とある雑居ビルの屋上で、ミス・バタフライは地上を見下ろしていた。
ミス・バタフライは片隅に見える洋菓子店から出てきたパティシエの姿に目を歪めると、くるりと後ろを振り返った。
背後には、二人の螺旋忍軍が、ミス・バタフライに膝をついて指示を待っている。
「あなた達に使命を与えます。ここから見える洋菓子店に、腕のいいパティシエがいます。その人間と接触して、その仕事内容を確認。可能ならば習得した後殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
「了解しました、ミス・バタフライ」
「この事件も、巡り巡れば必ずや大きな事件となることでしょう」
言った直後、二人の螺旋忍軍の姿はない。
現場へ向かったであろう配下を見送ったミス・バタフライは、楽しそうに笑うと姿を消した。
●
「ミス・バタフライが、また動き出したみたいなの」
ケルベロス達に資料を配りながら、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は続けた。
「ミス・バタフライが起こそうとしている事件はね、そんなには大きなものじゃないの。でも、この事件は巡り巡って世界に大きな影響を与えちゃう。絶対に、阻止しなきゃ!」
今回は美味しいと評判の洋菓子店でオーナーパティシエをしている市崎の所に現れる。
螺旋忍軍は彼の仕事の情報を得たり、あるいは習得した後に殺そうとする。
この事件を阻止できなければ、風が吹けば桶屋が儲かるかのようにケルベロス達に不利な状況が発生してしまう可能性が高い。
「そんなことがなくても、美味しいケーキを……じゃなくて、一般人が殺されちゃうのは見過ごせないよね。皆には、市崎さんの保護とミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の撃破をお願いするね」
基本的に、狙われる市崎を警護して、現れた螺旋忍軍と戦うことになる。
事前に説明して避難させた場合、敵が別の対象を狙うなどしてしまうため。被害を防ぐことはできなくなる。
この依頼では、事件の三日ほど前から市崎に接触することができるので、事情を話して仕事を教えて貰うことができれば、螺旋忍軍の狙いを自分達に変えることができるかも知れない。
「皆が囮になろうと思うと、見習いさんくらいには上手くならないといけないの。だから、頑張って修行しなきゃだけど、みんななら大丈夫! きっとおいしいケーキを作れるようになるよ!」
美味しいケーキを想像したねむは、プリンを頬張ると敵の戦力資料を渡した。
敵の螺旋忍軍は二体。
赤影と青影と呼ばれている。
赤影はジャマー。螺旋手裏剣のグラビティを使う。
青影はディフェンダー。螺旋忍者のグラビティを使う。
店内には厨房もあり、囮になることに成功した場合「技術を教える修行」などと言って敵を分断したりすることが可能となる。
厨房や店内で戦うこともできるが、休憩室を案内するなど言って裏手の駐車場へ誘導することも可能。
戦いが速やかに終われば、市崎はお礼にイートインスペースでケーキを振る舞ってくれる。
修行の成果を仲間に披露するのもいいだろう。
「あまーいケーキは女の子の味方! これをダメにしちゃう螺旋忍軍は女の子の敵! 女の子の敵はケルベロスの敵だから、みんなで協力してやっつけちゃってね!」
ねむはにっこりと笑うと、紅茶にミルクを落とした。
参加者 | |
---|---|
御籠・菊狸(水鏡・e00402) |
天矢・恵(武装花屋・e01330) |
アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772) |
天矢・和(幸福蒐集家・e01780) |
ミリム・ウィアテスト(トルーパー・e07815) |
アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895) |
月代・風花(雲心月性の巫・e18527) |
禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800) |
市崎の店に集まったケルベロス達は、三日で見習いパティシエになるべく特訓を開始した。
「美味しいケーキを作る為……いえ囮になる為に頑張るよ!」
泡立て器を片手に袖をまくったミリム・ウィアテスト(トルーパー・e07815)は、渡されたレシピを片手に計量を始めた。
「ケーキ作りの計量はレシピ通り正確に! 泡立ては手動で気泡潰さず素早く! 粉振るいはきめ細かく材料散らさず! ……だよね?」
繊細に手早く、教え通りに作業するミリムの姿に、市崎は頷いた。
「ええ。それが基本です」
「ケーキ作りの修行をするぞ! ケーキ作りとかしたことないけどがんばる! 市崎、教えてよ!」
気合十分にゴムベラを手にする御籠・菊狸(水鏡・e00402)の隣に立った市崎は、頷きながら首を傾げた。
「菊狸さんは、どんなケーキを作りたいのですか?」
「んー、シンプルにイチゴのケーキとか! じょうずにできたらあげたいなー」
「どなたかに、プレゼントしたいのですね?」
確認するような市崎に、菊狸は大きく頷いた。
「うん! 誕生日だかクリスマスだかで、ケーキをプレゼントするんだ!」
「では、美味しいケーキを焼けるように、コツをお教えしますね」
失敗しないためのコツを教わる菊狸に、アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772)はうっとりと頷いた。
「私の愛する姫はケーキが大好きなのですよ。私は姫が大好きですけれどね。市崎さん。私は愛を姫に伝えられる……そんなケーキを作りたい」
手書きのケーキイメージ図を受け取った市崎は、見事な図案に真剣な表情になった。
薔薇のチョコ。
薔薇型に切られた苺。
クリームにも薔薇の花弁を混ぜて。
「我が愛を込め、丁寧に。彼女の様な可憐なケーキを作りたいのです」
「薔薇……ですか。やりがいのある食材ですね」
真剣な市崎のアドバイスを聞いたアレクセイは、真摯な姿勢で薔薇のケーキ作りに取り組んだ。
ケーキ作りのアドバイスがひと段落した市崎を、月代・風花(雲心月性の巫・e18527)は呼び止めた。
「市崎さん。卵はもう少し泡立てた方がいいですか?」
差し出されるメレンゲの状態を確認した市崎は、ピンと立った卵白に頷いた。
「丁度いいと思いますよ。泡立てすぎると泡が潰れてしまいますからね」
「なるほど」
アドバイスを真剣にメモする風花に、市崎は感心したように問いかけた。
「お菓子作りはお好きなんですか?」
「はい。得意……だと自分では思うけど。プロから見たら全然だろうし一生懸命頑張らないと!」
囮になる為とはいえ、プロに教えてもらえるこの大切な機会。
上達して大切な人に美味しく食べてもらえるようにしっかりと取り組もう! という意気込みの風花に、市崎は更に細かいコツを伝えた。
真剣に学ぶ風花の隣で、アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)もまた真剣に取り組んでいた。
「任務の一環とはいえ、本格的なパティシエの技術が学べるなんて夢の様です♪ 料理ならお任せください!」
元々プロ級の料理の腕前を持ち、料理が大好きなアーニャは持ち込んだ自前のヘラで手早くクリームを塗りつけた。
「手慣れてらっしゃいますね」
「他にも、気が付いたところがあったら是非教えてください! 見習いっていうよりは寧ろ、技術を全てマスターするくらいの意気込みでいるので!」
