チョココロネの逆襲

作者:天木一

「お腹すいたー、何かおやつあったかなー」
 少年が背伸びして冷蔵庫を物色すると、そこからジュースやゼリーを見つける。そして奥に手を伸ばし、包装されたパンを引っ張り出した。
「あ! チョココロネだ! へへっこれが大好きなんだよ! さすがママッわかってるぅー」
 テーブルについた少年は、早速袋を破りチョコクリームの詰まった渦巻き状のパンを取り出す。
「やっぱりチョココロネはしっぽからだよね!」
 少年はパンの細い方からかじりつき、あまりクリームの入っていない部分を食べる。
「楽しみは最後にしなくっちゃ!」
 食べるほどにクリームの量が多くなっていく。そして反対側から零れそうなクリームをペロリと舐めて掬い、最後に大きな口を開けて残りのクリームたっぷりな部分を頬張った。
「ん~んまー」
 ゴクゴクとジュースを飲み、少年は満足そうな笑みを浮かべる。
『わたしの家族はどこー?』
 そんな時、何処からか女性っぽい声が聞こえる。
「なんの声だろ? テレビつけてたかなー?」
 少年が振り返る。その時、ぬうっと窓を巨大な影が遮った。その巨大な何かが部屋を覗く。
『わたしの家族を食べたのは、お前かー!』
 パリンッと窓が割れてそれが侵入してくる。円錐形に渦巻くような小麦で出来た生地に、たっぷりのチョコクリームが詰まったパン。何メートルもある巨大なチョココロネが、まるで芋虫のように動いていた。
「うわっ」
 驚いた少年は椅子から転がり落ちる。
『家族を食べられた恨み、お前を食べて晴らしてやるぞー!』
 生クリームで子供が描いたような目と口がチョコクリームの部分に描かれている。それが少年を見下ろし、ガバッっと覆いかぶさった。
「わーーーーー!」
 叫びながらベッドで少年が跳び起きた。見渡せばそこは見慣れた自分の部屋。
「あー、あーあー夢―、だと思ったー」
 夢に驚いて起きた事に少年は恥ずかしそうに顔を伏せる。その時、少年の胸に鍵が突き刺さった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 突如として現れた女が手にした鍵を少年から引き抜く。すると少年は眠りに落ちてベッドに倒れた。それと同時に女は幻であったかのように消え去る。
 静けさの戻った部屋に巨大な物体が現れる。それは夢に出て来た巨大なパン。
『チョココロネを食べたのは、誰だーーー!』
 巨大チョココロネが窓を突き破り、人を襲う為に暗い外へと這い出た。

「以前メロンパンのドリームイーターを退治してのう。パンのドリームイーターがまた現れるのではと思って調べてもらったところ、予想通りに見つける事が出来たのじゃ」
 ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)が付け髭を撫でながら、ケルベロス達に事情を説明する。
「第三の魔女・ケリュネイアが、少年の夢から『驚き』を奪い新たなドリームイーターを生み出したようです」
 詳しい説明はこちらからと、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が話を続ける。
「生まれたドリームイーターはグラビティ・チェインを奪う為に人々を襲ってしまいます。そうなる前に敵を撃破し、少年を覚めない夢から救ってあげて欲しいのです」
 ドリームイーターを倒さなくては少年が目覚める事は無い。
「戦う事になるドリームイーターはパンの姿、その中でもチョココロネの形状をしています。全長は7m程で、芋虫のように動くようです」
 相手を呑み込みクリーム塗れにしたり、チョコクリームを飛ばしたりして攻撃してくる。
「場所は京都にある住宅街。通りがかる人に襲い掛かって来ます。それと襲う時に人を驚かせようと待ち伏せをしているようです」
 相手を驚かせるという習性を持つ。その為驚かない者が居れば、優先的にその対象を攻撃してくるだろう。
「あまり芋虫のように動くパンなんて見たくありませんが、退治しなくては被害が出てしまいます。眠る少年を目覚めさせる為にも、皆さんの力が必要です」
