『彼女いない歴イコール年齢』な男の悲劇

作者:雪神あゆた

 初夏の風が青葉を揺らす。さやかな音。
 雑木林近くの道を、太った男が歩く。
 顔にはそばかす。シャツはズボンの中に入っている。鼻歌でアニメソングを歌いつつ歩く男。ふと鼻歌が止まった。
 林の中で、声がしたのだ。
「ん?」
 男が林の中に踏み入れると、そこには一本の木。黄色い果実がたわわに実り、そしてその木と一体化したような女性の姿。女性の胸にもたわわな果実。
 とろんとする男の目。
「……巨乳……爆乳」
 男はふらふら女に近づき、手を伸ばす。
 女の手が男の手首を掴んだ。引き寄せる。男の顔をたわわな胸の果実で挟む。ふにゅっ形を変える胸。
「……女性の胸に触るのって、赤んぼの時以来……」
 うわごとのような男の声。
 女の手が動く、男の肌を這う。熱っぽい吐息を男に吹きかける。やがて、男のベルトが音を立てて外れた。
 しばらく時が経ち。男は下半身を露出した姿で息絶えていた。

 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロス達に説明を開始する。
「『爆殖核爆砕戦』後、大阪城に残った攻性植物達の調査を行った、ミルラ・コンミフォラさん達から、新情報が得られました。
 調査によると、大阪城付近の雑木林などで、男性を魅了する『たわわな果実』的な攻性植物、バナナイーターが出現しているようです。
 バナナイーターは、十五歳以上の男性が近寄ると現れ、果実の魅力で魅了し絞りつくし殺す事で、グラビティ・チェインを奪いつくします。
 奪ったグラビティ・チェインで、攻性植物は新たな作戦を行うつもりかもしれません。
 皆さん、このバナナイーターを撃破し、誘惑されてしまう犠牲者を救ってください。お願いします」
 セリカは一礼。そして地図を取り出し、大阪城付近の一点を指す。
「今回の攻性植物が出現するのは、この雑木林になります。
 皆さんは一般人の男性が攻性植物に出会う前に、先回りできます。
 この攻性植物・バナナイーターを出現させるには、囮が必要です。
 そのまま一般人を誘惑させるか。一般人を避難させたうえで、ケルベロスの男性一人以上が囮となるか。どちらかですね。
 バナナイーターは攻性植物の拠点の大阪城から地下茎を通じ送られているようで、囮となった人数に合わせた数の攻性植物が出現します。
 出現する攻性植物は一体目以外は、戦闘力が低め。なので、囮になる男性の数を増やし、ある程度数を呼び出し、一気に叩くことも可能です。
 注意すべき点は『攻性植物が出現してから三分以内に攻撃すると、出現した地下茎を通ってすぐ撤退する』こと。
 つまり、囮となった者は三分程度、攻性植物と戦闘せずに接触しなくてはなりません。
 幸い、攻性植物側もその三分間は攻撃などはせず、対象の男性を誘惑する為、囮が一般人でもすぐ死ぬという事はありません。
 攻性植物の誘惑は、ケルベロスには効果はありません。でもケルベロスでも男性なら、攻性植物は獲物にしますから、ケルベロスの男性が囮になる作戦は有効です。
 その場合は、誘惑された振りをするのも必要かもしれませんね」
 やや顔を赤らめながらも、セリカは真面目な表情。
 さて、バナナイーターが誘惑してから三分経てば、戦闘を行わねばならない。
「バナナイーターは戦闘になれば、次のような技を使います」
 たわわな胸を揺らし、遠列の敵を催眠状態に陥れる、理力と魔法の技。
 胸のふくらみから、ビームを飛ばし遠単の敵を炎で燃やす、頑健と魔法の技。
 敵に胸のふくらみを擦り付けながら、腕や蔓で近単の敵を捕縛する、敏捷と破壊の技。
「呼び出したバナナイーターは、どれも同じ技を使います。
 が、最初に出現した個体は、特に巨乳というか爆乳で技の威力も高いようです。ご注意下さい」

 説明を終え、セリカは再び頭を下げる。
「男性を誘惑し絞りつくすなんて……卑猥だと思います。卑猥な攻性植物、バナナイーター、必ず倒してください!」


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)
ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)
カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)
サシャ・フラヴィニー(矯めるなら若木の内に・e21203)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
黒岩・りんご(禁断の果実・e28871)
エリザベート・アレキサンダー(自称天空の覇者・e34605)