ヘラを片手に気合を入れるアーニャに、市崎は真剣に頷き技術を伝えた。
●
時は経ち、修行も今日が最終日。明日には予知にあった螺旋忍軍がやってくる。
皆それぞれ真剣に修行をしている中、天矢・恵(武装花屋・e01330)もまた真剣に取り組んでいた。
材料の扱い、混ぜ方やオーブンの温度、仕上げ。気づいた事が有れば自分の対応方法を考えて伝え、店主の考えと同じになるか確認し作り方を合わせる。
真摯な姿勢は実を結び、恵は見習いと言ってもおかしくないほどの腕前を手に入れていた。
作るケーキを考えていた恵は、店の常連客に連絡を入れた天矢・和(幸福蒐集家・e01780)を呼び止めた。
「親父。いつもは分業だが、たまには一緒に作らねぇか? 珈琲を使ったカフェムースケーキを作りてぇんだ」
恵の申し出に、和は一瞬呆然とすると大仰に驚いた。
「えっ……えーっ! いやその……僕が手伝ったら折角の恵くんのケーキが……っ」
慌てる和に、恵は続けた。
「スポンジ、ムース、飾りのチョコとゼリーに使う珈琲を選んでくれねぇか」
「……市崎さん、僕死ぬ気でやるよっ」
恵の提案に俄然やる気を出した和は、受け取ったイメージ図を見た。
「あ、成程。考えたね恵くん。部分部分に合わせた珈琲なんて一寸面白い。んー……」
しばらく思案顔で唸っていた和は、メモ帳に珈琲豆の種類を書き出した。
「スポンジには酸味を抑えて濃い目に淹れたほろ苦ブレンド。ムースには単一種のスペシャリティ。後味がキャラメルっぽいんだ。ならチョコ用はこっち。砂糖を入れるとチョコみたいな味になるから丁度いいでしょ。ゼリーのは炭焼珈琲の水出し珈琲。どうだろう?」
立て板に水とばかりに珈琲豆と出し方をメモしていく和に、恵は感心したように口角を上げた。
「さすが専門家だ」
「試作するでしょ? 今から淹れるから待ってて」
そう言い残すと、和は珈琲を用意するために街へ出た。
真剣に取り組むケルベロス達の隣の調理台で、禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)は泡立て器を洗っていた。
野鳩は自分の技能向上よりも調理の準備や後片付けなどに回り、仲間の技能向上に使える時間をより長く確保できるように心がけてきたのだ。
洗い上がった泡立て器を手に取ったアーニャは、ぴかぴかに拭きあげると棚に戻した。
「修業はいいのか? アーニャ」
「今は休憩中です。……野鳩さんはずっと手伝いばかりでしたけど、習わなくてもいいんですか?」
アーニャの問いに、野鳩はふと手を止めた。
ゴムベラを持った手は、レプリカントのもの。武骨な金属製の手は、繊細な菓子作りには向いていないと思ってしまう。
「客観的に考えてな、私は囮に向いていないと思ってな」
「そうですか」
それだけ答えたアーニャは、野鳩が洗い上げたゴムベラを受け取り拭き上げた。
「菓子作りか……。分量さえちゃんと測れば失敗しないとは言うものの、色々と技術を学ばねばいけないようだな」
「ええ。難しいですけれど、楽しいですよ。野鳩さんも、良ければやってみましょう」
「ああ……そうだな」
感情の見えない声で頷いた野鳩は、洗い上げたボウルをアーニャへと手渡した。
●
翌日。現れた二人の青年を、四人のケルベロスが迎え入れた。
今日は市崎は不在。今日は見習い四人が教えるという言葉に頷いた赤影と青影に、ケルベロス達は真剣に技術を教え込んだ。
ひと段落着いた時、風花は赤影と青影に声を掛けた。
「お疲れ様。休憩所に案内するよ!」
いつもと変わらない様子で明るく声を掛ける風花は、駐車場へ続くドアを開けた。
まるで離れがあるかのように誘導する風花に従って駐車場へ出た時、ドアが閉められた。
「なんだ?」
「……休憩のお時間ですよ。そう、永遠の」
一般人の仮面を外さない青影に、アレクセイはIgnazを振りかぶった。