 よろしくお願いしますとセリカが頭を下げ、ヘリオンの準備を行う。
「ふむ、パンは食べられるものではなく、食べるものじゃからのう。ドリームイーターであれ食べられるのであれば、皆で綺麗に完食してしまうのじゃ」
 ウィゼの言葉に頷き、どのような味だろうと興味を持ちながらケルベロス達は出発の準備に取り掛かった。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
ニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)
シルフォード・フレスヴェルグ(風の刀剣士・e14924)
フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)
エフイー・ロスト(もふもふを抱いて唄歌う機人・e16281)
アオ・ミッドカイン(空を舞い落ちる星・e24484)

■リプレイ

●夜道のチョココロネ
 暗い夜道、人気のない住宅地にケルベロス達は静かに足を踏み入れた。
「チョココロネはクリームが出ないところまで細い方をちぎってからクリームをつけて、あとはクリームがこぼれないように大きい方から食べ進める派……じゃなくて、美味しくても動くのは嫌だなぁ」
 立入禁止テープを張っていたメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は頭を振って妄想を打ち消す。
「男の子が寝たままなのも困るし、しっかり倒しておかないとね」
 そして人を襲うなら容赦はしないと迫る戦いに集中する。
「メロンパンの次はチョココロネ……? それってクリームパンとかピザパンとかも出てくるフリだよね。ね、そうだよね、マルコ? 夢が広がるね」
 楽しそうにニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)はピンククマぐるみのマルコに話しかけた。
「通行人は居ないようです」
 周囲を見渡した機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が、一般人が居ないのを確認して敵を索敵する。
「いやあ、食べたチョココロネの仇討ちをされるなんて、聞く分にはコミカルだけれど、自分の身となると悪夢でしかないね。ま、おとなしく食べられる気もないけれど」
 逆に食べてやる気満々でフリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)は殺気を放って人払いをした。
 付け髭を摘みながらウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は今まで戦ってきたドリームイーターを思い浮かべる。
「あたしが初めて会ったクリスマスケーキドラゴンが全長4mで、次のカスタードホイップシュークリームドラゴンが全長6mで、次に会ったメロンパンが大きさを自由に変えられて最大6m。そして、チョココロネが7mとは」
 付け髭を摘みながら学者のようにウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は、今まで戦ってきたドリームイーターを思い浮かべる。
「パッチワークの魔女の者の力がだんだん強くなっておるという可能性もあるのかのう?」
 そんな思案をしていると、道の先に大きな影が差す。角を曲がり現れたのは全長7mにもなる巨大なチョココロネだった。
「7mのチョココロネ……7mの巨大ダモクレスなら見たことがありますが、チョココロネは……なんか夢に出そうです」
 シルフォード・フレスヴェルグ(風の刀剣士・e14924)は以前戦ったダモクレスと同じサイズのパンを前に、油断はしないと戦いに集中する。
「あら、世の中一風変わったドリームイーターもいるのね? チョココロネ……ちょっとだけ味見してみようかしら?」