■リプレイ


 雑木林沿いの道。男が林に入ろうとしていた。そこに足音。
 駆け付けたケルベロスのうち二人、ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)とプラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)が彼へ近づいた。
 大人の姿をしたミルフィの身体から甘い香り。プランもラブフェロモンを発散。
 ミルフィは豊かな自分の胸を男の腕に押し付ける。相手の腕で形が変わるくらい強く。
 プランは男の逆の腕をとり胸で挟む。挟み込んだまま体を揺らし、腕を擦る。
「は、はへ?!」
 男の鼻から、ツゥと鼻血。ミルフィとプランは男の腕を引き、歩き出す。
「危ない所へ行かないで、わたくし達とご一緒に、あちらの安全な場所に参りましょうよ♪」
「そっちにはデウスエクスがいるから危ないよ。あっちなら安全だよ」
 男は「へ? へ?」と声と鼻血を漏らしながら、ミルフィとプランに従い、ふらふら歩きだした。

 その後、赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)と黒岩・りんご(禁断の果実・e28871)も協力し、男を安全圏に移動させた。
 今、二人は他の仲間と茂みに隠れ、林の中の囮役を見守っている。
 萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)、カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)、サシャ・フラヴィニー(矯めるなら若木の内に・e21203)の三人が、敵を誘うために待機しているのだ。
 はたして囮役の前に女が三人、現れた。
 濃い緑の髪に薄い緑の肌。衣服はつけていない。たわわな胸に葉が張り付いている。木と同化したその姿は、バナナイーター。
「ふふ……遊びましょう……」
 バナナイーターたちは胸をたゆんと揺らし、楼芳たちに近づく。
 楼芳は胡坐をかいていた。近づくバナナイーターに何も言わない。
 バナナイーターは不思議そうな顔で、楼芳に体を寄せる。顔に当たりそうになる胸。
 楼芳は顔を背けた。
「恥ずかしがってるの? か・わ・い・い♪」
 女は楼芳の顔を手で挟む。顔を胸へ寄せる。楼芳の視界がおっぱいで埋め尽くされる。もうおっぱいしか見えない。楼芳がどんな顔をしているか、仲間からは不明。
 エイティーン姿のサシャは、バナナイーターに押し倒された。
 サシャの服の上を女の手が這う。敏感な場所を探るようにじっくりと。服越しの甘い感触。
「あっ、そこにそれは駄目ですぅ! ……っ」
 声を漏らし身を捩るサシャ。責めはより執拗に。指が敏感な場所をつぅっとなぞる。
 カナメも女の手に体を撫でまわされた。
 カナメは「ふふっ」不敵に笑うと、相手のたわわな果実に触れた。両手で揉む。
 もみ。もみもみ。指が胸に埋まっていく感触を楽し……いや耐えるカナメ。
 りんごは誘惑に耐えている仲間たちを見ながら、いちごの目を手で覆っていた。
「あ、あの……?」
 困惑するいちごの背に、りんごは体の前面の柔らかい部分を押し付け。
「お嬢様にはまだ早いですわ……興味あるなら、わたくしとか他のメイトとかが、教えられるかもですけど。くすっ」
 囁く。いちごの耳を擽る息。
 エリザベート・アレキサンダー(自称天空の覇者・e34605)は彼らの隣で囮役とバナナイーターを観察していた。ふと自分の胸を見下ろし、
「……デカけりゃいいってものじゃないと思うわ? それに私だって、あと10年もすればあれくらいは余裕なんだから!」
 拳を握りしめ、呟く。呟きつつも時間を確認。誘惑開始から三分経つと、
「みんな、いくわよ!」
 茂みから敵前へ飛び出す。エリザベートの手には、宝杖『Etoile de primordial』と『Komm du sube Todesstunde』。


