漆黒に降る雨の中で

作者:荒井真


 じっとりとした湿気が周囲一体を覆っている。星空は見えず、薄明かりに見えるのは曇天。そして、その雲からは大量の雨。
 その雨が地面をたたき、さらに湿度を上昇させていく。
 そんな雨が降りしきる夜道を歩く一人の男性。周囲にはつい最近まで桜の花を咲かせていたであろう桜並木。今となっては、桜の花弁すら残っておらず、青々とした葉がついているだけだ。
 桜の時期は過ぎているため、辺りに人気はない。ただ、所々に無機質な街灯が淋しげにあたりを照らしているのみ。
 男の手には右手には懐中電灯。そして、左手には安物の傘を差している。時折、器用に傘を持ちながら、スマートフォンを弄り、何かを確認しているようだ。
「たしか……ええと、雨の降る夜2時にレインコートを着たおばけが人を襲うっていうのはこの辺り、だっけ? 噂が本当なら動画をアップロードして、それからスポンサーが付いて……大金持ちに……」
 これからの将来の事をあれこれ想像しながら、スマートフォンのカメラを動画モードに切り替える。
 しばらく、雨粒がナイロン傘を叩く音だけが響く。
 やっぱり噂だったのか、と残念そうに男が思い、踵を返そうとした時だった。背後から、何者かが傘を掴んだ。
「な、なん」
 怯えながら男性が振り向く。辺りに人気はなかったはずなのに、そこには『何か』が立っている。傘でよく見えないが、ローブのようなものを視界の隅に捉えた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
「は?」
 その人影はそう言うと、傘で隠れた死角から男の心臓に、鍵らしきものを打ち込んだ。
 そのまま無言で、濡れた地面に倒れ伏す。手にした傘が、地面にコロコロと転がる。
 やがて、その男性の傍らに立ち上がる影。身にまとったレインコートは、雨粒をパラパラ弾き、街灯のほの暗い明かりが、その顔を照らす。その顔はカエル。手はモザイク状に膨れ上がり、小ぶりのナイフ両手に持っている。
 そして、そのカエルは舌をペロリ、と出すと木陰へ無言で消えていった。


 ざぁざぁと、室内に響く雨音をBGMに、御門・愛華(魔竜の落とし子・e03827)は静かに空を窓から見上げる。一向に止む気配はない。
 と、そこへセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、ケルベロスたちとともに部屋へと入ってくる。
「愛華さんの危惧していた通り、都内の公園にドリームイーターが出現しました。このドリームイーターは、 不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人を襲い、『興味』を奪ってしまいます。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消していますが、生み出された怪物型ドリームイーターはまだ周囲に潜んでおり、このままだと大変なことになってしまいます」
「そのドリームイーターを倒せば、『興味』を奪われた人は、目を覚ます訳ですね?」
 愛華の問に、コクリ、と頷くセリカ。
「はい。愛華さんの言った通り、ドリームイーターを倒せば、『興味』を奪われた男性は目を覚ますことでしょう。敵の特徴ですがレインコートをまとったカエルのような外見をしていて、跳ねながらナイフで戦うのが得意のようです。戦う場所については、桜並木が立ち並んでいた遊歩道で、道幅は広く、戦闘に支障はありません。ただ、雨が降っているのと、周囲は薄暗く不意討ちなどに気をつけてください。『興味』を奪われた人を囮に使い、襲い掛かってくるようです」
 一般人の通行も深夜かつ、桜の季節は終わっているためないだろう、と付け加える。
 と、ここで一度言葉を区切り、ケルベロスたちを見回す。戦いについて何かあるのだろう、と愛華もセリカの言葉を待つ。
「このドリームイーターですが、自身がピンチになったり、膠着状態に陥ると『興味』を奪われた人を盾にとったり、逃走を試みたりするようです。何かしらの工夫を考える必要がありますね……」
 男性を守りつつ、敵を撃破しなければならない。特に、逃走を許してしまうと、その後の被害は恐ろしいことになるだろう。
「何に興味を持つかどうかは、人それぞれです。好奇心は大事なことですしね……。その興味を奪い、事件を起こすことなど許すわけにはいけません。必ずドリームイーターを倒し、『興味』を奪われた方を助けてください」
 そう締めくくると、ケルベロスたちをセリカは送り出した。


