ローカスト調査隊～ Ｄｅａｄ　ｏｒ　Ａｌｉｖｅ

■リプレイ

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　巨大な地下空洞の内部で、飢えたローカスト達が次々と目覚め始める。
　そしてケルベロス達も、その危険性にいち早く気付くや、来たる襲撃に備えようと、近くに居合わせた者達と即席のチームを結成していく。
　そして、此処でも。
「……で、これからどうする？」
　続々と現れるローカスト達を警戒しつつ、久瀬・了介（連矢羽・e22297）が、集まった仲間達へと問いを放つ。
「アリアンナちゃんを、説得しに行きましょう」
　その問いに誰よりも早く答えを返したのは、黒ぶち眼鏡の奥に決意の色を見せる、八王子・東西南北（ヒキコモゴミニート・e00658）だ。
「ボク達ケルベロスは、地球とそこに住む人々を守る為に戦ってただけで、ローカストを絶滅に追い込みたかったんじゃない……それに、小さな女の子を見捨てるなんて、正義のヒーローのする事じゃないですよ！」
　いつもならば頼りなさげに見える東西南北だが、今見せている表情は真剣そのものだ。
　その決意に、氷霄・かぐら（地球人の鎧装騎兵・e05716）と　レーン・レーン（蒼鱗水龍・e02990）の二人は大きな頷きを返す。
「気にはなってたから調査に参加したけど、ここまでとはね……でも、やってみようよ。わたしも、あの子を救ってあげたい」「そうですわね、アポロンという太陽が沈み、ローカスト達に長い夜が訪れた。けれど、明けない夜はない……わたくしも、そう信じております」
　そんな彼女達の言葉に、ケルベロス達は軽く頷くや、互いの背を守る様にしながら、アリアンナの姿を求め、周囲を見渡し始める。
　だが、見えるものは、どこもかしこもローカストとケルベロス達との乱戦ばかりだ。
「ごめん、私のせいで……」
　そんな中、春花・春撫（プチ歴女系アイドル・e09155）は、言葉を失っていた。
　春撫は純粋に、ローカスト達が定命化を逃れる為にコギトエルゴスム化したのではないかと考え、それらを発見、回収すべく、この地へとやって来た……だが、その結果、彼女に賛同し調査隊に参加した多くのケルベロスを、生命の危険に晒してしまった。
　その事実に、流石の春撫も、暫し呆然自失となる……が。
「しっかりしなよ、はるはる！」
「……陽葉？」
　燈家・陽葉（光響射て・e02459）の励ましの声が、彼女を現実へと引き戻した。
「僕達ケルベロスの使命は、地球の人々を守る事……でも、敵であっても困窮してるのなら、それを見捨てるなんて事、はるはるだってしたくないよね？」
「……うん」
　自身の問いに、率直に答えた春撫へと、陽葉は精一杯の笑みを浮かべると。
「だったら、絶対に救おう！」
「陽葉……！」
「こほん……では皆様、それで宜しいですわね？」
　見つめ合う2人へを現実に引き戻すべく軽く咳払いをした、カトレア・ベルローズ（紅薔薇の魔術師・e00568）は、薔薇色のドレスの裾を翻す様にして、仲間達に同意を求める。そして、その言葉に誰もが頷くと、ケルベロス達はアリアンナの姿を捜し求め、一丸となって乱戦の渦へと飛び込んでいった。

