ローカスト調査隊~奥の山に眠る巣

作者:幾夜緋琉

●ローカスト調査隊~奥の山に眠る巣
 ここ数ヶ月、ローカストの動きが全く無い……。
 その事から、ローカストはコギトエルゴスム化した状態で休眠していると推測できる。
 と、この説を提唱した春撫に賛同した多くのケルベロスが、ローカストの足跡を追った。
 その結果、この飛騨山脈の奥地に、ローカストがコギトエルゴスム化して隠れているのではという事を突き止めたのである。
 そして、飛騨山脈を虱潰しに調査したケルベロス達は、飛騨山脈の奥地に巧妙に隠された、ローカストの秘密基地を発見したのだ。
 ローカストがコギトエルゴスム化しているという説を証明するように、ローカストの秘密基地は、ひっそりとしており動くものの気配も無い。
「ローカストのコギトエルゴスムを集めて持ち帰る事ができれば、ヴァルキュリアのように仲間にする事ができるかもしれないですよね」
 と、春撫の言葉に頷く調査隊の面々。
 入り口から地下に続く長い螺旋の通路を抜けたケルベロス達は、地下深くで大きな空間に出る。
 その空間は直径数百メートルの半球状で、壁一面に丁度コギトエルゴスムが収納できるような小さなくぼみがつけられている。
 そして中央部には、謎の装置のようなものが僅かながら動いていた。
 ただそれだけの空間……しかし、まるで大聖堂の遺跡のような荘厳な雰囲気を感じるケルベロス達。
 まず、中央の装置を確認していたケルベロス達は、
「詳しいことは判らないが、おそらく、微量のグラビティ・チェインを集積してコギトエルゴスム化したローカストを蘇らせる為のものでは無いのかな」
「もっとも、自然界のグラビティ・チェインが必要量に揃うには数万年以上かかると思うが……」
「デウスエクスは不死といっても、気の長い話だ」
「昆虫が蛹の姿で冬を越えるように、コギトエルゴスムとなって数万年後の未来に希望を託したのかもしれないな」
 といった推測をたてる。
 一方、壁に駆け寄ったケルベロスは……驚きの声をあげる事になる。
「コギトエルゴスムがありません! いえ、これは、コギトエルゴスムが破壊されています」
 その声に、慌てて、窪みを調べ始める調査隊のケルベロス達。
 その結果、殆どのコギトエルゴスムが窪みの中で崩れ去っている事が判明した。
「デウスエクスは不死では無かったのか? コギトエルゴスムが自然に崩れるなんてありえるのか?」
 そういう疑問の声があがるが。
「おそらくですが、コギトエルゴスム化した時には既に定命化が始まっていたのでしょう。そして、コギトエルゴスムのまま定命化した事で、コギトエルゴスムが崩壊したと考えれば、辻褄が合います」
 という意見が出て、なるほどと納得する。
 そして……。
「そんな事を言っている場合じゃないですよね。急いで無事なコギトエルゴスムを探しましょう」
 といった掛け声と共に、ケルベロス達が無事なコギトエルゴスムを探そうと壁の捜索をはじめたのである。
 そして、無事なコギトエルゴスムを探そうと動き出すケルベロス達。
 ……しかし、動き出したのは、ケルベロスだけでは無かった。
 突如として、中央の装置が震動を始め……集められていたグラビティ・チェインが放出され、爆散してしまう。
 そして、その装置により蘇生させられたローカスト達は……これが、生き延びる為の、最後のチャンスである事を、暗に理解。
 そして、目の前に立つケルベロス達に、虚ろな視線を向けながら。
『グラビティ・チェイン……だ』
『アレを喰らえば、生きノビられる……』
『……グラビティ・チェインを喰らエ。そして、ヒトを襲い、憎マレキョゼツサレるのだ』
『ソウダ。ワレらが生き延ビル術は、他ニ無イ……!!」
 と、ローカスト達は口々にそう言うと、一斉にケルベロス達へと襲いかかり始める。
 その一方、ケルベロス達……。
「! ローカストに囲まれただと!」
「こ、このままでは……」
