螺旋忍法帖防衛戦~拷問趣味のくのいち

作者:なちゅい

●螺旋忍法帖を守れ!
 新たなる作戦を聞き、ヘリポートへと集まるケルベロス達。
 その中には、螺旋忍軍への拠点に潜入した者の姿もある。
「拠点への潜入、お疲れ様。大任を果たしてくれて、本当にありがとう」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はにこやかな笑顔で、ケルベロス達へと礼を述べた。
 その作戦で多くの情報を得る事ができた上、シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)の2人が『螺旋忍法帖』の所持者となった。これは、螺旋忍者にとって重要な意味を持つ物らしい。
「螺旋忍法帖には、『螺旋帝の血族を捕縛せよ』という御下命が記されていたようだね」
 螺旋忍法帖を創れるのは螺旋帝の血族だけ……といった話もあるが、この『螺旋忍法帖』があれば、螺旋忍軍の核心に迫る事ができるだろう。
 しかし、良い事だけでは無い。
「ケルベロスが奪った螺旋忍法帖を手に入れようと、日本中の忍軍の刺客が動き出しているみたいなんだ」
 螺旋忍軍は螺旋忍法帖の場所を探し当てる事ができるらしく、永遠に守り続けるのは困難を極める。
 ただ、これは絶好のチャンスとも捉えられる。敵が螺旋忍法帖を狙うならば、それを囮にして誘き寄せて撃破する事も可能なはずだ。
「折角だから、前向きに捉えたいね。守り続ける事は困難ならば、逆に攻撃に打って出ればいい」
 螺旋忍法帖を囮として多くの螺旋忍軍を撃破すれば、二度とケルベロスから螺旋忍法帖を奪おうとはしなくなるだろう。
 防衛戦は、石川県の金沢城と北海道の五稜郭を拠点として行う。
「皆には、この防衛拠点に向かって襲い来る螺旋忍軍の迎撃を行い、螺旋忍法帖を守り抜いて欲しい」
 こちらのチームは、金沢城の防衛に回ることとなる。
「皆には、スリーイ・シャギリという名の螺旋忍軍を相手にして欲しい」
 スリーイ・シャギリは紫の瞳とウェーブヘアを持ち、露出が高めの黒い忍装束を纏っている。
 蠱惑的な笑みを浮かべた彼女は、体の所々に華やかなアクセサリーを身につけている。モデル体型なこともあり、大人の魅力をかもし出す女性だ。
 武器は螺旋手裏剣とケルベロスチェインを使い分け、一味違ったグラビティを行使する。蛇のように食らいつき、敵を縛り付け、弱らせる戦い方を好む嗜虐趣味を持つので、注意して当たりたい。
 また、配下として、白い装束を纏う魅咲忍者4体がスリーイにつき従っている。こちらは全員が日本刀を所持して布陣しているようだ。
 あまり考えたくはないけれど、と前置きしてからリーゼリットはケルベロスが敗北した場合について語る。
「この戦いに敗北してしまうと、残った敵は本陣に向かってしまい、螺旋忍法帖を守るチームに負担がかかってしまうよ」
 敗北が1チームだけならば、なんとか支えきれるだろうが、複数チームが敗北すれば螺旋忍法帖を守り切れないかもしれない。
 また、仮にスリーイを撃破したとしても、配下の一部に突破されてしまった場合、突破した配下は本陣に攻撃を仕掛けてしまう。
「できるだけ突破させずに、全て撃破できるように頑張ってほしい」
 説明は以上とのことだが、リーゼリットはさらに一言付け加える。
「今回は、城での防衛線。この戦いも、螺旋忍法帖を守る為の一手となるはずだよ」
 それを留意して全力で戦いに臨んでほしいと、彼女はケルベロス達に願うのだった。


参加者
ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(幻肢愛のオヒメサマ・e01185)
凪沢・悠李(想いと共に消えた泡沫の夢・e01425)
トルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)
マグ・ストラーニ(黒猫の鴨・e14340)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)
フィゼル・ハートレット(全てを焼滅されし者・e32092)

