●ぼーそーきかんしゃ
翔太は機関車に乗って、はしゃいでいた。
もっとも、本物の機関車ではない。コミカルな顔がついたそれは、ショッピングモールのゲームコーナーにある作り物。
何百円かお金を入れると、しばらくゆらゆら揺れるだけの乗り物だ。
他にできるのはハンドルについた赤いボタンを押して、警笛を鳴らすことくらい。
だが、翔太はそれをとても楽しんでいた。
2人が乗るのがせいいっぱいの狭い座席で、まだ幼い少年はハンドルを握り、激しく左右に動かしている。
「ねえ、お母さ……」
かたわらにいたはずの母親を振り返ろうとして、少年は母がいないことに気づいた。
代わりに見えたのは、真っ黒な闇が車掌の制服を着ているという異様な姿だった。
闇の車掌が笑い始める。
固定されていたはずの機関車が突然走り出して、棚をなぎ倒し、壁を突き破る。
ボタンを押してもいないのに、警笛は耳障りな音を高らかに響かせている。
「やだあああああっ!」
叫んで、翔太は布団から跳ね起きた。
「なんだ……夢かあ。あーあ、驚いちゃった」
息をつく少年の背後に、魔女が現れた。
手にした鍵で胸をひと突きにする。
「あっ……」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
第3の魔女ケリュネイアが告げる。
貫かれた少年の体から、警笛を鳴らして遊具の機関車が飛び出した。
同時に、目覚めたばかりの翔太は意識を失ってベッドに再び横たわる。
まるであざ笑うかのような顔がついたドリームイーターは、窓から飛び出すと犠牲者を求めて走り出した。
●ヘリオライダーの依頼
ドリームイーターが起こす事件を予知したと、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は言った。
「子供の頃、妙な夢を見て跳ね起きた経験のある方は多いのではないかと思います。今回、ドリームイーターに狙われるのはそんな子供です」
「うん、いきなりびっくりしちゃうようなことが起きたりするよね、夢って。面白いよねっ!」
集まっていたケルベロスの1人、有賀・真理音(レプリカントの巫術士・en0225)の言葉に芹架は頷く。
「残念ながら、今回は面白いではすみません。ドリームイーターはその『驚き』を奪って事件を起こすようです」
奪ったドリームイーター自体はすぐに姿を消してしまうらしい。代わりに、その驚きを具現化したかのような新しいドリームイーターが出現し、暴れ回るのだという。
「皆さんにお願いしたいのは、この新たに現れたドリームイーターを撃破することです。そうすれば、驚きを奪われた子供も目を覚ますはずです」
芹架は一度言葉を切ると、頭を下げた。
事件はとある住宅地で起こる。
眠っている時に起こるので、もちろん夜だ。
「ドリームイーターは機関車の姿をしています。ただ、本物ではなく、商業施設や遊園地で見かける子供が乗って遊ぶ遊具の機関車です」
前方には顔がついている。本来なら親しみやすいデザインの顔があるところだが、ドリームイーターはまるであざけり笑うような表情をしているという。
「攻撃の手段ですが、まず他人を無理矢理乗せて走り回ることができます」
速度はケルベロスが走るのと変わらないが、激しく左右に揺れ動きながらムチャクチャな軌道で走る。
ケルベロスさえも乗り物酔いをさせ、ダメージとともに武器を振るう力を弱めてしまう。
「他に警笛を鳴らして、耳障りな音で範囲攻撃をしてきます。この音を聞くとトラウマが呼び起こされてしまうようです」
突撃をかけてなぎ倒すこともできる。これも範囲攻撃で、敵の脚を止める効果がある。
「ドリームイーターは住宅地にひそみ、人を驚かそうと待ちかまえています。近づけば自分から現れるでしょう」
また、自分を見ても驚かない者を優先的に狙う習性があるらしい。
余計な寄り道をしなければ、誰も驚かさないうちに現場にたどりつくことができるだろう。
なお、もし人々を避難させる場合、交戦前だとドリームイーターに遭遇する可能性があるので注意したほうがいい。
