正義のケルベロス忍軍~汝や何方の忍軍か

作者:沙羅衝

 タタタタタッ。
 一人の螺旋忍軍が、東京のビルの間を素早く駆け上がっていた。
「チッ……。奇襲か!」
 ドゴッ!!
 その螺旋忍軍が大きくジャンプして隣のビルに飛び移った時、今まで在った場所のビルの外壁がグラビティの力で大きく穴が開いた。
「キャー!」
「おい皆、避難だ!」
 その戦いは激しさを増し、そのビルの中で仕事をしていたサラリーマンや、ビルの下で通行していた一般人が、急いで避難を開始する。
「やっぱり……」
 それを遠くで見つめている一人のケルベロスが呟いた。鯖寅・五六七(ゴリライダーのレプリカント・e20270)である。隣にはウイングキャットの『マネギ』が控えている。
「あちきの思った通りっす。忍軍同士の戦いは激化の一途っす。東京23区の平和を守るには、やっぱり、アレが必要っすよね!」
 彼女はそう言って、他の場所へと飛んだ。

「みんな、聞いてや。螺旋忍軍に関してちょっと大きな作戦をすることになったで」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、集まってくれたケルベロスを前にして発言する。
「鯖寅・五六七ちゃんが調べてくれたんやけど、今起こってる東京23区の螺旋忍軍同士は、だんだんとエスカレートしていっているみたいや。おそらくやねんけど、皆が撃破していってくれた螺旋忍軍の被害は、他の忍軍がやったものと思っている所もあるみたいやな。そんでどうやら、本来の目的である『螺旋帝の血族の捜索』が二の次になってきてるっぽいわ」
 迷惑な話やでと、絹が自分のタブレットをみて呟く。
「まあ、白影衆みたいに、他の忍軍滅殺みたいなヤツラもおるから余計やろけど……。
 で、や。五六七ちゃんがええアイデアくれたから、みんなにも強力してもらう。その作戦は『正義のケルベロス忍軍を結成』するっちゅうことや。
 今まで一般人を守ってきたわけやけれども、うちらも『螺旋帝の血族』を捜索、そんで抗争に加わるで。受身だけや無く、こっちからも能動的に動くことで、相手を更に混乱させて、チャンスを窺うわけやな。総力戦になってきとるから、相手の本拠地は手薄になっとる。そこを突くで。上手いこといったら、相手に大打撃を与えれるし、ホンマに、螺旋帝の血族を見つけることが出来るかもしれん。螺旋帝の血族っちゅうのもまだよう分かってへんけど、アイツらが死に物狂いで探してるくらいやから、価値があるのは間違いないわな」
 絹の話に、納得するケルベロス達。螺旋忍軍の特徴として互いに利用、いがみ合っている性質上、『正義のケルベロス忍軍』を詠う事で忍軍に協力するケルベロスがいるのかもという混乱を導き出す事もできるかもしれなかった。
「で、今回はみんなに何処に行ってもらうかを選んでもらうから、今から言うこと、よう聞いてな。
 まずは、おなじみ『月華衆』や。月華衆は大きい勢力やけど、今回は『機巧蝙蝠のお杏』が指揮官として動いてるみたいや。『豊島区の雑居ビル』の一つを貸しきって拠点としてる事がわかったで。正面入り口、裏口、隣のビルから屋上に飛び移る、壁を登って窓から潜入、下水道を通って地下から潜入するという5つのパターンを選択できる。他のチームも同時に動いてるわけやけど、入り口はそれぞれどれか一つを選んでもらうで。
 次は『魅咲忍軍』。あんまり大きくない組織やな。指揮官は『魅咲・冴』。ただ、彼女以外にも7色の軍団と指揮官がおる。彼女を狙った場合はその他の指揮官達が救援に来る可能性がある。せやから倒しきるのは難しいかもしれんな。拠点は『港区の倉庫』。さっきも言うたけど、他の指揮官も来るわけやから、他のチームとの連携も重要やろな。
