螺旋忍法帖防衛戦~アモクウェイブ・プランダー

作者:鹿崎シーカー

「みんなお疲れ様! キンボシだよ!」
 資料を持たぬ方の手で、跳鹿・穫はガッツポーズを繰り出した。
 先の拠点襲撃により、事件は大きな動きを見せた。
 攻略に向かった敵忍軍の内、月華衆は一連の騒動より退散し、魅咲忍軍、真理華道、銀山衆は拠点を制圧。司令官数名を討ち取ることにも成功している。
 そして今回、シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)と嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)の二名が撃破した司令官より『螺旋忍法帖』なる書類を入手したことにより、なんと日本中の忍軍が二人に刺客を送り出したのだ。
 螺旋忍法帖とは、螺旋帝の血族の血でしたためられる巻物であり、これを拝領して記された任を達成すれば惑星スパイラスに招聘され、一族郎党全てに最高栄誉たる『勅忍』の名が与えられるのだという。
 一度の御下命で勅忍となるのは忍軍ひとつ。しかし直接拝領せずとも、螺旋忍法帖を奪えば勅忍となるチャンスを得られると知った螺旋忍軍が、二人の持つ螺旋忍法帖を狙っているというわけだ。
 螺旋忍軍達は忍法帖の場所を把握でき、どこへ隠そうが探し当ててしまうだろう。だが、この忍法帖をエサにして、遅い来る螺旋忍軍を撃破すれば話は早い。螺旋忍法帖を持つ二人には石川県の金沢城、北海道の五稜郭を拠点とし、皆にはここで迎撃戦をしてほしいのだ。
 そして今回、皆にはシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が待機する金沢城に向かい、強敵マスター・テングを迎撃してもらう。
 既に知っている者もいるだろうが、彼は螺旋忍軍大戦に参加した一派『テング党』の首魁。あらゆる武術を身につけたタツジンであり、何より強者との闘いを好む。そんな彼は、彼自身がオテマエを認めて部下とした末端構成員、『シタッパ・テングス』の三人を連れて強襲してくるというのだ。
 マスター・テングはその卓越した力と修めた武術をフル活用した肉弾戦を得意とし、シタッパ・テングスは分銅付き鎖鎌を用いた高速戦闘を専門とする。正義のケルベロス忍軍の折り、多くの戦力が必要だとされた実力は並のものではない。下手をすれば敗北も有り得る危険な相手だ。
 もし、皆が敗北してしまうと、残った敵は本陣の螺旋忍法帖を守るチームを襲う。全作戦のうち、敗北したのが一チームだけならなんとかなるかもしれないが、複数チームが敗北すれば螺旋忍法帖を守り切れないかもしれない。
 また、勝っても敵の誰かに突破されれば、突破した配下は本陣に攻撃を仕掛けてしまう。できるだけ突破させずに全て撃破してほしい。
「ここで忍法帖を守り切れば、螺旋忍軍のあれこれもようやくわかるかも! 頼むよ、正義のケルベロス忍軍!」


参加者
レーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565)
光下・三里(水も滴るマジ天使・e00888)
太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・e01868)
山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625)
ソル・ブライン(橙赤の鉄機兵・e17430)
カティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)
レオーネ・パンタシア(赤にして鮮血・e24906)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)

■リプレイ

「バクソ・バイク! イヤーッ!」
「避けいッ!」
『イヤーッ!』
 バックジャンプ回避した四人の前で地面が爆発! 派手に噴き上がる土煙をにらみ鎖鎌をほどくシタッパ・テングスの隣、マスター・テングは不敵な笑みでカラテを構えた。煙から脱したソル・ブライン(橙赤の鉄機兵・e17430)は秘密暗号を叫ぶ!
「クセモノダーッ!」
『イヤーッ!』
 カラフル爆風が土煙を吹き飛ばす。花弁混じりの暴風に乗りレオーネ・パンタシア(赤にして鮮血・e24906)とロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)が突っ込んだ! 紫のボディスーツがマッポ制服に変化し、チェーンソーがうなりを上げる。マスター・テングは二人を着地ダッシュで迎え撃つ!
『イヤーッ!』
 テングの拳が警棒と刃を破壊しV字開脚ジャンプが二人を蹴った! 顔面を打たれ跳ね飛ぶ二人!
「ンアーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
 二人を越える緑ツナギ装束の影! だがマスター・テングに飛び蹴りを仕掛ける猫フルフェイスアニマルメンポの山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625)の腹を二つの分銅鎖が打った!
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
 大地を転がるビートの頭上でマスター・テングが片足を上げる。ナムサン! 早くもカイシャクの構え! そこへレーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565)が跳躍。マスター・テングは足裏を彼女に向け、投槍めいて飛翔した!
