●赤マントへの『興味』
赤マントといえば、主に昭和初期に巷で語らわれた都市伝説だ。
実際にあった未解決事件を元としているという説もあるが、その伝説は口伝えで語られ、流布する際に様々な要素が付与されていったとされている。
曰く、赤マントは吸血鬼であり、子供を連れ去るという。
曰く、出会い頭に「赤が好き? 青が好き?」と質問してくるという。赤と答えれば全身血まみれになって殺され、青と返答すれば水中に沈められるそうだ。
「けっ、赤マントなんているはずねぇだろ」
愛知県豊橋市の住宅街。空が暮れなずむ中、1人の少年が鼻を鳴らして歩いていた。
先日、仲間内で見た者がいたという赤マント。そいつがいないことを証明しようと彼は意気込む。
……いや、それは建前。
都市伝説について語り合った友達は見たと言っていた。だから、自分も見てみたい。本当に出くわせば、きっと皆に自慢することが出来る。それが海斗の本音だ。
再び、海斗が周囲を見回していると。いつの間にか、彼の背後に魔女の姿をした人影が立っていて。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
それは、淡いモザイクに包まれた触手を蠢かすボロボロのフードと衣装を纏ったドリームイーター。第五の魔女・アウゲイアスだ。
海斗が魔女を確認しようとすると、胸から太い鍵が突き出す。
「な、なん、だ……?」
程なく、気を失う少年の背から引き抜かれた鍵は、魔女が突き刺したものだった。
倒れる少年の胸には傷すら残されてはいなかったが、そのそばから、全身を赤いマントに包んだ人影が姿を現す。成人男性くらいの背丈の怪人。白い仮面を被ったそいつの顔はモザイクに覆われている。
「私は、何者だ……?」
一言呟いたそいつは、何処ともなく去っていく。それを見届けたアウゲイアスもまた、姿を消したのだった。
とあるビルの屋上で。
ケルベロスが集まる中、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が駆け込んでくる。
「赤マントって都市伝説への『興味』から、ドリームイーターが誕生するようデス!」
「うん、新たな夢喰いが顕現してしまったようだね」
それに、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が大きく頷いた。
様々な依頼の陰で、「パッチワーク」の魔女の暗躍は続く。
仲間内で都市伝説を語り合っていた少年の1人が、その都市伝説を確認しようと住宅地を歩いていたところ、魔女の姿をしたドリームイーターに襲われてしまったらしい。
「魔女は少年から奪った『興味』を元に、怪人型のドリームイーターが実在化してしまうよ」
そいつは名前の通り、全身を赤いマントに包んだ姿の夢喰いが新たな事件を起こそうとしている。
また、『興味』を奪った魔女は姿を消しているようだ。
「こちらの所在は気になるけれど、現れた怪人型ドリームイーターを先に対処しないといけないね」
新たな被害が出てしまう前に、ドリームイーターを倒さねばならない。これを倒せば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだ。
ドリームイーターに襲われたのは、朝川・海斗。小学6年生の少年だ。
愛知県豊橋市の住宅地の道路で襲われた彼はそのまま倒れ、昏睡状態にある。無事にドリームイーターを倒した後で介抱してあげたい。
「『興味』から生まれた怪人型ドリームイーターは、住宅地を彷徨い続けているようだね」
現れる怪人型ドリームイーターは1体だけで、配下などはいない。
赤マントという名前が示すとおり、そいつは全身を赤いマントで覆っている。また、顔には白い仮面を被っており、その顔はモザイクで覆われているようだ。
「このドリームイーターは赤マントについての噂話についての発言があると、それを語る人の方へと引き寄せられる性質があるよ」
これを利用することで相手を誘い出し、有利に戦うこともできそうだ。