 大企業グループの『羅泉』。企業言うても、ホンマに存在してるわけやない事がわかったで。要はその会社組織として螺旋忍軍を運営しとるわけや。かしこいな。拠点は世田谷区のオフィスビルを不法占拠してる。指揮官は代表取締役社長『鈴木・鈴之助』。多くの社員が残業してて敵は多いわけやけど、その一人一人はそんなに強ない。ただ、鈴之助だけはかなり強いっちゅう情報がある。
 次は『ヴァロージャ・コンツェヴィッチ』率いる『真理華道』。拠点は新宿区の歌舞伎町にある『バー』や。ここはあんまり情報ないんやけど、小さい組織みたいやな。戦力も少ないみたいやし、一気に攻め入ったらいけるやろな。
 ほいで『銀山衆』。どうやら『千代田区の電気街』で地下コンサートを計画してることが分かったで。指揮官は『霊金の河』。せやけど、このコンサート会場には、銀山衆の他の幹部も来てるみたいやから、油断はできへんやろな。
 次に『黒螺旋』。ここの本拠地はどうやら東京と違うみたいでな、指揮官の『黒笛のミカド』さえ倒せばひとまず東京からは一掃できるで。コイツがおるのは大田区の『高級住宅街の豪邸』や。庭に番犬みたいに下忍がおるから、見つからずに潜入するのは難しいやろな。他のチームと連携して囮になったりする作戦とかいるかもしれん」
 絹はここで少し顔を上げる。敵の情報の多さに頭を抱え始めたケルベロスがいたからだ。
「ごめんごめん。一気にしゃべって悪いな。ほら、ちょっとこれでも飲んでな」
 絹はそう言ってそのケルベロスに、水筒からお手製の紅茶を差し出す。その香りでそのケルベロスはほっとした表情をする。
「あとちょっとやから、ごめんやけど最後まで聞いてな」
 器代わりにした水筒の蓋を受け取った絹は、そう言って説明を続ける。
「えっと、次が『白影衆』や。拠点は台東区の『神社の境内の一部』に設けられてる。指揮官は『雪白・清廉』。勢力的には小さいで。ただ、白影衆はさっきの五六七ちゃんの話をした時にも出てきたけど、他の螺旋忍軍を滅ぼすのが目的や。せやから今回は無理にこちらから攻める必要はないかもしれん。
 んで、『テング党』。コイツらは中くらいの規模の忍軍みたいやな。拠点は江戸川区の『河川敷に在る橋の下の秘密基地』。ちょっと大きめやから指揮官の『マスター・テング』を倒す為には、結構なチーム数がいるやろな。強力な四天王天狗もいるみたいやから、骨は折れるやろ。
 で、最後に『螺心衆』。螺心衆はどうやら幹部は今回この作戦には投入されてへんみたいやな。拠点は足立区の『雑居ビル』。ここを制圧したら、おそらくもう、今回の事件から螺心衆は手を引く可能性が高いといわれてる」
 全ての説明を終えて、絹は少しふっと息を吐く。
「長い話聞いてくれてありがとう。今回はみんなに是非『正義のケルベロス忍軍』を名乗って欲しい。口上っちゅうやつやな。んで、全部の忍軍を撃破できんでも、その情報をもちかえった忍軍が噂を広めて混乱をもたらす事ができるかもしれんのや。あと、なんか分からんかった情報得れるかもしれんから、お土産も期待してるで。ほな、頼むな!」
 絹がそう言って話を締めくくると、ケルベロス達はヘリポートに向かっていったのだった。


参加者
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)
タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)
餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)
虎之眼・白炎(白き炎を纏いし護る者・e18873)
兎塚・月子(蜘蛛火・e19505)
深海・小熊(旅館の看板娘・e24239)
セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)

