発酵系男女よ大志を抱け

作者:東間

●最強キャラはこれ異論は認めない
「ちょっと待ってほんともうムリ腐における最強かつ最高のキャラはモブおじさんだってどいつもこいつもわかってなさ過ぎなんですけど!!?」
 ノンストップの叫びが響いたのは涼しい風が吹く公園の片隅。最近暑くなりつつある陽射しを避けるには丁度良さそうな、ドドーンと立っている木の下だった。
 響いた叫びは、その筋の者が聞いたら『そこでその話をするのは止せ』と諫める内容なのだが、そうする者はいない。何せ叫んだのがビルシャナで、一般人は蜘蛛の子を散らすように逃げた後で、残っているのはビルシャナの話に強い共感を覚え、激しく頷く男女ばかりだからだ。
「最強最高キャラは俺様スーパー攻め様とかヤンデレ攻めとか、桜に攫われそうで攫われない強い受けとかいつでもお嫁に行けそうな主夫力200%の受けじゃない。モブであるが故に何でも出来るっていう最強設定があるモブおじさん! こ! れ!!」
 ビルシャナがぐぐっと握り締めた拳を突き上げ、聞き入っていた男女が輝く笑顔で猛烈な拍手を送る。中には興奮をしたためるようにスマホで何やら操作している者もいた。
「モブおじさんなら年齢も職業も思いのままで、自由度が一気に上がるよね!」
「待って待って、外国人もOKなんじゃないの? ドバイ在住のモブおじさんとか!」
「いいじゃんいいじゃん。あっ、攻めなモブおじさんもいいけど、受けを精神的に支える保護者的なモブおじさんも……」
「やばい妄想が捗って脳内の薄い本がどんどん厚くなる」
「言い値で買うから早く形にしてくれ!!」
 妙な熱気に包まれ始めた彼らを、ビルシャナは慈愛に満ちた瞳で見つめ頷いた。
「わかってない奴らに叩き込んで、モブおじさんを最大手ジャンルにすればみんな幸せになれる……ふふふ、この勢いでモブおじさんを最大手ジャンルにするわよ!」
「おおーーーッ!!」

●発酵系男女よ大志を抱け
「ビルシャナ達の言っている意味が俺には解らなかった。だからといって、解らないまま君達に依頼するのは良くない。そう思って調べたんだ。徹底的に」
 予知の内容を語り終えたラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)が、真顔だがどこか遠いような疲れたような目で言った内容に、一部で『あっ(察し)』という空気が流れた。
「日本は未来に生きてるって本当だった……いや、未来に生きているのは日本だけじゃないのは知っているんだ。世の中色んなひとがいて、そういうひと達のニーズに応える場所が…………すまない、話が脱線してるね」
 ふう、と息を吐いて、勢い良く吸う。
 それでシャキッと出来たのか、いつもの様子になったラシードが『モブおじさんこそ腐界の最強最高キャラビルシャナ』の撃破を依頼した。
 ビルシャナの傍には、モブおじさん以下略に賛同した男女が数名ついているが、ビルシャナの主張をガツンと覆すような主張を行えば、彼らが配下となる事を防げるだろう。それが叶わなかった場合、彼らはビルシャナの配下としてケルベロス達の邪魔をする。
「それを防ぐ為、そして彼らを救う為にも、ビルシャナの主張を覆す……その筋の人っぽく言うと、『ジャンル変え』してしまうような主張が必要だよ」
 ビルシャナの主張は、『モブおじさんこそ腐界の最強最高キャラ』な為、それ以外の魅力的なキャラがいる事を訴えるのがベストだ。何でもこなす天才、不幸属性、見た目と中身のギャップ等々、それぞれタイプの違うキャラをプレゼンするとパンチがあるだろう。
 その際、キャラについて熱弁をふるったり、同志と語り合ったり――薄くてアツイ本や1ページ漫画といった実物を見せるのも効果がある筈だ。
 注意すべきは、プレゼンするキャラの性別は男である事。
 そして、『モブおじさん』や『モブおじさん』ジャンルを貶さない事。
 誰しも自分が熱くなっているものを悪く言われたくないものだ。
「ビルシャナの攻撃は、孔雀の炎とビルシャナ経文。ヒールも使ってくるから、戦闘になったら少し厄介かもしれないね」
 しかし、モブおじ略ビルシャナを放っておくわけにはいかない。
 純粋に楽しんでいただけであろう男女が、今までのように楽しめなくなり、果てには界隈全体に影響が及ぶ可能性もある。
「……うん。まあ。そういう訳で、壁サークル並の魅力をぶつけてきてくれるかい?」
 そう言ったラシードは、ほんのちょっぴり遠い目をしつつも、ケルベロス達を力いっぱい応援していた。


