闇の中に火花散る。閃く刃が飛翔する手裏剣を跳ね返し、カタナが分銅を受け止める。幾度か金属音が鳴り響き、六つの影が二つに分かれてアスファルトに着地した。月の光が裏路地の壁や地面を照らし出し、破砕の跡や巻き添えで死んだ猫を浮き彫りにする。
そして白い明かりの下、三対三に分かれて人影達はにらみ合う。片や、雪のような白装束。片や、カラスめいて黒い装束に鳥じみた仮面。手に手に鎖鎌やカタナ、手裏剣を持つ彼らの服は……ニンジャ装束!
タタミ約五枚分の距離を開け、しばし無言で向かい合う彼ら。やがて、鳥じみた仮面を着けた一人が鼻を鳴らした。
「フン、胡乱な奴らだ……」
鎖鎌がギラリと光り、西部決闘めいた一触即発の緊張感が場を包む。
「そして何より不届き者だ。我らが螺旋帝の血族に弓を引こうなどと!」
「所詮犬にはわかるまい」
白ニンジャの一人が侮蔑的に言い放った。抜き身のカタナを鋭く構えて身を沈め、力を込める。
「いずれにしても貴様は殺す。隣の二人も同じく殺す。貴様らはせいぜい螺旋帝に尻尾でも振っていればいい。一足先に地獄へ行ってな」
「口先だけの弱敵!」
鳥面の三人は素早く屈んだ。それは跳躍の予備動作!
「やはりお前達はここで殺さねばならん! お前達のような狂犬風情に、帝の御目を汚させるわけにはいかんからな!」
「安心しろ。貴様らはその口先だけの弱敵に敗北してブザマに地を這い、そして死ぬのだ。螺旋忍軍、滅すべし」
「ほざくがいいッ!」
鳥面の三人が宙を跳び、白い三人が疾駆する。たちまち始まる血を血で洗うニンジャの戦い。そして斬撃や拳が飛ぶ戦闘を、ビルの上から見下ろす者あり! 鯖寅・五六七(ゴリライダーのレプリカント・e20270)は、争いの様を注視する。
「ここでもやってるっすか……よし。みんなに知らせて、あの作戦を決行するっす!」
五六七は呟いて背を向け、夜の都心を走り出す。背後では、戦う六人のシャウトが轟く。
●
「正義の……ケルベロス忍軍!?」
すっとんきょうな声を上げ、跳鹿・穫は作戦資料を二度見した。
五月初頭より始まった、螺旋帝の血族を巡る螺旋忍軍同士の戦いは、激化の一途を辿っていた。
各々の目論見に加え、それぞれに被害を被った彼らは、螺旋忍軍殲滅を掲げる白影衆の存在もあって被害の原因を別の忍軍による攻撃せいだと誤解。螺旋帝の血族の捜索よりも敵対忍軍の撃破が主目的となっているようだ。
そんな中、鯖寅・五六七(ゴリライダーのレプリカント・e20270)が状況打開のためとある提案を打ち出した。正義のケルベロス忍軍を結成し、螺旋帝の血族と他勢力との抗争に参戦しようというのである。つまり、これまでの対症療法的方法でなく、能動的な介入を行うということだ。
現在、各忍軍は他の忍軍全てを敵視し総力戦に移行している。そのため本拠地は恐らく手薄。この好機を生かせば、他の忍軍に大打撃を与えつつ螺旋帝の血族発見も夢ではない。
螺旋帝の血族がどういったものかはわからない。しかし、有力派閥が総力戦を行ってまで奪取しようとしている以上、重要な存在であるのに間違いはないのだ。同時に、今暴れている螺旋忍軍が排除できれば、東京都民を守ることにも繋がってくる。この作戦に、是非とも乗って欲しいのだ。
今回は、各チームごとに狙う派閥を選んでもらう。現状、東京で暗躍するのは以下の九派閥。どれかひとつを選んで攻撃することになる。
1、月華衆。
螺旋忍軍の一大勢力ではあるが、現在は『機巧蝙蝠のお杏』の派閥がこの作戦を仕切っている模様。
拠点は豊島区の雑居ビルで、正面入り口、裏口、隣のビルから屋上に飛び移る、壁を登って窓から潜入、下水道を通って地下から潜入という五つの突入ルートがあり、それぞれの入り口からは同時に一チームずつ入ることが可能。
『機巧蝙蝠のお杏』を倒せば、当分作戦に復帰はできないだろう。
2、魅咲忍軍。
それほど大きくはないが、トップの魅咲・冴以外に七色の軍団と指揮官が存在し、魅咲・冴を狙うと救援に来る可能性が高い。
ただし、ここである程度の打撃を与えれば螺旋帝は諦めるか、戦力調整のために当面作戦は行えなくなるだろう。拠点は、反社会勢力が良く利用する港区の倉庫。