 バナナイーターは二体が巨乳。一体が腕で抱えても抱えきれないほどの爆乳。
 揺れる六つの乳房。
 カナメは彼女らから距離をとり、構える。
「まぁ、少しは楽しめたけど、オレ面食いだからお前達みたいなブス趣味じゃないんだ」
「あんなに楽しんで、あんなにおっぱい顔をしてたのに!」
 おっぱい顔とは一体?
 カナメは言いがかりを無視し跳躍、巨乳バナナイーターの顔へ渾身の蹴り。カナメのスターゲイザーに、逸れるバナナイーターの上体、跳ねる乳房。
 りんごは敵にできた隙を逃すまいと駆ける。
「そのおっぱいに惑う気持ちは分かりますけど……今は、敵。刻んでいきますわ」
 りんごの槍の穂先に炎。体勢を崩した敵の脇腹をつき、燃やす。
 巨乳のバナナイーターは燃えながら、うふふ、と笑う。他二体と共に胸をそらし乳房をつきだしつつ、りんごに迫る。
 その時、いちごがりんごを突き飛ばした。
 仲間を庇ったいちごはバナナイーターの乳房六つに囲まれる。
 顔や背におしつけられる乳房。おっぱいは柔らかく吸い込まれそうで……そして絡みつく蔦や腕。いちごは消耗しながらも、
「りんごさん、大丈夫ですか? 良かった。……『私の力を貴方に。聞いてください、この歌を』」
 りんごが無事なのを確認し、歌いだす。『苺の守り人に捧げる、呪いを打ち破る力の唄』。大切な人への想いを歌い、己の傷を消す。ボクスドラゴンのアリカも治療を施してくれた。
 りんごにかわり楼芳が敵の前へ。囮の時とは異なり、楼芳は恥じらう仕草を見せない。凛と敵に対峙。
「あら、今度はよく見てくれるのね……なら」
 女たちの胸が弾んだ。揺れた。見る者を惑わす魔性の動き。おっぱいの躍動に、楼芳の動きが止まる。
 エリザベートは後方から戦況を観察していた。バナナイーターの巨乳の躍動をちらりと見、
「……く、悔しくないもん。『……星は天球を廻り命は万有を廻る。願わくばこの命正しき流転に舞い戻り給え。星の記憶に今この旋律を刻む……Reincarnation!』」
 エリザベートは『失われし星の秘術-輪廻転生-』を行使。
 楼芳を結界で包む。結界は楼芳を攻撃を受ける前の状態に戻す。おっぱいの悪しき影響を取り払う。
 ボクスドラゴン・ウルも楼芳を属性インストールで治療。
 楼芳はエリザベートたちに目礼。脚を敵へ半歩踏み出し、
『穿て、【四奪】!』
『カ式剄襲【四奪】』、グラビティの杭を巨乳女の足に打ち込む! 苦悶を顔に浮かべる巨乳女。

 敵の体力をそいだケルベロス達。が、敵の巨乳と爆乳はなお暴れ回る。
 今も、巨乳バナナイーターの乳房が光りだす。光線が飛ぶ。
 サシャは両手を広げ、皆の前に立つ。光線を体で止める。光線の持つ熱量に発火するサシャの体。
 ウイングキャットのヴィオレットが翼を広げ、風で支援。故にサシャは立ち続けられた。
 サシャの手には「すごい爆破スイッチ」があった。敵の動きを見ながらサシャはスイッチを押す。
 途端、敵の足元で爆発。混乱する爆乳女たち。サシャは仲間に、
「さあ、皆さん、今のうちです!」
 サシャに応じ、動くプランとミルフィ。
「囮の人達を誘惑してるところは楽しく見せてもらったけど」
「ですけれど、篭絡はわたくし達サキュバスの専売特許ですわよ……!」
 プランはくすっと笑うと氷河期の精霊を召喚。雪と氷でバナナイーターたちを襲う。
 ミルフィは側面に懐中時計の付いた『モックタートルブレイカー』で巨乳をさす。凍える巨乳バナナイーターへ更なる冷気。
「おっぱい……大きくても、寒い……」
 巨乳バナナイーターは胸を抱え蹲り、活動を停止。


 その後のバナナイーターの反撃は必死。先程より激しく舞う巨乳、爆乳。が、ケルベロスは、ディフェンダーを多く配置した陣形と回復グラビティで、攻撃をしのぐ。
 今も、サシャが敵のおっぱいおしつけ攻撃を受けていた。敵の胸はとろけそうでかつ一部分が主張して……。
 追い打ちせんとする巨乳バナナイーターを、ヴィオレットがキャットリングで牽制。
 サシャは一歩二歩後退し、己の胸に手を当てた。
「父さんと母さんみたいに、強く」
 声と青の瞳に、強い意志。サシャの『僕自身の物語』が仲間を強化する。
 楼芳はサシャの力が己に入るのを感じていた。
 楼芳はウルに仲間の回復を指示しつつ、己は直進。
 剣の柄を握り、上段に構える。
「斬る!」
 振り下ろされる刃。飛び散る体液。単純かつ強力かつ正確な斬撃。
 肩を負傷したバナナイーターは、巨乳ごともがく。
 カナメは肩を竦めた。顔に浮かぶのは冷笑。
「大人しくしててくれる?」
 そして甘い囁き声で、
『……人ってなんで、叶わないってわかってるのに、手を伸ばすんだろうね? 本当に愛らしくて、愚かだよね』
 言い終えると、敵の足に糸。手にも首にも糸。女の全身に無数の糸が絡む。『舞姫』。敵の口から洩れる悲鳴。
「……よくも……私たちのおっぱいの餌食にしてあげ……」
「そんなことはさせないわよ!」
 エリザベートは法衣の裾を揺らしつつ、宝杖を掲げた。宝玉部分から魔力の刃を出現させ、敵の体を断つ!
 悲鳴を上げる間もなく、巨乳のバナナイーターは消えた。
「残るはあいつだけ、さあ、早く決着をつけるわよ!」
 エリザベートの視線の先に、爆乳のバナナイーター。
 他の二体を凌駕する乳がぷるるん! 激しく上下。