参加者
ジョン・スミス(三十四歳独身・e00517)
ミュラ・ナイン(想念ガール・e03830)
アウラ・シーノ(忘却の巫術士・e05207)
響命・司(霞蒼火・e23363)
ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)
シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)
柔・宇佐子(ナインチェプラウス・e33881)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)

■リプレイ

●推しの話をしよう
 柔・宇佐子(ナインチェプラウス・e33881)は、こてんと首を傾げた。
(「あんまりママから変な話を聞いてくるなって言われたけどどういうことかしら?」)
 ビルシャナ達が何か言っていたのはわかるが何なのかは解らない。だって7歳だもん。
 何も知らないピュアな少女の隣。ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)が1冊の資料を手に前へ出ると、気付いたビルシャナ達が一斉にこちらを見た。
「何だモブおじかと思ったけど女の子か」
「モブおじだったらなぁ」
「ほんと……って待って待って!! あなた何持ってんの!?」
 物凄く残念そうな信者達に同意しかけたビルシャナが、興奮した様子で全身の毛をぶわっと逆立てた。何故ならハチミツがページを捲っているのは――。
「本来モブおじとは、攻め不在の受けに路地裏だとかで猥褻な行為をしていく存在と思っていたのですが、違うのですかね?」
 少女が持っていたのは、複数の書き手が参加して作り上げる本――アンソロジー。資料にと買ったそれから視線を上げると、ギョッとしている信者達と目が合った。
「ああこれ、普通の漫画と思って間違えて購入してしまいました。こんなものが普通の書店にあっては青少年の教育によろしくありません」
 全年齢向けだと添えた途端ホッとしている。
「一般人がモブおじに触れるにしても、いきなり年齢制限モノは刺激が強い……」
「モブおじの為とはいえ、発酵系に触れるならまずはソフトに……ネットからとかで……」
「つーか間違えるならモブおじメインの本にするべきだと思うの」
 モブおじ本でないと知り舌打ちしたビルシャナの発言に、信者達が『それな』と口を揃える。
「ふむ。発酵系とかモブおじとか俺の知らない単語ばかりだ。皆そんな知識を一体どこから得ているのやら」
 ぼんやり、ぽつり。シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)の呟きにビルシャナ達がならば教えてしんぜようと沸き立った。
 始まる。無理に押し付けた時に起きる解釈違いの怖ろしさ、それが地雷だった時にされるであろう事を、ジョン・スミス(三十四歳独身・e00517)は知っていた。知っているので。
(「ソッと距離を置いておきたいんですが……」)
 そうもいかない。だから懐へ触れる。
 響命・司(霞蒼火・e23363)はというと。
「何でこうなっちまうかね……考えても詮無き事か」
 翼猫・ゆずにゃんと共に見守る事を決めに決めていた。ちなみに全く理解出来なかった単語は片っ端から消去済みである。
(「俺は何も聞いてないし見ていない」)
 今までのも、これから飛び出してくるものも。

