ローカスト調査隊~スピーシーズ・エンド

作者:弓月可染

●スピーシーズ・エンド
 ――ローカストのコギトエルゴスムを集めて持ち帰る事ができれば、ヴァルキュリアのように仲間にする事ができるかもしれないですよね。
 そう告げた春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)を先頭にして長い螺旋の通路を踏破したケルベロス達は、やにわに広がった大空間を前にして足を止めた。
 ここは飛騨山脈のただ中。
 コギトエルゴスム化した状態で休眠しているのではないかと推測されたローカスト。その足跡を追って山中に分け入ったケルベロス達がついに発見した秘密基地。
 その最奥で彼らが目にしたのは、壁一面にコギトエルゴスムが収められているであろう窪みが穿たれた、巨大なドームだった。
 中央には、鎮座する祭壇。僅かに震えるそれは、何かの装置のようでもあったが。
「コギトエルゴスムが崩れてしまっています!」
 祭壇を調べるケルベロス達の耳を打つ叫び。それは、窪みを調べていた仲間が発した驚愕の声であった。やがて、あちこちで確認される、ローカストであったものの欠片。
「コギトエルゴスムが崩壊するなんて……」
 不死なるデウスエクス、その根源たる不朽の宝石。それは彼らの間にざわめきを生んだが、やがてその声はいくつかの論に集約されていく。
 曰く。
 飢えたローカスト達は、数万年後の未来に希望を託し、蛹となって冬を越えるように自らコギトエルゴスムとなったのだろう。
 しかし、既にその時、大半のローカストは定命化が始まっていたのではないか。
 そして、コギトエルゴスムのままで完全に定命化してしまい、崩壊に至ったのではないか――。
 今となっては真偽は判らないが、多くがその推測に頷いた。だが、それはもう一つの可能性をも彼らに提示する。
「まだ、完全に定命化していないコギトエルゴスムは?」
「もちろん、ここに残ったままの筈!」

 だが。
 動き出そうとしたのは、ケルベロス達だけではなかった。

 突如、唸りを上げる中央の装置。
 それは、ローカストの祭壇はが最後の生き残り達に齎した、なけなしの恩寵。
 ――すなわち、グラビティ・チェイン。
 コギトエルゴスムを、ローカストへと引き戻す鍵。
「グラビティ・チェインヲ、アレヲ喰ラエ」
「ヒトヲ襲エ。憎悪ヲ巻キ起コセ」
 四方に立ち上がったローカスト達は、皆、グラビティ・チェインに飢え、定命化も末期に近い。しかし、それ故に、ただ生き抜く衝動だけに従う彼らは悪鬼の形相で。
「みんな、近くにの仲間同士で固まるんだ。孤立したらやられるぞ!」
「話し合いなんてしている状況じゃない! 生き延びるのが優先だ!」

 彼らは直面する。
 避けられぬ滅びと、それに抗う羅刹の狂気。
 そして、否応もなく巻き起こる、鋼鉄と魔力と火薬の大渦。
 すなわち、種の終焉に。


参加者
カロン・カロン(フォーリング・e00628)
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)
シィラ・シェルヴィー(白銀令嬢・e03490)
ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)
ベーゼ・ベルレ(ツギハギ・e05609)
レスター・ヴェルナッザ(凪の狂閃・e11206)
ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)