■リプレイ

●大企業グループ『羅泉』
「どうやら、あちらの班も潜入できたみたいです。皆さん、頑張りましょうねニンニン!」
 餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)がそう言って、足音を極力出さない為に持参したスニーキングシューズを全員に渡していく。
 ここは大企業グループ『羅泉』の拠点である世田谷区のオフィスビルだ。
「とはいえ流石に制圧までは行かないだろうな……」
「それはもう一つのチームも分かっていますよ」
 ラギッドからシューズを受け取った虎之眼・白炎(白き炎を纏いし護る者・e18873)の呟きに、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)が少女の人形に最後の一言を喋らせ、そのまま丁寧に鞄に入れる。そしてその鞄からビルの見取り図を取り出す。
 この拠点に踏み込んだケルベロスは、彼等達ともう一チームであった。絹の情報からは最低5チームの戦力が投入されないと、制圧は不可能であろうとのことだった。
「今回の潜入によって、有力な情報を拾えるといいのだけれど」
 確実に戦力が足りないと分かっていても敢えて踏み込んだのは、セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)の言うように、少しでも『羅泉』や『螺旋帝』の情報を得るためであった。
「螺旋忍軍って掴みどころが無いから、ここで楔を打てれば事態は変わるかもね……」
 セラの言葉に喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)が答える。勿論、ケルベロス忍軍を名乗ることの情報攪乱も狙っている。
 その時、先に先行していた兎塚・月子(蜘蛛火・e19505)が裏口の扉を音も無く開けた。彼女は螺旋隠れを使用し、先に潜入していたのだ。そして、彼女はそっと手招きをする。
「さーて、頑張りましょうか!」
 深海・小熊(旅館の看板娘・e24239)がそう言うと、各自様々な格好をする。小熊のテレビウム『鉄くん』が、いつもの鉄パイプではなくクナイを持ってぶんぶんと振り回し始めた。
「しかしまあ、凄い作戦思いつくもんだなぁだぜ……変な仮面してたけど。赤って」
 タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)がそう言って赤い仮面を装着する。テング党との係わりを臭わすためだ。そしておもむろに壁に向かって赤いスプレーで天狗の落書きをする。
「何かしらアクションを取ったほうが良いと思いまして。あ、アンセルム様。お持ちのお人形用の忍者頭巾をどうぞ」
「わ、どうしたのこれ? 有難う」
 ラギッドはそう言って、アンセルムに人形用の頭巾を渡す。そして自らは暗視ゴーグルと面頬を装着する。
「どう、月子ちゃん?」
 いち早く非常口に近づいた波琉那が、被っていた鴉天狗面をそっと外した月子にそっと顔を近づける。
「セキュリティの場所は把握致した。我に続かれよ」
 月子は小声ではっきりとそう言い、また仮面を被りながら前を向いた。