魅咲・冴の撃破を狙うのであれば、抵抗させない、速攻撃破、援軍の対処などが必要になる。魅咲・冴を撃破出来なくとも、援軍の指揮官を撃破できれば、魅咲忍軍には大きな打撃になるはずだ。
3、大企業グループ『羅泉』。
会社形態こそが忍軍に相応しいとして、企業のように運営されている集団。拠点は世田谷区のオフィスビルを不法占拠している模様。
代表取締役社長、鈴木・鈴之助は、拠点のオフィスの社長室で指揮を執っているらしく、戦力を集中すれば、鈴木・鈴之助の撃破も可能だろう。撃破できれば、大企業グループとしての活動は難しくなるかもしれない。
オフィスには内勤が多く残って残業中。敵の数は少なくないが、多くの戦闘力は低い。しかし、鈴之助自身は忍軍のトップとして侮れない力を持つので、一瞬の油断が命取り。注意して戦うべきだろう。
ちなみに、『羅泉』配下には様々な形態の下部組織があるらしく、鈴木・鈴之助がいなくなれば、それらが勝手に動き出す危険性もあるようだ。
4、真理華道。
ヴァロージャ・コンツェヴィッチのいる新宿区歌舞伎町のバーが拠点。真理華道に連なる組織は不明。幹部であるヴァロージャを撃破できれば、動きを止める事ができるだろう。
現状の戦力は少ない部類。
5、銀山衆。
千代田区の電気街で、彼らの地下コンサートが開かれる。ここには指揮官である霊金の河もおり、襲撃すれば撃破を狙える。が、会場には銀山衆の他の幹部も警備に出向いているという情報もあり、油断は出来ない。
6、黒螺旋。
実のところ、黒螺旋の本拠地は東京には無い。つまり彼らは現地活動をしているわけで、指揮官の『黒笛』のミカドを討てば、黒螺旋は東京から一掃できる。増援の派遣にしても、かなりの時間が要るはずだ。
『黒笛』のミカドは、制圧した大田区の高級住宅街の豪邸を拠点としている。豪邸の庭には下忍達が放たれており、隠密は難易度が高い。下忍を撃破するチームと、素早く豪邸に侵入するチームに分かれる必要があるだろう。
戦力自体は高くないので、上手く立ち回ってほしい。
7、白影衆。
白影衆は、台東区にある神社の境内の一部に拠点を設けている。勢力としては小さい為、頭数次第では指揮官である雪白・清廉も含めて撃破が可能だろう。
ただし、彼らはあくまで螺旋忍軍の殲滅が目的のため、無理して戦う必要はないかもしれない。
8、テング党。
テング党は中規模で、かつ粒ぞろいの忍軍だ。ある程度の戦力があれば、マスター・テングを討伐も視野に入るが、その為には他の忍軍の攻撃をいくつか諦める必要に迫られるかもしれない。
マスター・テングさえ討てばテング党は壊滅する反面、彼の下には強力な四天王天狗が控えている。下手な戦力ではマスター・テングに会う事さえできない。撃破を狙うなら、より多くの戦力が要る。
9、螺心衆。
螺心衆の拠点は、足立区の雑居ビルにある。
多かれ少なかれ組織の幹部が関わるこの事件において、彼らは螺旋帝の事件には幹部の手を割いていない。つまり、ここを制圧できれば螺心衆は螺旋帝には関わってこないはず。
戦力は多少少なくとも制圧は問題ないと思われる。
「なんかすごいことになりだしたけど……これは絶対おっきなチャンス! 上手く行けば、螺旋帝のこともわかるかもしれないし! みんな、これは負けられないよ!」
参加者 | |
---|---|
叢雲・蓮(無常迅速・e00144) |
レーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565) |
ハインツ・エクハルト(生体魔除け・e12606) |
銀山・大輔(昼行灯な青牛おじさん・e14342) |
夜殻・睡(氷葬・e14891) |
クー・ルルカ(デウスエクスに悪戯する者・e15523) |
霧崎・天音(三昧真火・e18738) |
天変・地異(これでも正義のヒーロー・e30226) |
東京都千代田区の地下のコンサートは、最大級の熱気に包まれていた。
流れるアップテンポのダンスミュージック。速弾きのギターソロを追うベース、軽やかな鍵盤、鼓動を砕くドラムの爆音。そして息を合わせて踊るバックダンサーと、声を張らせて歌うボーカル霊金の河。そしてきらびやかなステージの前、激しく息づく熱狂の渦!