■リプレイ


 輻輳された怒号がホールを満たす。
「チッ、襲って来やがったか。まあいい――受けて立つぜェ!」
 しかし、ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)の咆哮はそれら全てを塗り潰した。一瞬の無音。ただ、炎に包まれた脚が地を蹴る音だけが聞こえる。そして、ギィ、とローカストの声。
「威嚇のつもりか? 生憎、虫に喰われるのは初めてじゃねェ」
 ぐ、と拳を握れば、さらけ出した上半身が隆起する。革のグローブがぎちりと音を立てた。跳躍。魂をも食らうという一撃が、飢餓に呑まれた哀れなる兵卒を打ちのめす。
「殲滅に来た訳じゃないが、命には代えられないからな」
「差出した手を取る気がないなら、躊躇なく殺すだけだ」
 ドールィに応じたのは、同胞たるレスター・ヴェルナッザ(凪の狂閃・e11206)だ。竜派と人派の差は有れど、眼光の剣呑さは共通している。
「だが、意思無く死んでいくのは気に入らん」
 剣鬼であった。
 なれど、その剣には未だ捨てきれぬ矜持があり、その戦いには目的があった。あるいは、そう信じたかった。
「せめて叩き直す――正気が戻るまで」
 だからこそ、知性すら失った敵手に自らの姿を重ね、竜骨の刃を振り下ろす。
「生きる理由なんざいくらでもあるだろ……なのにお前らは投げ出すのかよ」
 瞳の炎に怒りの色を乗せ、草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)は声を絞り出した。
 ローカストもまた、生き残る為に必死とは理解している。だとしても、彼女とて身を投げ出せはしないのだ。この胸には、もう幼馴染の少年が住んでいるから。
「さあ、同胞の声を聴け。正気に戻りやがれ」
 手にした装置が映し出す、豊かなる大地。それが彼らのかつての主星である事は、容易に想像できた。
「死にたくないって言ってくれ!」
 ああ、だけど。
「……くっ!」
「救いの手を跳ねのけるとは度し難いな……フッ」
 激昂に狂った牙と爪とが彼女を襲う。その時、灼熱の炎が渦を巻き、ローカストとあぽろとの間を遮った。
「ならば、揺らぐとも消えない殲滅の焔で、地獄の中でも燃え続けよ!」
 ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)の舌鋒は、他の仲間よりも苛烈に過ぎた。主星の幻影が齎した騒乱の最中でなければ、あるいはもう少し踏み込み過ぎていれば、有り得る全ての可能性を摘み取ってしまうほど。
「我が鮮朱の炎で名誉ある滅びを選ぶか、緩やかな死を受け入れるか。選ぶが良い」
 なれど、炎の翼を持つ青年は嗤うのだ。それすらも良しとして、豪奢に、傲慢に。

「ゾクゾクしちゃうわね。悪くないわ」
 実の所、今戦っている一団の実力は、過去のローカスト達に比べても明らかに低かった。戦士ですらない労働者階級。けれど、そうと知っていて尚、カロン・カロン(フォーリング・e00628)は昂りを隠せない。
 ――文字通り、お互い命がけってやつだもの。
 働きアリと末端の兵士。その類似性以上にシンパシーを感じるのは、大切な者――種族、家族、あるいは仲間と生き延びたいと願った故か。
「抗ってちょうだい」
 鋭くも力の抜けた杖が打つのは、スコップを握る黒き腕。働きアリのマイナーと呼ばれ、アポロン強襲作戦でその姿を目撃されている個体だ。
「おれだって……死ぬのは、恐いっす」
 ミミックのミクリさんの援護を受けながら、ベーゼ・ベルレ(ツギハギ・e05609)が前に立った。クマ耳のスマホが届ける優しい祈り。人数が多く、その全てには行き渡らねど、何名かは加護を得て仲間の盾となる。
「でもそれは、こんなカタチじゃない。キミがキミじゃなくなったら、意味なんてない!」
 飢えて狂ったデウスエクスが、もしも意思を取り戻すなら。その方法はただ一つ。
「地球のコト、きっとすきになれると思うから……!」
 怯えを見せながらも言い募るベーゼ。だがマイナーはショベルを振り上げ、躊躇いなく叩きつけた。ぐっ、と声が漏れる。
「――馳走いたしましょう。アトスの砲弾を」
 更なる追撃を止めるべく、銃士シィラ・シェルヴィー(白銀令嬢・e03490)の砲門が咆えた。刻まれた三騎の小熊が震える度、爆ぜる火箭。それはこけ脅しには程遠い火力を孕んでいたが、しかし、彼女とてマイナーを討ちたいわけではない。
「貴方に憎悪は向けません」
 戦闘と説得。それは矛盾していて、けれどこの場ではどうしようもない選択。ならば、この圧倒的な火力で少しでも動きを封じる事が出来れば十分というもの。
「だから、生を望むなら少しだけ――わたし達の声を聴いて」
 それは、どこか希薄なる彼女が紡ぐ、精一杯の熱量だ。マイナーへと更に声をかけようとするシィラ。
 だが、その時。
「ギ、ギィ!」
「ちぃっ!」
 彼女を狙い横合いから飛び掛かってきたローカストを、ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)の長い脚が叩き落す。
「絶体絶命はどっちやらって状況なのによ」
 くつくつと喉を鳴らす。なるほど、この探索自体がローカストの説得を目的としているのは確かだ。だが、乱戦に陥ってさえ呼びかけを止めず、手加減めいた攻撃をしている者さえいる。
 一言で言えば、物好き揃い、か。
「ま、俺もそれに絆されちまってるワケだが」
 開いた左目から流れ出る、青い炎。
「テメェらがやるってんなら、支えてやるさ」
 月さえ見えぬこの場所で、酔狂に踊ろうと――そう決めた。


