ローカスト調査隊~飛騨山脈の奥地で

作者:雪見進

「ここ数ヶ月、ローカストの動きは全く確認されていない」
「すると、ローカストはコギトエルゴスムとなり休眠している可能性があるか」
 そう推測を立てたのは春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)。彼女にに賛同した多くのケルベロスたちが、ローカストの足跡を追っていた。
 その結果、飛騨山脈にローカストが隠れているという事を突き止めた。
「大変だったな」
「ああ、だが突き止めた」
 それからさ広い飛騨山脈を虱潰しに調査を行い、遂に巧妙に隠されたローカストの秘密基地を発見したのだった!
「中は静かだな……」
「やはりコギトエルゴスム化しているのか」
 秘密基地はひっそりとしており、動くものの気配は無かった。
「ローカストのコギトエルゴスムを集めて持ち帰る事ができれば、ヴァルキュリアのように仲間にする事ができるかもしれないですよね」
「そうですね」
「そうだな、かつて敵であったとはいえ、絶滅させるような事はしたくないからな」
 春撫の言葉に頷く調査隊の面々。そして、ゆっくりと地下に続く長い螺旋の通路を進んでいくケルベロスたち。
 その先の大きな空間に出る。
「ここは……?」
「もしかして、ここに……」
 その空間は直径数百メートルの半球状で、壁一面に丁度コギトエルゴスムが収納できそうな小さなくぼみがつけられていた。
「この装置、動いているようだぞ」
「何の装置なんだ?」
 そして中央部には、謎の装置のようなものが僅かながら動いているようだ。
「よくわからないけど……でも、不思議な雰囲気……」
 誰ともなく呟く言葉が壁に吸い込まれていく。それはまるで、大聖堂の遺跡のような荘厳な雰囲気を感じさせる。
「ともかく、調査を続けよう」
「そうですね、コギトエルゴスムを探さないと」
 荘厳な雰囲気に敬意を払いながらも、広間の調査を進めるケルベロスたち。
「詳しいことは判らないが、おそらく、微量のグラビティ・チェインを集積してコギトエルゴスム化したローカストを蘇らせる為のものでは無いのかな」
 中央の装置を調べていたケルベロスたちが一つの推測を立てる。
「もっとも、自然界のグラビティ・チェインが必要量に揃うには数万年以上かかると思うが……」
 それは、最後の希望だろうか、種としての本能だろうか。
 最後まで生き残る道を模索していたのだろう。その結果、数万年先に目覚めるという道を選んだのか……。
「デウスエクスは不死といっても、気の長い話だ」
「昆虫が蛹の姿で冬を越えるように、コギトエルゴスムとなって数万年後の未来に希望を託したのかもしれないな」
 そんな想いを様々に感じるケルベロスたちであった……。