芹架は説明を終えた。
「機械は人を幸せにするためにあるんだよ。なのに、子供の夢を奪って生まれるなんて、見過ごせないよね」
真理音が怒りの声をあげた。「ボクの実力じゃ倒すのは無理そうだけど、できるだけみんなのお手伝いするよ。よろしくねっ!」
参加者 | |
---|---|
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
立花・吹雪(一姫刀閃・e13677) |
ドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823) |
葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
ベルベット・フロー(電光石火の美少女ビショップ・e29652) |
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607) |
●恐ろしい顔
夜の街角はまだ静かだった。
「子供が乗って遊ぶ機関車がドリームイーターになってしまうとは、子供たちの夢が壊されてしまう前に退治しないといけませんね」
二振りの剣を手に、葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)は言った。
「しかし、ドリームイーターはホントにいろんな奴がいるな……」
呟いたのはリーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)だ。
銀髪をポニーテールにしたサキュバスは、毛先だけ色の違う前髪越しに暗い住宅街を警戒している。
「前方に顔がついた機関車ってちょっと冷静に考えると怖い気がしなくもないよね……」
平凡な雰囲気の少年が言った。
「とりあえず翔太君や一般人のために早く倒してしまわないとね」
「まぁ、少年をこのままにもしておけないな、きちんと倒して、助け出すとしようか」
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)の言葉に、リーファリナは頷いた。
「もうすぐ現場だよね。他の人が出くわさないうちに、急ごう!」
有賀・真理音(レプリカントの巫術士・en0225)が仲間たちに声をかけた。
「近くにちょうどよさそうな空き地があります。うまくおびき寄せましょう」
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が閉じていた赤い瞳を開く。
アイズフォンで戦場にできそうな場所を検索していたのだ。
ヘリオライダーから聞いていた敵の特性を利用すれば、おびき寄せるのは難しくない。
「年端もいかぬ少年を利用するなどと、許せませんね」
柔らかな物腰の中にも、少しだけ怒りをにじませてドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823)が呟いた。
「敵の暴走を止め、少年を助けるためにも皆さん油断せずに参りましょう!」
立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)の凛とした声が静かに響く。
彼女の声をかき消すように、警笛の音が響いたのはその時だった。
曲がり角の先から、巨大な顔が現れる。
「おぎゃぁあ! お助けええ!」
地獄化した顔から火花を散らしながら、驚きの声を上げたベルベット・フロー(電光石火の美少女ビショップ・e29652)が素早く後退する。
(「笑った人形ってなんか怖いよね。夜だと尚更だよ…」)
驚いて見せたのは作戦をふまえての演技だったが、敵が心臓に悪い外見をしているのは確かだ。
「あ、あれって機関車……です? 何ですか、あれ……!」
真理も驚きの声を上げた。
2人だけではない。他のケルベロスたちも驚いたふりをしてみせる。あるいは、本当に驚いていた。
「わあっ、なにあれっ!」
真理音も大きな声を出している。彼女の手には風流の手が触れていた。