「全く歯応えがないな……フッ。少々役者不足か」
 ラハティエルはそう言って剣を下ろす。事実、敵の多くは、様子見程度の攻撃で既に戦闘不能に陥っていた。まともに戦えるのは、やはりマイナーだけだ。
「いや、もはや騎士の敵ですらない」
 しかし、それよりも彼が忌むのは、戦いを生業としない者が相手という事だ。例え、狂ってしまった相手だとしても――いや、だからこそ。
「たかが残党狩りに、我がカタナソードを振るうまでもなかろうよ……フッ」
 剣先が描いた星辰は守護の力となり、仲間達に降り注ぐ。それは、説得しつつ耐え凌ぐ者達にとっては天の恵みであったのだが。
「キギィッ!」
「おれの、おれ達の話を――」
 意識があるのかないのか。言葉は届いているのか。判らぬままにベーゼは叫ぶ。振り下ろされたショベルの衝撃に、温和な顔を歪めて。
「――聞いてくれって言ってんだろっ……!」
 おぞましきは理性を失った姿。けれど、彼はもう、この場に立つ意味と理由とを知っている。
(「大丈夫、おれは――立っていられる」)
 みっともなく涙を流して、震えを隠せなくて、それでもベーゼの瞳には力があった。そして、その隣に並び立つ竜人の姿。
「そろそろ諦めたらどうだ」
「諦めたらおしまいっす」
 即答する僚友に、ドールィはそうかよ、と鼻を鳴らした。次の瞬間、魁偉なる右腕が大きく膨らんだかと思うと、敵の胴へと叩き込まれる。
 ずん、という音が響いた。
 これまでの攻撃との違いは唯一つ、気の類を纏わせていないという事だ。つまるところ、これは敵を倒す為ではなく、戦意を折る為の一撃。
 跳び退って距離を取ったドールィは、どこかすっきりとした風情で。
「なら、付き合ってやるよ――俺が真っ先に諦めるのは格好悪ィからな」
「さしづめ、無謀でも恐れず、無駄と諦めず……ってな」
 カッコイイよアンタら、とローデッドは笑みを落とした。そのまま首狩り兎は、その名の如く跳ねて飛ぶ。
 手加減とは言え、手中の得物は振るう気になれなかった。今、青い炎を纏ってしなるのは、防具など何処かに忘れてきた脚の一蹴り。
 ――なあ。
「尽きるには未だ早いだろう?」
 強かに打ちのめす。そう口にした自分の熱を、ローデッドは意外にも感じながら。
「なら……燃やせよ、テメェの命を」