■リプレイ

●忍軍の侵攻に備えて
 石川県金沢市。
 2つの川に挟まれた場所にある金沢城。
 この地にいるシヴィル・カジャスと、彼女の持つ螺旋忍法帖を守るべく、こちらのチームも螺旋忍軍の侵攻に備える。
 一ヶ所に陣を張るケルベロス達。万一の突破対策にと、道の後方にバリケードを作成していた。
 ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(幻肢愛のオヒメサマ・e01185)は怪力を使い、周囲の土砂を運ぶ。自称メイド騎士のエストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)も近場の木々や岩を運んできて、道を塞いで行く。
(「今度こそ、皆の役に立つ為に」)
 エストレイアは「正義のケルベロス忍軍」の作戦における失敗の悔しさをバネに、人一倍やる気に満ち溢れている。
「これで、容易に奥には進めないはずにゃ」
 出来上がったバリケードを見て、白猫のウェアライダーの志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)はうんうんと頷く。あとは向かい来る敵を通さず討つのみだ。
「録画はお任せ下さいっす!」
 記録係を自称する黒猫のウェアライダー、マグ・ストラーニ(黒猫の鴨・e14340)は、ハンディカメラを携えている。
「……にしても、あんなもんが大事なのかねぇ……」
「螺旋忍法帖かぁ……」
 神居・雪(はぐれ狼・e22011)の呟きに、中性的な顔立ちの凪沢・悠李(想いと共に消えた泡沫の夢・e01425)も同じことを考えていたらしい。彼もその価値は分からず、また、知ろうとも考えてはいない。
 しかしながら、それを狙って敵がやってくるならば好都合だと、悠李は前向きにこの事態を考えている。
「さて、それじゃあ、戦いに行くとしようかな♪」
 早速、向こうからこのルートを選んだ敵がやってくるのに、悠李は気分を高めていく。

●嗜虐趣味の女忍軍
 正面から堂々とやってきたのは、黒と紫を基調としたボンデージ衣装を思わせる格好の女性だった。
「さすがに、簡単に通してはくれないようね」
「ティアクライスのエストレイア、参上です!」
 後を追う白い衣装の少女達……魅咲忍者4人を含め、前に出たケルベロス達は徐々に敵を包囲していく。
「ボク達がいる限り、ここは突破させないにゃ」
「……突破されるのは面白くないしね」
 後方の藍がそうして、向かい側の悠李と共に包囲網を少しずつ狭める。
(「ついに、オレも前線っすか……」)
 マグは仲間の中央に立つものの。こうした依頼に出て戦うのが初経験とあって、気を引き締めていた。
「うふふ、私、スリーイ・シャギリに相手してほしいの?」
 己の整ったボディラインを見せ付けながらも、スリーイは刃のついた鎖を振り回す。彼女はどうやって獲物をいたぶろうかと目を光らせ、舌なめずりすらしている。
「嗜虐的嗜好を持つ螺旋忍者……か」
「拷問趣味とか怖いっすよね」
 フィゼル・ハートレット(全てを焼滅されし者・e32092)が自身に負けず劣らず露出高めの敵を見据えた。マグの言葉に頷くフィゼルは、地獄の炎を燃やす手甲を突き出して構える。
「他人の趣味嗜好にあれこれ口出すつもりは無いけど、敵であるなら焼滅するだけかな」
「私の方が美しさも強さも、上なのを見せてあげます♪」
 こちらも負けじとトルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)は爆乳を振るわせ、敵を挑発して気を引こうとする。
 じりじりと動く螺旋忍軍らを、ケルベロスも牽制しつつ立ち回る。しばしの間、退治する両者。先に仕掛けるはケルベロスだ。
「さて。打ち砕きましょうか」
「螺旋忍法帖は絶対渡さないにゃーよ」
 この場を死守すべく、ジークリンデは地獄化した四肢を燃え上がらせ、荒々しく動き始める。ポニーテールを揺らす藍も戦闘開始だと縛霊手から紙兵を大量に散布していた。
 その隣りでは愛用の星厄剣に誓い、エストレイアが言い放つ。
「必ずや忍法帖は、あのお2人は守り通してみせます!」
「吠え面かかせてあげる」
 口元を吊り上げたスリーイもまた、この場の突破を目指してケルベロスに飛びかかってくるのだった。