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)
翼龍・ヒール(ドクトルドラゴン・e04106)
外木・咒八(地球人のウィッチドクター・e07362)
天原・俊輝(偽りの銀・e28879)
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)
ルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238)

■リプレイ

●曇天
 空に広がるは曇天。そこからざぁざぁと音を立て、大ぶりの雨粒が降り注ぐ。
 雨粒は地面をたたき、そのまま砕け散る。雨のせいだろう、水気を帯びた空気が体にまとわりつき、不快感を催している。そんな湿気をまとわりつかせながら、歩くケルベロスたち。
 遊歩道は、情報の通りに、街灯は少ない。だが、数名が持ってきている光源により、戦闘に影響ないほどには明るさを保っている。
 夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)はレインコートを身にまとい、履物はレインブーツ、そしてベルトにはLEDライトを付けて準備万端である。
 そのお陰で雨に濡れず、ライトにより、視界も悪くない。
「興味がなけりゃ、何にもやる気がでない、か。一番奪われたくないもんだな、こりゃ。女の子に興味がなくなった俺とか想像したくもないわ」
 やれやれ、と言った調子で肩をすくめる。
「守るのが可愛い女の子だったら、やる気も倍増するんだけどね」
 そう冗談を言いつつも、いつドリームイーターが襲ってきても良いように、周囲の警戒は怠らない。
 翼龍・ヒール(ドクトルドラゴン・e04106)は、この湿度の中でも笑顔は崩さない。
「梅雨らしく、カエルの敵ですか。趣深いと言うんでしょうか? ですが、危険な相手ですね……できれば誰も傷つかずに行きたいですが」
 顎に指を軽く当てながら、思慮深く言葉を紡ぐ。その姿は貞淑な優しい女性そのもの。そして、この天気と夜、という事もあり、どことなく儚さを漂わせ、彼女の魅力を更に上げていた。
「カエルか。ヒール、たしか、この国ではカエルが人気なのだったかな? ほら、『かえりゅひょこひょこみひょこひょこ』と言う格言もあるだろう?」
 ルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238)は、ふーむ、と首をひねりながらヒールに問いかける。ルコの腰につけているランタンがゆらゆらと揺れる。その明かりに照らさるシルクのように美しい金髪と地獄化した銀色の瞳が印象的だ。
 早口言葉を堂々と間違える様も何故か絵になっている。
「ええっと……」
「……違うのか?」
 問われたヒールがどう返答しようかと、迷っているところに外木・咒八(地球人のウィッチドクター・e07362)が、会話にストップを掛ける。
「ふたりともストップだ。どうやらついたみたいだぞ」
 咒八がぶっきらぼうに言いながら、手でケルベロスたちを制止する。
(そろそろ肝試しのシーズンではあるが、それで本当に事件に巻き込まれどうするんだ……)
 その視線の先には、転がり落ちている傘。そして地面に転がっている懐中電灯が倒れている人影を照らし出している。恐らくは、情報にあった『興味』を奪われた男性だろう。
 ケルベロスたちの間に緊張が走る。恐らくは件のドリームイーターもこちらを伺っているはずである。
「……ったく、面倒だが、放っておく方がより面倒なことになりそうだ」
 言葉の前半は、いつもの彼らしくけだるげに、だが言葉尻は明確な意思がこもっている。そして、彼の灰色の瞳は辺りを見回し、最新の注意を払う。
 そして、ケルベロスたちは周囲を警戒しつつ、男性へと近づいていった。

