じだ。
 アトは傷ついた仲間を的確に回復し、支えていた。
 死人が出ても敵は気にする様子もなく攻撃を続けている。
 特にダメージを負っているのはマークと英世の2人。それに、前衛として沙月を止めているサソリの傷も浅くない。
「犠牲を出してでも忍法帖を欲しているのですね。先日我々が奪った資料がなにか関係しているのですか?」
 問いかけに対し、沙月が返したのは嘆息だけだった。
(「無理だろうとは思いましたが……あからさまに面倒くさそうですね」)
 人は心の底から面倒くさいと思ったとき、あんな風に息を吐くのだと感じさせるため息のつき方だった。
 動じることなくアトは愛用のハーモニカを吹き始める。
「皆さんが動きを止めぬよう、私から送る曲です。どうぞ……」
 機械が動き出す様を感じさせる行進曲。マークやサソリ、前衛たちを癒していく。特にレプリカントであるマークには、よく届きそうな調べだった。
 前衛を優先すべき状況が多いため、後衛の英世やティーシャへの回復は手薄になってしまっているが、香織や英世本人が補ってくれている。
「降り注げ! 魔を祓う光の雨よ!」
 香織は癒しの魔力を込めた弾丸を投げた。
 メディカルレインを参考にアレンジした治癒魔術が英世の頭上で炸裂し、降り注ぐ。
「香織さんも、アトさんも、助かるよ」
「礼を言われるほどのことじゃないって。敵が集まってるところもなくなったし、そろそろ倒し切るのを目指していくね」
 赤いオーラに香織は力を込めた。
 戦いは長引いていた。少なくとも10分以上は経過しているはずだ。
 サソリはその間、沙月に食らいついていた。
(「くっそ~はよみんな雑魚片付けてこっち来てくれんかな~!」)
 縛霊手から放つ光弾は大方沙月にかわされてしまっていた。叫んで自分に気合を入れることができればいいのだが……それでも、牽制し続けるしかない。
 巨大光弾が沙月をとらえた。
 けれど、彼女はそのままサソリに接近してくる。左腕のクローに捉えられた彼女は、右のクローが迫ってくるのをまるでスローモーションのように感じた。
(「あ……これ、あかんやつや」)
 引き裂かれた体はもう自分では動かせなかった。止めをわざわざ刺されることはないだろうが、戦いは無理だ。
「あんまりケガがひどくないとええなあ……」
 愛する家族を思い浮かべているサソリを超えて沙月がスラスターをふかす。
「行かせるか!」
 ティーシャが超合金製の靴で蹴りを叩き込む。さらに香織もオーラを纏った拳で凍り付くほど華麗な一撃を見舞う。
 同時に動き出していた魅咲忍軍の前衛は光闇が止めていた。
 ジューンの蹴りが横合いから動きを止めたところに、執事の手にしたハンマーが雷を纏って白装束を打ち砕く。
「失礼いたします」
 感電した敵は倒れ、そのまま動かなくなった。
 残る敵は4人だ。
 マークは仲間が突破を図った2人を狙っている間、油断なく残る敵へと改造アームドフォートを向けていた。
「LOCK ON」
 ミサイルは炎を撒き散らしながら敵後衛を炎に包む。
 仲間が狙っていない敵へ攻撃することで、隙を確実になくしているのだ。
 アトも当然回復を続けている。
 けれど、戦いはそこで終わりだった。
 摩擦で炎を巻き起こしながら沙月が後退していく。
「……時間がかかりすぎた。これ以上戦っても忍法帖奪取は難しいし、疲れたから帰る」
 クローに仕込まれた砲をケルベロスたちに向けながら撤退していく沙月を、配下の魅咲忍軍たちが急いで追っていく。
 ケルベロスたちからの追撃が敵を打つが、残念ながら倒しきるにはいたらない。
「追いかける?」
「いえ、深追いはやめておきましょう」
 長期戦ながら、敵は余力を十分残して撤退している。味方もまだ余裕はあるが、下手に追って徹底抗戦を選ばれたらどうなるかわからない。
 マークは一度、戦闘態勢を解除した。
「同意する。作戦目的は達成したし、サソリの手当ても必要だ。重傷ではなさそうだが」
「すまんなあ。沙月の奴、派手にやってくれよって」
 サソリがどうにか半身を起こす。
「謝ることないって。サソリさんとティーシャさんが抑えてくれたから、突破されずにすんだんだからね」
 香織が眼鏡の奥から笑顔を向けた。
「手当も必要だが、城にも被害がありそうだな。勝手にヒールをかけて構わないのなら、一部だけでも直しておきたいところだが……」
 英世が周囲を見回して確認し始める。
「そのあたりは皆に任せよう。私は念のため、もう少し警戒は続けておく。退いたと見せかけてまた来る可能性もある」
 ティーシャの言葉に仲間たちが頷いた。
「撤退させられたのですから、先日撤退に追い込まれたリベンジは果たせたと考えましょうか。倒しきれなかったのは残念ですが」
 光闇は敵が撤退していった方向に視線を送る。
「俺も奴には興味があったがな。いずれ、また戦う機会もあるだろう」
 マークも同じ方向へカメラアイを向けた。ダモクレスの技術で機械化したという沙月について知りたいという想いが個人的にはある。
 逃げていった螺旋忍軍たちの姿はもう見えない。
 手放しには喜べないが、ケルベロスたちは間違いなく役目を果たした。
 後は他のチームと、そして本陣の者たちがうまくやったと信じるだけだった。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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