また、このドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを質問してくる』らしい。返答によっては、夢喰いは相手を殺そうとする傾向がある。
「一般人は、出会っただけでも殺される危険すらあるけれど……。ケルベロスの皆なら、上手く利用できるはずだよ」
戦いとなれば、ドリームイーターは手にするナイフを操って攻撃を仕掛けてくる。殺傷力が高い相手なので、十分注意して討伐に当たりたい。
説明を終えたリーゼリットは一息つく。
「赤マント……物騒な都市伝説だよね」
だが、ケルベロスなら、しっかりと対策して対応すれば、問題ない相手のはずだ。
「それでは行こう。少年を助けに。そして、都市伝説を都市伝説のままにする為に」
リーゼリットはそうして、ケルベロスにヘリオンへ乗るよう手を差し出すのだった。
参加者 | |
---|---|
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031) |
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664) |
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432) |
ミュラ・ナイン(想念ガール・e03830) |
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479) |
南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831) |
神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273) |
仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216) |
●赤マントとは
ヘリオン内にて。
現場到着まで、メンバー達は歓談しながら時間を過ごす。
「今回もよろしくお願いします」
女性のような見た目の十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)が挨拶を交わしたのは、ドレス着用のアリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)と真っ白な彼女のボクスドラゴン、シグフレド。同じ旅団の仲間の存在は、こういった依頼ではとても心強いものだ。
柔和な笑みで返事を返すアリシア。彼女はしばしの間、泉と話をする。
「虚から実を得たモノ、ですか」
そろそろ、元凶を叩いておきたいところ。しかしながら、今はまだその時ではないのだろうと、アリシアは語った。
「まあ……こういうのは、ぱぱっとやっつけるのが吉よねー」
黒い長髪の神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273)は、テレビウムのテレ蔵くんに視線を落とす。最近、撃破スコアを増やして頑張るかわいいサーヴァントだ。
「あたしも頑張らないとねー」
にっこりと笑う純恋。程なく、ヘリオンが現場に到着し、皆立ち上がる。
着物姿の仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)は少し依頼に緊張していた様子だが、これも巫女としての役割だと、胸を張って振舞っていた。
「なんにせよ、私の目の前で民に手は出させません。行きますよ」
仲間達へとそう告げたアリシアは白い翼を広げ、眼下に広がる街へと降下していくのだった。
夕暮れの中、メンバー達が降り立ったのは、愛知県豊橋市の住宅街だ。
彼らはそこでまず、怪人型ドリームイーターの誘き寄せを始める。ある程度広く、かつ街灯などで照らされて明るい駐車場を見定め、一行は人払いを行う。
「ここは戦場になりますので、移動を願います」
ラブフェロモンを振り撒き、銀色のウェーブヘアの南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831)が駐車場を訪れる一般人を魅了する。そうして、彼女はここからの移動するよう促していた。