 一方、壁の窪みを調べていたケルベロスは、驚きの声をあげる事になった。
「コギトエルゴスムがありません! いえ、これは、コギトエルゴスムが破壊されています」
 慌てて、他の窪みを調べ始める調査隊のケルベロス達。
 その結果、殆どのコギトエルゴスムが窪みの中で崩れ去っている事が判明しました。
「デウスエクスは不死では無かったのか? コギトエルゴスムが自然に崩れるなんてありえるのか?」
 そういう疑問の声があがるが、そもそもコギトエルゴスムについては分からない事が沢山ある。
「おそらくですが、コギトエルゴスム化した時には既に定命化が始まっていたのでしょう。そして、コギトエルゴスムのまま定命化した事で、コギトエルゴスムが崩壊したと考えれば、辻褄が合います」
 現状では推測するしか出来ないが、ありえない事ではないだろう。
「そんな事を言っている場合じゃないですよね。急いで無事なコギトエルゴスムを探しましょう」
「そうだ!」
 この調査の目的はローカストのコギトエルゴスムの確保だ。飛騨山脈を虱潰しに探すほどの労力を費やしたのだ。それを無駄にしたくない。
 ケルベロス達が無事なコギトエルゴスムを探し、壁の捜索をはじめるのだった……。
 無事なコギトエルゴスムを探そうと動き出したケルベロス達。
 しかし、動き出したのはケルベロスだけではなかった。ケルベロスたちの動きに反応したのか、突如、中央の装置が振動した。
「なんだ!」
 突如動き出した装置に警戒するケルベロスたち。次の瞬間、爆散する装置。
「罠か!」
「い、いや違う!」
 装置の爆散により放出されたのは少量蓄積されていたグラビティチェイン。
「グラビティチェイン……だ」
「生きノビラれる……」
 放出されたグラビティチェインによって、残っていたコギトエルゴスムからローカストが再活動したのだ!
「残ってたんだ……」
「だけど、これってピンチ?」
 生存していたローカストに反応は様々。
「グラビティチェインを喰らう……」
「グラビティチェインヲヨコセェェ!」
 しかし、復活したローカストたちは目の前のグラビティチェインの塊であるケルベロスを餌としてしか認識していないのか、本能のままにケルベロスたちへ襲いかかる。
「囲まれた!」
「みんな、傍にいる仲間同士で固まるんだ。1人でいたら危ない!」
 復活したローカストはかなりの数だ。ケルベロスたちは迅速に陣形を組み、ローカストの迎撃に移る。
「ね、ねえ! 説得は出来ないの!」
「このローカスト達はグラビティ・チェインは枯渇状態で、定命化も末期状態……話し合いでなんとかするのは、ほぼ不可能だ」
 出来ればローカストたちを仲間にしたいという想いでここに来たケルベロスたちもいるだろう。しかし、この状況では説得は難しい。
「まずは自分が生き残る事を考えるんだ!」
 全ては命あっての物種だ。ケルベロスたちは迎撃の為に武器を構えるのだった。


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
一式・要(狂咬突破・e01362)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
ガルフ・ウォールド(欠け耳の大犬・e16297)
葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)
岩櫃・風太郎(盾穿つ閃光螺旋の猿忍・e29164)

■リプレイ


「みんな、傍にいる仲間同士で固まるんだ。1人でいたら危ない!」
 突如、コギトエルゴスムから元の姿に戻ったローカストたちに囲まれぬように、チームを作り対応するケルベロスたち。
 直後、お互いに視線を交わし状況を把握、何人か顔見知りだったようで顔には安堵の笑みが浮かぶ。
 集まれば自分たちの身は守れる。ならば、次はここに来た目的……ローカストを救うという目的のために行動を起こす。
「託されたの。同胞を頼むって」
 口を開いたのは愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)。その言葉と共に懐のオウガメタル・クッキーちゃんをそっと撫でる。
「そうですね」
 ミライの言葉に応えたのはフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)。大切な友人を守るようにアメジストの盾を輝かせる。
「ようやく、この時がきたんだね」
 小さく呟くのはシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)。彼はローカストの惨状を聞いて以来、常に共存の道を考え、訴えて来た。この一つ間違えば危機的状況だが、彼にとってはローカストとの共存の機会なのだ!「私にも救うことができなかった命があります」
 皆、様々な想いでこの場に立っている。葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)もその一人。これ以上、悲しい想いをする人を出さない為に、この調査団に参加したのだ。
「愛とは献身、誰かの為の慈愛の心! 拙者はおぬしらを愛そう!」
 岩櫃・風太郎(盾穿つ閃光螺旋の猿忍・e29164)はローカストたちに慈愛を示そうとここにいる。
「……わん」
 ガルフ・ウォールド(欠け耳の大犬・e16297)も覚悟を決めた雰囲気で静かにグラビティを練り上げる。
「そうだねェ、そのためには目を覚まさせないとね」
 そんな皆の想いを聞きながら周囲に視線を走らせる一式・要(狂咬突破・e01362)。
 この状況は予断を許さない。ローカストたちも強きローカストに従いチームを組みケルベロスたちに襲い掛かる。
 饑餓状態のローカストに倒されればそのままグラビティチェインごと喰われてしまう。
 そんな中でノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)は、この暴走状況に憤りを感じていた。暴走して暴れているローカストの中には、かつては志士として立派なローカストもいた。しかし、ここのローカストたちは飢餓状況で我を失っている。
(「それは私が赦さない」)
 彼らの姿が自分だけ生き延びようと暴走しているように感じているからであった。
 皆、様々な想いを抱えながら、身の安全を確保すると同時に、周囲に目を配り状況把握に努めるのだった……。