狙い違わずに放たれる強烈な一撃にうめく青影に、アレクセイは静かに告げた。
「貴方の人生に終止符を」
「お前達……ケルベロスか!」
即座に態勢を整えた赤影は、アレクセイへ向けて毒手裏剣を放った。
手裏剣を受けたアレクセイが襲う毒に膝をついた隙を突き、青影がアレクセイへ踊りかかった。
「食らえ!」
氷を帯びた掌底がアレクセイを捕らえる瞬間、菊狸が割って入った。
掌底を受け止めた腕が、高い音を立てて凍り付く。
間近に迫った青影に、菊狸は頬を膨らませた。
「おいしいケーキ作る市崎をころすなんて、ゆるさないからね!」
「我らの狙いを知っていたな!」
「まぁ美味しいケーキの作り方を勉強したい気持ちは分かる。だけど独り占めはいけない」
のんびりとした口調で頷いた和の、手元がぶれた。
目にも止まらぬ速さでリボルバー銃を構えた和が放つ弾丸が青影を貫く。
「ましてや殺すなんてさ?」
目の奥に危険な光を宿した和の攻撃に、青影は菊狸から距離を取った。
その行動を読んでいたかのように、恵が動いた。
「お前達にケーキ作りは、百年早い」
バックステップで距離を取ろうとする青影の動きを読んでいたかのように、スターゲイザーが放たれる。
カウンターで迎え撃つように放たれた蹴りに、思わず呻いた青影を巨大な杭が襲った。
「新しい武器、試させてもらおう」
パイルバンカーのところてん突きが唸りを上げて突き進み、青影に大きな穴を穿つ。
よろける青影に畳みかけるように、半透明の御業から放たれた炎弾が青影を包み込んだ。
「市崎さんは、殺させません!」
風花が放つ炎から逃れようともがく青影の耳に、アーニャの声が響いた。
「さぁ……調理、開始です!」
来るであろう攻撃に、青影は回避行動を取るべく神経をとがらせた。
アーニャが放ったゼログラビトンはしかし、赤影を抉った。
次の攻撃へ向けて体制を整えていた赤影は、突然襲った重力の攻撃に武器を納める。
「貴様……」
「あなたをフリーにするほど、侮ってはいませんよ」
睨み合うアーニャと赤影が作る隙に、ミリムは小型の治療無人機を走らせた。
ドローンたちが前衛を警護するように周囲を舞い、傷を癒して守りを固める。
重なるダメージに肩で息をする青影に、ミリムは指を突きつけた。
「ケーキは女の子の味方。ケーキをダメにする忍者は私の……あ、いえいえ! ボクは男なのだ! とにかく! お前達はボクの敵だ!」
「ぬかせ!」
吠えるように叫んだ青影は、螺旋氷縛波を放った。
●
戦いは、終始ケルベロス達有利に進んだ。
各個撃破を目指したケルベロス達の攻撃に赤影は回復を図るも、焼け石に水。
青影は抵抗するが、ケルベロスを倒すには至らない。
ほどなく戦いは最終局面を迎えた。
瀕死の青影に、アーニャは大量のグラビティを集中させた。
「チェックメイトです……! 『時』よ! 止まれ! テロス・クロノス!」
膨大なグラビティを受けた青影の体が硬直する。
まるで時が止まったかのような青影との距離を一気に縮めたアーニャは、至近距離から全武装火器を構えた。
全砲門が同時に火を噴き、爆音が響き渡る。
煙が風に乗り消えた時、青影の姿はどこにもなかった。
一人になった赤影に、菊狸は亡霊を呼び出した。
「あとすこしだよ! 歌って 踊って! いつまでも、どこまでも!」
菊狸の巫術によって集められた死した魂が、刃となり赤影を切り裂き消える。
菊狸の攻撃に呼応するように、アレクセイはサジタリアスの矢をつがえた。
「我が愛の邪魔は、させませんよ」
優しい言の葉が紡がれ、星煌めくその一瞬。
放たれた英雄の矢が赤影を貫き、その場に縫いとめる。
胸を押さえた赤影は、ケルベロス達を睨みつけると無数の手裏剣を頭上で分裂させた。
「死ね!」
叫び声と共に放つ寸前、野鳩が動いた。
「撹乱物質散布……支援する」
