実る芳果を刈り取るは

作者:幾夜緋琉

●実る芳果を刈り取るは
 大阪府、大阪市の象徴とも言える、大阪城の近くにある、雑木林。
 深夜の刻、その近くの通りを歩くサラリーマンの男性……かなりお酒を飲んでいる様で、足元もおぼつかない位ふらふらしている。
 ……そんな男性の元に。
『ふふふ……♪』
 何処か蠱惑的な女の声が……。
「んー……なんだぁ? 女かぁ……?」
 と男が、その蠱惑的な声に誘われるように、雑木林の中へとふらふら足を進めていく……すると、そこには瑞々しいフルーツがたわわに実った一本の木。
 ……そして、その木と一体化したような、たわわな二つの果実をみのらせた、ほぼ裸の女性が。
「……おぉおお!?」
 目を見開くサラリーマンの男。
 そして、実った果実に手を伸ばした男……そのまま女性へ抱きかかえられるようにして、胸に顔を押しつけられ……色々と吸収された男。
 木の下に埋められた男は、新たなる攻性植物の養分とされてしまうのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まって頂けたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスらに一礼すると、早速。
「先日の『爆殖核爆砕戦』後、大阪城に残った攻性植物の調査を行っていたミルラ・コンミフォラさん達から、新たな情報が得られたッス!」
「調査によると、大阪城の雑木林などで、男性を魅了する『たわわに実った果実』的攻性植物、バナナイーターが現れた様なんッス」
「バナナイーターは、15歳以上の男性が近寄ると現れ、その果実の魅力で魅了し、絞り尽くし殺害する事でグラビティ・チェインを奪い尽くしてしまうッス」
「攻性植物は、こうして奪ったグラビティ・チェインを使い、新たな作戦を行うつもりかもしれないッス。ケルベロスの皆さんには、この出現するバナナイーターを撃破し、誘惑されてしまう犠牲者を救って欲しいッスよ!」
 そして、更にダンテは。
「今回、皆さんは一般人が攻性植物に出逢う場所に先回りする事が可能ッス。攻性植物のバナナイーターを出現させる為には、そのまま一般人を誘惑させるか、或いは一般人を避難させた上で、ケルベロスの男が囮になる必要があるッス」
「バナナイーターは、攻性植物の拠点となっている大阪城から地下茎を通じて送られている様で、囮となった人数に応じて攻性植物が現れるッス。幸い、その他のドリームイーターは戦闘力は低い様ッスけどね」
「ただ、注意しないといけないのは、攻性植物が出現してから3分以内に攻撃を仕掛けてしまうと、出現した地下茎から直ぐ撤退してしまうッス。つまり……囮になった者は3分程度、攻性植物と戦闘せずに接触する必要があるッス」
「幸い、攻性植物側もその3分の間は攻撃などせず、対象の男性を誘惑する行動を行う為、囮が一般人であってもすぐに死ぬという事は無いッス」
「ちなみに攻性植物は、ケルベロスであっても男性であれば獲物として扱う様ッス。攻性植物の誘惑は、ケルベロスには効果は無いッスけど、囮になる場合、誘惑されている様な振りをする事も必要だと思うッス」
「ちなみに、バナナイーターの戦闘能力ッスけど、その果実を武器にしているッス」
「成っている果実はパイナップルの様ッス。普通のパイナップルは地面に成る物ッスけど、これは樹になる形の様ッスね」
「このパイナップルの実をもぎ取り、ぶん投げてきたり、自分でそれを喰らう事で体力を回復する、等の方法が出来る様ッス」
「ちなみにバナナイーターの胸元には、皮が剥かれたパイナップルが備わっている様ッス。このパイナップルを搾り、雫を飛ばして目潰しの攻撃をしてくるッスけど……これは自分の一番近くで魅了されている人にしか行わない様ッスから、囮の人はこの攻撃にも注意して欲しいッスよ!」
 そして、ダンテは。
「男性を誘惑し、絞り尽くして壊すような卑猥な攻性植物は許せないッス! どうかガツンとやっつけてやって欲しいッスよ!!」
 と、拳を振り上げた。


参加者
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)
八坂・茴香(乱レ淡華・e05415)
岩櫃・風太郎(盾穿つ閃光螺旋の猿忍・e29164)
アルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガンスリンガー・e32409)
本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)
八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004)
差深月・紫音(自称戦闘狂・e36172)
湊弐・響(ヴァルキュリアの巫術士・e37129)