●山崎・達郎
 潜入を果たしたケルベロス達は、まず何かの情報が無いかを確認するべく、一つの部屋に入った。それは人目につくのを避ける目的もあった。
「この部屋から先のセキュリティを破るのは、かなり骨が折れまする。まずはこの会議室のような所で、作戦と情報を集めるのが得策かと……」
 月子の口調は当然いつものそれではない。既になり切っているようだ。この辺りは流石と言った所だろうか。
「そうね……。私は情報収集は得意ではないから、見張りをしておきましょう……」
 と、ビジネススーツに皮のローファーOL風の姿をしたセラがドアに向かう。と、すぐさま異変を感じたのか、他のメンバーに注意を促す。
「おっと、どちら様でしょうか?」
 唐突に声が廊下から聞こえてくる。男性の声だ。セラはメンバーに目配せをしてそのまま後ろ手にドアを閉め、持たれかかった。
「いや……少し資料を」
「そこの会議室に用があるのですが、どなたかいらっしゃるのですか?」
 ドア越しに聞こえてくる声。姿形はOL風だが、演技がぎこちない。それを聞いたケルベロスが武器を手にして閉じられたドア付近にに息を殺して潜む。
「ふむ……。私はこういう者です、以後お見知りおきを!」
 ドン!
 彼が名刺を扉に投げつけたのと同時に、扉が開かれ、他のケルベロス達が廊下に躍り出る。
 キイン!
 投げつけた名刺を、タクティがオウガメタル『ゼノ』で弾くと、名刺が反対の壁に突き刺さった。その名詞には『山崎・達郎』という名が刻まれていた。
「ケルベロスの方……ですね?」
 達郎が眼鏡を上げ、左手に名刺、右手にA4サイズの紙を取り出す。そして、警報が鳴り響いた。
「正義のケルベロス忍軍ただ今見参! ー義に乗っ取り攻め立て中なのだぜー。行くぜ、白虎の!」
 タクティがそう言ってミミックと共に前に出て、ドラゴニックハンマー『ligula』を振り下ろし、セラがエアシューズで蹴りを放つ。だが、その攻撃はは空を切る。
『――――癒せ、白き炎よ…災厄を焼き払え―――オペレーションフレア・ウォール!』
 白炎がその隙に前衛へと白き炎を纏わせる。
「淫魔忍・ハルナ参上! ……ここの組織のウィークポイントの情報は写させて貰っちゃったよ……。大きな組織って聞いていたけどこんな手薄だなんてガッカリだよ。じゃあバイバ~イ!」
 そして、素顔をヴェールで隠している波琉那が大声で叫び、光輝くオウガ粒子を放出しながら後方に下がろうとする。
「……もう少しゆっくりとしていってもよろしいのですよ」
 だが、その逃走を達郎が許さない。廊下の壁と天井を駆け上がり、出口の方向へと回りこむ。
「この方は……強いですね、では」
 その動きで彼の強さを見極めたラギッドが、地獄化した胃袋を解き放つ。
『煮ても焼いても食えない輩は踊り食いだ』
 しかし、その喰らいつこうとする胃袋の攻撃も、容易く避ける達郎。
「ケルベロス忍軍がひとり、天狗火のお曜。
 義によりて其方衆を撫で斬りに致す。然らばこれよりは問答無用にて、参られませい」
 月子がこの廊下を映しているカメラを見て、口上を述べてからその一つを破壊する。
「め、盟友との義を果たすまで、忍者の戦いは終わらない!」
 アンセルムも台詞をかみながら、取り出した攻性植物に喰らい付かせる。少し顔が赤いのは、どうやらその台詞が恥ずかしかったようだ。その攻撃は何とか達郎の腕を食い破り、そこから毒を滲入させる。
「正義のケルベロス忍軍、ディープ・シー。見・参!」
 小熊も口上を述べ、魔人降臨を施す。
「成る程、侮れない方々のようですね……」
 そして、達郎が手に持った用紙から殺戮機械を召喚させて、タクティに放った時、ケルベロス達の後方から声が上がった。
「侵入者だ! 捉えろ!!」

●超エリート社員
「おっと、本社の方々がお迎えに上がられたようですね……」
 ケルベロスは完全に挟み撃ちにあっていた。後方から超エリート社員が増援で二人現れたのだ。
「来訪者の接待感謝する。だが、我々の部署が迎撃に当たる、貴方には関係ない」
「……ふむ。どうやら、私の仕事はこれまでの様ですね。では、私は予定通り外回りへと向かいます。……では」
 達郎はそう言って踵を返し、出口へと向かって行った。その隙に、タクティが受けた傷を白炎がルナティックヒールで癒す。だが、思ったよりも傷が深いようで、一度では全てを回復させることは出来なかった。
「すぐに警備のものが駆けつける、お前達はもう逃げられない!」
 じりじりとにじり寄る超エリート社員の二人。
「まずは、この二人を倒さないと、逃げることも出来なさそうですね」
「しかも、素早く、か。しかしまあ、この前倒した奴らよりは何とかなりそう? だぜ。俺はラクティア。悪いが、倒させてもらうんだぜ!」
 ラギッドの声にタクティが返し、偽名を使って『ゼノ』から黒光を照射する。そしてそのままラギッドがゲシュタルトグレイブで超高速の突きを放っていく。
「もう逃げられないと、言っただろう!」
 ラギッドの突きを避けた前に出ている超エリート社員が、掌でカウンターを当てると、ラギッドがそのまま吹き飛ばされる。
「……ぐ!」
 ラギッドはそのまま起き上がるが、傷は深い。
『烏玉乃 夜霧立而 不清 照有月夜乃 見者悲沙』
 それを見た月子が、淡く光る不可解な球体を作り出し、前衛へと施す。
「各々方、気を抜かれなさるな……」
「そうみたいだね。まずは、動きを止めたい所……」
 アンセルムが捕食モードに変形させたブラックスライム『liv』を放つが、避けられてしまう。
「焦らないほうが良いみたい。確実に……」
 セラはそう言って、「寂寞の調べ」を歌う。
「では、一人ずつ、確実に参りましょうか。鉄くん!」
 小熊が日本刀を抜き放つと、鉄くんがクナイをぽいぽいと投げつける。前に出ていた超エリート社員は、そのクナイを避けるが、そのクナイの雨から抜け出した小熊がするりと足元に切りつけた。
 そして、波琉那がケルベロスチェインを使って締め上げる。
「淫魔忍・ハルナ参上! ……ここの組織のウィークポイントの情報は写させて貰っちゃったよ。……大きな組織って聞いていたけど、こんな手薄だなんてガッカリだよ。貴方たちをやっつけて、さっさと逃げさせてもらうね!」