ミサイルに乗せたインフェルノヘイズが味方上空で攪乱物質を撒き、赤影の感覚が事実を誤認させる。
降り注ぐ手裏剣を避けた恵は、一気に距離を詰めた。
「これで終わりだ」
冷静な声と共に放たれる斬撃が、赤影を袈裟懸けに切り裂く。
よろけた赤影の耳に、甘い恋物語が響いた。
「その瞬間、僕は恋に落ちた事を知った。そして、この気持ちから……もう、逃れられない事も」
和の意欲作が諳んじられ、一瞬意識をそちらに向けた赤影に、逃れられない恋の弾丸が撃ち込まれる。
大ダメージを受けた赤影に、雲蒸竜変の太刀が迫った。
「舞い散れ、氷華!」
氷の霊力を帯びた斬霊刀が、氷の華を描くかの如き乱舞と共に赤影を切り刻む。
何とか立ち上がった赤影の上空に、光が生まれた。
「オーライ、オーライ……ファイア!」
ミリムの合図で放たれた衛星軌道上からの魔力の奔流が、赤影を飲み込んでいく。
「パティシエは険しい道なのだ。半端に技術を得て殺そうというお前達には、到底真似などできないよ」
ミリムの声と共に、光が収束する。
名残の光が消えた時、そこには何も残ってはいなかった。
●
イートインスペースに通されたケルベロス達は、まず思い思いのお茶をオーダーした。
「ケーキの腕前を披露……でもやっぱり、プロのケーキが食べたいのだ」
手を挙げてケーキを注文するミリムに、アーニャはテーブルにケーキを置いた。
「これが私の、魂のケーキです!」
修行で作ったケーキを披露したアーニャのケーキに、市崎は感心したように頷いた。
「素晴らしいですね」
「ぜひ食べて、またアドバイスください! 更に腕に磨きをかけたいのです!」
「喜んで」
「このケーキ、すごく美味しいです!」
アーニャのケーキを食べた風花は、次のケーキ作りに想いを馳せた。
「次は苺に生クリームの、シンプルなケーキを作りたいな。教えてもらったこと、活かさなきゃ」
「月夜の珈琲、完成だ」
冷蔵庫から丸形ムースケーキを出した恵は、全員にケーキを配った。
月チョコと星ゼリーが乗り、金粉の輝きを添えられたムースケーキを受け取った恵は、嬉しそうにフォークを手に取った。
「えっへへ、いっただっきまーす。……ふおおおおおすっごい! 珈琲まみれ、だ……!」
幸せそうに頬張る和に頷いた恵は、ケーキを一口食べた。
「当然の仕上がりだ。親父の珈琲を使っているんだから不味い筈がねぇ」
「本当に、美味しいです」
感心したように頬張る市崎を振り返った恵は、一つ確認した。
「店主。今日作ったケーキを花鳥で出して良いか?」
「勿論です。良かったら、食べに行かせてください」
頷く市崎に、恵はケーキについて色々質問をした。
「こうして皆さんとケーキを食べるのも楽しいですね」
仲間のケーキを堪能しながらも、アレクセイの心は家で待つ彼の姫の下にあった。
より美味しいケーキを作り彼女を喜ばせたい。ケーキよりも甘く美味しい、あの笑顔を見せていただきたい。
「帰ったら姫にケーキを作ります。……きっと食べたがっているでしょう」
「甘みが体に染み渡るようだな」
ヘルメットを外して人型の顔を出した野鳩は、出されるケーキの美味しさにため息をついた。
「……菓子作り、せっかくなので挑戦してみようか。基本に忠実な出来になってしまうかもしれないが」
美味しいケーキを前に、ふと言葉が突いて出た。
そんな野鳩に、全員の注目が集まった。
「喜んでお教えしますよ」
「僕、次はちょうちょの飴細工とかできないかな……?」
「店は休みですし、材料もまだあります。よろしければ作ってみますか?」
「ありがとう、市崎!」
笑顔の菊狸に、厨房は再び賑やかさが戻っていった。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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