●
　乱戦の中を、どれだけ駆け抜けたのだろうか、何体目かのローカストを振り切ったところで、クレーエ・スクラーヴェ（白く穢れる宵闇の・e11631）は叫び声を上げた。
「見つけた！　あそこに、アリアンナがいるよ！」
　クレーエが指差した、遥か前方……そこに見えたのは。
　紛れもないアリア氏族の漆黒の姫君、慈愛幼帝アリアンナの姿だった。
「アリアンナ様！」
「アリアンナさん！」
　レーンと東西南北が共にその名を呼びながら、脇目も降らずアリアンナへと駈け寄ろうとした……その瞬間だった。
「……グラビティ・チェインを奪エ！」
「殺セ！　喰ラエ！」
「ワレラを憎ミ、拒絶シロ！」
「シェアアァァッッ！！」
　突如として先美越えと共に現れた、傭蜂集ランサー兵と呼ばれるローカスト達が、ケルベロス達とアリアンナへの道を遮る様にして、立ちはだかったのだ。
　その数……4体。
　その中でも二本の槍を構えた大柄な個体は、恐らく彼らを率いていた部隊長なのだろう……だが、いまや飢餓によって正気を失ったランサー兵達は等しく正気を失い、その飢えを満たすべく、ケルベロス達へと飛びかかってきた。
「やめてくれ！　ボク達はあの子を……アリアンナさんを助けないといけないんだ！」
「どうか落ち着いてくださいませ……私達は、あなた達と戦いたくはありませんわ！」
　繰り出された二本の槍の連撃を咄嗟に伸ばした如意棒で受け止めた東西南北と、双子の薔薇をあしらった長剣で白銀の槍先を受け流したカトレアが、共に訴えかけるも……ランサー兵達は、その攻撃の手を休めるそぶりを見人為も見せはしない。
「お願いです、自ら死を選ばないでください。散っていった同志達のためにも……」
　そして陽菜も、地へと描いた守護星座の光で仲間達を癒しつつ、願いを込めてランサー兵に訴えかけるが、やはり彼らが正気を取り戻す気配は無い。
「正気に戻ってください……！」
「大丈夫……ボクがキミ達を癒してあげる！」
　ならば言葉以外の方法で、とレーン練り上げたオーラを隊長ランサー兵へと注ぎ込む。
　そして陽葉も、自身のグラビティ・チェインを無数の葉に変え、風に乗せて隊長ランサー兵をを包み込む。
　……しかし、二人の放ったグラビティはどちらもランサー兵の傷を癒すのみで、彼を正気に戻す事は出来なかった。
「どうして……！？」
　思わず陽葉から零れる疑問の声。
　確かにレーンが注ぎ込んだものはオーラであり、グラビティ・チェインではない以上、ランサー兵の飢えを満たす事は出来ない……が、自身のグラビティ・チェインを使用した陽葉のヒールが、どうして彼らの飢えを満たせないのか？
　勿論、それには明確で絶対な理由がある……が、今の陽葉はその答えを知る術はない。
　そして、それはカトレアと東西南北が起動させたメモリーコクーンも同様であった。
　それが映し出しれたのは、鬱蒼とした森……彼らが夢見た豊穣なる大自然の姿だ。
　しかし、ランサー兵達はそれに目を奪われる事無く、手にした槍を振るい続ける。
　もはや彼らは、眼前の生物を殺し、グラビティ・チェインを奪い取る事しか眼中にないのだろう……。
「戦うしか、道は無いのですね……」
「少しでも同じ道を歩ける可能性があれば、と思ったけど……」
「……状況を立て直す。こうなれば、せめて自分達の手で……」
　そう呟くと、かぐらは体内に注入されたアルミ化液の痛みに耐えながらドローンの群れを仲間達の周囲に展開し、守りを固めていく中、了介が仲間達へと迅速な応急措置を施しつつ、より適切な陣形への指示を飛ばす。
　その指示の下、カトレアとレーン、そしてクレーエが改めて戦闘態勢をを整え直すと、ケルベロス達は覚悟を決め、ランサー兵の殲滅へと動き出した。