 敵は残り一体。けれど爆乳バナナイーターは強い。おっぱいの揺れでケルベロスを惑わし、おっぱいを擦り付け動きを封じる。
 そして、今、爆乳バナナイーターはその胸部を輝かせていた。光線を放つつもりだ。
 ミルフィは敵の正面に立つ。敵が光線を放つと同時、ミルフィは胸部にブラ型の力場を発生させ、
「わたくしの爆乳力、とくとご覧なさいな! 『魅惑の双峰より迸る桃光……! バスタアァー・ビイィーム……!!』」
 自身もピンク色の2連の極太ビーム『バスターブラスター』を発射。
 交差する2種の光線。一瞬後。ミルフィは爆乳の光線、その熱に焼かれてしまう。
 が、ミルフィの光線も敵に直撃していた。片膝をつく爆乳バナナイーター。
 立ち上がろうとする敵の前へ、プランは『常夜咲裂く月下香』でチューベローズ型の攻性植物を召喚。
「花言葉は危険な快楽、いっぱい気持ち良くシテあげるね」
 蔦や根が、爆乳バナナイーターの足に絡みつき、最も敏感だろう箇所に花弁が吸い付く。
「ん~~~~っ」
 首をそらす爆乳バナナイーター。
 バナナイーターは既に息も絶え絶え。
「でも……私にはこれがある……っ」
 必死で立ち、胸を揺らす。たゆん、たゆゆん、ぽよよん。爆乳の揺れが近くのいちごを惑わそうとするが、
「効きません!」
 今までアリカ達が施してくれた耐性が、催眠の力をかき消した。
 いちごはすかさず、ブラックスライムを捕食モードへ。敵を丸呑みさせ、体力を奪う。
 バナナイーターは爆乳をばたつかせ、かろうじてブラックスライムから脱出するが、
 その懐にりんごが入り込む。
「あまり人心を惑わすものではありませんわよ! 『翼を焼きし辺獄の炎よ、我が右手に宿り、怨敵を燃やせ』!」
『軍勢を守る乙女の剣先』。手刀に紫の地獄の炎を宿させ、首筋へ一閃。
「……おっぱい……おっぱ……ひぃっ」
 りんごの一撃が敵の命を奪う。おっぱいは最後まで揺れていた。


 戦闘が終わった林の中は涼やかだった。
「終わったみたいだね。みんな、お疲れ」
 カナメは完全に敵が消えたのを確認。腕から力を抜き、息を吐く。
「皆さん、お疲れさまでした……。お嬢様も庇ってくださって、有難うございました」
「いいえ、りんごさんたちが無事でよかったですっ」
 りんごがねぎらうような笑みをいちごにむけると、いちごも顔を綻ばせて応える。
 プランとミルフィは、
「えっちなお姉さんに色々シてもらえてよかったね、あのまま搾りとられたかった?」
「ええ、わたくしからもお聞きしたいですわ。囮のご気分はいかがでした? 満更でもなさそうでしたわよ♪」
 愉しそうに、囮役を務めた男性たちに問う。
「……」
 楼芳はあくまで無言を決め込む。
「バナナはおいしいですけれど、まさかバナナがあんな形になって来襲するなんて思いませんでした……」
 と顔をしかめたのは、サシャ。
 二人の反応に、プランは一層クスクス声を漏らし、ミルフィも目を細めた。
 エリザベートは皆が落ち着いたのを見計らい声をかける。
「さあ! 後始末してさっさと引き上げるわよ!」
 エリザベートに頷く皆。
 周辺の修復等、後処理に乗り出すケルベロスたちに、木と木と合間から陽光がやさしく降り注いでいた。遠くから、鳥の鳴き声。

作者:雪神あゆた 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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