「各所で戦いが開始していますね」
 すでに何か所かで戦いが開始されていた。説得を行う者、自分の身を守る為に戦う者、決着を付けに来た者もいる。
 全てのローカストを救う事は出来ない。この状況、説得の機会かもしれないが、かなりの危機的状況だ。
 しかし、ケルベロスたちはこの程度の機器的状況は何度も乗り越えて来た。無論、失敗もある犠牲も出た。しかし、それでも進んで来たのだ。
 どんな決断をするのであれ、ここで手を止める者は居ない。
「アリアンナ殿には別のチームが説得を開始したようでござる」
 この場にいるケルベロスで縁のあるローカストは慈愛幼帝アリアンナ。しかし、アリアンナたちの周囲には別のケルベロスたちが相対し、説得を開始していた。
「過剰な包囲は邪魔かもね」
「そうだな。それなら別のローカストを……」
「いえ、援護しましょう」
 そのチームへ迫るローカストのチームがあった。先頭を走るのはアリア騎士。狂愛母帝アリアの配下であり、自軍慈愛幼帝の危機に騎士として守る為に馳せ参じようというのだろうか。
「ギギィィギィィィィィイイィィ!」
 しかし、グラビティチェインの枯渇により、アリア騎士も正気を失いかけている。奇声を上げながら突撃する。
「いきましょう!」
 アリア騎士まで加わればアリアンナの説得どころではない。
「ならば、その手助けをしましょう」
 8人のケルベロスたちはアリアンナの説得は現在相対しているチームに任せ、アリア騎士を引き受ける事に決めた。
「一人でも多くのローカストを救うんだよね☆」
 気合を入れるような大きな声を出すシルディに答え共にアリア騎士たちに相対するケルベロスたちだった!


