
●某教会
「俺には、どうしても納得できない事がある。それは好きになった子が、たまたま幼かっただけなのに、ロリコンと言われる事だ! 別に俺は幼女が好きな訳ではないッ! 幼女だから好きになったわけでもないッ! それなのに、世間の奴らは何も分かっていない。いや、分かろうとしていないッ! 俺が何か悪い事をしたか? いや、何もしていない! する訳がないんだ、何ひとつ! ただひとつ問題があるとしたら、それは世間だ! 世の中が悪いッ!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、信者達は興奮した様子で、『そうだ、そうだ』と連呼した。
●都内某所
「阿久根・麻実(売星奴の娘・e28581)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、信者達はビルシャナよりも、ヤバイ思想を持っているので注意しておく必要があります。なお、信者達の生死は成否判定には影響しません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() 若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506) |
![]() 原・ハウスィ(天に還ろう・e11724) |
![]() ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467) |
![]() 藤堂・水蓮(運否天賦・e25858) |
![]() 阿久根・麻実(売星奴の娘・e28581) |
![]() 神桜木・光理(雷光剣理・e36081) |
![]() エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308) |
![]() エル・カーチス(冷徹の暗殺者・e37520) |
●教会前
「好きな子が、たまたま幼かっただけ……ですか」
藤堂・水蓮(運否天賦・e25858)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている教会の前に立っていた。
ビルシャナは好きな子がたまたま幼かっただけなのだから、例え相手が未成年であってもまったく問題がないと訴えているようだ。
「あー、いますよね。こういう人達。インターネット上の生き物だと思っていたんですが、リアルでもいるんですねぇ」
神桜木・光理(雷光剣理・e36081)が、しみじみとした表情を浮かべる。
ある意味、珍獣を見たような感覚に陥っているものの、意外と多く存在しているのかも知れない。
「彼等の本心が愛情なのか欲情なのかは分かりかねますが、どちらにしても年端の行かない無垢な少女には近づけたくない存在ですね」
エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)が、警戒心をあらわにした。
彼らからすれば、純粋な気持ちなのかも知れないが、己の欲望を満たす事無く、綺麗な関係を続けていこうという訳ではなさそうだ。
「それに、恋はいいけど犯罪はダメなんだ!」
原・ハウスィ(天に還ろう・e11724)もビルシャナ達の真意を察し、腹を立てた様子で言い放つ。
おそらく、ビルシャナ達は自分の行為を正当化するため、こんな事を言っているだけだろう。
「まあ、我々ドワーフとしてはこの問題って地味に一生付いて回ることなんですけどね」
阿久根・麻実(売星奴の娘・e28581)が、頭に手を当てながら悩む。
生まれながらにして合法ロリが義務付けられている種族としては、実に頭が痛い問題だった。
「はぁ~、憂鬱……」
ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)がゲンナリした様子で、深い溜息を漏らす。
前回参加した作戦でメンバーの半数以上が重症や行方不明という散々な結果だったせいか、いつもと比べてご機嫌斜めなようだ。
「……では、私は信者を増やさないために信者の妨害をやります。皆さんはどうしますか?」
そんな中、エル・カーチス(冷徹の暗殺者・e37520)が、仲間達に対して声を掛ける。
「とりあえず、これでかなり年下に見えるはずです」
そう言って若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が、白の甘ロリワンピ姿で教会に入っていくのであった。
●教会内
「いいか、お前らっ! 自分を恥じるなッ! 誇りを持て! 何も後ろめたい事をしていないのだから、罪に感じる必要はないッ!」
教会の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を力強く語っていた。
「……どうやら、開き直っているようですね」
水蓮がビルシャナ達に生暖かい視線を送る。
おそらく、そう思う事で自分達が間違っていない事を証明したいのだろう。
それが単なる思い込みである事を認めず、自分にとって都合よく考えているのだから、余計に救いようがない。
「あの……一言言っていいですか! 幼い子を好きになったのが気持ち悪い……じゃなくて! そこで開き直る根性が悪いんですよ! なんでもっと紳士的な気持ちと態度で対応できないんですか!」
そんな中、光理がビルシャナ達を叱りつけた。
「俺達の根性が悪い……だと!? そんな訳がないだろ! 俺達は紳士ッ! 何から何まで紳士そのものだあああああああ!」
それでも、ビルシャナは非を認めず、自分達の正当性を訴えた。
まわりにいた信者達も、『俺達ほどマトモな紳士はいないッ!』と言って、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ある程度、恋愛は自由だけど、いろいろな都合で定められたルールっていうものがあるんだ! それを無視したら色々な意味でNGだよ! YESロリータ、NOタッチ!!」
それでも、ハウスィは怯む事なく、ビルシャナ達に言い放つ。
「俺達はロリコンじゃないッ! ただ、相手がたまたま幼かっただけだ!」
小太りの男性信者が、ムッとした様子で言い返す。
どんな事があっても、自分がロリコンであるとは認めたくないらしく、自分達が常識人である事を強調しているようだった。