■リプレイ

●夢を手元に
 大阪府は大阪市、大阪城にほど近い雑木林。
 真也にその近くを歩くサラリーマン達を、蠱惑的に誘うは……殆ど裸の状態の、攻性植物の女性。
「色仕掛けの植物ねぇ……面倒なもんはどこにでもあるもんだな」
「ああうん、なんかよくわからんのが出て来たんだなー。男性にとっちゃ、ある意味ではどりーむないーたーだけどさ」
 差深月・紫音(自称戦闘狂・e36172)にアルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガンスリンガー・e32409)が苦笑する。
 勿論今回は、ドリームイーターではなく、攻性植物。それも……バナナイーターという攻性植物が、パイナップルの実を宿している訳で。
「バナナイーター……今回の相手は果物? なんか美味しそうっすね! 実際食べられるか知りませんが!」
「そうなのですか? でもでも、フルーツもぎたい放題なのです!!」
「もぎたい放題……まぁ、いくらおいしそうな果物でも、襲いかかってきたら迷惑だよね!」
「……え? あれ、何か違うのですか?」
 本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)、八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004)、山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)の会話……いや、最後にはあこはきょとんとしているが……まぁ、何にせよ。
「ま、バナナか何か存じませんけど、誘引して餌食にするだなんて随分な植物です事ね。ああいう雑草は、除草するに限りますわ」
「ええ……そして……サラリーマンさんは……安全圏まで……避難して……頂きませんと……」
 湊弐・響(ヴァルキュリアの巫術士・e37129)に八坂・茴香(乱レ淡華・e05415)がこくりと頷き、そしてアルーシャが。
「よし! 風太郎さん、紫音さん、囮は任せた! というか、してくれないとおびき出せないとゆーか……」
 と風太郎、紫音の肩を叩くと、岩櫃・風太郎(盾穿つ閃光螺旋の猿忍・e29164)は。
「そうでござるな。忍者に房中術など愚かではござるが、ここは三分間の演技をせねばなるまいて」
「そうだな……ま、男を食いもんにするのは食虫植物に近い様だが、ま、どうでもいいや。しっかりと誘惑されてる様に振る舞わねえとな」
 と……そんな仲間達の誘惑、という言葉に、響が。
「……それにしても、やはり殿方は、そういう肉付きの良い女性が好みなのかしら?」
 と……自分の胸元に視点を落とし……深く溜息を吐くのであった。