●
　４体のランサー兵は、各々が自分勝手に羽を擦り合わせ、破壊的な不協和音をケルベロス達へ浴びせていく。
「仕方ないけど……まずは、動きを止めさせてもらうよ！」
　白き和装を纏ったクレーエが２本の長剣を構え、１体のランサー兵へと走り込むと、獅子と乙女、二つの星座の重力を刃に乗せ、強烈な十字斬りを叩き込んでみせる。
「今度はわたしが支えるよ……だって、陽葉の事、大好きだから！」
　春撫は瞳に決意の色を浮かべ、背中の翼を大きく広げながら、陽葉へと心から笑ってみせる。そんな笑顔のエールを受けた陽菜は、受けた傷の痛みも過度に感じた緊張すらも消え去ったのか。眼前のランサー兵達へと間合いを詰めるや、鞭の様に長く伸びた扇の羽で、ローカスト達を打ち据える。
「続いて、カトレア！っ」
「ええ、勿論ですわ！」
　そこへ続け様に走り込んで来たカトレアが、卓越した剣捌きで敵の傷口を広げてみせる。
「こんなはずではないのに……！
「受け入れましょう、レーンさん……運命というものを！」
「分かりました……。原子レベルに撃ち砕く！　喰らいなさい、超収束荷電粒子砲！！」
　苦い思いと共に唇を噛みつつ、レーンの右腕主砲が変形し、荷電粒子フィールドを形成、ビームを発射する。
　更には、テレビウムの小金井からの応援を受けた東西南北が、身に纏ったオウガメタルを鋼の鬼と化し、隊長ランサー兵の甲殻を打ち砕こうと、拳を叩き込んだ。
　だが、そんなケルベロス達の猛攻を受けても尚、ランサー兵達は怯む事さえない。
　むしろ、更なる生への執念を露わにし、より獰猛となってケルベロスへと襲い掛かってくる。
　対するケルベロス達も、ランサー兵の強烈な攻撃に耐えながら、何とかその場を立て直さんとしていた。
　クレーエが捕食形態へと変じさせた、己が《悪夢》の残滓と、レーンの紡いだ竜の言葉より生まれたドラゴンの幻影とが、ランサー兵へと喰らい付き、飲み込み、焼き捨てようとする。
　そして、春撫が地面に描いた守護星座から放たれた、仲間達を守護する輝きの中、陽葉が敵の信念を揺らがせようと、追憶に囚われず前に進む者の歌を響かせる。
「紅き薔薇の散る儚き世の理を示せ……この剣の舞、見切れますか？」
　その歌声の中、カトレアが薔薇の花の散り様にも似た素早き斬撃を放ち、敵を薙ぎ払おうとする。
　更には、懸命な動画を流し続ける小金井の応援の下、構えた如意棒を敵へ真っ直ぐに突き入れた東西南北に続き、かぐらが自身のグラビティ・チェインを破壊力変え、エクスカリバールに乗せて敵へ叩きつけ、了介も己の嵌めた指輪より取り出した光で、眼前の敵を一文字に斬り裂いてい。
　そんな互いに一歩も退かぬ戦いは、より苛烈さを増していった。

　死に瀕するローカスト達と、それを救わんとするケルベロス達。
　しかし、互いが相容れる事は叶わず、剣戟の音だけが巨大な地下空洞に響き渡る。
　そして、激しい攻防の末……避けられぬ悲劇の時は、遂に訪れた。
　それは幾度目かのランサー兵達が前衛へ放った強烈な攻撃に耐え、いざ反撃とばかりに、かぐらとカトレアが攻撃を繰り出さいた直後。
「世界の中心……東西南北ここに在り！」
　東西南北が生み出した不死鳥の幻影を成した巨大な火柱を、ランサー兵へと叩き込む……続く瞬間、炭化したランサー兵は地へと倒れ、粉々に砕け散った。
「よし……これで１体っ……」
　そう告げた直後だった。
「危ない、八王子さん！」
　かぐらの叫び声が響く。
　続く瞬間、東西南北の腹部から白銀の棘が生えた。
「がはっ……！」
　その身を貫けれた激痛と共に、彼の身体が地へと倒れ込んでいく。
「よくも……やってくれたな！」
　その様を目撃したクレーエが、怒りの表情もそのままに、重力を宿した流星の如き飛び蹴りを炸裂させる。
　その間にすかさず了介が回復に走るも、東西南北の躯はぴくりとも動かない。
「すまない……っ！」
　既に起きた事は覆せない。
　その悔しさに歯噛みするも、了介は仲間を支える為、再び敵へと対峙した。