「イヤーッ!」
「イ、ンアーッ!」
 急降下キックにパンチを弾かれ、地面をバウンドするレーチカ。三度着地したマスター・テングの真横を超ロングジャックのスマホが通過し、ビートを巻き取り円弧を描いて光下・三里(水も滴るマジ天使・e00888)に引き寄せた。
 距離はタタミ約五枚半。仲間にヨモギを生やすカティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)の隣で、太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・e01868)が腕のホロパネルに札を並べる。渦巻く光の風を興味ぶかげに眺め、マスター・テングはアイサツした。
「ドーモ初めまして。テング党首魁、マスター・テングです。こちらは、シタッパ・テングスです」
 ソルに続き、レオーネ、カティス、ビート、ロージー、三里、千枝の順でアイサツを返す。
「ドーモ、テング党の皆さん。クリムゾンブレイドです」
「インジャスティスです」
「カルビンサイクルです」
「アドレセンスです」
「シャッターチャンスです」
「クワイアーです」
「マジテンシです」
「リコシェットです」
 イクサに臨むニンジャにとって、アイサツは神聖不可侵の行為。古事記にも書かれている。頭を上げたマスター・テングは期待の笑みで白ひげをなでた。
「ほう……早い出迎えだ。城まで待つかと思ったぞ」
「そんなことはありませんわ?」
 両手でスマホを操る三里が不敵な笑顔で言い返す。
「此処に集いし八人は、ケルベロス・ニンジャクランのヤバイ級ニンジャ! わたくし達全員を倒さねば、ラセン・ニンポチョは手に入らないですのよーぅ!」
「よもやこの程度の試練、避けようとはするまい?」
「最も避けようとするならば……その背を撃つだけですが」
 マッポ制服を捨てたレオーネと、銃剣を手にした千枝。テング党はカラテを構えた。
「成る程。いわばタイガー・ダンジョン・クエスト。お前達が虎の子を守るタイガーというわけか」
「まあ、そういうことだ」
 続き口上を上げるソルとレーチカ!
「ラセン・ニンポチョが欲しければ、マジテンシ=サンの言う通り俺達とカラテし打ち倒して行くがいい!」
「優秀なシノビメイツに討たれるなら本望でしょ? 安心してアノヨに行くがいいわッ!」
「グワハハハハハ!」
 マスター・テングの高笑いが、八人の肌を逆立てた。強烈な重圧と、恐るべき威圧アトモスフィア。周囲に爆発寸前のカラテがみなぎる!
「ならばお望み通り遊んでやろう。丁度暇であった故!」
「悪しきニンジャ滅ぶべし。我がジャスティス・ニンポでオヌシ達を滅ぼしてやろう!」
 言い放ったレオーネが一瞬にして弓兵に変身。フシギ! 隣でカタナを抜き放ったビートは檄を飛ばした。
「大丈夫、なんとかなるさ! シマッテコーゼ!」
 鋭くカタナを一閃し、叫ぶ。マスター・テングは、手の平を上向け指先を動かした。
「来い、ワッパ共!」
「イヤーッ!」
 ロージーの八門砲台が同時に火を噴く! 爆発する敵陣営にカティスは翡翠色の拳銃乱射。火線を背後にソルとビートが特攻を仕掛けた!
「ライダ・キャク! イヤーッ!」
「ヒサツ・ワザ! イイイイヤアアアアアアアアッ!」
 爆炎に突っ込む蹴りと風雪の刃! 直後爆炎からシタッパ達が飛び出し、鎌を回して投げつけた!
『イヤーッ!』
「イヤーッ!」
 鎌を千枝が銃撃で弾く。煙から現れたマスター・テングは、飛び蹴りとカタナをガード! 蹴り足と剣持つ手をつかみ、バク転めいて後ろに投げた!
「イヤーッ!」
『グワーッ!』
 千枝がスプリントして迫る! 二丁をリロードして足元を銃撃、加速!
「篁流武術……太田千枝、参ります! イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 飛び膝蹴りをマスター・テングはブリッジ回避! だが千枝は虚空を撃って反動回し蹴りを繰り出した。タツジン! だがマスター・テングの後ろ回し蹴りと交錯、吹き飛ばされる!
「ンアーッ!」
「マジテンシ=サン! シタッパを!」
「ヨロコンデーッ!」
 駆けだすレーチカ後ろで三里は両手を突き上げた。手の上に透明な光が球状に収束!
「タイム・インヒビション・ジツ! イヤーッ!」
 光が爆発! 透明な円が戦場を、シタッパを、マスター・テングを包み込む。彼らはその場で絵画めいて動きを止めた。そしてレーチカは拳を握り一気に接近!