『河ちゃん! 河ちゃん! 河ちゃん! 河ちゃん! ウオオォォォォォーッ! ウオオォォォォォーッ!』
サイリウムを持った男達が叫び、光を震わし頭を回す。そろいの法被を羽織った彼らは霊金の河に声援を送り、会場のボルテージを上げていく。嵐めいた宴の後方、出口付近に陣取った銀山・大輔(昼行灯な青牛おじさん・e14342)は腕で額の汗をぬぐった。
「ふぅーっ! あっついだぁねえ! 潰されそうだ!」
「河ちゃん! 河ちゃん! カワイイヤッターッ!」
その肩車された叢雲・蓮(無常迅速・e00144)がサイリウムを振って無邪気に叫ぶ。二人を見上げ、ハインツ・エクハルト(生体魔除け・e12606)は汗だくの顔で笑って見せる。
「ハハハッ! 潰されそうなのはアレだろ? 蓮が肩に乗ってるからだろ! 河ちゃんいいぞーッ!」
「シツレイだよハインツ兄! ボクそんなに重くない!」
頬を膨らす蓮の真下で、レーチカ・ヴォールコフ(リューボフジレーム・e00565)が必死でヘッドバンギングをし。尻尾を千切れんばかりに振りつつ高速オタ芸。加えてクー・ルルカ(デウスエクスに悪戯する者・e15523)は、長い跳ねさせ踊る。
「霊金! 霊金! 霊金! ハイッ!」
「霊金ハイッ! 霊金ハイッ! 霊金霊金霊金ハイッ!」
大音声と派手な音楽が響く会場は、熱気を天井知らずに高める。会場真上にできたコンサートの熱気雲を見上げ、夜殻・睡(氷葬・e14891)が応援うちわで自分をあおぐ。
「俺もさ、アイドルのライブ? なんて初めて来たけど……雲、できるもんなの?」
『河ちゃん! 河ちゃん! 河ちゃん! 河ちゃん! ヘイ! オラ! ヘイ!』
「……聞いてねーし」
盛り上がる仲間を横目に、睡はますます猫背になった。一方、彼らからやや離れた位置に立つ霧崎・天音(三昧真火・e18738)は無表情で隣を見上げる。周囲の熱狂から一転、天変・地異(これでも正義のヒーロー・e30226)が殺気立つ。下ろした髪がにわかに逆立つのを、天音の赤い瞳は捉えた。
「地異さん……大丈夫……?」
小首を傾げる天音に地異は無言で、目の前に立ち並ぶファン勢をにらむ。彼らの熱狂を、その中に混じるニンジャ存在を。天音は地異の袖を引っ張る。
「……一般人に手出しさせない……そのために私たちは戦っている……」
「……そうだな。ああ、大丈夫だ」
直後、流れていた曲が終了。轟雷の如き拍手が沸いた。一曲歌いあげた霊金の河は、満面の笑みで客に手を振る。
『みんなぁーっ! ありがとございまーすっ!』
歓声が地鳴りのように会場を揺する。満足そうにうなづき、バンドとダンサーにアイコンタクト。
『応援ありがとうございます! 私も熱くなってきました! まだまだ盛り上がっていきましょうーっ! それじゃあ次はー……』
その時である!
「ちょっと待ったぁっ!」
ドアの開く音が、会場の空気を斬り裂いた。熱気をさらう清涼な風を背に、堂々と宣言する人影が八つ!