泉もまた隣人力を働かせて人々を説得し、ミュラ・ナイン(想念ガール・e03830)が駐車場にキープアウトテープを張り巡らせる。
その間、ウィザードハットが特徴的な新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)らは、この近辺を捜索していた。近場で倒れる被害者の少年、朝川・海斗をアリシアが発見し、安全な場所へと搬送してようだ。
仲間達が準備を進めるのを、黒いサバト服で全身を覆う霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)は眺めていた。
そうして、準備が完了したところでケルベロス達は集まり、夢喰いをおびき出す為に噂話を始める。
「この辺りには、赤マントの怪しいやつが出るらしい」
そうして、仲間の状況を見て、恭平が口を開く。
「赤マント……物騒な都市伝説ですね」
やや伏し目がちにそう言う夢姫だが、彼女は都市伝説を信じてはいないとのことだ。
「とはいえ、仲間内で見たとかいうのを聞いたら、やっぱり興味持ってしまいますね」
ただ、1人取り残されたくない夢姫は仲間と話したいと考え、出来るだけその話に参加しようとする。
「あー、こんな怪異の話……。昔、聞いたことあったっけなー」
仲間と同年代に見えて、チーム最年長の純恋。ケルベロスとなった今では全然怖くはないが、昔は姉にこういった話題で脅されたものだと彼女はしみじみ語った。
「赤マントって、かっこいいヒーローっぽくないです?」
一方で、赤マントなんぞ知らんと、楽観的なミュラは仲間の後ろでぽりぽりと色鉛筆チョコを食べている。
「日本人なのに、赤マントの吸血鬼とは……ふぅむ」
大人びた様子の手毬だが、山奥、世間と隔絶された環境で育ったからこそ。世間知らずなところもある手毬は「珍妙な怪談話じゃのう」と感嘆しつつ、有名な話なのかと首を傾げる。
ケルベロス達がそんな会話を続けていると。夜の帳が下り、闇に紛れてそいつは姿を現した。
「出たな、怪人赤マント」
恭平が小さく呟くと、全身を赤いマントに包んだ仮面の人影が姿を現す。その仮面の下からモザイクが見え隠れし、ドリームイーターであることを疑わせない。
「中々いい仮面ですね。どうです、そこの赤マントよ。此方も被ってみては?」
裁一が敵の姿を見回し、予備で持っていたサバト頭巾を差し出すが、怪人型ドリームイーターは全く応じない。
「私は、何者だ……?」
「私はどこから来たのか、私はどこへ行くのか、私は何者なのか」
問いかける赤マントの質問に答えたのは、恭平だ。
その間に、仲間に返答を任せる姿勢の夢姫、泉は黙して状況の推移を見守る。ミュラは仲間の陰に隠れていたようだ。
「自らの存在に疑問を持つ。その問いを抱く存在は知られている限り一つしかない。人間、だ」
恭平の言葉に、赤マントは仮面の奥の瞳を光らせる。望む答えではなかったのは明らか。そいつは敵意をむき出してきた。
「一児の母として、子どものピンチは放っておけないわねー。……ってことで、かかってきなさいな」
戦いは怖い。……それでも。敵を見据えた純恋は構えをとる。
こつこつこつ。
泉は戦う前に踵を鳴らす。それは、無事に帰ることができるようにとの彼なりのおまじないだ。
そうして、ナイフを抜いた彼は、敵へと飛び出していくのだった。
●赤が好き? 青が好き?
すでに、被害者の少年の避難には、この場にいないアリシアが動いている。ならばこそ、ケルベロス達はドリームイーター、赤マントの討伐に全力でかかり始める。
「赤が好き? 青が好き?」
襲い来るドリームイーター、赤マント。そいつは攻撃の直前、さらにケルベロス達へと問う。
「好きな色は赤かしらねー」
純恋がまず答える。本当に好きな色はともかく、敵の攻撃に備えての一言だ。
(「ディフェンダーとして、攻撃を防ぐことを第一だしねー」)
テレビウムのテレ蔵くんも斬撃耐性。これなら、敵の刃にも耐えられるはずだと純恋は考える。