「まさかこんな住宅地で機関車と出くわすとは、轢かれるかと思いました」
接触テレパスで指示を出しながら、風流自身も驚いた声を出す。
驚いたふりをする仲間たちの中で、1人の男が静かに敵の前へと進みでる。
「可愛い図体に似合わないツラ構えだな。いっそ顔面にモザイクかけとけ」
ベースギターを片手に携えて、ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)は驚きを見せることなく告げた。
落ち着いた様子のウルトレスに、ドリームイーターが鳴らす警笛の音が高まる。
近づいてくるぼーそーきかんしゃととウルトレスの間に、ドゥーグンとライドキャリバーに乗った真理が割り込む。
中距離を保って、ウルトレスも移動を始めた。
●楽しい機関車
誘導されていることに気づいているのかどうか、敵は遠慮なく攻撃を加えてきた。
ウルトレスに向けて突撃をかけてくる。
立ちはだかってかわりに攻撃を受けたのはドゥーグンだ。
なぎ倒された足の動きが鈍る。
ドゥーグンはライトニングロッドを構えて、雷の壁を呼び出した。
だが、呼び出した壁で守るのはウルトレスだ。
「ご自分を守らなくて大丈夫ですか?」
「ええ。大した傷ではありません。クレイドルキーパー様を守るのが先決ですわ」
問いかけてきたウルトレスに、ドゥーグンは微笑みを返す。
「UCでいいですよ。長い名前ですから」
答えながら、ウルトレスはギターを爪弾き始めた。
「周りに人がいないかもう一度確かめてきます!」
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)がそう告げ、戦場を離れて周囲に一般人がいないか確かめに行った。
通り過ぎた敵には吹雪やリーファリナが痛烈な蹴りを叩き込んでいる。
曲に合わせて、ウルトレスも痛烈な一撃を加えていた。
そのまま彼は真里が見つけた空き地のほうへと移動していく。
他の仲間たちは主にドゥーグンを含めた前衛にまず支援の技をかけている。
「守り続ける事が、私の戦いなのです……!」
真里の展開したドローンが密集して仲間たちを守る。一騎はさらに光る盾も自分の前に展開していた。
風流と真里音はオウガメタル粒子をばらまいて仲間の感覚を高めてくれる。
ベルベットによるハンマーの一撃を受けながら、機関車がウルトレス向かって移動し、彼を無理やり自分の背に乗せる。
「その背に打ち寄せる、仰望の波を感じますか?」
追いながらドゥーグンも支援の技を使う。
世界中の人々がケルベロスへ寄せる願いを具現化する。波に包まれるかのごとき感覚をドゥーグン自身も感じていた。
塀を駆け抜け電柱を上り、ムチャクチャに走るドリームイーター。
真理はライドキャリバーに乗って、それを追っていた。
「ぼーそーきかんしゃ……ですか。私のプライド・ワンの方が速いし格好良いのです」
無表情のまま呟く真理。
空き地に飛び込んだところで、ウルトレスがようやく敵を振りほどいて飛び降りた。
できるだけかばえそうな位置に移動しながら、チェーンソー剣を構える。彼女自身が改造して出力と切断力を向上させた剣は、うなりを上げて敵を切り裂く。
振りぬいた勢いのままに、プライド・ワンが激しく回転を始める。
回転する車輪は機関車の車輪を踏み砕き、足を止めていた。
「ウルトレスさん、すぐに回復しますから」
風流が声をかけながら、真に自由なるもののオーラで包み込んでいた。
吹雪は戦場が空き地に入ったところで、剣気を放った。
「これで、皆さん素直に言うことを聞いてくれるはずです。後は、皆さんに避難するよう呼びかけて回れば……」
「じゃあそれは、ボクが回ってくるよ。ウルトレスさんにも頼まれてるからね」
真理音が言って、戦場である空き地から駆け出して行った。
少女の背を見送って、吹雪は機関車へと視線を戻す。
「本来は親しみのある表情なのでしょうが……この顔は子供たちに見せるわけにはいかないですね」
目に入ったドリームイーターの顔に、吹雪は呟く。
言葉と共に、深い反りを持つ妖刀、絶花と呼ばれる斬魔刀に空の魔力を込めて斬る。
