ローカスト調査隊～窮鼠

■リプレイ

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「なるほど、調査やコギトエルゴスム等気になる事はありますが、まずは目先の危機を脱しないといけませんね」
「アリ達は……遠いか」
　怒号と共に襲い掛かって来るローカスト達を前にそれぞれ纏まって迎撃態勢をとるケルベロス達。ロベリア・アゲラータム（向日葵畑の騎士・e02995）が『太陽の大盾』を地面に突き立てる様にしてローカスト達に向き直る中、アント型のローカストを探した小鳥遊・優雨（優しい雨・e01598）は、その一団が自分達の要る場所からは少し離れた場所で別のチームに襲い掛っているのを見て目を細め、舞い上がったボクスドラゴンの『イチイ』もその翼を閉じて降りてくる。
「まぁ仕方ない。言ってる間にお客さんだ。蜂雀……だったかな？　お前らじゃ役不足だが相手してやるよ」
　蠕動運動で迫って来るベニスズメガの幼虫形態のローカスト『蜂雀』達に気付いたラティクス・クレスト（槍牙・e02204）が、そちらに向けて愛槍を一閃して空を切り、小脇に抱えて前に出る。
「そうか。もう本当に後がないんだな。その上で戦う事を選ぶと言うのなら、こっちも相応の対処をするだけだ」
「そうだね。あたしには説得するための言葉も手段もない。だから一振りの剣として、邪魔する者を斬り伏せる！」
　キーキー声を上げて迫る５体の蜂雀を前に、トントンと軽くジャンプしてエアシューズ『ウルフダンス』の調子を確かめたのはティクリコティク・キロ（リトルガンメイジ・e00128）。その隣に並んだ榊・凛那（神刀一閃・e00303）が気合いと共に斬霊刀を抜き放つ。
「まぁ……寝ぼけた頭に説得は無理よね、ヴァレイショー。ここはこのまま二度寝でもしてもらいましょ」
　アーリィ・レッドローズ（ぽんこつジーニアス・e27913）が傍らに立つビハインド『ヴァレイショー』に話し掛けると、ヴァレイショーが腕を組んだまま頷き、
「殲滅される訳にはいかないよね？　話を聞いてくれそうな相手でもないし、始めるとしますか！」
　葉月・静夏（戦うことを楽しもう・e04116）が左拳で右掌を打って気合いを入れる。
「では、始めます」
　何かを決意したかの様にクッと顔を上げたキアラ・エスタリン（光放つ蝶の騎士・e36085）が、蝶型の金色の翼を広げると『光明砲台』が筒先を蜂雀に向け一斉に火を噴いた。

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　キアラの砲撃を受けた蜂雀が煙を上げながら突っ込んで来る。
「５匹とも煙を上げて突っ込んで来るって事は、全員前衛って事だよな？　分かり易くていいね」
　ニイッと笑みを浮かべたラティクスは、その闘気を雷に変えて穂先に纏わせると、食らい付こうと飛び掛って来た蜂雀に刺突を見舞い、肩を並べた凛那とティクリコティクもそれぞれ別の蜂雀を迎え撃つ。その隣でもう１体飛び掛った蜂雀は、
「先ずはきちんと挨拶しないとね。はい、ずしーんっといっぱつスイカ割り～！」
　大きく仰け反った静夏がお辞儀をする様に渾身の頭突きを見舞い、そのまま押し戻された。
「あの１体だけ色が違うね」
　顔の前に垂れてきたポニーテールを後ろへ流しながら静夏が声を上げた様に、他の４体に比べて少しだけ大きな個体が身震いすると、その体から深緑色の液体を飛ばし前衛陣に降り注ぐ。
「回復します。イチイはロベリアさんを！」
　優雨が医療用爆破スイッチを押すと、前衛陣の後ろにカラフルな爆発が起こり、指示されたイチイは一番近い距離でその液を喰らったロベリアに植物の属性をインストールする。
「さしずめアレがこの群れのボスって事か、オレに任せろ！」
　嬉しそうに舌なめずりしたラティクスが、その個体めがけて地面を蹴るが、突出する形になり別の個体が襲い掛かって来る。……が、アーリィが放ったブラックスライムが食らい付き、
「ほらほら、私が相手してあげるよっ」
　静夏が『たおす』と書かれた標識を振り回して突っ込み凛那達が続く。
「……理性を失っているからか、行動が単調な分読みやすいな……」
　宙を舞うイチイから敵に視線を戻した優雨は、吶喊してゆく味方の背を頼もしく思いながら再び爆発を起こす。