「みんな! 傍に居る仲間同士で固まれ! 一人で居れば危ない!」
「そうよ。固まって、ローカストを迎撃するんだ!」
「このローカスト達……グラビティ・チェインが枯渇して、定命化も末期状態だろう……話し合いでなんとかするのは、ほぼ無理だろう」
「ちっ……仕方ねえ!」
 と舌打ちをしつつ、ケルベロス達は、ローカストの迎撃態勢を整えるのであった。


参加者
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
スレイル・フォート(決まった称号・e04803)
坂口・獅郎(烈焔獅・e09062)
磯野・小東子(球に願いを・e16878)
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)
ユグゴト・ツァン(凹凸普遍な腦真凍・e23397)
六壬・千那(六壬エンチャンター・e35994)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)

■リプレイ

●命の欠片
「っ……!!」
 初っ端の一撃を、どうにか抑える雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)。
 半ば狂いしローカスト、その一種、『傭蜂集団』ガンナー兵が、ケルベロス達の前へと立ち塞がる。
 ローカスト達に、ユグゴト・ツァン(凹凸普遍な腦真凍・e23397)が。
「蟲の行進、否、停滞か。廃類だ」
 と呟くと、ローカストは。
『グゥゥ……グラビティ・チェイン……』
『アレを喰らえば、生きノビられる……ゾ……!!』
 ……と、グラビティ・チェインの前に、血走る眼。
 既に狂気を孕んだ具合のローカスト……かなりの悲壮感が漂い、傍から見ても……惨めな風体に見える。
 そんなローカストを助けたい、という気持ちもあるのだが……ローカストは、ウウ、ウウウウ……と唸り声を上げて、ジリジリとケルベロス達に躙り寄ってくる。
「君らがこの星を餌場としてでは無く、新しい故郷として見てくれたのであれば、私たちには迎える準備もあるのに……暗黒何かじゃないと太陽と自然の恵みのあるこの星で、共に在れる事は不可能なの?」
 と六壬・千那(六壬エンチャンター・e35994)が訴えかけるが、ローカストは。
『……グラビティ・チェインを喰らエ。そして、ヒトを襲い、憎マレキョゼツサレるのだ!!」
『ソウダ。ワレらが生きノビル術は、他ニ無イ……!!』
 と、ケルベロス達の言葉を全く聞く気配も無い。
 そんなローカストにスレイル・フォート(決まった称号・e04803)とマティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)が。
「同じように飯が食えて美味いもんで笑えるなら分かり合える、って言いたいとこだったんだが……どうしようもなさそうだな、こりゃ」
「ああ。どうにか助けたいという願いは強い。だが……彼らにもはや、その願いは通じそうにないと推測する。ならばせめて、一気に倒して安らかな永眠というものを」
 と、マティアスの言葉に、スレイルが。
「……お前達に個人的な因縁はないが……俺も死にたくはないんだ。待っている奴がいるんでね」
 と言うと、峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)と磯野・小東子(球に願いを・e16878)も。
「地球の一員になる気も、黙っている気も無いんだね。なら、どっちかが終わるまでの生存競争だよ。グラビティ・チェインは奪わせない」
「そうだね。こんな風に顔を合せたくはなかったけど……仕方ないね……! 戦うために探しに来たわけじゃ、なかったんだけどな……でも、今はどうしようもないさね。とにかく、生き延びないと。今回も頼むよ、いくら!」