「イヤーッ!」
 寸前、マスター・テングの体がぶれた。振り抜かれた裏拳がレーチカの頬を撃ち抜く!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!?」
 空に飛ぶレーチカ! 空中衝突したシタッパの硬直が解けるのを見た三里が目をむく。
「バカナーッ!? なんで動けるんですのッ!?」
「カラテだ。 ……ム?」
 言い返すマスター・テングにレオーネが弓引く。発射の寸前、弦を飛び来る鎌が切断。解放されたシタッパは分銅鎖で仲間を打って同じく解放! 三人は地に降り走る。狙いはロージーとカティスだ!
「ナメた真似しやがって……カラテの差を見せてやる! イヤーッ!」
「そう簡単にいくかな!? イヤーッ!」
 投げ放たれた鎌を撃ち落としたカティスはリボルバーを連射! 緑の光線を鎌を振り回して防御する彼らの後ろで、ビハンドのタマオキナがマスター・テングに手をかざす! 超自然のツタに縛られた彼に再度ソルが飛びかかった!
「ゲキ・トツ・ケンッ! イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 ツタを千切りマスター・テングはソルの拳をパンチ迎撃! 飛び出す爪に拳を傷つけられるもローキックで右足粉砕!
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
 千枝のホロパネルから吹いた風がソルの片足を軸に渦巻く。その隙にマスター・テングは拳を突きだした!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
『イヤーッ!』
 くの字になり飛ぶソルに替わり空からレーチカ、大地にビート! 横薙ぎイアイアド斬撃をブリッジ回避しガラス靴キックを止めた腹からレーチカは再跳躍。足があったところへビートは青黒液でカタナを振った!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 腹を斬られつつも屈んだマスター・テングは宙返り!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 あごを蹴られたビートが宙を舞う。あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック! 追って跳んだマスター・テングは強力チョップ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 千枝が札を並び替えて新たな風を巻き起こす。噴き上がる風はビートをさらい、その下のソルに光を当てた。大剣の切っ先に橙色の光!
「バンパー・ガン! イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 オレンジレーザーをパンチで弾いた背中にレーチカのブロー!
「グワーッ!」
「今のワザには、何点もらえるかしら!?」
 突き刺さった拳が後ろ手につかまれる。肩越しに向けられる、テング・オメーンの無表情!
「十点だ。イヤーッ!」
「ンアーッ!」
 ナムアミダブツ! 手首粉砕! そこへマスター・テングの後ろ回し蹴り!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
 高速落下し地にぶつかるレーチカ。その近くで鎖鎌を振り回すシタッパにロージーはナパーム弾を連続投下!
『イヤーッ!』
 無数のナパームを自在に飛ぶ鎌と分銅が撃ち落とす。火の粉を浴びる真横からジュー・ウェアのレオーネが飛んで蹴る!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
 レオーネ後頭部に鎌を振るシタッパをカティスが銃撃!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 血を流す銃痕にカティスは光る指で軌跡を描いた。傷に埋まった弾丸に、暖かな光が注ぐ。
「オーキクナーレ!」
 その時、おお、なんたることか。傷から生えたアサガオがシタッパを締め上げ花を咲かせたではないか! 縛られ苦悶するシタッパに騎士鎧姿のレオーネがカタナを袈裟掛けに斬る!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 斜めに飛ぶシタッパ! だがカティスとレオーネの首に分銅鎖が巻き付く。それぞれを捕らえたシタッパ達は二人を引き寄せ、背中を鎌で斬り開いた!
『イヤーッ!』
『ンアーッ!』
 黒ニンジャ装束を鮮血が染める。カティスを捕らえた方の片足を絡めるスマホジャック。三里は思い切りジャックを引っ張り、燃えるもう片方スマホを投げた。スマホカラテ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 命中と同時、絡んだスマホの画面が光を放ちカティスを癒やす。そして響くロージーのポップな歌声。
「ほら見て、僕らの生きる世界は、こんなにも輝いていて綺麗!」
 歌を聞いたレオーネは騎士鎧を脱いで拘束を抜け、下から戦斧を回りながら斬り上げた。シタッパはすんでのバック!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 血が噴き出すも傷は浅い! そしてロージーとカティスが援護に回ろうとした、その時である!