 落ち着いた顔でエフイー・ロスト(もふもふを抱いて唄歌う機人・e16281)は敵を見やり、内心ワクワクしながらどんな味なのか想像を膨らませる。
「な、なんて美味しそうな見た目……あっ、や、何でもないよ……!?」
 思わず本音が出たアオ・ミッドカイン(空を舞い落ちる星・e24484)は誤魔化すように首を振る。
「とにかく! 敵なら早く倒さなきゃね……丸呑みでべたべた何て嫌だし……」
 そして敵の姿を人々から隠すようにバイオガスを放った。

●巨大菓子パン
『わたしの家族を食べたのは、お前かー! お前か―? それともお前かーー!?』
 巨大チョココロネが脅かすように顔を向ける。たっぷり入ったチョコクリームに、落書きのように描かれた生クリームの目と口が怒ったようにケルベロス達を見下ろしていく。
「チョココロネが動いてるっ!」
 大袈裟にメリルディは驚いてみせるが、大きな菓子パンを目前にして瞳を興味津々に輝かせていた。
「こいつ、ドラゴン……いや生きたチョココロネ!?」
 煙草をポロリと落としそうにして、たじろいだ風を装ったフリードリッヒはパンを見上げる。
「むむ、家族を食べられた恨みを晴らすとは……なんとこの者はチョココロネの女王パンじゃったのじゃな。驚きなのじゃ」
 髭を震わせてウィゼは軽く目を見開いて驚きを表現する。
「驚いたわ、こんな大きなチョココロネもあるねの……」
 エフイーも驚いたフリをしてその全長を見渡した。
『ふふんっ』
 すると自慢げにチョココロネは芋虫のように体をくねらせて電柱にぶつかる。
「わー、おっきなチョココロネ。これは皆で美味しくいただくしかないね♪」
 瞳をキラキラさせたニュニルが見上げる。隣のボクスドラゴンのスクァーノもふんふんと頷いた。
「ん……チョココロネ、ですかね? ちょっとお腹空いてるし、ちょうど良いおやつなのです」
 無表情のまま真理はアームドフォートを展開し砲撃を開始した。それを追うようにライドキャリバーのプライド・ワンが突進してパンに体当たりをぶち当てる。
「目の前にすると本当に大きいですが、ここで叩き潰します」
 ピクンと少し驚いたように尻尾を反応させたシルフォードは、平然とした顔で加速し、蒼き軌跡を残しながら炎を纏った蹴りを叩き込んだ。
『驚かないお前達が、チョココロネを食べた犯人だなー!!』
 たっぷり詰まったチョコクリームが撃ち出され爆散して降り注ぐ。
「回復は任されたよ、傷一つ残さないからね!」
 それに対してアオは剣を地面に突き立て、星座を描いて仲間に加護を与えクリームの効果を和らげた。
「ストップ! 動かないでっ!」
 メリルディが敵の足元に粉砂糖を撒くと、動きを鈍らせて停止する。
「まずは動きを鈍らせるのじゃ」
 横からウィゼが飛び蹴りを浴びせて長細い巨体をゴロリと転がす。
「大きいけど、パンだから軽いのかしらね?」
 続けてエフイーも大きく跳躍して蹴りを放ち、パンの巨体を塀に押し付けた。すると長く細い側が尾のように動いてエフイーを捕えようとする。そこへ割り込んだ真理が代わりに攻撃を受け巻き付かれた。
「……! お、美味しいのですね……クセになるかも、です」
 圧迫され真理の口にクリーム付きのパンが押し込まれ、濃厚なクリームを味わいながら、両腕の手首を変形させビームソードを展開し敵を斬り刻み戒めを解いた。
「さあ、生きの良い悪夢がいるぞ! 食らい尽くせ!」
 フリードリッヒが煙草の煙を吐くと、巨大な獏の使い魔が召喚されパンを食べ始める。
『チョココロネを食べるのはお前かー!』
 パンが暴れると獏は煙となって消え去った。
「パンとチョコの美味しそうな香りがするよ、お腹が空いちゃうよ~」
 ニュニルは色とりどりの花が咲く蔓の巻き付いた儀式杖を敵に叩きつける。
「大きいだけあってパンも分厚いですね」
 シルフォードは刀を抜き放ちパンの傷跡を狙って深く斬り裂く。するとチョコクリームが噴き出しシルフォードの顔を汚した。
「甘い……」
 ぺろりと唇のチョコを舐めたシルフォードの尻尾が機嫌よく揺れた。
『チョコクリームに埋もれてしまえー!』
