「わーっ!」
瞳をキラキラさせて少年がガラス越しに眺めるのは、回転する長い棒にとろりと白い液体を垂らし、幾重にも生地を重ねて焼き上げていくバウムクーヘンを作る作業工程だった。
「すげー! こんな風に作るんだっ」
じーっと少しずつ大きくなっていくバウムクーヘンに少年は目を奪われる。
「うわっこんなに大きくなるのか!?」
芯棒を抜き取り長ーいバウムクーヘンが取り出される。それは少年の体がすっぽり入りそうな大きな筒状のケーキだった。
「うまそー! 食べてみたいなー」
少年がそう思うと、ガラスが取り除かれいつの間にか目の前にバウムクーヘンが現れていた。
「おおー! いっつも食べるバウムクーヘンの何倍だろ? じゃあいただきまーす!」
迷いなく少年はバウムクーヘンに齧りつく。するとその頬が緩み、美味しそうに口いっぱいに押し込んだ。
「んーうめーー! 今まで食べたのよりめっちゃうめーーー!」
興奮した少年がガツガツと手が止まらぬとバウムクーヘンを食べ続ける。
『ギュオオオオッ』
すると突然、異音が激しく鳴り響く。
「え? え? なんの音!?」
驚く少年が周囲を何も変わったところはない。よく耳を澄ませば、それはバウムクーヘンから発せられている音だと気付いた。
「これが鳴ってるのか?」
少年がバウムクーヘンの穴を覗く。するとバウムクーヘンは掃除機のように吸引し少年の体をすっぽりと中に収めてしまった。
「なにこれ!? 出せ! 出せよ!」
少年が動こうとするが身動きが取れない。するとバウムクーヘンが上に角度をつけた。
『ド―――ンッ!』
爆音と共に少年の体が天井へと撃ち出される。
「うわーーーーーーー!!!」
砲弾となった少年は天井を突き破り、空に上がり雲を突っきって月にぶつかり砕け散った。
「わーーー! ……あれ?」
上体を起こした少年が周囲を確認する。そこは見慣れた自分の部屋だった。
「おーびっくりしたー……」
夢だと気付いた少年は安堵に深く息を吐く。その胸に鍵が突き立てられた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
まるで最初から居たように姿を現した女が手にした鍵を引き抜く。すると少年はぐらりと体を傾け意識を失いベッドに倒れた。それと同時に女の姿は消え去る。
『ドドーーン! バウムクーヘンキャノン!』
それと入れ替わるように現れたのは巨大なバウムクーヘンの大砲だった。
『ファイヤー! ドォーン!!』
その筒から放たれるケーキの砲弾が壁に穴を空け、バウムクーヘンは夜の野外へと飛び出した。
「また新たにドリームイーターが現れるわ。メロンパンにメロンと、食べ物のドリームイーターが続いたから他にも居ないかと調べてもらったのよ」
するとそれが当たったのだと、ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)がケルベロス達に告げる。
「第三の魔女・ケリュネイアが奪った『驚き』から新たなドリームイーターを生み出してしまったようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい説明を始める。
「生まれたドリームイーターは見境なしに人を襲い、グラビティ・チェインを奪うようです。そうなれば多くの人が犠牲になってしまいます。皆さんの力でそれを阻止する為に敵を撃破してください」
すぐに動けば犠牲が出る前に敵と接触する事が出来る。それに倒す事で眠りに就いた少年も目覚めさせる事が可能だ。
「敵は全長7mはある、巨大なカットしていない細長いバウムクーヘンの形状をしていて。まるで大砲のような能力を持っているようです」
ケーキを砲弾として飛ばし攻撃してくるようだ。他にも中に人を入れて飛ばす能力もあるという。
「出現する場所は神戸の街で、人を見つけると砲撃を付近に着弾させて驚かせようとするようです」
驚いた反応に満足して次弾で人を吹っ飛ばしてしまう。
「その時驚かない対象が居ると、優先的に狙うようになるようです」
その習性を利用すれば敵の動きを多少はコントロールする事が可能だろう。
「バウムクーヘンといえば誰にでも好まれるお土産の定番ですが、人を殺めるようなら食べるどころではありません。被害が出る前に退治してください」
よろしくお願いしますとセリカが一礼してヘリオンの準備に向かう。
「次はバウムクーヘンね……これも甘くて美味しいのかしら? でも食べるのに夢中になる訳にはいかないわ。みんなでこのバウムクーヘンを退治するわよ!」
気合を入れたユーロの言葉に同意し、ケルベロス達も出発の準備に取り掛かった。
参加者 | |
---|---|
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806) |
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540) |