「ギギィィィ!」
 行く手を遮るように現れたケルベロスたちに、不快感を表すように奇声を上げるアリア騎士。その周囲には従者のように武器を構える兵隊ローカスト。
 ローカストの敵対行動への返答はミライの歌声だった。
「この手は差し伸べるためにあるの♪」
 願いを込めた歌声が響くと同時に他のケルベロスたちも動き出す。
「……大丈夫」
 歌声に誘われたようにローカストたちへ光る蜻蛉が周囲を舞うように飛翔し、その肩へ止まる。
「ギィ?」
 肩に止まった光の蜻蛉はガルフがグラビティチェインにより具現化したもの。それがローカストたちの痛みを和らげる。
「私が貰った、ココロの力」
 ミライの歌声に想いを乗せ、フローネの言葉に込めたドローンがローカストたちの周囲を舞う。
「みなさんにも、どうか届きますように……」
 ドローンがアメジストの光盾を展開させ、そこへ「菫色のココロ」のオーラを共鳴させる。
「おいでよ、のんびり過ごすのもきっと悪くないよ」
 ノーフィアがアメジストの光を舞台に剣舞を踊ると、菫色を彩り飾るように花びらのオーラが降り注ぎ、ローカストたちの傷を癒していく。
「愛は種族を救うのだ!」
 その花びらのオーラを摘み風太郎の紙の兵士がローカストへ届ける。
「水の一滴は血の一滴……」
 要の言葉とともに手のひらに水の球体を形成する。それは、少量のグラビティチェインを水のオーラで包み込んだもの。それをアリア騎士へ与え癒しの力を浸透させる。
「ギギ?」
 連続で繰り出されるローカストへの慈愛のこもったヒール。予想外の行動だったのか、アリア騎士の動きが一瞬だけ鈍くなる。
 そこへ距離を詰めるミライとシルディ。
「クッキーちゃん、お願い届けて! 私たちの想いを! 託された想いを!」
「オウガメタルどうか伝えて、ボクたちの想いを! 綺麗なところもそうでない所も全部!」
 そして差し出すのはオウガメタルのクッキーちゃんとオオアリクイさん形態オウガメタル。オウガメタルを通じて、ローカストにグラビティチェインを譲渡しようという作戦!
「ギギィィィ!」
 しかし、そんなミライとシルディの行動を理解出来ずにオウガメタルを避けるアリア騎士。
「ギギギィィィ!」
 そのままミライの首を狙い牙を生やすアリア騎士。
「戦いに来たんじゃ……ない」
 そこへ割り込むのはガルフ。身を呈してミライをかばい、アリア騎士の牙をまともに受ける。そして、短い言葉だが強い想いを込め、『お前たちの味方だ』と伝える。
「ギギギィィ!」
 しかし、その言葉に反応せずに牙を食い込ませ、殺してグラビティチェインを奪おうとする。
「これ以上、つらい想いをする人を出したくないのです!」
 痛みに耐え説得するガルフに自由な癒し力を与え、説得を続ける力を与える風流。
 ローカストの説得が目的であっても、殺される訳にはいかない。しかし、飢餓により正気を失っている相手に身体を張ったガルフの方法。「腹が減っておるのだろう? 拙者を喰らえ。おぬしたちになら拙者、喜んでこの身を捧げようぞ!」
 そんなガルフに続くように、覚悟を見せ、アリア騎士の前に膝を折る風太郎。
「……ギギギィィィィ!!」
 そんなガルフと風太郎の献身的な行動に、饑餓の狂気に犯されていようとも、感じる物があったのか、牙を抜き距離を取る。
「ギギガガガァァ!!」
 しかし、次の瞬間には、激しい怒りを露わにするアリア騎士。
「……自分だけ生き延びようと暴れている訳ではないんだね……」
 その動きから何かを感じたのはノーフィア。同胞を救う為に覚悟して戦って来た彼らに、情けをかける事が、正しい事ではないのかもしれない。
「あなたは、何を望みますか?」
 その様子に何かを察したミライが問いかける。
「ギギギィィィ!」
 返答は言葉ではなく態度。武器を構えケルベロスたちへ向ける。
「そういうことなんだね」
 息を吸い込み武器を構えるノーフィア。
「黒曜牙竜のノーフィアより、ローカストの勇者達へ! 爪牙と剣の祝福を!」
「ギギギィィィィ!!」
 その想いに応えるように名乗りを上げるノーフィアに大声を上げ応えるアリア騎士。
「……それも、一つの願いなのですね」
 そもそもこのアリア騎士はここで眠る事が本意では無かったのかもしれない。狂愛母帝アリアが眠る事を選んだから、それに従っただけなのかもしれない。
「ギギギィィ!!」
 飢餓の狂気により半分我を失い、言葉を話せないアリア騎士。しかし、その態度から、阿修羅クワガタさんのように正々堂々とした戦いが望である事が伝わってきた。
「それも一つの願いなら……」
 助ける為に開いていた手を握る要。その拳を流水のようなオーラが包み込む。
「わん……」
 ガルフの少し寂しそうな声が漏れるが、それでも願いを叶える為に覚悟を決める。
「それも一つの愛でござるか」
 風太郎も静かに構えを取る。
「ギギギガガガァァ!!」
 戦いの姿勢と取るケルベロスに喜びの声を上げるアリア騎士たち。
 望みを叶える正々堂々とした最後の戦いが始まった。


「口寄せの術! 出でよ、蝦蟇左衛門!」
 戦いを望むのならば全力を尽くすのが礼儀であり愛である。
 風太郎は異世界より黄色い巨大カエルの蝦蟇左衛門を召喚し、雷光の螺旋を放ちローカストたちを撃ち抜く。
(「クソッ、こんな終わり方って!」)
 言葉には出さないが要とて、こんな最後を望みこの場に来た訳じゃない。
「ギギ……」
 しかし、電光石火の蹴りで撃ち抜かれたローカストが、一瞬だけ笑みを浮かべたような、安らかな雰囲気で倒れ動かなくなる。
(「本当は友達になりたいんだ」)
 言葉に出せば相手を傷つける。だから、心の奥に隠しながら電光石火の蹴りでローカストを貫くガルフ。その一撃で膝をつくローカストは、やはり安らかな顔であった……。
「ギギィ!!!」
 仲間が倒れても、気にする様子は無い。正々堂々とした戦いとなると、凄まじい気迫で襲いかかってくるローカストたち。