「――好きな色となれば、赤よな。紅は祭事に用いる目出度き色なれば」
一方で、手毬は本当に好きな色を答え、敵の攻撃を引きつけようとする。
赤マントは怪しく目を光らせ、素早く両手に握った刃で手毬を狙う。
しかし、その前に飛び出したのは、拍子木を手にした紙芝居台のような見た目のテレビウム。御芝居様は画面を光らせ、敵の引き付けをも行う。敵に苦手な頑健の攻撃もないと判断した手毬は、仲間の盾となるよう指示を出していたのだ。
そして、手毬は扇を手にし、戦場を舞う。その舞いの中に攻撃の挙動も組み入れた彼女は、竜と化して硬化させた腕で赤マントの体を貫く。
仲間の壁となるウイングキャットのプリンが翼を大きく羽ばたかせる後方で、主の夢姫はすっと息を吸いこんで唄い始める。
夢姫の歌は癒しをもたらし、前線に立つメンバーに活力を与えていく。彼女はさらに仲間の後方にカラフルな爆発を起こすべく、爆破スイッチを手にしていた。
仲間の支援を受け、ナイフを手にする泉が攻め込む。
(「最初からナイフを抜くこともまた、久しぶりかも」)
敢えて、選んだ駐車場という広い場所を十分に活かし、泉は仲間の存在を意識し、孤立を避け、狙撃役の仲間の射線を遮らぬよう立ち回る。
そして、彼はナイフを持ったまま、オーラを持った拳で敵の体を殴りつけていく。
「では、この黒マントの、俺が相手をしましょう」
思いついたように敵へと告げた裁一は気配を消し、仲間の攻撃に紛れるように接敵した彼は注射器を取り出す。
「そのマントに、洗濯しても落ちない染みを付けて泣かせてやりますよ! デストローイ!」
裁一は怪しげな薬物で満たされた注射器を直接、赤マントへと突き入れる。その薬は敵の動きを阻害し、痺れを走らせた。
「痛いの痛いの飛んでいけ―」
純恋は応援動画を流すテレ蔵と共に前線で身を張り、仲間の回復を行う。周囲に咲く紫の花。それは、純恋と同じ名の花、スミレだ。それが光を放ち、仲間の傷を癒す。
そこで、海斗の避難を完了したアリシアが駆けつけた、敵の動きを抑えようとルーンを紡いだ。
「一人に使うには向かないのですが……。我が縛鎖、越ゆること許しません!」
アリシアが扱うは十三あるルーンの一つ、狼のルーン。魔力で編んだ鎖を幾重にも生み出して放ち、敵の体を拘束する。
「シグ、ここは攻撃を」
さらに、回復メインにとアリシアが指示したシグフレド。回復は十分と、主の意もあってブレスでの追撃を行う。
「…………!」
それに小さく呻く赤マントへ、摩擦で靴を燃え上がらせた恭平が飛び込む。
「マントを燃やしてやろう」
炎を舞わせた恭平は正面から赤マントの身体を蹴りつける。
マントに引火する炎。ミュラは色鉛筆型チョコをかじりながら、後方でそれを見ていた。
「これは甘いの食べて、脳みそ回さねばいきませんなぁ」
仲間は比較的、敵を圧倒しているようにも見える。ミュラはさらにダメージを稼ごうと、書物を数ページ破き、空へと投げ飛ばす。
宙に描かれた八芒星。赤紫と青紫の2つの四角形が合わさるそれらの頂点にそれぞれ、ミュラの分身が現れる。
「ピェトァ メヴ ダム クァ ピト ヴェート マノ ザン エピ ウラ ダム ヤーク」
彼女が鏡陣八芒の第三節を唱えると、刹那、腰の羽飾りが炎の様な光を放つ。すると、分身達は大鎌を手にし、笑い声を響かせながら、赤マントの身体を次々に切り裂いていく。
小さくよろけはしたが、まだ体力を残す赤マントは仮面の奥の瞳を光らせる。
「……赤が好き? 青が好き?」
赤マントは再び、ケルベロスに問いかける。裁一は赤マントと視線が合ったことに気づいて。
「え、俺です? 食欲減退色ことブルー! 青です!」
裁一もまた、自身の防具耐性に合わせて返答した。飛び出す赤マントはどこからか大量の水を集め、裁一を狙って包んで来ようとする。
「ばっちり、皆を守るわよー」
それを純恋が飛び込んで身代わりとなり、裁一を救う。
「まぁ正直、黒が好きですが」
難を逃れた裁一は本音を漏らしながらも、高く飛びあがる。
「ほら、そのマントで、俺の靴を拭いてくださいよ~」
敵を深紅の血で染めようと、彼は力強く赤マントの身体を蹴りつけ、そいつを足止めした。