「うん、やっぱり怖いよねえ」
「子供は泣いちゃいそうだよね。だから……この拳で凍らせる!」
ベルベットや一騎が同意しながら吹雪に続いた。
ファミリアの攻撃が敵を捉えたかと思うと、絵にかいたような見事な動きでガントレットに包まれた一騎の拳が敵を凍らせていた。
敵の攻撃は主にウルトレスに向けられていたものの、さすがにすべての攻撃が彼だけに向いていたわけではない。
気味の悪い笑みを浮かべ、前衛をひき殺そうと機関車が迫る。
リーファリナは拳を握って敵を迎え撃つ。
「ドリームイーターとはいえ、機関車と殴り合えるとはな! 楽しみが多いな?」
結局のところは、ただの体当たりに過ぎない。
「轢き殺せるか、やってみるか!? ただではすまないぞ!」
力を込めて、近づいてくる敵に拳を叩き込む――が、次の瞬間リーファリナの体は見事に弾き飛ばされていた。
(「ちょっと無理があったか……だが、それはそれで面白い!」)
肉弾戦に、魔術を混ぜて敵に仕掛ける。
「全てを打ち砕く界の怒りよ。力の猛り、轟きをもって我が敵を討ち滅ぼさん」
魔術円より生み出される数多の砲門は異なる界の力を具現化し、世界を震わせる轟音と共にドリームイーターを撃ち抜いた。
●その笑いを止めろ
ケルベロスたちが攻撃してもぼーそーきかんしゃの笑みは変わらなかったが、ダメージが蓄積していっているのは間違いない。
ただ、それはケルベロス側も同じだった。ウルトレスをかばって受けたものを含めて、前衛に立つ4人と1体は、全員一度は乗り物酔いに襲われている。
それに、警笛による攻撃は後衛にトラウマを与えていた。
もっとも、一番ダメージを受けているのはもちろんウルトレスだ。今もまた彼は、無理やり機関車に乗せられて全身を揺らされている。
(「あの技を何度も受けて平気な顔をしてるなんて……すごいです」)
風流はウルトレスの様子を確かめながら、思った。
16歳の彼女ですら、子供が乗る機関車に無理やり乗せられるのは想像するだけでもなかなかきつい。
ウルトレスはその長身を何度も狭い座席に押し込められても、クールな顔のままでホットなサウンドを奏で続けている。
回復しなければ、そう思った時、機関車が風流に向けて突撃してきた。しかも、何故かその背には彼女自身が乗っていて、童心に返ったように楽しんでいる……。
「な、なんで……確かに私はヴァルキュリアなので地球に来て初めて見る物なので興味がありましたけど、あれは子供用なんですよ」
「風流さん、気を確かに。なにが見えているかわかりませんが、おそらくはトラウマによる攻撃です」
突撃を受けたところで吹雪の声が聞こえた。彼女も攻撃を受けているようだが、それがなんなのかは風流にもわからない。
「すみません、吹雪さん。厄介ですね……でも、まずUCさんを回復しないと」
両手に携えた剣が届く範囲は、風流の『自宅』である。その自宅を守るべく、彼女は自由なる者のオーラを放った。
もう1人の後衛が叫び声をあげた。
「うぎゃああ! 熱い! 顔が焼ける!」
ベルベットは自分の顔を焼いた敵の姿を見ていた。
蛇のような目がねめつけてくる。地獄化した彼女の顔を包み込む炎が、あたかもデウスエクスによって放たれたかのように感じた。
「ベルベットさん、大丈夫?」
荒い息を吐きながら、ベルベットは声をかけてきた真理音に頷いた。風流や吹雪も心配げに見ている。
「ああ、大丈夫。もう消えた」
トラウマは叫びによってかき消えて、もう見えなくなった。
仲間たちや敵の攻撃は叫んでいる間にも続いている。
髪をかき上げると、地獄の炎からプラズマが沸き立つ。
「火力超最大! タァイプ・サンダーストラック!!」
チャージしたプラズマを束ねて、熱線と共に放つ。稲光を纏って飛ぶ熱線は、狙い過たず機関車を焼いていた。
それでも、ケルベロスが意図していた通り、中衛1人に攻撃を集めたことで敵との戦いは余裕のある状態で進んでいた。
だが、ドゥーグンや真理らにかばわれ、風流や真理音らに回復されているとはいえ、攻撃を受けているウルトレスの負担は大きい。