●闇夜に響く剣戟
 ケルベロスたちは男性に近づく。
 天原・俊輝(偽りの銀・e28879)は慎重に男性へと近づく、特に怪我などは無いようだが、一向に目を覚ます様子はない。胸が規則正しく、緩やかに上下している。
 その男性の手元には液晶の割れたスマートフォン。どうやら倒れたときに壊してしまったようだ。
「どうやら、無事のようですね」
 穏やかな笑みを浮かべ、男性がひとまずは無事なことを確認すると、辺りを見回す。
 その時だった。俊輝の視界の木陰にチラリ、と黒い影が見える。仲間たちが持ってきていたライトのお陰だろう。
「……そこにいるのはわかってますよ」
 言いながらメガネを外す。その言葉に答えるかのように現れる影。レインコートにカエルの顔。情報のあったとおりのドリームイーターだ。恐らくは、男性を移動させようとした時に、奇襲をかけるつもりだったのだろうが、持ってきた光源と警戒をしていたために、敵の目論見は潰えてしまった。
 ドリームイーターは、ゲコゲコ、と不気味な声を喉から発すると、モザイク化した両手にナイフを持ち、腰をかがめる。すかさず、ケルベロスたちも男性とドリームイーターの間に割って入った。
 十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)がドリームイーターめがけ、駆け出す。その漆黒の瞳に映るはドリームイーター。それに合わせてドリームイーターは、地面を蹴りつけ跳躍する。
「同じナイフを使う方の戦い方……純粋に『興味』を惹かれます」
 血襖斬りを発動させ、手にした惨殺ナイフ『larkspur』でドリームイーターへと一閃させる。銀色の刃が雨を弾きながら、敵へと吸い込まれるように突き進むが、すんでのところで、ドリームイーターは刃を手にしたナイフで受け止める。
 小さく火花が飛び散る。泉の眼前には無表情なカエルの顔。どこを見ているのかわからない瞳からは感情は読み取れない。
(さて、どう来ますかね……!)
 泉は切り結んだ自分のナイフを水平に寝かす。当然、ドリームイーターの持っているナイフの力の向きが逸れる。そこを見逃さない。泉は手にしたナイフを空中で一回転させ、逆手に持ち直す。そして、そのままドリームイーターを下から上へと切り上げた。
 だが、敵も切りつけられながらも、空いている片手の持つナイフを泉と同じように逆手に持っている。そのまま一閃。
「ぐっ!」
 注意深く敵の動きを見ていた泉であったが、意外と小技を効かせてくるドリームイーターの一撃は、致命傷とはならなかったものの、確実にダメージを受けている。
 そこへ神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)が突進する。束ねた銀髪がたなびく。
 フッ、と小さく、そして鋭く息を吐く。その勢いのまま、ドリームイーターの懐へ飛び込む。
 下から突き上げる形で、敵の顎に蹴りを食らわせる。グェ、とくぐもった声がドリームイーターの喉から聞こえてくる。瑞樹はその勢いを殺さず、宙を舞う。
「ハッ!」
 裂帛の気合と共に風が宙を舞うように、そしてその風に乗るように流麗、かつ鋭く体を回転させ、連続での回し蹴り……飛連脚をドリームイーターへ繰り出した。
 繰り出される回し蹴りの嵐。その内の一撃が当たりどころが悪かったのだろう、動きを鈍らせる。
 と、そこへ寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)がここぞ、とばかりにファナティックレインボウを放つ。
「せーのっ!」
 虹をまとった飛び蹴りが、鮮やかな光の軌跡を描きながら、ドリームイーターの張り出した腹部を打ち据える。
「ゲコォ!!」
 流石に堪えたのか、ドリームイーターが怒りの声を上げ、聖星樹へブラッディダンシングを放つ。カエルの見た目らしく、飛び跳ねながらトリッキーな動きで次々と斬撃を繰り出す。
「あいたた……やってくれるじゃない。でも!」
 ダメージは負っているものの、そこに気負いはない。いつもの彼女のようにノリは軽い。そして、自身とケルベロスたちの傷を癒やすためにグラビティを発動させる。
「こんこんと湧き出る不思議なお水だよ~」
 力ある言葉をはすると同時に、大きな瓢箪からいい香りを発する水が溢れ、傷を癒やしていく。
 確実に動きを鈍らされ、ダメージを受けているドリームイーターは、無表情にぐるり、とケルベロスたちを見回す。そして両手のナイフを交差させ、跳躍する。倒れている男性へと。
 男性を守るために布陣しているケルベロスたちを強引に突破するつもりのようだ。だが、上手く布陣しているため、ドリームイーターの目の前には咒八。それでも止まらない敵。
 咒八は、はぁ、とため息をつく。
「ったく、めんどくせえ」
 ぶっきらぼうに言い放ち、漆黒の髪を雑にかき上げる。そしてドリームイーターに安息への誘い道を見せる為の能力を発言させる。
「安らぎへの憧憬に沈め」