●ぼくのわたしのグッドルッキングガイ
 私はモブおじさんの事もBLの事もよく存じ上げないのですが――そう言ったアウラ・シーノ(忘却の巫術士・e05207)が、グラスに梅酒を注ぎ、水で割る。信者達が口々に知らないなんて勿体ないと騒ぐが、アウラの語りは穏やかだ。
「モブおじさんが最高と仰る所以は……こうして一次創作をモブおじさんで割って、至高の作品を作れる事」
 梅酒の水割りを飲み干すと、次は炭酸で。そしてぐいっと。
「さらにモブおじさんの種類を変えれば、その風味も自由自在。故に最強……そうですね?」
「そうそう!」
「あっ、お姉さんもしかして擬人化イケるくち……?」
 ステキ――トゥンク。
 信者達の間に駈け抜けるトキメキに自分はBLは門外漢ですと力いっぱい言う。以前、『真の腐は物品や概念をそのままBL化できる』と聞き及んだ為、自分の好きな酒を使った酒好き――発酵系なだけだ。
 そしてアウラは気付いていた。彼らモブおじ推しの抱える致命的なミスに!
「主役を引き立てる事こそ『モブ』おじさんの価値なのですから、自ら主役になってしまっては『ただのおじさん』になってしまうのでは?」
「!」
「甘い! メインじゃないキャラにスポットが当たって、スピンオフ漫画や小説になるなんて珍しくない時代!」
 故にモブおじが主役になっても問題ない。ビルシャナの言葉に、一度揺らぎかけた信者達が持ちお直した。だが、まだまだ終わりではない。
「ちなみに推しは『日本酒』。各種おつまみとのカップリングは至高です」
 日本酒8のモブおじさん2で割るのも美味しい。美味しそうに味わう姿を見せ、甘酒と一緒にバトンタッチしたのは、資料をしまったハチミツだ。
「わたくしの推しはズバリアラサー見た目若め男子ですわ」
「アラサー見た目若め男子?」
「アラサー見た目若め男子ですわ」
 大事な事なので2回。
「無自覚に色気を振りまいていると良し。適度に筋肉がついているとなお良し」
 天然ボケで世間知らず、ぼんやり屋。それでいて『年上』というステータスだけが持つ『パパみ』はカンスト。
 そこに年下攻めが踏み込んでいけば宜しいんですのと語る少女は、アウラに生温かく見守られながら拳を握っていた。
「詳細が細かいな。まるでモデルがいるみたいだ」
「まぁわたくしの推しはシャルフィンお兄様のことなんですけどね」
 自分を見下ろすシャルフィンへにっこり笑顔。
 兄とシャルフィンの仲を応援しているハチミツは、日夜出来る範囲でビーでエルな勉強をしている。そのリアリティと、目の前に『いる』という事がプレゼン内容とあわさって高威力を発したようで、信者達は一斉にシャルフィンを見た。平静を装っているが食い付きは悪くない。寧ろいい。
 ちなみにビルシャナはガンを飛ばしながら鼻をほじほじしている。更にぶつくさ文句も言っている。
「いくら若いからって解ってなさ過ぎじゃないの。あのさ、そういうタイプをモブおじさんがさー」
「……誰もモブおじと俺で好きにしろとは言ってない。それにモブおじと三十路の俺となんて想像してみろ。絵面がむさ苦しいだろう」
「――……イケるでこれ」
「はあ!?」
「一体どんな想像をしたんだ」
「えっ、一体どんなって。そんな。ねえ?」
「デュフフ。描いちゃう? 綴っちゃう? あのねあのね」
 信じられない、というビルシャナ。ニヤニヤもじもじしながら語る信者達。シャルフィンは真顔のまま、ふい、と顔をそらした。そういえば、一応恋人に聞きはしたのだが、『シャルフィンみたいな男子』と言われ、わからないままだ。
「あのね、やっぱり男の子はスポーツをやっているのがいいのよ!」
 そいっ! と投げられた新たな『推し』。宇佐子の元気な声に、信者達がびくっとするが宇佐子は気付かない。手を挙げぴょんぴょん跳ねる。