●敵を抑えるはずが……
 攻撃を開始するケルベロス。真っ先に悠李が配下の魅咲忍者を捉えた。
「それじゃあ始めようか――心躍る命の張り合いをさ」
 戦いに身を置く悠李は精神が昂ぶり、少しずつ口調や思考が崩れてきている。
「さーて、君はどこまで付いて来れるかなっ♪」
 ハイになった彼は軽やかに宙を舞って敵を翻弄し、両手に持つ2本の刀、神気狼と魔天狼で敵を多様な型の斬撃で切りかかっていく。
「ほらどうしたの、ちょっと遅すぎないかなァ!?」
 攻撃される魅咲忍者はじっと耐えていたが、他の少女達は日本刀を手に切りかかってくる。
 特攻するライドキャリバー、イペタムがその魅咲忍者らの攻撃を抑えつつ、激しいスピンで仕掛けていく。
 主の雪もまた、布陣を意識しながら高く飛びあがり、盾となる少女に狙いを定めて蹴りかかっていたようだ。
 スリーイは楽しそうに刃物を振り回し、伸ばした鎖でトルテの体を絡め取る。
「きゃあっ!? こ、これくらいっ……!」
 彼女がもがこうとすると、その豊満な胸に鎖が食い込む。
 とはいえ、トルテも黙ってやられはせず、発生させた桃色の霧の中で自らの裸体をちらりとさらし、誰もが羨むほどの美しさをかもし出す。
「ふふ、その綺麗な体をじわじわといたぶってあげる……!」
 だが、スリーイはさほど気にする様子もなく、手裏剣の刃を煌かせた。
「今度こそは螺旋忍軍に遅れはとりません! メイド騎士の本気、お見せ致しましょう!」
 叫ぶエストレイアは仲間を後方から支えるべく、特に壁となっているメンバーをメインに回復へと当たる。
「祈りを捧げます。かの者に、守りの加護を!」
 この場はトルテへ、彼女は防護の力を授ける祈りを捧げていく。
 ジークリンデはというと、雪へと魔法の木の葉を舞わせていた。
(「みどもにとって大事なのは、デウスエクスをブチころがす事。だから、回復役だって出来るわ」)
 ジークリンデは戦場全体を見回し、適切な回復を心がける。
 その間に、フィゼルは地獄の炎を纏わせた手甲で、仲間が攻撃する魅咲忍者へと殴りかかる。打撃箇所が燃え上がるのを見て、彼女は武器を簒奪者の鎌に持ち替えた。
「こっち来ちゃダメっすよ!」
 前線に立つ魅咲忍者らに向けて叫ぶマグ。だが、その侵攻が止まらぬことを察した彼は何かを大量に召喚する。
「カルガモ隊が行かせないっすよ!」
 それは、カルガモの形をしたマキビシだ。地面にばら撒かれたマキビシによって、敵も迂闊に進めず、足を止めてしまっていた。

 しばし交戦は続くが、すぐに戦況に大きな動きが。
「なんだ螺旋忍軍って、こんなレベルなの? 拍子抜け~」
 思ったよりも、相手に手ごたえのなさを感じる藍。
 敵の気を引く狙いもあって、彼女は縛霊手を装着した掌から巨大光弾を放ち、敵陣に痺れを走らせようとする。
「さー、うめけ、わめけ、命乞いするにゃ」
 藍はサディスティックに笑い、相手を攻め立てようとしていた。
 これも相手の気を引く為、だったのだが……。敵は一枚上手だった。
 スリーイは配下へとアイコンタクトをとる。すると、クラッシャーとして動いていた魅咲忍者2体が高く跳躍する。
「「「…………!」」」
 ケルベロス達がそれに気づいたときにはもう遅い。比較的フリーになっていた彼女達はケルベロスの囲いを飛び越え、さらにメンバーの作ったバリケードも楽々飛び越え本陣に向かっていく。
 この場を突破され、呆然と、あるいは悔しそうに本陣の方向を見つめるケルベロス達。
「おーっほっほっ、いいわね、その悔しさに満ちた表情。ああ、ゾクゾクするわ……」
 それに身震いしていたスリーイは、甲高い声で笑うのである。