 そう言い放つと同時に、ドリームイーターは跳躍している空中でもんどり打ち、そのまま背中から地面へ激突する。
「ゲ、ゲコォ……!」
 ジタバタともがく敵。死に最も近い赤い花……彼岸花だろうか。その花から作られた薬が作用し耐え難い苦痛を生み出しているのだ。
 それでもなんとか、ドリームイーターは傷をモザイクで癒やすと、なおも男性へと向かおうと試みるが、瑞樹が眼前に立ちはだかる。
(こいつらドリームイーターとの戦いも長いな。あんまり長くなると、めんどくさいのが先に立つようになっちまう……よな!)
 斬りつけるドリームイーターの腕を、自らの腕で絡め取り、敵の動きを封じると同時に、螺旋掌を放つ。その一撃は、ドリームイーターの脇腹へとめり込み、螺旋の力が敵の内部で暴れまわる。そして、ごふり、と口から血、緑色の液体を吐きだし、ドリームイーターは膝を地面につける。
「うっふふふ……! さあ、傷を治して差し上げますわよ!」
 戦闘前とは180度豹変し、瑞樹と仲間たちの傷を癒やすヒール。それはさながらヒーロー物に出てくる悪の女幹部のごとく。
 以前、一緒に戦ったことのある瑞樹は自らの傷が癒えていくのを、若干、呆然とした面持ちで見ている。
 いかにも悪役な高笑いを上げる彼女が回復である。初回ほどではないようだが、やはりインパクトが強いようだ。
 泉がドリームイーターへ駆ける。それに応戦するべく敵も両手のナイフを構え、変則的に飛び跳ねながら、ナイフを矢継ぎ早に繰り出す。
「その動きは……もう通じませんよ」
 惨殺ナイフ『larkspur』を自らの背中で隠し、逆手から持ち替える。
「制御できる自信はありませんが、ヒトツメ、行きますよ?」
 より速く、より重く、より正確に。最小限、無駄を省いた動きは、完全にドリームイーターの死角になっている。
 視覚外からの一撃は、そのまま腹部を貫通し、ドリームイーターは、空中から再び地面に叩きつけられる。
「オーッホッホッホッホ!! 醜悪な見た目、そして心までそのようですわね! ワタクシ達は正面から打ち破ってみせますわ!」
 なおも、傷を癒やしドリームイーターが執拗に男性を狙っている姿を見て、ヒールが高笑いを上げる。
「あなたは私のもの。憎しみも愛も永遠に……」
 サディスティックな笑みを浮かべ、能力を行使する。ドリームイーターの目に映るは、黒薔薇を纏った喪服の老婆の姿だろうか。それと同時に、敵の動きは弛緩し鈍っていく。
 ドリームイーターは満身創痍となりつつも、傷を癒やすと、今度は男性ではなく、遊歩道の暗闇へ跳躍しようとするが、それよりも早くにルコ。
「そうは……」
 思い切り振りかぶる。
「させん!」
「ゲコォ?!」
 手にしたルーンアックスをドリームイーターめがけて投擲した。ヒュンヒュンと風切音を立て放物線状に空を舞う。それは、寸分違わず、跳躍した直後のドリームイーターの頭部へ直撃する。ゴン、と少しコミカルな音を立てて、うつ伏せで墜落した。
「どうした、カエルらしくひょこひょこと鳴いてみたらどうだ?」
 そして、叩き落としたドリームイーターを楽しげに足蹴にしてみる。
「ゲ……ゲコォ!」
「む」
 もはや、なりふりかまっていられないのか、再び逃走しようと試みるが、ドリームイーターの目の前には俊輝。
「逃がすわけには行きませんよ」
 腕に宿した攻性植物が一斉にドリームイーターへと絡みつき、大地に組み伏せる。
「グググ……ゲコッ!」
 先程、足蹴にされた恨みだろうか。それとも逃げることも叶わず、一矢報いるためか。無表情だが、怒りに声をにじませ、ルコへ飛びかかる。
 だが、動きを鈍らせたドリームイーターの凶刃は彼女に届く寸前で也太の制圧射撃で撃ち落とされる。
「ルコさん、大丈夫っすか!」
「ああ、助かった。ありがとう」
「いやいや、イケメンが女性を守るのは当然ですから!」
 女性至上主義な彼らしいセリフ。ついでにニッコリとテンション高めに笑顔を見せる。
 ドリームイーターは、なんとか立ち上がっているが、まとっているレインコートはぼろぼろになっている。
 さて、と也太はドリームイーターへと向き直る。
「夜の闇は振り払えない。知らないぜ、こいつは俺にもどうにもできない」
 その言葉と同時に、己の魂の中のデウスエクスの力を一時的に解放する。体中から噴出した煙状の闇は、ドリームイーターの全身に絡みつき、あっという間にその煙上の闇が包み込む。魂から溢れる力に強い意志……闇をも恐れぬ強き心で、暴走一歩手前の状態をコントロールする。
「暗闇大好きカエルちゃんにお誂えだろ?さぁ、大好きな闇に怯えな。お前が光を拝むことはもうない」
 ドリームイーターへ死刑宣告を投げつける。その言葉に抗うかのように闇の霧の中で必死にもがき、ナイフを振るうが霧は晴れない。やがて、その動きは緩慢になり、静寂だけとなる。
 そして、その闇の霧が晴れた後には仰向けに倒れているドリームイーター。もはや、ピクリとも動かない。徐々にその体は指先から消え始め、あっという間に全身は夜の帳へと消え去った。