「それでライバルとライバルが戦って汗と友情をはぐくむのよ! ボクシングで殴り合うのも、サッカーや野球でチームメイト同士の絆もかっこいいのよ!」
「ゆ、友情……絆……」
 宇佐子の愛らしい姿に、つぶらなお目々に、純粋な『すき』に信者達は色々な意味でたじたじになっていた。この子は、この子は何か違う――そんな顔で。
「ちなみに私は、少年バスケット漫画で仲の悪い男の子達が最後のシーンだけハイタッチするのがだーい好きなのよ! 尊いというやつねきっと!」
 信者達がびくんと震えた。後ずさりした者もいた。ビルシャナにぶつかり『ちょっと』と言われたが気付いていない者もいた。
「腐る事のない、心と心のぶつかりあいからの絆……」
「あの子が眩しすぎて内なるモブおじさんが霞む……」
「ていうかまずい、この子は世界の深淵に触れていないぞ!」
 眩しくて直視出来ないと視線をそらした信者達だが、そこにいたのは白き鱗。ジョンの手がスス――と懐へ伸び、そして。
「『超速ビーベイ四駆マスターズ武蔵』はご存知ですね」
「そ、それは『超速ビーベイ四駆マスターズ武蔵』の複製原画!?」
「ど、同人誌まで!」
「そう。作風は王道。少年達の友情・努力・勝利を緻密かつ爽快な脚本で表現した名作です」
 信者の中にいた『世代』が激しく食い付いた。
 世代ではない信者と、モブおじガチ勢のビルシャナはびっくりしていたが、それしきで『20年前に一世を風靡した作品で、20代から40代の男女問わず、知らない人は居ないであろう3期12クールホビーアニメ』の話は止まらない。
 そしてジョンの熱弁も尺に収まりきらない勢いで止まらない。
「主人公のゴー君のありえん尊みが深く――」
「わかる~~!」
「少年同士の絡みで大友にも――」
「映画見に行ったなあ」
 信者もぐいぐい食い付いていた。同年代の視聴者に訴えかける為、理想を詰め込んだ作品は長く愛されるものなのだろう。
「未熟かつ最強。この矛盾。そしてバリネコ。これです!!」
(「……崇敬できるんですけど……ちゃんと人を推してるんですけど……」)
 ビルシャナの同類ですとアウラは再び生温かく見守っていた。そして。
「ここでワタシが推すのはクレイジーサイコホモ」
「あ、触れてる人だ」
「むしろどっぷり……って、クレイジーサイコホモ!?」
 モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)は真顔でこくり頷き、クレイジーサイコホモの素晴らしさを語っていく。
「彼らは簡単に言えば『愛ゆえに最強』。愛に一途であり、愛に狂ってしまった人種デス。そして容姿や年齢を問イマセン」
 愛らしい表紙、渋かっこいい表紙――そんな『顔』をして『普通のBL』と見せかけ、読んだ時に見せる衝撃的な行動。それらギャップ萌えもポイントデス、と言うと、ギャップと呟いた信者がいた。
「二次では行き過ぎた友情から発展する等で、導入もしやすいデス」
 そして隣にいたミミック・収納ケースの中から取り出したるは、厳選して選んだ薄い本。どうぞお納め下サイと差し出せば、同じ腐だからか何かを感じたか、信者は目をきょろきょろさせながら受け取った。
「クレイジーサイコホモ、私初めて……」
「行き過ぎた友情か……モブおじさんだったら…………くっダメだ、ネタが浮かばない!」
「はあ!? 何言ってるのモブおじガチ勢なら10個くらい考えつかないとダメでしょ!」
 ミュラ・ナイン(想念ガール・e03830)にとって、女子がイケメン口説くモブお姉さん、ならまだしもビルシャナとビルシャナの主張には全く興味が湧かなかった。興味といえばこの件を持ってきたヘリオライダーにも興味がある。
(「でも既婚者だからそんな言い寄らないですけど」)
 彼氏だっている。取り敢えず今は、目の前へ。