「それ以前に、幼女を好きになる時点で犯罪ですよね? たまたまでも」
エルが殺界形成を使った後、冷たい目でビルシャナ達を罵った。
「そ、そんなモノ、世間の奴らが勝手に決めた事だ! 俺達が悪いんじゃないッ! 世間が悪いッ!」
強面の男性信者が、逆切れ気味に叫ぶ。
まわりにいた信者達も、『そうだ、そうだ!』と連呼した。
「悪いのは世間じゃありません、犯罪者です。自衛手段を持たない子供達を犯罪から守るために法があり、世間も子供を狙う人犯罪者かもと疑わずにはいられなくなったのです。貴方が本当にその子を愛しているのならば、そう言った子どもを守る世間と協力し、その子の事を守ってあげるべきでしょう。それとも、自身の欲望の為に世間帯に背き、その子を世間から逸脱させ、親御さんに迷惑をかける事が正しいとでも? 本当に愛しているのならば、そんな不幸を招かぬように適齢期まで待つ事だって出来るはずです……それが出来ないとなると、やっぱり只のロリコン野郎じゃないですか?」
麻実が嫌悪感をあらわにしながら、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「そんな事……分かっている! だが、『そんなに待てないッ!』なんて言われたら、こっちだって……その……分かるだろ?」
帽子を被った男性信者が、激しく目を泳がせた。
「両想いなら、こんな所でビルシャナと連むべきではないと思います。それとも、人類の敵であるデウスエクスと連んでいる事が、彼女の為になると思っているのですか? それこそ、彼女の幼さ以上に大きい問題ですよ。彼女の事を大切に想うのなら、今ここで貴方達が何をしているのか自覚してください」
エレスが真剣な表情を浮かべ、信者達に訴えかけた。
「そ、それは……その……」
眼鏡を掛けた男性信者が、動揺した様子で視線を逸らす。
「あの……ちょっと、質問があるのですが……。あなた方って女の人を幼女かババアで分類しますよね? 私って背が低いじゃないですか? やっぱり幼く見えます?」
ティがケルベロスチェインでビルシャナをグルグル巻きにして、ビルシャナの頭をガツンと踏みつけた。
「な、何が言いたい。意味が全く分からないんだが……」
ビルシャナが脂汗を流しながら、答えを先延ばしにしようとした。
この様子では、何となくわかっているのだろう。
どちらの答えであっても、最悪の結末でしかないと……。
信者達も何となくそれが分かったのか、ドン引きモード。
みんな怯えた様子で、ガタブルと震えている。
「おにいちゃ~ん、本物には劣りますけどぉ、めぐみあいてならぁ、それほどもんだいにならないんですけどぉだめですかぁ?」
そんな中、めぐみが上目遣いで身体をモジモジさせ、ラブフェロモンを使う。
信者達も、それが助かる唯一の手段と言わんばかりに、その誘いに乗るのであった。
●ビルシャナ
「ま、まさか、お前ら……俺を裏切るのか! ち、畜生、マジか! ここまで一緒に頑張って来たと言うのに……」
ビルシャナが信じられない様子で、ビルシャナ達をジロリと睨む。
「だって、そうしないと俺達まで……」
ボサボサ頭の男性信者が、涙目になって叫ぶ。
まわりにいた信者達も、痛い思いをしたくないのか、ビルシャナに味方をする気はないようだ。
「何も罪に感じる必要はありません。これが正しい選択なのですから……」
エレスが戸惑う信者達を励ました。
「畜生ッ! 畜生ッ! 畜生ッ! こんなトコロで、俺の野望が潰えてしまうとは……!」
ビルシャナが頭を踏まれたまま、悔しそうに身体を震わせた。
「それにしても、ひよこ萌とは……本当に救いようがないですね。鶏の幼子って、ひよこですよね? ド変態」
めぐみがビルシャナに生暖かい視線を送る。
「……やっぱ、ただのクズ野郎ですか……」
麻実も蔑んだ目で、ビルシャナを睨む。
「お、お前ら、何か誤解をしているようだが、俺は鳥じゃねぇからッ! だから、ひよこを捕まえてあんな事とか、こんな事とかしねぇから!」
ビルシャナが妙な危機感を覚え、必死になって無実を晴らそうとした。
しかし、辺りには冷ややかな空気が漂っており、言い訳無用な感じである。
「ちなみにこれはパイルバンカー。新しく支給してもらった武器ですが、まだ扱いが難しくって……」
すぐさま、ティがビルシャナの前に、パイルパンカーをズトンと置く。
「あ、先に警告しておきますけど、質問に答えなかったらコロス。上を向いてスカートの中を覗こうとしてもコロス。さあ、がんばって答えてください。私って幼女? それともババア? まあ、どっちの答えでもコロスけどね」
ティがビルシャナを見つめて、ニッコリと笑う。
「つーか、どっちにしても、ヤる気じゃねーか!」
ビルシャナが涙目になってティを振り払い、這うようにして逃げていく。
「……逃がさないよッ!」
それに気づいたハウスィが、情け容赦なくグーパンチ!
「撃ち、貫き、斬り……いつなん時も殺めることをやめず、我が生涯、暗殺という二文字に彩られる」
次の瞬間、エルがバスターライフルを構え、ビルシャナの急所を撃ち抜いて、トドメをさした。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
その一撃を食らったビルシャナが急所から大量の血を撒き散らし、血溜まりの中に沈んでいった。
「……何だか夢に出そうな死に様でしたね」
水蓮がビルシャナの死を確認した後、やれやれと言わんばかりに首を振る。
「……とは言え、このまま信者達を野放しにも出来ませんね」
光理が信者達を見つめて、複雑な気持ちになった。
例え、両思いであったとしても、見て見ぬフリは出来ないレベル。
そう言った意味でも、何らかの手を打っておく必要があるだろう。
「えっと、めぐみなら世間的に問題もないですので、よかったら、また会いに来てください」
そんな中、めぐみが信者達に声を掛け、アイドル活動時の名刺を配るのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年6月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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