●闇夜に響く雨音。そして。
 泉は葬送の曲をブルースハープで奏でている。寂しげなメロディが辺りを包む。
 と、その時、雨ざらしだった男性を木陰に移動させていたが、目を覚ましたようだ。
「あ、あれ……ここは? ええっと、たしか……」
「気が付きましたね。どのような興味であれ、もう危ないことはしないでくださいね?」
「うう」
 微笑みかける泉に呻く男性。先程、襲われたことを思い出したのだろうか。
 聖星樹は、うなだれる男性へ人差し指を立て、語りかける。
「ボクもネットで活動報告しつつ宣伝も行ってる身から、忠告。単発の動画収入なんてたかがしれてるよ。大事なのは継続して、面白いことをドンドン発信することだよ」
「うっ、た、たしかに……」
「だから危ないところになんかいかないで、もっと健康的で面白いこと探さなきゃ、ね?」
「は、はい、すみませんでした」
 諭すように語りかける聖星樹に男性は思い当たるフシがあるのだろう。今回の事件の発端となった行動を深く反省しているようだ。
「みなさん、ありがとうございました」
 そう言いながら、男性は頭を下げ、歩いて立ち去っていく。その後姿を聖星樹はドヤ顔で見送る。
 そして、その横で、ボクスドラゴン『ロール』は静かに偉そうに講釈を垂れていた主人をやれやれ、としばらく見守るのであった。

作者:荒井真 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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