　激しい攻防はまだまだ続く。
　互いに攻撃を交わし合い、その身に無数の傷を負いながら、ケルベロスとローカストとの生死を賭けた死闘は続く。
　ランサー兵達は、次々と繰り出す長槍の重き一撃に加え、時折放つ破壊音波を用いて、ケルベロス達の動きを鈍化させ、生命力をも盗み取っていく。
　対するケルベロスも、了介と春撫、そして小金井の支援の下、己の技を最大限に活かしてランサー兵達を攻撃していく。
　そして、更に一体ランサー兵が倒れるも。
「かぐらさん……っ！」
　仲間達を庇い、戦線を支え続けていたかぐらの腹に、ランサー兵の長槍が突き刺さった。
「……すみま……せ……」
　既に、かぐらの体力は幾度も限界を超えていた……が、遂にはそれも構わず、彼女は崩れ落ちていく。
「よくも、かぐらを……っ！」
　カトレアが双薔薇の星剣をを横一閃に振るい、ランサー兵達を纏めて薙ぎ払うと、また一体のランサー兵がもんどりうって倒れ込み、断末魔の痙攣を始める。
　これで残るは、隊長格のランサー兵のみ。
「こんな形で終わらせたくなかった……」
　レーンが悲しくも決意を秘めた眼で、敵を真っ直ぐ見据えると、胸部の発射口から、必殺の光弾を放つ。
　更には、クレーエが二つの星座の力を借した超重力の十字斬りをお見舞いすると、さしもの敵も、身体をぐらりと傾かせる。
　それでも、隊長ランサー兵は戦意は喪失する事無く、最後の力を振り絞って、二本の槍を力任せに後衛の春撫へと投げ付けた。
「はるはる！」
　その瞬間、陽葉は愛しき者の名を叫びながら、春撫の前へ地飛び込み、身を盾にすると……春撫へ柔らかな笑みを浮かべながら、そのままゆっくりとその場に倒れていく中で。
「……これで終わらせてみせる！」
　かつての過ちは二度と起こさない、そんな思いと共に鋼の鬼と化した彼の拳が、隊長ランサー兵の身体を捉え、打ち貫く。
「ガ……ハッ……！　ダガ、コレデ……」
　甲殻を打ち砕かれたランサー兵の瞳に、僅かな知性の光が灯る。
「サラバ……強敵タチ、ヨ……」
　だが、次の瞬間、彼は音を立てて地へと崩れ落ちると、幾度か激しく痙攣し、そのまま動かなくなった……。

●
　戦いが終わり、ケルベロス達は救えなかった命へと、短い黙祷を捧げる。
「これから、どうしますか？」
「救援に動くべきか、ですね……」
　この時点で戦闘不能者は３名。
　残る５名と、サーヴァント１体で戦闘を行なう事は可能だろう。
　だが、傷付き、倒れた仲間達を、この戦場に置き去りにする事も出来ない。
「悔しいと思うが……あとは他の仲間達に任せるべきだろう」
　そう告げた了介の言葉に、誰一人として反対する者は無く、撤退を決意したケルベロス達は、傷付いた仲間達を担ぎ上げ、地上への階段を目指す。
　そして幸いにも、ローカスト達の追撃を受ける事無く、彼らは無事に地上への帰還を果したのであった。

「アリアンナさんは……どうなったのでしょうか？」
「分かりません、もしかすると……」
　クレーエの問いに、愛しき人を介抱し続ける春撫が答えようとするも、その言葉は途中で途切れてしまう。
「……また、守れなかったのか……」
　了介が、かつて味わった痛みを思い出す様に、地獄化した己の首元へと手を伸ばす。
　その時だった。
　突如、レーンのアイズフォンに通信が入ったのだ。
「はい……ええ……了解しました……」
　そして次の瞬間。
　通信を終えた彼女は、仲間達へと向き直ると……満面の笑みを浮かべる。
「アリアンナさんは……説得に応じ、コギトエルゴスム化したそうです……！」
　その朗報を聞いた瞬間。
　意識を取り戻していた、かぐらと陽葉、そして東西南北の目にも、熱いものが込み上げてくる。
「よかった……」
　誰かの呟いたその言葉は……彼ら全員の思いを表していたであろう。
　そしてケルベロス達は、この戦いが決して無駄にはならなかったのだと心から実感し、互いの健闘を称え合うのであった。

作者：伊吹武流	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年6月13日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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