「その名も轟くもこもこ団のアイドル8810、参上です! 週4でライブ活動を行ってるわたくし達と勝負で御座います!」
突如の乱入にファンがざわめく。困惑のどよめきの中、名乗りを上げた八人に、霊金の河が目を光らせる。
『あなたたち、ただのアイドルじゃないわね? でも、アイドル対決を挑まれちゃ、あとには引けないわ!』
霊金の河の宣言と共に、ひしめくファンの群れが真っ二つに分かたれた。出来た道の上を走る乱入者八人。だが……おお、見よ。ステージを昇る彼女達の背後を。人間ロードの入り口に立つ、法被姿の四人のヤンクを! 先頭に立つリーゼントヘアが怒りに震える。
「オレ……オレ達ァよぉ……河ちゃんのライブを見に来たんだよなァ……」
両の肩をわななかせ、うめくようにつぶやく。
「みんなで盛り上がってよぉ……なのに、いきなり出てきてなんだ? モコモコ団? ……ザッケンナコラーッ!」
『ザッケンナコラーッ!』
ステージめがけ怒声を上げて走り出す! しかしその瞬間、会場後方で光の玉が垂直飛翔。八つの法被が宙を舞う!
「雷雲よ、みんなに力を! 奔れ! 研ぎ澄ませ! ブリィィィィッツッ!」
光の玉が雲に変化し、放電。落雷を受けた天音がリーゼントに飛び蹴りを見舞った!
「……はいっ」
「グワーッ!?」
リーゼントが地に伏しもんどりうって転がった。彼の前に飛び込んだ睡は彼をボールめいて蹴り上げる!
「ん。よっと」
「グワーッ!」
吹っ飛んだリーゼントは落下し背中を強打! 三人が慌てて彼に駆け寄る。睡の隣に天音が着地。
「な、兄貴ィーッ!?」
「兄貴ッ! 大丈夫ですか! ……テメーら、よくも兄貴をッ! 何モンだコラーッ!」
どよめく三人を、フード付き黒パーカーに粉雪をまとわせた睡は気だるげに見据えた。
「通行止めだ。ここは通さねぇよ、っと」
戦闘態勢を取る三人がサイリウム型レーザーダガーを取り出し構える。しかし、その背をアイサツが叩いた。
「ドーモ初めまして。我々はケルベロス忍軍。私はシャッターチャンスです!」
「ドーモ! イノセンスですっ!」
レーチカと蓮が代表アイサツ。八者八様のニンジャ装束の襟元にある三つ首番犬のエンブレムが鈍く光った。リーゼントヘアはただならぬ雰囲気の中跳ね起き、腰だめに拳を構えてオジギした。
「ドーモ、ケルベロス忍軍=サン。河ちゃんファンクラブです。何モンだテメェらァ……あのエセアイドル共の仲間か!」
「これから死ぬオヌシらが知る必要はない」
ゴシック装束姿のレーチカが、芝居がかった声で言い放つ。
「そして突然だが、霊金の河=サンのアイドル生命は今日限りだ」
「当然君達の命もね。ニンジャ屠るべし」
「ま、そういうことでな……」
蓮に続いてハインツが後頭部をかく。根性Tシャツに黄金色のオーラを燃やし、身構えた。
「悪しき忍軍銀山衆は、ここで排除させてもらうぜ! 正義のためにも負ける訳にはいかないからなッ!」
「ザッケンナコラーッ! 何が正義だコラーッ!」
リーゼントが憤怒の顔で雄叫びを上げた。天を突く光刃を持つ両手から、オレンジ色の波紋が広がり背後の三人に振りかかる。リーゼントヘアは青筋を浮かべて怒号を放った。
「上等だ……ここをお前達の墓にしてやる! その後であのクソ共もブチ殺すッ! シャッコラーッ!」
『シャッコラーッ!』
三人が唱和し橙の炎に包まれる。コワイ! だが邪悪な笑みを崩さないまま、地異はライダーポーズを取った!
「さーて作戦開始だ。螺旋倒すべし慈悲はないッ!」
「みんな離れて! ボク達に任せて!」
クーが放つ殺気に圧されてファンが後退。同時に跳躍したレーチカはハインツの雷弾を宿した鎖を振り回す。ほとばしる電光を受けた仲間は親衛隊に向かって突撃した! リーゼントヘアが睡と天音へ。配下三人は六人へ! 睡は細雪巻く刀を引き抜く!