 クリームが一気に放出されビチャッとプライド・ワンとスクァーノをチョコ色に染めた。
「離れててもチョコの香りがすごいね、私も……ってダメダメ! みんながんばって!」
 皆に混じってパンを食べてみたいと思ってしまったアオは意識を戦いに戻し、ギターを掻き鳴らすと勇ましい歌を戦場に響かせて仲間の闘争心を高める。
『食べてやるぞー!』
 真っ直ぐにパンが突っ込んで来る。
「動いてると虫みたいで気持ち悪いわね。ケルス、動きを止めるわよ」
 メリルディが呼びかけると、蔓薔薇が地を伝うようにパンに絡みついて動きを止める。
「大きな口じゃのう、じゃがこっちも負けておらんのじゃ」
 ウィゼの足元から黒い液体が広がり風呂敷のようにパンを包み込んでしまった。
「美味しくともここで撃破するのです」
 そこへ真理がアームドフォートを撃ち敵を爆破した。
『こらー!』
 ダメージを負いながらも再び動き出して巨体が迫ると、ニュニルとスクァーノが仲間を庇うように杖を構えて突進を押し留める。
「ダメージがあるとかないとかが問題じゃないんだ。美味しいかそうでないのか、人類はいつだって……美味しいぃ~」
 こっそりとパンを味わい幸せそうにニュニルの頬が緩み、その横でスクァーノも口元をチョコで汚していた。
「民家の方へは進ませません。動けばどうなるか体に教えてあげましょう」
 シルフォードは腕を獣のように変化させて殴りつけずっぽりと腕をめり込ませ、パンを大きく引き千切った。
「美味しそうね、私も食べてみようかしら」
 エフイーは腕にメタルを纏わせ、思い切り拳を叩き込む。そしてチョコのついたパンを千切り取ると、まるでハムスターのようにかじかじと食べ始める。
「柔らかいより硬い方が壊しやすいよね」
 フリードリッヒが氷雪の螺旋を巻き起こしパンを凍らせていく。
『パンが湿気てしまうではないかー!』
 暴れ回ってアオをパックリとクリームの中へと呑み込んでしまう。
「う、く……こ、これ……おいし、ぃ……!」
 取り込まれたアオは甘い誘惑に負けて内部からパンを食べてしまい、美味しさの虜となる。

●魅惑のチョコクリーム
「そんなに飲み込みたいのなら、これでも飲むのじゃ」
 ウィゼが手早く薬を調合し、試験管ごと口の中へと放り込んだ。すると苦しそうにパンが悶え咳をするようにアオを吐き出した。
「これに食べられるといいのです!」
 カモミールの香りと共に真理の元から蔓が這い出て、大きな口を作るとパンに齧りついた。
『勝手にパンを食べるなーーー!』
 穴から次々とクリームが吐き出され、地面がチョコ色に染まる。近くのケルベロス達もクリームを浴びて甘い香りに包まれると、攻性植物のケルスがツッコミを入れるように蔓で叩いてメリルディを正気に戻す。
「もう少し加減を……今度はこっちが幻を見せてあげる、コル」
 名を呼びながらメリルディがナイフを抜くと、刀身が煌き中にチョココロネに似た中にソーセージの入ったパンが具現化されて襲い掛かる。
『こらー! 姿を真似るの禁止ー!』
 チョココロネは敵意を持ってクリームを吹きかけ対峙する。
「艶やかな生地はもちっとして柔らかく、中のクリームは濃厚でそれでいてしつこくなく……ああ、まだまだ食べていたい」
 まるでグルメ番組のレポーターのように実況しながら、ニュニルは魔法の力で愛らしい小型テディベアを生み出して抱きしめ、もぐもぐと食べていたパンの影響を打ち消す。
「美味しくってもっと食べたくなるけど……我慢しなくてはね」
 エフイーがスイッチを押すとカラフルな爆発が起こり、仲間の傷を癒し士気を高める。
「あ、美味しい。ドリームイーターをやめてパティシエにでもなればいいのに」
 口にしたチョコの味に勿体ないと思いながらも、フリードリッヒは竜の幻を呼び出し炎を吐いてパンを焦がす。
「美味しいですけど、虜にされては困りますから」
 それに続いて飛び込んだシルフォードは刀を振り下して斬り裂き、更に横に振るって溢れるクリームを斬り払った。
「チョココロネの誘惑に負けた……悔しい」
 クリームだらけのアオはキッと敵に視線を向け、魔力の弾丸を放ち頭部分を石へと変えていく。