●悲しいけど戦なのよね
「ぶっちゃけ現実見て良い人見つけた方がいいですよ、行き遅れる気です? 独身貴族気取るのは別にいいですけどー」
 信者達が目を泳がせ始める。どうやらフリーらしい。
「……孤独死は怖いなー……ネットだけで繋がる友人は葬式呼べないもんなー……」
 畳み掛ければ、ぴくり。
 少し間が流れた後にケルベロス達を見る顔は、他のジャンルの良さを知り、あらゆる沼を渡り歩こうとする勇者の顔をしている。
「あの、帰ったら擬人化モノ漁ってみますんで!」
「は?」
「久々にバスケ漫画読みたくなってきた、ので。ありがとね」
「ちょっと!」
「下克上……いい響き」
「レンタルビデオ屋へGOですぞ!」
「あ、俺も俺も」
「今すぐタグ検索しまくりたいので帰りますね!」
「ええっ!?」
 ビルシャナの呼び止めも虚しく『元』となった信者達がダッシュで去っていく。残ったのはたった1人のモブおじ教祖であるビルシャナと、ビルシャナをじっと見るケルベロス達。
「よくもよくも! アンタ達みたいなのがいるから!!」
 モブおじさんがどれだけ素晴らしいか、モブおじさんならこんな事があんな事が――と恨み辛みのこもった経文が響く。
 しかしそれは地獄の蓋を開けるに等しい行為をとっていた。攻撃を受けた男の手が震える。そこにあるのは――余波で飛んだ砂利がカバーにシュピッ、と小さな傷を付けた複製原画。
 響く絶叫。ぶんぶん動く頭。血潮はホビアニで出来ている鱗紳士のジョンが荒ぶる紳士となった瞬間、彼の掌に光が集まり弾となった。
「ア”ア”ア”ア”相手の! 性癖を!! 否定したらそこで戦争でしょうがあァ! 原理主義者に死を!!!!」
「いやーー!? 頭の中にショタが入り込んでくるーー!!」
「私はあくまで自然に! 作品の良さを理解して貰お炉していtんのいにに#””!」
 最後の方はもう何と言っているのか聞き取れないが、彼が怒りで爆発しているのは全員理解していた。
「ひとの大事なものにケガさせたらだめなのよ! これ以上はさせないのよ!」
 えいっ、と宇佐子が投げたきらきら満月はシャルフィンにすぽっと降り、ハチミツも妖精靴の踵を鳴らして舞い踊る。花弁が舞い、箱竜・ババロアの属性が生温かい目と共に少女へ降りた。
 蒼炎と烈風、司の繰り出す拳がビルシャナの頬を捉えた瞬間、爆発が起きる。ゆずにゃんの羽ばたきが起こる中、翼広げた蒼い鳳凰が消えた直後――。
「お前のような奴が! 数年後にワゴンセール行きになる悲しきブームの寵児を生み出すんだ! 平たく言って死ね!!」
 モヱも何かもう容赦がなさ過ぎた。放った一撃は絶対零度の杭と言葉のセットとなり、パキパキと羽毛を凍らせる。
「大体なんすかモブおじが最大手になっても自分の性癖を既存キャラにぶつけて(ぴーーーー)するジャンルは細分化して自滅すか有名大手が作った流れに乗る人ばっかになて調子に乗って100部刷ったニュービーが苦しむ”んす!」
 怒りのスーパー早口はジョン・スミスの提供でお送りしました。
 ――そう。一過性の愛を受けて爆発的に育ったジャンルは、いつの世も悲しい結末を迎えるのだと、2人は知っているのだ。
「な、何よ、モブおじさんの魅力がわかってな――ぎ、あ……っ!?」
「硝子の靴だからあんまし動きたくないんですけどね。さっさと終わらせましょうよ」
 ミュラから駈け抜けた緑がビルシャナをぎちぎち締め上げ、アウラの振るう刃が異形の体を切り裂いた。そして。
「この一撃を受けてみろ」
 シャルフィンが撃ち出したそれは、重い腰を上げる時に湧き上がるアレ。その名は。
「い、いや、よっこらしょっとな攻撃で負けたくない……!」
 だが悲しいかな。それがトドメとなり、ビルシャナは文字通り散っていった。

●完!
「あー……煙草が美味い」
 静かになった公園に、司の吐き出した煙がぷかぷか漂う。アウラもガックリと肩を落としていた。
「ハチミツさんやミュラさんの教育に悪すぎました……」
 別の何かで上書きすれば消えるかもしれないが、ハチミツはというと。
「教育上あまり良くなさそうだ」
「シャルフィンお兄様その本を返して!」
 飛び跳ねても20cm以上の現実が壁となる。そんな光景を、モヱは静かに見守っていた。
「未来を担う若人が育ってイル……」
 周りの熱狂やビルシャナにのまれるのではなく、『本気』になってこそ愛は、ジャンルは育つ。そんな人が多いから、日本はオタク大国となったのかもしれない。

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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