「スッゾオラーッ!」
「よっと」
雪剣が光刃二刀を撃ち突きだす蹴りをバックで回避。天音の火炎フックを腹筋で止めファンキストはその場で回転! 首狩り斬をかわした天音はさらに踏み込み肘から地獄の炎を噴出。ブローで脇腹を撃ちに行く!
「んっ……」
「フンッ!」
飛び下がって避けるファンキストを睡が追う。吹雪の回し蹴りをファンキストは片手でガード。その後方ではクーと氷の咆哮を避けた配下Aが二刀流で高速攻防!
「ハイッ! ハイハイハイハイハイハイハイハイッ!」
嵐めいた連続斬をクーはサーベル二刀流で素早くさばきステップ回避。旋律奏でる蝶の羽を細かく震わせ、戦化粧の頬で笑う!
「ほら、こっちこっち! よく狙ったらどう?」
「ナマッコラーッ!」
激昂したAが加速! 側頭部狙いで振り抜く剣を身を反らしてよけたクーはそのまま叫ぶ!
「叢雲さん、お願いっ!」
「ヨロコンデーッ! イヤーッ!」
Bと斬り結ぶ蓮がバク転ジャンプし剣を振る。虚空が無数の刀を四方に吐き出し配下を襲った! とっさの防御の隙を突き、大輔は氷塊化した金棒で配下Bに殴りかかる!
「ウオオオオオオッ!」
「な、グワーッ!」
吹き飛ぶBが後転しながらレーザーダガー二本を投擲! 丸太の腕で二つを受けた大輔を飛び越えオルトロスのチビ助が大車輪しながら接近、法被の腕に斬りつけた。それを横合いから蹴り飛ばすC! そこへ光の粒子をまき散らしながらレーチカが迫る!
『イヤーッ!』
パンチと剣のクロスガードが激突。レーチカを押しのけ斬りかかるCをタックルで弾いた大輔の腹にBの拳が突き刺さった!
「ぐむうううッ!」
「死ねッ! 内臓ぶちまけて死ねぇぇええええッ!」
追撃の蹴りが胸板を打つ。のけ反る巨躯が床を突き破った電撃におされて体勢復帰。地に手を突いたハインツは黄金オーラを地面に撃ちこむ!
「まだ行けんだろ! やっちまえッ!」
客席各所で間欠泉じみた電光が噴き上がった。エキサイトしてステージに飛び込もうとしたファン達を飛び石めき飛ぶチビ助が首を次々狩っていく。一方で、睡を狙う刺突を地異の鎖の輪が受け止める。だが続く回し蹴りが睡の縮む首に直撃!
「ッ、ぐ……!」
「チェラッコラーッ!」
吹き飛び転がる睡にリーゼントヘアが飛びかかる! 大輔の幻影をはがされた地異が大量の護符を投げつけ睡の姿を隠す。間に割り込んだ紙束が両断! だがそこに睡はない。すぐさま振り向いたリーゼントヘアの視界に天音の火炎剣が飛び込んだ!
「は、あっ!」
「ヌゥーッ!」
リーゼントヘア側面を大剣で打ち据えた天音は身をひねる。業火を噴き出し、代打バッターめいて彼を配下の元へなぎ払う!
「グワーッ!?」
『兄貴ィッ!?』
飛来するリーゼントヘアと熱波に配下たちが色めきたった。直後Bの真上に金棒を振り上げた大輔は、氷に覆われた金棒をそのままBの頭に振り下ろす!
「ウオオオオォォッ! 死ねやクソがああああッ!」
「ア、アバーッ!?」
Bの頭部が無惨に爆ぜた!
「サヨナラ!」
爆発四散! ハインツは大輔に雷矢を連続で打ちこみ治療。そこへ体勢復帰しジャンプしたリーゼントヘアが大輔に急降下した!
「テメェーッ! よくも舎弟をッ!」
「銀山さんっ!」
ダイブするリーゼントヘアを輝く木枯らしが包む。胸元のどるちぇと共にAのチャージを受け止めたクーの手を離れた木の葉は視界を奪った。Aがさらに肩を押し込む。
「余所見してんじゃねえぞコラーッ!」
レーザー突きがどるちぇ諸共クーをうがった! 直後、彼らの周囲を猛々しいオーラが渦巻き、Aのうなじを地異がつかむ!
「ッハハハハハハハハハ! 油断大敵ィッ!」
荒っぽくAを引っぺがして虚空に放る。一回転したクーが飛んでサーベルを交叉。ほどけた黄色のリボンを残し、Aに直行!