傷口から零れ落ちるのは、血ではなくモザイク。それが落ちる度、ドリームイーターは力を弱めていく。
ケルベロスはサーヴァントを含めた手数を活かし、赤マントを攻め立てる。
主に敵の気を引いているのはテレビウムの御芝居様だが、サーヴァント勢、そして、純恋が庇うことで御芝居様が前線を持たせてくれていた。
その間に、ケルベロスは淡々と赤マントを攻め立てていく。
アリシアも燃え上がる靴で赤マントの体を強く蹴りつけると、恭平が古代精霊魔法を発動させる。それにより、帯電させた黒曜石の針が宙に浮かぶ。
「撃ち貫くは黒曜の連針!」
彼はそれらを、電撃と共に一点に集中して投射した。
「ぐっ……」
撃ち抜かれた赤マントから、はっきりとしたうめき声が漏れる。
そこへ、テレ蔵くんの応援動画もあって、赤マントの集めた水の拘束から逃れた純恋が「白蛇弓 因達羅」を構えた。
「弓道だけは昔から得意なのよ!」
彼女が矢を射ると狙い違わず赤マントの胸に突き刺さり、そこに氷が張っていく。
さらに、持参のフィナンシェをかじりつつミュラが肉薄する。彼女は腕に絡みつくオウガメタルを鋼の鬼と化して殴りつけ、夢喰いの体を覆う赤マントを破いていった。
「ミュラさん、続きますね」
完全にケルベロス優先と踏んだ夢姫。プリンが尻尾のリングを飛ばして敵の腕を縛り付けるのに合わせ、夢姫は黒色の魔力弾を投げつけ、赤マントに悪夢を見せ付ける。
「よくやったの」
盾となり続ける自身のテレビウムを労う手毬。彼女は『竜神様』の力を借り、ゆったりとした踊りの最中に腕を突き出す。叩き込んだ拳は、赤マントに痛烈なるダメージを与えた。
「く、ぬぅ……」
傷口から零れるモザイク。赤マントは少しずつ、その存在を薄めていて。
「制御できる自信はありませんが、ヒトツメ、行きますよ?」
前線で戦う泉は、この相手をどう攻め立てるべきか。どちらの武器で放つのか、速度はどうか。全て秘密の謎解きのように彼は考えながらナイフを振るう。
必要最低限の動きでナイフを突き出した泉。手ごたえを感じた彼は赤マントへと告げる。
「事件自体は未解決でしょうが、今回この場に関してはこの一閃で解決です」
「う、う、あっ……」
目の前の赤マントの存在がモザイクに包まれていく。そして、モザイクはすぐに薄まり、何もなかったかのように消え失せてしまったのだった。
●謎は気になるものの……
ドリームイーターを撃破したケルベロス達。
「皆さん、お疲れ様です」
夢姫は戦い終えた仲間を労い、傷つくメンバーに対して癒しの歌声を響かせ、活力を与えていく。
純恋も紫色の菫の花を周囲に咲かせることで、戦場となった駐車場を幻想交じりに補修をしていった。
その間に、恭平がこの場へと連れてきた海斗へ、緊急手術を施して介抱する。
「こんなところで倒れて、どうしたんだね?」
目覚めた海斗に恭平が声をかけると、少年は意識が途切れるまでの経緯を説明した。
そんな彼へ、ミュラが懐から一つ、フィナンシェ……を差し出して。
「好奇心は猫も殺しちゃいますよ」
すぐに、彼氏に会いたい。そんなマイペースな考えのミュラは仲間達から背を向け、その場を去っていく。
「リア充の波動を感じる……!」
裁一は黒頭巾の下から、そんな彼女の背に怪しげな視線を向けていた。
……それはそれとして。
泉はブルースハープ……ハーモニカのような楽器を取り出し、即興曲を奏で始める。「エニグマ」とも呼ばれる変奏曲に、泉は含みを持たせつつ、海斗へと呼びかけた。
「謎は謎だから気になるものですが、危ないことには近づかれませんように、ね?」
実際、危険にさらされた状況なのは本人も理解しており、小さくその身を震わせていて。
「早く家に帰った方がいいぞ……あまり遅くまでうろうろしていると、怪人に襲われるかもしれんぞ?」
「ひえええええっ!」
悪戯っぽく告げる恭平の言葉に飛び上がる海斗は、一目散に自宅へと帰っていくのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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