「お前らは負けた、だからこうなってる」
 それは膨大な太陽エネルギーの片鱗か。この地中に在ってなお美しいオーロラの光が、あぽろの示すままに仲間達を包む。それは、とても暖かな感覚で。
「けどそれが何だってんだ? まだ、お前は生きてるだろ」
 一方、激しい調子でマイナーへと浴びせられる言葉。もしそれが理詰めの詰問だったなら、あぽろの思いは何一つ届かなかっただろう。
「もうアポロンはいねぇんだ。お前自身で考えていいんだぜ」
 その声に乗せられた確かな熱が、マイナーの耳朶を震わせる。間違ってもアイツを太陽神だなんて認めないけどな、とは、ふと漏れた本音か。
「ギ……イッ」
 それでも、マイナーは戦意を捨ててはいない。ショベルと並ぶ得物である蟻の大顎を一杯に広げ、手近に居たレスターへと躍りかかる。
「最後の晩餐かもしれんのに、不味い炎で悪いが」
 だが、彼はあえてその牙を受けてみせた。一瞬遅れて伝わる、肉を引き裂く痛み。
「喰いたきゃ喰え。どうせ一度喰われた腕だ」
 差し出した右腕が纏う、瞳と同じ銀の炎。突き刺さった顎は、その炎ごと食い千切るけれど。
「……やはり、無駄か」
 グラビティ・チェインは魂に宿るという。ならば、常の方法ではやはり死をもってしか取り出す事は出来ないのだろうか。
「だが――生きる意思を捨ててねえんなら、諦めるな!」
「ええ、まだ貴方には、引き返す道がある筈です」
 そう言って、シィラはたおやかな手を伸べ、マイナーを手招く。その指先に宿るのは、見逃す事あたわぬ蠱惑的な拍動。
「此方を向いて、さあ……おいでなさい」
 果たして、飢餓の限界に達しているマイナーには、それは余りにも刺激的な餌であった。夢中になってシィラの掌を追う。無論、幾重もの前衛達が、その牙を遮るけれど。
「地球での生は確かに短いわ。でも、だからこそ価値があるの」
 むしろローカストの動きは緩慢であった。だから、カロンはいまひとたび得物を握り、『彼女』を打ち据える。
「――とても濃い、終点があるからこその価値が」
 ふ、と笑いかけるカロン。
 彼女は、自分が意外と寂しがりであると知っている。あるいは、それは欠けた過去への代償行為なのかもしれないが――。
「少しでも心に声が届いたなら、抗って見せてちょうだい」
 鋭敏なるカラカルの感覚。未だ敵である相手にそう言わしめたのは、彼女が抱いた『この子達とは賑やかにやっていけるかもしれない』という直感なのだろうか。
 いずれにせよ。
「――ギィ」
 受け入れた様に、あるいは諦めた様に。マイナーは、その膝をついた。