●夢の手元
 そして、ケルベロス達は……三手に分かれ、雑木林に。
 先ずは、あこと茴香の二人が……酒に酔ったサラリーマンの所へと向かう。
『……んー……っとぉー……へへ、あー、いーきもちじゃぁー』
 と、足元フラフラ、気分は陽気……そんなサラリーマンの前に、胸元が特に強調された服装で現れる茴香。
「あ、あの……少々……宜しいでしょうか……?」
 と、おずおずと声を掛ける茴香。
 ……ぷるんと震えるたわわな果実……更に茴香がラブフェロモンを使い、更に目を引き付ける。
 そんな魅惑的な果実を目の前にしたサラリーマンの男は。
『……ぉ、ぉぉぅ!? な、なんだよねーちゃん!』
 と下世話に笑う。
 ……でお、それに茴香は、更におずおずとしながら。
「突然ですが……あなたに……危険が……迫っています……え、えっと……わたし……ケルベロスでして……」
 と、胸の谷間から、ケルベロスカードを取り出し、見せる茴香……完全に見ているところは、ケルベロスカードより、その胸の谷間。
 ……と、そんな色気とは真逆の空気の、健康的なあこが。
「そうなのです。だから、ここから離れて欲しいのです! ほら、タクシーさんも用意しているのです!」
「え、ええ……ですので……わたしの後ろに……続いてください……」
 ぷりっと振り返り、お尻をぷるんぷるんとふるわせながら、タクシーの方に向けて歩いて行く茴香。
 あこも、その肩を抱えるようにして、サラリーマンの男性をタクシーへ。
 運転手に、ケルベロスカードを見せて、サラリーマンを家へと帰す。
 ……そして、更に一般人が来ない様に、涼子がキープアウトテープを張り巡らせて人払い。
「サラリーマンさんは……無事……お見送りしましたので……ご安心ください……」
 と言いつつ、他の女性陣の所へ。
「それじゃ、行くでござるよ。そう……もしもの時は、拙者に構わず、青少年のアレの保護を優先して下され!!」
 と風太郎の言葉に、あこが。
「え、アレって何なのです?」
 と小首を傾げる……それにそのウイングキャットのベルが。
『にゃー!』
 と、気合いを入れている。
 ……まぁ、確かに年端も行かない彼女に、目の前に繰り広げられる光景は……刺激が強すぎる事だろう。
 ともあれ、そんな二人を手を振り送り出す女性陣。
「ゆーわくはされないとは言われてるが……進んでそうされるのならその限りじゃないのだろうか?」
 とアルーシャの言葉に、えみかが。
「まー、そうっすね。ともあれ、後は囮にしっかりと引っかかって貰わないといけないっすね!」
 茂みの中に更に身を隠し……男性陣は、鼻歌を歌いながら道をぶらぶら歩く。
 ……程なくして、雑木林にすすぅぅ……と姿を現わす、攻性植物『バナナイーター』。
 緑色の肌だが……明らかに胸とおぼしき部分は隠れていない。
 ……そんな攻性植物を発見すると。
「存在自体が殆ど違法行為でござるな!!」
 風太郎が、意気揚々と声を上げると、くすっ、と微笑み……妖艶に誘うバナナイーター。
「そうだな。女性からのお誘いを断るのは男がすたるさ」
 一方、どこか余裕な雰囲気で、微笑む紫音……そして。
「可愛らしいお嬢さん、ここから先は俺から誘わせてくれないかい?」
 と言うと、紫音の横からもう一体のバナナイーターが出現し、紫音へと絡みついてくる。
 ……そしてバナナイーター本人は、腕を拓いて、風太郎を誘う。
「う、うぉぉぉっ!? い、いや、そっちがその気ならば拙者も受けて立つでござる!」
 と胸元に飛び込む風太郎……甘い甘いパイナップルの汁と汗が、顔に。
「な、なんたる汁気! これは顔がぺっちゃぺちゃでござるよ! ゴーグルが無ければ目に染みるところでござった!!」
『ふふ……』
 勿論、風太郎の言葉に対し、彼女は微笑み、ぎゅっと胸元へ抱きしめる。
 ……ふくよかな胸に覆われ、そして……左右の胸元のパイナップルを交互に吸い付き、黄金の汁を飲み込んでいく。
 ……そんな風太郎と紫音二人を見ている女性陣。
「……あ、あのぉ……紫音さんと……風太郎さん……本当に……魅了されているように……みえますけど……」
 と茴香の言葉に、アルーシャが。
「んー……フリってのも大変だな~……あれ、ホントにフリでいいんだよね?」
 と首を傾げる……まぁ、それに頷く事が出来るのは、現におとりしている二人以外答え様がないけれど。
「ま、いいか~。そうなってるならで目覚めさせればいいしー」
 と目をそらしながら呟く。ともあれ、そんな囮二人の魅了行為を……。
「な、何なのですかー、ベル、見えないのですー!!」
 あこの両目を、両前足で目隠しの猫ガードで見せないベル。
 ……そして、魅了開始から3分が経過し、響のセットしたアラームがピーピー鳴り響くと。
「あこさん、行きますわよ!」
「ええ? 分かりましたなのです!!」
 ベルがガードを解いて、いざ「ブラッドスター」の合奏を始める。
 そのメロディと共に、一気にケルベロス達が。
「その危険な植物は御用だー!!」
 と、涼子を戦闘に、一気に突撃。
 突然のケルベロス達の割り込みに、バナナイーター達は……男達を一層抱きしめる。
 ……更に誘惑に負けそうになるが、あこと響二人の旋律に……正気に戻る風太郎。
「っ!!」
 咄嗟にその胸元から『伽羅倶熾威菩来刀忍者擂沛螺流怒雷刃』で脱出する風太郎、一方紫音はマインドリングで作り出した短刀を形成し『血煙舞踏・塵』で切り捨てる。
『!!』
 悲鳴の様な甲高い音を上げるバナナイーターに、紫音は。
「ま、楽しい夢は見れただろ?」
 と笑みを浮かべる、そして響とえみかも。
「今迄はその不埒な果実で殿方を罠に嵌めて来たのでしょうけど……御自分が罠にはまった気分は如何ですの?」
「そうっすね。攻性植物だか何だか知りませんが、覚悟するっす! 同じ土俵に立った以上、えみかの相撲に付き合って貰うっすよー! はっけよーい!!」
 四股を踏み、しきりの格好から気合いを入れるえみか。
『……』
 と、そんな女性陣の動きに、余り面白く無さそうな表情をするバナナイーター。
「ま、とにかく撃破だ撃破。見た目で寄生されそうなのを早く倒さなきゃっ」
 と、アルーシャが早速マインドソードで斬り掛かっていくと、併せて涼子が達人の一撃。
 一方風太郎は、自分自身にルナティックヒールで自己回復の一方、えみかも『炎の土俵』。
 ……えみかの一撃が、敵陣に怒りを付与すると、更に茴香、紫音も。
「一般人さんを……護るのが……ケルベロスのお勤め……戦うのは苦手……ですけど……頑張ります……」
「ああ。確実に仕掛けるぜ!」
 と茴香が後衛からフロストレーザーで射撃すると、紫音が降魔真拳の熾烈な攻撃を穿つ。
 と、その間にあこ、響二人は「ブラッドスター」を更に奏でつつ、ベルも清浄の翼で仲間を回復していく。
 ……そんなケルベロス達の猛攻が一巡し、次の刻。
 今度はバナナイーターが、実がなったパイナップルをそのまま大きく振りかぶって投げつける。
 ……が、その攻撃にすかさずボールペンで受け止めるあこ。
「……Ah……ぱいなっぽ……」
「……?」
 あこに小首を傾げる響。
 まぁ、それはさておき……続く涼子のブーストナックルに、アルーシャがスピニングドワーフ、風太郎のフロストレーザーが連射されていくと、えみかも。
「くらうっすよ!!」
 と、旋刃脚の蹴り上げ、踏みつけを行うと、紫音の降魔真拳。
 ……ケルベロスは容赦無い猛攻の前に、程なく一匹倒れ……後は、バナナイーター本体一体。
「後一体……とと」
 アルーシャが言うと、その瞬間、自分の胸元を寄せるようにして、その胸元から絞り汁を噴射。
 ……その動きは、まぁ。
「しかし、なかなかに過激な攻性植物ではあるな。男性陣は直視してられるのだろうか」
 とアルーシャの言葉に、風太郎……ちょっと固まっている。
 ……でも、すぐ首をぶんぶんと振って正気に戻り。
「い、いやいやいや!! だ、大丈夫でござるっ!!」
 と顔を真っ赤にさせながら、螺旋氷縛波を乱発。
 ともあれ、裸な攻性植物の素肌を見ない様、攻撃をひたすら仕掛け、傷付けて行く。
 そして……誘惑されてから、10分程。
 その胸や足に、大きな傷が付いたバナナイーターを……。
「さあ、これでトドメを刺してやるでござる!!」
 と顔を真っ赤にさせながら、『伽羅倶熾威菩来刀忍者擂沛螺流怒雷刃』を再度放ち……その一閃は、バナナイーターを一刀両断に切り伏せるのであった。