ウルトレスは自分をまた捕らえようとする敵を、飛びのいて回避しようとした。
だが、手練れのケルベロスでも攻撃をかわしきることは容易ではない。
少しだけ開いた空間に真理が飛び込んで、代わりに機関車に連行される。
「今のを受けていたら危なかった……長くはもたないな」
敵ももう限界が近いはずだ。凍り付かせ、装甲を破壊する攻撃をウルトレスはすでに何度も叩き込んでいる。
ふと、ウルトレスの耳に声が聞こえた。
お前に正義面をする資格があるのかと問いかける声。失った記憶の中で、人を殺めていたのではないかと詰問する声。
自分の心を攻撃する、自分の声。
「問題ない。すぐに消える」
仲間の技がウルトレスを守ってくれているからだ。
「大丈夫ですか、真理さん。助けてもらってばかりですみませんが、もう少し力を貸してください」
「ええ、任せておいて」
敵から逃れた真理に声をかけると、ウルトレスはベースギターを爪弾いた。
「サイレンナイッ フィーバァァァァッ――!!!」
疾走感あふれるサウンドが仲間たちの細胞を活性化させる。もっとも、夜の住宅地なので音量は少し控えめだ。
戦いはもうすぐ終わろうとしていた。
「それじゃ、一気に攻め込むとしようかね」
リーファリナの超重の一撃が敵の可能性を奪い取る。ベルベットのファミリアが引き裂いて、さらに凍結を加速させた。
「そうだね……そろそろ、こっちも限界だ」
一騎は吐き気をこらえながら戦っていた。
攻撃を喰らったのは一度だけだが、乗り物には酔いやすいほうなのだ。もしケルベロスでなければとうにリバースしていただろう。
風流と真理音は最後まで回復を続け、ドリームイーターの最後の抵抗を防ぐ。
「雷光一閃……貴方に見切れますか?」
全身に雷の霊力を巡らせた吹雪が、限界を超えた速度で鎌のごとく反った妖刀を振り抜いた。
「たたみかける機会ですわね。私も攻撃させていただきますわ」
ドゥーグンの白い手が重たいハンマーを振るい、超重の一撃を叩き込む。
真理のチェーンソー剣が敵をズタズタに切り刻み、ウルトレスがギターに架したライフルで痛烈な一撃を叩き込んで、車体を破壊する。
「そろそろお終いにしなきゃこっちもやばいんだよ! 魔力を込めたこの拳で、その体を内外から破壊する!」
一騎は叫びながら拳を固めた。
愛用のバトルガントレットに埋め込まれた宝玉が真紅に輝く。
ジェットエンジンが拳を加速した。叩き込んだその場所は、ちょうど装甲の破れ目となっている場所だ。
敵の内部へと破壊の魔力を流し込むと、機関車の車体を爆ぜた。
自壊していく敵を飛び越えて、一騎は全力で駆け抜けた。
●願わくば楽しい夢を
ドリームイーターが残骸と化して、消えていく。
「片づきましたわね……あら、カズキ様は?」
ドゥーグンは首を傾げた。
「……あちらでエチケット袋を使っているみたいです」
真理が示した先で、物陰に隠れて袋に頭をつっこんでいる一騎がいた。やばいというのはそういう意味だったらしい。
「UCさんは大丈夫なの?」
「吐き気は問題ない。……体力はだいぶ消耗しているが」
風流の問いかけに、ウルトレスが答える。
「手当てと、周囲の片付けもしなきゃいけませんね」
吹雪が周りを見回した。空き地を囲む家は機関車が走り回ったせいでかなりひどいことになっている。
「ええ、ヒールしてしまうことにいたしましょう」
柔らかく微笑んで、ドゥーグンが頷いた。
「全部終わったら、子供の様子を見てから退散するとしようかねえ。まだ小さい子なのが残念だけど」
リーファリナが最初に敵が現れたほうを振り返る。
「翔太だっけ。ちゃんと目覚めてるといいね。あ、でも、見に行くなら恐がらせないようにしないと」
ベルベットが地獄化した自分の顔に手をやる。
少年が今夜はもう悪夢を見ないで眠れることをケルベロスたちは願った。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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