 小東子の言葉に、狂気をぶんぶんと振り回して応えるいくら、そして。
「我等の反映に必要ならば説得を。不必要ならば殲滅を。利益だけが要と思考。されど他者の意見を優先すべき。可能ならば摘出を。奴等に脳が在るのか、不明だがな。貴様の脳、思考を寄越せ、蟲どもよ」
 とユグゴトの言葉に、真也、坂口・獅郎(烈焔獅・e09062)も。
「そうだな。調査とは言えそう簡単には返してくれないか。なら、殲滅するまでだ」
「ああ。まだ生き残りがいるっつったって、説得してる時間もアイディアもねえ! さっさと片付けて、他の奴等を助けに行こうぜ!」
 と気合いを入れ、真也は魔剣二振りを召喚、両手へ構えると、ユグゴトも灰色の地獄の冷気を纏い、対峙する。
 そんなケルベロス達に対し、ローカストはウウウ、と唸り声を上げて、その身体の両サイドの銃倉から弾を次々と発射する。
 その連射攻撃を、身を呈しカバーリングするはマティアス、千那、そして彼女のテレビウムの矢星。
 ……一撃一撃はそこまで強烈ではない。
 が、質より量と言わんが如く、連射攻撃で以てケルベロス達の体力をガリガリと削り取る。
「……被ダメージ想定内。問題無い」
 とマティアスの言葉に対し、千那は。
「君だって少しでもこの星が綺麗だと思ったことはあるだろう!? 君達が同胞を想い行動出来る種族なら、ボク達とだってわかり合える筈だ! 支配者はもう居ないんだよ!!」
 強い口調で、ローカストに語りかける……が、ローカスト達は、全く聞く耳を持っていない。
 そして、削られた体力をすぐに恵が。
「13・59・3713接続。再現、【聖なる風】」
 と『余剰魔術回路部分開放・浄化』で纏めてキュアを飛ばし、体力と戦線の維持。
 そして、一通りローカストの攻撃が一巡し、対するケルベロス達の攻撃。
 取りあえず、一番前へと進み出ているローカストに、スレイルが。
「元々ただの歩き方だが、我流の混ぜ物がどんなもんか味わっていけよ」
 と『夢幻胡蝶流《胡蝶歩・濫禍》』でパラライズを付与する一方、獅郎が。
「お前等とはやりとうなかったぜ!」
 と『正拳・獅炎掌』で殴りつけると、スナイパーの小東子。
「こんな状態で話を聞いて欲しいだなんて、文字通り虫が良すぎるのは分かってるよ……でも……いや、今はどうしようもない事を考えてもしょうがないね……! いくら、いくよ!」
 と指示を与えながら、小東子がスターゲイザーで攻撃すると、更にいくらもテレビフラッシュで応戦。
 そして、クラッシャーのユグゴトと真也が続き。
「我等は仔山羊。黒山羊の祝福を受けた、繁栄の象徴で在る。邪な母は千を孕み、千を貪る巨体成り。観よ。有象無象が帰還する。潰れて砕けろ」
 と『千なる存在の生贄を!』を飛ばしホーミングの一撃を飛ばすと、真也も死天剣戟陣で武器封じ。
 更にディフェンダーのマティアス、矢星、そして千那が。
「攻撃軌道……計算完了。攻撃フェーズに移行、プログラム構築……完了、出力」
 とマティアスはブレイズクラッシュを敵に浴びせかけると、矢星が狂気攻撃。
 と、その中で千那は。
「君たちは自分の意思で進む道を決められる!! 種族としてでも無く、兵隊としてでもなく!! 君自身はどうしたいんだ!? 自分の言葉で!! 意思で!! 道を決めろ!!」
 と心からの叫びをシャウトに乗せて畳みかけていく……と、その訴えに。
『……グゥ……』
 と、僅かに首を傾げた様にするローカスト。
 しかしながら、次の瞬間には。
『コロス……コロシ、グラビティ・チェインをォ!!』
 と、狂気の叫び声に変わりは無い。
 そして、更なる猛攻で以て、ケルベロス達を苦しめてくる。
 連射攻撃は正しく、ターゲットを蜂の巣にしようと……攻撃し続ける。
 ただ、ヘタに攻撃を躱すのは、逆に周囲に被害を出しかねない。
 しっかりとマティアス、千那、矢星の三人がそれら攻撃を受け止めて、いくらと恵が受けたダメージを確実に、すぐに回復する。