「まだ、光も届かない真っ青な地図のその先へ♪」
 少し悲しみの混じった歌声を響かせるミライ。さらにボクスドラゴンのポンちゃんはミライを心配するかのように視線を向けながらも、一緒に援護する。
「天より舞い降り積もり、すべてを優しく包み込む聖霊よ。その奇跡を今ここに具現化せよ!」
 さらにシルディは歌声乗せて、雪の小人さんに雪を降らせケルベロスたちの傷をいやす。
 ミライもシルディもローカストたちの最後の願いに答える為に、戦う覚悟をしたものの、それに納得した訳ではない。
(「この鎖だらけの世界を……争いの連鎖を、断ち切りたいの……」)
 本当は辛くても苦しくても生き残って欲しかった。
(「彼らには地球を新しいお家として欲しかったの」)
 風流も歌声を響かせながらケルベロスたちを援護する。
「皆さん……」
 そんな仲間たちの胸中を察するように表情を曇らせるフローネ。
「……ですが、まだ終わりではありません」
 そんなケルベロスたちへ迫るローカストの攻撃に割り込み、アメジスト色の盾で防ぐフローネ。
 そのままアメジストの光を指輪に収束させ、そこから菫色の光剣を形成し斬撃でローカストを迎撃する。
「そうですね」
 他のチームが説得できる事を信じて、ここで倒れる訳にはいかない。それに、ここですべてが終わりとは限らない。

「ギギィ!!」
 攻勢に移るケルベロスたちに喜びの奇声を上げるアリア騎士。闘争本能を解放し喜びに震え、大きく跳躍する。
「ガギァ!」
 空中で吠えるアリア騎士。そのままノーフィアを狙い、凄まじい気迫と共に蹴りを放つ。
「君の願い、叶えるよ」
 その蹴りを真正面から受け止めるノーフィア。そのまま拳を握り降魔の力を込める。その拳へボクスドラゴンのペレが黒い炎をインストールする。
「お休み……ね」
 そのまま降魔の拳でアリア騎士を撃ち抜く。
「ギギギ……」
 そのノーフィアの一撃が致命傷となり、アリア騎士は戦闘不能となる。そのまま、ゆっくりと膝を付く。
「ギギ……」
 最後の瞬間、ノーフィアを見つめ……まるで感謝でもするように表情を変えた。
 命を助ける事が救う事ではないかもしれない。少なくとも倒れ消滅していくアリア騎士はケルベロスに感謝するように……静かに消滅していった……。


「見て下さい」
 アリア騎士を含めたローカストが崩れ落ちると同時に、周囲を緑色の光が走る。その光が離れた場所で説得されていた慈愛幼帝アリアンナや他のローカストを包み込む。その光は中央の装置から放出されていた。
「私たちの戦いは無駄ではありません」
 フローネははっきりと言う。他の場所からも安堵の声が聞こえてくる。もし、アリア騎士たちをそのまま行かせれば説得などする余裕は無かっただろう。
 ケルベロスたちの必死の説得と謎の光により何体かローカストが再びコギトエルゴスムに戻ったようだった。
 この結果がどうなるのかは不明だが、少なくとも飢餓で苦しむ事はしばらく無いだろう。
 この結果は、この広大な飛騨山脈を捜索した者たちの尽力もあっただろうし、この場でローカストと戦った全てのケルベロスたちの努力の結果なのだ。
 まだ戦闘中のチームもある。しかし、説得を主目的と考えていた彼らはアリア騎士たちにとても苦戦し、大きなダメージを負ってしまっている。応援に行く余力は無い。
「後は託しましょう」
 誰ともなく呟いた言葉が、戦いの喧騒と洞窟に吸い込まれていく。コギトエルゴスムに戻ったのなら、まだ終わりではないだろう。このままでは定命化でここにあった多数のコギトエルゴスムのように崩れてしまう。
 それに、この洞窟の探索が全て終わった訳ではない。今は少しだけ休むケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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