「イヤーッ!」
『グワーッ!』
『ンアーッ!』
 マスターに対していた四人が突如飛来! シタッパ二人が縛られた一人を抱えて後退。彼らの隣に来たマスター・テングはミミックとビハインドを握り潰した。青みがかった灰の炎に包まれ燃え散る二体を投げ捨て、彼は首を鳴らした。
「大事ないか」
「ハイ! まだやれます!」
 返答するシタッパ達に、マスター・テングはうなずき返す。裸体はあちこち傷ついているが、平然としていた。むしろ彼と対した四人の方が被害は大きい。
「フン、期待外れ」
「なんだって……」
 ふらつきながらビートが返す。半分破けたアニマルメンポからのぞく表情は、険しい。ダメージが実際大きいのだ。
「期待以下だと言うておる。お前達など、せいぜいシタッパ・テングスを撃破できるかどうかというもの。その程度の力で、よくぞ大口をたたけたものよ」
 ゆっくり歩み寄ってくる彼に、レオーネはジゴクめいて燃える大斧を掲げた。
「その程度? シタッパを三人も引き連れておいてよく吹くのう? オヌシのような者では、ラセン・ニンポチョを手にしたところでただの木偶になるのがオチよ! 一人では何もできぬサンシタめが!」
 マスター・テングが歩みを止めた。彼我の距離はタタミ三枚。
「その言葉、そっくりそのままくれてやろう」
 そう言って、マスター・テングは中腰姿勢をとり上半身を百八十度近くひねった。震えはじめる握り拳に、カラテが陽炎めいて立ち上る。千枝はホロパネル上の呪符を変更。
「桜花、満月、春風。『夜半の嵐』……!」
 吹き荒れる夜桜の風に混じって、カティスがヨモギの葉を放つ。
「いかなるジツを持とうとも、カラテが無くば実際無意味。ままならんのォ」
「どうでしょうかね? わたくし、この戦いが終わったら香林坊で三作せんべい買って帰る予定ですので!」
 スマホを操作し、三里は口角を吊り上げる。不可思議なオーロラに包まれた八人は、覚悟の構えだ。マスター・テングは冷たくにらむ!
「ならば、来いッ!」
「イヤーッ!」
 ロージーが放つレーザーの中をソルはジェット噴射して駆け抜ける! 剣の翼にビート、レオーネ、レーチカを乗せて!
「バクソ・バイク! イヤーッ!」
 瞬間加速した彼を蹴って三人が飛んだ。拳、二刀、斧が完璧なタイミングで振り下ろされ、翁の頭を割らんとす!
『イィヤアアアアアアアッ!』
 対してマスター・テングは全力の正拳突きを解き放つ! 地面に向かって!
「イヤアアアアアアアアアアアアッ!」
 拳が地面を圧し潰す。直後!
『グワーッ!?』
 大爆轟! 激甚な衝撃が大嵐を巻き起こす。半透明の竜巻が天へと昇り、空の雲を消し去った。ナムアミダブツ! なんたる自然災害めいた破壊の奔流か!
 慌ててバク転したシタッパ達が目にしたものは、巨大なクレーターとその中心に立つ師の姿!
 ゴウランガ……歴戦のケルベロスの方ならば、この事態を理解できたはずである。彼は体内で練り上げたカラテを正拳と共に解放。カラテ衝撃波として放出したのだ。
 クレーター横壁には四人がハリツケめいて打ちこまれ、装束は爪痕じみた傷跡を作ってボロボロ。はがれるようにして倒れたカティスと三里の翼はへし折れている。ワンテンポ遅れ、飛びかかった四人がクレーター外に落下した。死んではいないが、傷は深い。
「うーッ……ガーデン・ジツ……!」
 どうにか身を起こしたカティスが銃に種子を装填していく。クレーター端に吹き始める暖かな風を受け、ケルベロス達がぎこちない動きで立ち上がる。傷が仮初にふさがれていき、流れ出ていく血を止めた。その目には、今だ燃え尽きぬ闘志!
「まだ立つか。大人しく死に振りしておれば良いものを……目障りだ」
 平淡な声で吐き捨てたマスター・テングは背を向けた。涼しい顔でクレーターを飛び出し、シタッパの前に着地する。
「退くぞ」
「ハイ……えッ? でも、ニンポチョは……」
「あれなら手元にひとつある。二つあっても良いが……興が冷めたわ」
 鎖鎌を手に持ったまま、シタッパが先を歩く師を追いかける。
「では、カイシャクは」
「いらん。殺す価値もなし」
 シタッパの間を過ぎていく。三人のうち一人が、慄きながら問いかけた。
「あの、マスター・テング=サン。まさか……今の、加減を……?」
 師は配下を見ると、冷たく答える。
「二度も言わすな。殺す価値なし」
「アッハイ」
 乾いた返事を残し、彼らは師の背中に続く。膝を突いたレーチカは、歯を食いしばり、叫んだ。
「うーっ……つ、次はこうはいかないんだから! オボエテローッ!」
 マスター・テングが足を止め、肩越しに振り向く。不機嫌そうに曲がる口元を、淡々と動かした。
「負け犬が、よう吠えよるわ」
 短い侮蔑の言葉を残し、彼らは再び歩き去る。もはや一瞥すらしないまま、マスター・テングはその場を去った。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 4/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。