「クラトゥ・ベラダ・ニクト……くしゅんっ！」
　拳を叩きつけるヴァレイショーの後ろで、死者の書を紐解き詠唱を紡いでいたアーリィが詠唱の途中でくしゃみをすると、そのくしゃみに呼応するかの如く、地面の中から引っ張り上げられる様に闇の軍勢が現れ、ロベリアと静夏と斬り結ぶ蜂雀に襲い掛かってゆく。
「別に詠唱を失敗したから出て来てしまった訳ではない。いいね？」
　振り返ったヴァレイッショーの視線に気づいたのか、アーリィが少しだけ眼を泳がせながら咳払いする。
「これで全てに炎が行き渡ったのです」
　その後ろから、放った熾炎業炎砲に手応えを感じたキアラの声が聞こえる。
　その声を肯定する様に、燻された蜂雀にはラティクスを先頭に、凛那とティクリコティクの攻撃に晒され体液を撒き散らしながらも、磁石に引き寄せられるかの様にケルベロス達へ擦り寄って来る。
「まるでレミングスの様……哀れです」
　キアラは『輝翼蝶槍』『蝶夢光槍』２槍を手に一気に踏み込み、ヴァレイショーに踊り掛った蜂雀に文字通り横槍を突き入れ、その激しい動きにその耳を飾る『落涙の蒼』は彼女の心を代弁するかの様に揺れる。
　キーキーと鳴き押し戻される蜂雀は、深緑色の液体を撒き散らし炎に焼かれたそれが嫌な匂いを上げるが、Obsidianを翻した優雨とイチイが間髪入れず回復を飛ばして戦線を支え続ける。
「どんどん畳み掛けるわよ」
　本を持ち替えたアーリィがぱらぱらとページをめくり詠唱を紡ぐと、巻き起こった吹雪が氷河期の精霊の姿を形どり、蜂雀達を氷の檻に捕えようと吹雪を叩きつけた。

　跳び掛って来た蜂雀を大盾で塞いだロベリアは、ウィーハンマーを叩きつけて押し返し、
「その程度の攻撃でこの向日葵畑の騎士は怯みはしない！」
　啖呵を切ると、先程イチイに属性インストールによる回復を受けた静夏の持つ攻性植物、『だんしんぐひまわり』が嬉しそうに踊る。そこにターン！　と響く一発の銃声。
「.357マグナム弾、全部持っていけっ！」
　あまりの早さにティクリコティクの声が後を追う様に響き、一体の蜂雀は体液を撒き散らして跳ね飛ばされる。
「悪いけど、君達は倒させてもらうよ。君達を救おうとしてる人の邪魔はさせない！」
　と、別の蜂雀と斬り結んでいた凛那は、視線も動かさぬままガントレットを嵌める左手の指を立てて突き出すと、ティクリコティクによって跳ね飛ばされた個体が、吸い込まれる様にその指に突き刺さった。
　ラティクスの吹く感嘆の口笛をＢＧＭに痙攣したその個体は、指からずり落ちて動かなくなる。
「キーキー！」
　仲間を殺されいきり立つ蜂雀が、更に勢いを増して襲い掛かって来るが、優雨の起すカラフルな爆発が後衛を敵の視界から隠すと、キアラのナパームミサイルがその機先を制して爆ぜ、アーリィの喚ぶ闇の軍勢が立ち塞がる。
「そこです！」
　１体を押し返したロベリアが体の向きを変えると、翻った太陽の騎士団制式サーコートの下から覗く槍の如きアームドフォートの筒先。それが容赦なく火を噴き蜂雀に出血を強いる。
「あたしの一閃は敵を穿つ！　てぇぇいっ！」
　その敵に狙いを定め踏鳴を起した凛那だったが、その切っ先が届くより早く、蜂雀の頭を左から右へ銃弾が突き抜け、少し遅れて右に穿たれた穴から血の混じった体液が飛び、引っ張られる様に地面に叩き付けられて痙攣する蜂雀。
「ごめんごめん。次は譲るよ」
　トリガーガードに指を掛けくるくるっと回した『シルバースター』の筒先で、『アウトロー』の名のついたガンナーズハットの鍔を押し上げたティクリコティクが、年相応の笑顔を見せた。