 錆びた斧は後ろに置き、両手を広げたベーゼが近寄っていく。おそるおそる、そして襲ってこないと判ってからはほっと力を抜いて。
「……もう、大丈夫っすよう」
 涙と鼻水も拭わずに、毛むくじゃらの掌で硬い肩に触れる。じんわりと伝わっていく温かみ。その効果はぱっと見には判らないが、癒された事は伝わるだろう。
「キミが汗を流したのは、皆と笑って生きたかったからじゃないんすか?」
 そう言ったベーゼの隣に腰を下ろして、カラカルの少女は蟻の娘と視線を合わせる。周囲で戦闘中である中、それは危険とも言える行為だったが、カロンは頓着しなかった。
「あなたにも護りたい子がいる?」
 きっと居るだろう、と確信しながら、彼女はそう切り出した。主か、幼き姫か、あるいは僚友か。誰かの顔を思い浮かべながら、自分の言葉を聞いてくれればいい、と思う。
「もしそうなら、きっと楽しいわよ、『この先』」
 先輩が保証してあげる、と笑ってみせた。そう笑える位の絆を、既にカロンは得ている。
「保証する。地球の生活も悪くないわ」
「まあ、人の命なんざ短いのかもしんねェけどな」
 長く伸びた兎耳を掻きながら、話を引き取ったローデッド。その左目は薄く細められ、もはや先ほどまでの輝きの痕跡はない。
「有限ってのも悪いもんじゃねェぜ」
 痛み。苦しみ。それらが山ほど待ち受けている事は否定しない。ああ、だけど。
「けど、だからこそ、真っ直ぐ全力で生きられる。……今だって、そうだ」
 わしゃわしゃ、と頭を掻き交ぜる。喉奥の疼きを感じてなお、こんな事を口にできる自分を持ち出すまでもなく――尽きるには未だ、早いのだ。
「地球で暮らす人間も、皆、大切な何かの為に生きてるんだ」
 それはお前らも同じだろう、と告げるレスター。常の口数の少なさを思えば、随分と饒舌である事は自覚している。だが、そうでなければ伝わらないとも、知っていた。
「生きるに値するもんがありゃ、生の短さなんぞ大した事ねえよ。……守ってやれ、あの姫様を」
 僅かに記憶を刺激されつつ、レスターはそう口にする。復讐に生き、戦いに生きる男。しかし、彼の銀の目に映る視界は、まだ色彩を残していた。

「いいのかよ、生かしておいて」
 周囲を警戒しつつ見守るラハティエルに近寄るドールィ。やる気満々だったじゃねェか、と嘯く彼の口角は、面白そうに吊り上がっていた。
「なに、戦術的な判断だ……フッ」
 もはや興味が失せたというポーズを崩さないラハティエルは、今の奴らに利用する価値すら全く無い、と言い放つ。
「敵としても、味方としても、我々と並び立てる存在とは到底思えないから、な。ならば、あえて我が剣を汚す必要などない」
 そう冷笑を浮かべる僚友に鼻を鳴らし、ドールィもまた視線をマイナーを囲む仲間達へと向ける。それがこの男なりの美学だと理解できるから、捻くれた奴だ、とは言わなかった。
「俺達と潰し合うか、この地球で生きるか。連中が、連中自身の意志で選べばいい。……後の事は知らんさ」

 やがて、それぞれが思いを伝えた頃。
 最後の力を振り絞り立ち上がったマイナーが、よろよろと歩き、程近くにあった『装置』へと寄りかかる。
「……ギィ」
「この装置を直せ、という事でしょうか」
 意を決したかの様に、シィラが進み出る。ふわり、軽やかに踏んだステップ。華奢な身体が舞い踊る度、妖精の魔力が花弁となり舞い散って。
「信じます――貴方に、慈愛を」
 祭壇に捧げる供物の如く、オーラが降り注ぐ。
 そして。

「――!」

 突然。
 地滑りの様な音が響くと同時に、装置が淡い緑の光を帯びた。
 ゴゥゥン、と吠える装置。それがローカストを目覚めさせたのだと思い出し、ケルベロス達は緊張を露にする。
 だが、この装置こそ最後のチャンスをローカストに与えた希望である事も、彼らは知っていた。
 ケルベロスが見守る中、光は急速にその強さを増し、そして。
 視界が遍く緑に染まった。
 僅かに一瞬、ホールを薙ぎ払う様に照らした緑の光。それを浴びたマイナーの輪郭が、同じ緑の光に溶けていく。
「此処で、一緒に生きましょう……手を取り合う事が出来ると、そう信じます」
「ああ。この地球で、新しい太陽の下で生きてみようぜ」
 シィラ、そしてあぽろが声をかける。急速に輝きを増すマイナーは、それらの言葉に頷いた様に見えて。
「……この太陽の巫女さまが、日向ぼっこの楽しみ方を教えてやるからよ」
 光が消える。
 後に残ったのは宝石。それを拾い上げて、あぽろは呟いた。

作者:弓月可染 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 15/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 3
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