●これ以上は抜かせない……!
 スリーイの印象はあまりに強すぎた。
 それ故に、魅咲忍者の対処が甘くなってしまったことを、ケルベロス達は痛感する。
「……切り替えるぜ」
 負けん気の強い雪は、眼光鋭く残る魅咲忍者を見据えて猛攻を行う。イペタムのガトリング掃射に続き、雪は燃え上がるエアシューズで魅咲忍者の体を強く蹴りつける。
 されど、日本刀による斬撃に、また、スリーイの毒手裏剣での攻めに雪は背筋にゾクゾクとした感覚を覚え、徐々に余裕を失ってきつつあった。
 とはいえこれ以上、ここから螺旋忍軍を抜かせるわけには行かない。
 トルテはある程度自身にスリーイの周囲が向くようにと、高く飛びあがってから、虹を纏う急降下蹴りを敵へと見舞う。
「よほど、私の攻撃を受けたいようね」
 くすりと笑うスリーイは、蛇のように鎌首を上げた鎖で再び彼女を捕らえ、手にする手裏剣で直接切り裂いていく。
「ひっ!? い、いやあっ!?」
 服を破かれたトルテは怯えた様子で、スリーイの嗜虐心を満たそうとする。
 攻撃が飛んでくれば、わざと痛がってスリーイの気を引こうとエストレイアも考えるのだが、前衛陣が踏ん張ってくれていることもあり、後方に攻撃が飛んでくることはない。
 その分、彼女は地面に描く守護星座によって、攻撃を受ける仲間を全力で支えるのである。

「ああ、いいわ……もっと鳴きなさい」
 嗜虐趣味のスリーイは、己の攻撃で痛がるケルベロスに気を良くしている。
 仲間の回復を行うジークリンデは光り輝くオウガ粒子によって、スリーイに傷つけられる仲間のカバリングに当たっていた。
 前線にいても、敵の攻撃は単体メインであり、ディフェンダー陣に攻撃が重なることを見たフィゼル。彼女は大鎌で魅咲忍者に切りかかった直後、スリーイへと語りかける。
「ねぇ、貴女が傷つけるのが好きなら、存分にしても構わないよ」
 そのフィゼルの顔は儚げで、それでいて狂気を含んだ笑みを浮かべて。
「貴女が私に温もりをくれるなら、喪った心を満たしてくれるのなら、ね」
「なら、存分に縛ってあげるわ」
 スリーイはこちらが傷つくほどに、誘いかけるほどに、気を大きくして、恍惚とした表情で鎖と手裏剣を繰り出してくる。
 そんな敵の一撃を受けた仲間へと、マグは分身を纏わせて出来る限り被害を軽減させようとしていた。
 一方で、ケルベロスも着実に身構える魅咲忍者達の体力を削っていく。
「にゃー、敵が無様に鳴く姿は快感にゃ~」
 藍はスリーイと同じように、敵をいたぶって見せていた。御業の力で少女を鷲掴みにし、嗚咽を吐く姿に彼女は快感に浸る演技を行う。もちろん、これ以上、敵がこちらを無視しないように、だ。
「オーク達のように『ぶひー』って悲鳴を上げて、命乞いするにゃ。そうしたら滅ぼすことは勘弁……」
 そこで、藍は蒼穹に瞳を輝かせる。
「……するわけないにゃ」
 その視線は槍となり、日本刀を振るう少女を射抜く。ついにそいつは力尽きて地面に沈む。
 もう1体の少女も流水のような動きで前衛メンバーに斬りかかり、ケルベロスの強化を打ち砕いてきていたが、その動きは少しずつ鈍り出していて。
「おっと残念、こっちでした♪」
 真上から襲い掛かる悠李が日本刀「魔天狼」で、的確に魅咲忍者の胸を貫く。崩れ落ちる敵に、彼は愉悦の表情を浮かべていたのだった。