「おやすみ、なさい……っ!」
一閃、二閃! 二刀が十字に振り抜かれ、Aを四つに斬り分けた。バラバラになったAの口が断末魔を呼ぶ!
「サヨナラ!」
爆発四散! さらに素手のカラテを挑むBに蓮が肉迫。ワンツーパンチを素早く回避し頸動脈めがけて抜刀! イアイ!
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
首筋が切れ血がほとばしり出、傷口を抑えようとする手をレーチカの拳が砕く! 出血しながらよろめくB。蓮とレーチカがザンシンした瞬間、Bの体が膨れ上がった。
「ア、ア……サヨナラ!」
そしてBも爆発四散! ようやく木枯らしを抜けたリーゼントヘアが床に降り立ち、歯を軋らせた。横目でファンに紛れて逃れる霊金の河を見、次いで無線に何事か告げるケルベロス達をにらんだ。
「クソが……こんなことをして、タダで済むとでも……ッ!」
「タダで済まないとでも?」
首を回しながら睡が歩み寄る。
「じゃ、教えてもらおうか。こんなことをしてどうなるか……」
「……ザッケンナコラーッ!」
激怒したリーゼントヘアが睡に斬りかかる! 睡は手を上げ、レーザーダガーにかざして握る。ファンキストの二刀は氷結崩壊!
「バカナーッ!?」
慣性に従って飛来する彼を前に睡は刀をつかみ、白い花咲く逆袈裟に斬る!
「此の華は香らず。只、白く散るのみ」
「グワーッ!」
白い剣閃が胸を裂いた。傷口から噴き出た雪の花に地異はオーラの槍を連続投擲! 花を割る投げ槍の雨がリーゼントヘアを宙に持ち上げた。
「ハハハハハハハハハハハハ! よっしゃ、決めるぜ天音ッ!」
上へ上へと昇る男に天音の右足がロケットめいた業火を連れて高く跳ぶ。炎の足はひとりでに振り抜かれ、狙いを定める!
「……これでとどめ……」
蹴りが腹にぶちあたり、法被の背を爆炎の剣山が貫いた。リーゼントヘアは大きく身を反らし、叫ぶ。
「サヨナラッ!」
そうして彼は、爆発四散した。
●
数分後、バックヤード。
「ハァーッ! ハァーッ! は、話が違う……こんなのは聞いてない。上から聞いてないッ!」
スタッフジャンパーを来た青年は、荒い息を吐いて走った。アタッシュケースを小脇に抱える彼の目は、乱入者の姿をリレイする。自爆する部下、逃げていく霊金の河、観客席の爆発四散。恐怖に震える足がもつれ、彼は転んだ。
「アッ! アアーッ!」
転倒と同時にアタッシュケースが床を滑った。くるくると回っていくそれは、誰かの足元で停止した。足を見上げたスタッフの顔が凍りつく。そこにたたずむ者の襟には、三つ首番犬のエンブレム!
「アッ、アイエエエエエエエエ!」
スタッフは悲鳴を上げて恐怖で失禁。彼をそっちのけにした睡はケースを拾い、フタを開いた。
「お、なんか入ってる」
「んー、でも読めない……暗号っぽいけど……」
「睡兄! レーチカ姉! 僕にも見せて―!」
ケースの中身を、レーチカと蓮が背を伸ばしてのぞき込む。同じく中を見たクーは通信機に小さく報告。地異は首を傾げる天音を背後に、満面の笑みを浮かべてスタッフの方へ近寄った。
「よーし。暗号の解読方法知ってるだろ? 言え」
「ま、待ってくれ! 俺を殺して何になる! 俺を殺せば、もっと上が……!」
「上が、なんだ?」
大輔が進み出る。太い足が床を踏むたび、スタッフの心拍が一拍すっ飛ぶ。
「お前ェが死んだら、誰が出るんだ。上って誰だ」
「そ、それは……」
スタッフは失禁しながら後ずさる。地獄の牛頭めいたプレッシャーに気圧され蒼白となったその顔面に、ハインツは人差し指を突きつけた。
「来るなら来いって上に伝えろ。俺達は……ケルベロス忍軍だ!」
「アイエエエェェェ……」
スタッフは恐怖のあまり白目をむくと、泡を吹いて気絶した。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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