『パンが食べられなくなるだろー!!』
 するとパンは石となった部分を切り離し、少し短くなった体で襲い掛かってくる。
「ケルス、たっぷり食べていいわよ!」
 メリルディの元から蔓薔薇が伸びて、獣の口のように形を変えてパンに食らいつくと、プライド・ワンがスピンして敵に衝突して動きを止めた。
「ふぉふぉふぉ、隙ありなのじゃ」
 跳躍して飛び蹴りを浴びせるウィゼ。だがその時くるっと顔を向けたパンが口を開け、中へすっぽりとウィゼが呑み込まれた。
『お前たちを食べてやるぞー!』
 更に呑み込もうと大きな穴が迫る。その正面からスクァーノがブレスを吐いてパンをこんがりと焼き、香ばしい煙が漂う。
「焼くと一層美味しそうな香りが……チョコもとろりと柔らかくなってまるでスイーツのよう」
 横から突っ込んで杖を刺したニュニルは、動きを封じながらパンを口にして堪能した。
「美味しそうなチョココロネ、これで切り分けちゃうですよ!」
 左右の手からビームサーベルを出した真理は、高起動スラスターの出力を最大にして飛び、斬撃を浴びせて鳥のように周囲を回り、すれ違う度にパンを斬り裂いていく。
「綺麗に切り分けるわよ」
 同時に地上からエフイーがチェーンソー剣を手に駆け寄り、駆動する刃がパンをどんどんと削ぎ取りチョコが溢れ出す。
「今助けます!」
 シルフォードは獣の腕を傷口に叩き込み、返りチョコで体を汚しながらパンを引き千切って大きな穴を空けた。
「むむむ、チョコクリーム塗れになってしまったのじゃ」
 その割れ目からチョコで全身を汚したウィゼが出て来た。そして穴に向けて試験管全てを放り込んだ。
『チョココロネだって生きてるんだー!』
 チョコを放出しながら悶え苦しみ、最後の力で暴れて塀を砕き周囲をチョコで染める。
「片付けてしまうか 全て食らってしまえ!」
 紫煙が巨大な獏となり、フリードリッヒの指示通りにパンを食べ始める。
「跡形もなく砕け散りなさい!」
 アオは氷河期の精霊に呼びかけ、極低温の結界でパンを凍てつかせ粉砕した。
「ごちそうさま」
 粉々になったチョココロネを獏が全てを食べ終えると、フリードリッヒは背を向けた。

●食べたくなる
「そういえばボク小食だからこれ以上は食べられないんだ。ごちそうさま、Dobranoc(おやすみなさい)」
 スカートの埃を払ったニュニルは、消えた場所に向かい優雅に一礼した。
「ふう、終わったなぁ」
 翼を広げたメリルディは夜の涼しい空を飛び、壊れた窓から目覚めた少年の無事を確認してヒールを掛けた。
「次はどんなドリームイーターと出会えるかのう、もっとサンプルを集めて研究したいのじゃ」
 クリームの汚れも気にせず、ウィゼは思考を巡らせる。
「美味しいチョココロネでしたね。害がなければ良かったのですが」
 シルフォードは頬を汚すクリームを拭って舐めると、口に濃厚なチョコの味が広がった。
「確かに、パティシエかパン屋にでもなれば人気が出ただろうね」
 あの味のお菓子ならまた食べてもいいと、フリードリッヒは煙草を吐き出した。
「……こんな時間じゃパン屋は開いてないよね……」
 アオはチョココロネが食べたくなったと想像をする、するとその隣には並んで食べる仲違い中の人が思い浮かぶ。
「……あ、考えてない考えてない! よしっどこかに食べに行こう!」
 慌ててその思考を振り切るように開いてる店を探す。
 その隣でプライド・ワンについたチョコを真理は指で掬って舐める。
「夜食に、チョココロネでも買ってくですかね……」
 少しだけ食べたらお腹が空いてしまったと、真理はコンビニの光が漏れる方へと視線を向けた。
「いいわね、味見したらお腹が空いてしまったわ」
 エフイーもこくりと同意して頷き、甘い香りを残しながらケルベロス達は歩き出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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