 鎖と手裏剣の同時攻撃を受けるトルテは、艶かしい声を上げる。
「あん、ああん!」
 彼女は序盤からずっとスリーイの気を引き、攻撃を受け続けていた。最初は演技のつもりでいたが、次第に素の叫びになっていく。それだけ、スリーイが手ごわい相手だったのは間違いない。
 ただ、ケルベロスの布陣は手堅い。攻防取れた布陣で仲間同士でカバーし合い、回復もしっかりと行う。
 トルテはそうしたサポートもあって耐えてはいたが、それでも徐々に押されることとなる。
 それでも、残る相手がスリーイだけになったことで、ケルベロス達は包囲網をより狭めていく。今度は頭上も注意を怠らない。
 雪も仲間を庇いつつ、カムイの力を借りて風を起こして傷を癒す。
「……よくも、今まで好き勝手やってくれやがったなっ!」
 そして、単騎となったスリーイ目掛け、雪は流星の蹴りを見舞っていく。
 ジークリンデもまた、隙あらば自身の宿敵アモルの魂の力を行使する。
「私は私のコトバで語る。憎い(好きよ)殺す(愛す)わ。獣と姫は貴方の命をご所望よ。甘く苦い愛憎の溶熱で、貴方を美味しく頂くわ!」
 それは、降魔拳士として振るう力の代償。強い感情が暴走しかけ、語りかけてくる幻聴を制し、ジークリンデは燃え上がる地獄の剣を振りかざして、スリーイの体へと振り下ろす。
「まだよ、もっと嬲ってあげるわ……」
 だが、スリーイも簡単に倒される相手ではない。肉を焼かれ、切られながらも、鎖を使ってジークリンデの剣を止めた。
 敵が立ち直る前にと、マグがカルガモ型のマキビシをばら撒く間に、悠李が歪んだ笑みを浮かべて飛び込んでくる。
「お生憎様、僕は斬り合うのは好きだけど……嬲るのは趣味じゃないんだよねッ!」
 彼は戦場を跳び回り、スリーイの体を両手の刃で刻む。
 スリーイも少しずつ、劣勢なのを感じてきていたのか、少し眉を顰めて悠李を鎖で掴み、手裏剣の刃を刻み込む。その一瞬だけは、スリーイはこれ以上ないエクスタシーを覚えていたようだ。
 そんな敵を逃がさぬようにと、藍は冷静な頭で状況を見極め、熱い心で御業から炎弾を発する。
「どうにゃ、熱いかにゃ?」
 そして、ある意味で最も熱くなっていたトルテ。
「私、脱いだら、もっとすごいんですよ♪」
 桃色の霧が噴出す中、服を脱ぐ彼女はまたもスリーイの気を引きながらも、攻撃を躊躇わせる。
 その間に、エストレイアも攻勢に出て、全身を光の粒子に変えて突撃していく。
「くっ……」
「痛みを与えるという事は痛みを知る事、だから私も貴女に与えてあげる」
 笑いが止まるスリーイへ、手にする大鎌を漆黒に染まる地獄の炎に包んだフィゼルが静かに告げる。
「貴女のお陰でこの瞬間、私は満たされている。だからそのお礼に私からも温もりを与えてあげる」
 その炎は、フィゼルの喪った心を埋める地獄という呪い。彼女に仇なす者に対し、等しく滅びを与え行く。
 大きく切り裂かれるスリーイの体。だが、彼女は最後の瞬間に笑う。
「ふっ、でも、私があなた達の裏をかいた事実は、決して消えないのよ……。ふ、ふふっ……」
 笑いを浮かべたままでスリーイは潰え、地面へと転げ落ちる。
 それを確認し、深呼吸した悠李は元の雰囲気に戻っていく。
「快楽に溺れ過ぎましたね♪」
 トルテは強敵であるスリーイの撃破に、気を良くしていた。
 確かに、敵を打ち倒してはいるから、作戦としては成功と言える。
「皆様、お疲れ様でした……!」
 だが、仲間を労うエストレイアの気は晴れない。逃がした2人の魅咲忍者が気がかりだったからだ。
 バリケードの向こう、本陣の方向を見つめ、メンバー達はシヴィルと螺旋忍法帖の防衛を願うのである……。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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