●撤退
 ケルベロスの攻撃は、補助の力が十分に行き渡ったとき、漸くまともにヒットするようになった。
 だが、それには時間がかかりすぎた。
 一人の敵を倒すのに、4分もの時間がかかってしまったのだ。それは、前を行く超エリート社員の攻撃がかなり強いことと、受けた傷を後方の社員がすぐに癒していったからだった。こちらに回復の手数がかかったのも、時間がかかってしまった要因であった。
「漸く一人目、ですか」
 ラギッドがそう言って、廊下の先からの増援を気にする。
 前を張るラギッドとタクティは、かなりの殺傷ダメージを受けていた。二人で受けていたから分散が出来ていたが、一人であった場合倒れていた可能性が高い。
「でも、もう一分張りってやつ。だぜぇ!」
 ラギッドが地獄の炎を如意棒に纏わせて突き、タクティがドラゴニックハンマーに気合を入れて最後の一人に叩き付ける。
 そして、波琉那と月子が廊下の壁を左右に駆け上がり、エアシューズでダッシュして蹴り付けると、超エリート社員の身体から、激しく炎が巻き起こった。さらに、アンセルムが影から切りつけてその炎を倍増させる。
「忍者の皆さんだったら」
 小熊が自分の蜃気楼を大量に生成し、分かれていく。
「どれが本物か」
「分かりますよね?」
 それぞれが、思い思いに喋っていく。
「っと、残念時間切れ」
「それじゃ、罰ゲームです」
 だが、その時間は余り長くはもらえないようだ。
『準備は良い?』『いつでも良いよ!』『それじゃあ行くよ!』『せーのっ!』『『『『『幻想鎮魂歌!』』』』』
 すると、その全員が同時に炎と氷のグラビティを流し込む。
「天狗さん達のためにも、この情報は貰っていきますね♪」
 小熊がその場を去りながら、後方へと下がる。
「正義のケルベロス忍軍、他忍軍の義に報いるため情報は頂いた!」
 白炎が魔力を籠めた咆哮を上げる。
『わが攻撃、光の如く、悪鬼羅刹を貫き通す』
 セラの光の矢を放つと、その超エリート社員は一瞬にして消滅していったのだった。

「ここまでだ。撤退だ!」
 白炎の声と共に、ケルベロス達が撤退を始める。
 その声と同時に、廊下の先のほうから、こっちだ! と怒声が響き渡ってきた。ケルベロス達は急いで出口を目指す。
「ぐ……」
「餓鬼堂、大丈夫か!?」
「少し、ダメージを食らいすぎたようですね……。ヘルコックニンジャともあろう者が、情けない」
 タクティの声に、そう返すラギッド。
「ちょっと、やばかったよね」
「あの人は……どうしたのかな?」
 波琉那の言葉に頷きながら、小熊が呟く。
「確か名は山崎・達郎、であったか。あの御仁が残っていたら、被害は相当な物であったやもしれぬな」
 月子がそう呟く。
 少し戦いを交えただけであったが、山崎・達郎の実力はかなりのものと思われた。少しの沈黙が、それを肯定する。
「でも、何とか無事に帰る。今はそれだけ考えよう」
 アンセルムの声に頷くケルベロス達。
 セラが出口の扉を開け放ち、ケルベロス達は一気にその場を去って行ったのだった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月6日
難度:普通
参加:8人
結果:失敗…
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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