 そして、いくらに続き小東子が。
「突貫! 気合!! 根性ー!!!」
 と『姉ちゃんクラッシュ』の、パワフルな突撃攻撃を仕掛けると、スレイルが桜花剣舞で敵陣に催眠を付与、更に獅郎もバレットストームの雨を降らせる。
 そして、ユグゴトの黒き触手の招来と、真也のスターゲイザーが確実にローカストを追い詰め……一匹を確実に仕留める。
 ……そして別の相手をターゲットに、マティアスがスパイラルアームで攻撃する一方、千那は。
「君達はもう、従わなくていいんだよ!! だから、自分の意思を!!」
 と声を掛け続け、どうにかローカストに、正気を取り戻して貰う様呼びかけ続ける。
 ……が、やはり話を聞いてくれる事も無く、ローカストはただただ攻撃し続ける。
「っ……」
 唇を噛みしめる千那……彼女の必死の説得の言葉も、どうやら……ローカストには届かない様である。
 そして、そんなローカストに。
「仕方ない……悪いがここで仕留めさせてもらうぞ」
 と『魔剣七斬撃・陰』で渾身の一撃を叩きこみ、確実に仕留めていく。
 最早……彼らに言葉が届くことは無いだろう、であれば……倒す他に、対処する手段は無い。
 そして……ケルベロス達は、その後も確実にローカストを一匹一匹仕留めていくのであった。

●その牙と命に
 そして、ローカスト『傭蜂集団』ガンナー兵達を大方倒したケルベロス達。
「……どうやらこっちは片付いた様だな」
「そうだな……」
 と真也に頷くスレイル、と、最後の一体が事切れる前に、その身体を抱き上げる千那。
『……ウゥゥ……』
 と、苦しみ、呻くローカストの言葉、それに。
「君……何か最後の言葉は、無い? 僕が、その言葉、聞き届けてあげるから」
 と千那が言うも……みるみる内にその身体は煙の如く、消え去って言ってしまう。
 ……そして、他班も大方、相手を仕留め終わっている。
 全軍勝利とまではいかないが、大方の成果は上げられた、と言えるだろう。
 しかし……かなり多くのローカストを仕留めた後に残るは……虚しさ。
「一年の猶予があるんだから……今確実に生き延びる道を選んで……欲しかったな……」
 と、小東子の呟きに、マティアスも。
「そうだな……こうなる前に、気が付けたら良かったのだが……無念だ、悲しい」
 と頷き……唇を噛みしめる。
 ……そして、千那も。
「……うん、そうだね……」
 と呟きながら……ローカスト達と戦った戦場の跡を、熾炎業炎砲で燃え上がらせ、全ての遺骸を炎に包み、火葬にする。
 そして……短い祈りを捧げる千那に、獅郎も……その炎にキャラメルを投げ入れ、黙祷を捧げる。
 そしてスレイルも。
「……ゆっくりと眠りな。お前達にとってのあの世が、せめてもの安らぎの地である様に」
 と紫煙のくゆる煙草を指先に挟んだまま、何かの神に祈りを捧げる様な仕草で動かす。
 ……そして、弔いの後。
「……無力ってさ、戦う力が無いとかだけじゃあ、無いんだよね……もっとなんとか、本質的に状況を打開出来るようにならないと、ね……」
 と小東子の言葉に、恵が。
「そうだね……でも……」
 真っ直ぐに空を見上げながら。
「地球はずっと受け入れるって語りかけていた。でも、ローカスト達は地球に受け入れられる事を受け入れなかったんだ。なら、どこまで行ってもボクらの敵だよ」
 と、拳を握りしめる。
 そして……。
「……しかし、フィストの奴、大丈夫か? あいつ、説得で試したい事が有るっつってたんだよな。無事だと良いが……」
 と、獅郎の言葉に、真也も。
「そうだな……」
(「……あいつも、無事であればいいのだが……信じるしかないな……」)
 と、戦う友人の身を案じつつ……彼らはその場を跡にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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