●夢の果実
 そして……無事、バナナイーターを倒したケルベロス達。
「……ふぅ……」
 と、汗を拭い、色んな意味でベタベタになってしまった顔を拭き取る風太郎……と。
「……あ、いや……いやいやいや、あれは本心ではござらぬよ!! だから、誤解しないで欲しいでござる!!」
 顔を真っ赤にして、手をぶんぶんと振って否定する風太郎……そして紫音も。
「……そうだな。まぁ……すまん」
 と頭を下げる紫音。
 囮になるのは男性しか出来なかったのは間違い無い。
 まぁ……囮と言いながら、楽しんで居たか……と言われれば、そうかもしれない。
 ……ともあれ、無事にふくよかな攻性植物『バナナイーター』を倒した事に違いは無い訳で。
「……初陣、という事になるんでしょうけど、上手く戦えましたかしら?」
 と響の言葉に、涼子がにこっと微笑み。
「うん、大丈夫だよ。すっごく頼りになったよ!」
 と……その言葉に、そうですか……とちょっと嬉しげな響。
「ありがとうございます……それでは、後は後始末ですわね。後始末も私たちケルベロスのお仕事の内ですわ」
「うん。そうだね。手分けして一気に片付けちゃおう」
「はいなのです! せっせと片付けちゃうのですよ!!」
 あこがえいえいえおー、とばかりに拳を振り上げると、他の仲間達も周囲の回復へと忙しなく動く。
 ……と、その片付けの最中。
「それにしても……攻性植物は、何をやらかそうとしてるのかねぇ……?」
 とアルーシャがぽつりと呟くと、それに風太郎が。
「そうでござるな……嗚呼、攻性植物ではなく、まともな女性にモテたいでござるよ……」
 と、深い溜息…。
 ……まぁ、いつかはきっと……と思いながら、周りの片付けをせっせと行う。
 で……幾度となくよぎるたわわな果実を、ぶんぶんと首を振って振り払うのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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