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　２体の蜂雀が地面の上で自分流した体液の中に沈んでおり、残りの３体も凍りながら焼かれて水蒸気と煙を上げながらも、果敢に攻勢を続けていた。
「私は飢えた虎のために自分の体を与えるほど、聖人ではないのです」
　medical auraを纏う優雨の金色の瞳がすうっと細められ、前衛陣の間から飛び出して焔を纏う蹴りを叩き込むと、その蹴りに跳ね上げられた蜂雀に静夏の同じ様に焔を纏った左拳が振り下ろす様に叩き込まれた。
「どうなの？　痛い？　熱い？　それとも燃え過ぎちゃってもう感覚ないの？」
　炎の拳で地面に押さえ込まれ煙を上げる蜂雀に問い掛ける静夏。
　押え込まれた蜂雀はキーキーと鳴き、必死に身をよじって逃れようとするが、既に大きく体力を消耗しており、押さえつける静夏の手を跳ね除ける事が出来ない。
「往生際が悪いぜ。餓えて苦しいだろ、楽にしてやるからよ」
　その隣で群れのボスらしき個体が飛ばす深緑色の液体を、胸の前で旋回させた槍で防いだラティクスが、イチイに植物属性をインストールされながら気咬弾を叩き込む。
「……解せないのです……」
　そのラティクスの槍によって飛ばされた深緑色の液体を、大盾で防ぐロベリアが残る１体に迅雷の如き突きを見舞う。突かれた勢いで後ろへと跳ねる蜂雀の後ろにヴァレイショーが現れ、その拳をアッパーカットの如く叩き込む。
「これでお仕舞よ。餓えた者は喰われてその生涯を終えるの」
　その跳ね上げられた蜂雀の落下点に、捕食モードになったアーリィのブラックスライムが口を開け、落ちて来た蜂雀をそのまま呑み込んで咀嚼し、何かが砕ける様な音がして動かなくなると、静夏に押さえつけられていた個体もその生涯を終える。
「さぁ、残るはあなた一人、閃く胡蝶からは逃れられません！」
　キアラの出した札から金色に輝く胡蝶が現れ、ラティクスとせめぎ合う蜂雀にひらひらと飛んでゆき、
「なぁ、これしか道はなかったのか？　アポロンの言いなりになってたお前らはもう居ない。自由になったお前たちのその目でこの星を見なかったのか？　この星を少しでも愛してくれようとはしなかったのか？」
　引き金を引いたティクリコティク。
　その筒先から漂う煙はその問いには答えず、そのティクリコティクの一撃と共にキアラの胡蝶を喰らった蜂雀がたまらず距離をとる。そこへ……、
「叢雲流牙槍術、壱式・麒麟！　貫け雷尖！」
「我が剣、我が心、束ねて一刀と為さん。されど我が剣は曇りを許さず、其は唯、守る者の為、道を拓く刃となれば！」
　ドン！　と大地を踏み締めたラティクスの体にスパークが奔り、唸りを上げ小さな放電と共に繰り出された槍が蜂雀の頭を貫き掲げられたところへ、戦況を見ながら精神を統一していた凛那の一閃。
　両断された蜂雀の体が滴る体液と共に転がり、此方に向かって来たローカスト達は全滅したのだった。
「何故ですか……分かり合える道もあったはずなのに……地球の皆さんを守るために戦って守りました、でも……こんなに苦しくて心が晴れないなんて……」
「……戦う以上、ボクたちは食い千切ったけど、なわかり合えるやつがこの場に少しでも居ることを願うよ」
　晒される蜂雀の屍にキアラが涙するが、ティクリコティクがその背をポンと叩く。
「泣くのは後、他の苦戦している部隊を助けてからね」
　アーリィが言う様に周囲にはまだローカストと戦っている部隊が居り、先に駆け出した優雨と凛那を追う様に、一行は仲間達を助けるべく駆け出したのだった。

作者：刑部	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年6月13日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 5／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 3
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