プルミエ・ミセルコルディア(フォーマットバグ・e18010) |
ルリィ・シャルラッハロート(スカーレットデスティニー・e21360) |
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365) |
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685) |
ヒメル・カルミンロート(セブンスヘブン・e33233) |
ネリシア・アンダーソン(黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221) |
●甘い香り
人気の無い静まり返った夜道に、どこからか甘い香りが春らしい穏やかな風に乗って漂っていた。
「ん……バームクーヘンのドリームイーター……」
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)は大きなバウムクーヘンを想像する。
「迷惑な相手に変わりはないけど、お菓子の敵っていうのは、ちょっと楽しみ、かな……。毎回こういう相手だと良いんだけど……」
大好きな甘いお菓子が敵なら殺伐とした戦闘も楽しめると、リーナは遭遇を楽しみに周囲を探る。
「メロンパンにメロンにバウムクーヘンかぁ」
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)はここ最近戦った食べ物を思い出す。
「食べ物系ドリームイーターって素敵。しかも、大変美味しい上に、食べても害は無い。食べるしかないわね!」
今回の敵は存分に食べられそうだと食べる気満々でユーロは笑みを浮かべた。
「以前にも大きな食べ物が出たらしいけど、こうなると何でもありね」
ルリィ・シャルラッハロート(スカーレットデスティニー・e21360)はそう言いながらもバウムクーヘンを美味しく食べる為に紅茶の用意をしてきていた。
「……飴の次は……バウムクーヘン型の大砲? 昨年の運動会の競技に……人間大砲って言うのがあるって聞いたけど」
ネリシア・アンダーソン(黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221)は大砲が人が飛ばして爆散する想像をする。
「ケルベロス以外にやったら死ぬよね? 止めなきゃ……食べなきゃ……」
バウムクーヘンと戦うイメージがいつの間にか美味しく頂くイメージへとすり替わっていた。
「できれば威嚇射撃の前に攻撃したいわね」
極力一般人を巻き込まないようにこちらに注意を引き付けたいと、無表情にマルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)は見つけ次第いつでも動けるように準備をする。だが次の瞬間、激しい轟音が鳴り響く。
『ファイヤー! ドォーン!!』
香りに誘われるように角を曲がると、全長7mもあるバウムクーヘンが道の真ん中で鎮座していた。ケルベロスの姿を見た瞬間、その頭上を越えて空に飛んで行くように巨大なイチゴショートの砲弾が撃ち出された。
「むう、甘いもので釣るのは……なんて美味し……悪いやつだ。どうだろう、少しつまみ食い……いやいや、ダメかな」
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)は甘い香りに釣られるように巨大バウムクーヘンに目を奪われる。
「ばうむくーへん食べにきました」
マイペースにプルミエ・ミセルコルディア(フォーマットバグ・e18010)はバウムクーヘンに近づく。
「話には聞いてたけど、これだけ大きいとまるで丸太ね! これ以上被害を出す前に美味しく頂き……いえ、退治しないとね!」
溢れる食欲を抑え、ヒメル・カルミンロート(セブンスヘブン・e33233)もバウムクーヘンへと足を向けた。
●巨大バウムクーヘン
『ドドーン! バウムクーヘンキャノン登場!』
どうだ驚けとばかりに木のように層を持つクーヘンは名乗りを上げて上を向く。
「うわっ、何これ!? バウムクーヘン? ちょっと大きすぎでしょ!」
それを前に大袈裟に驚いたヒメルが上を見上げた。
「それで驚かせたつもり? 私達が相手をしてあげるわ! 溶けきる前に食べない方がいいわよ」
先手必勝とばかりにマルレーネが強酸性の桃色の霧で相手を包み込み表面を溶かし、仲間に今は食べないよう注意を促す。
『ドーン!』
空にチョコケーキを撃ち上げると、衝撃にバウムクーヘンの薄い表層が何枚も剥がれ落ち、無事な層が姿を現した。
『驚かない子にはー、こうだー! ドドーン!』
そしてマルレーネに向かって穴を向け、中からイチゴショートを発射して足元に爆発を起こし、クリーム塗れにしながらマルレーネの体を吹き飛ばした。
「わっ……おっきなバウムクーヘン?」
大きな音にビクッと毛を逆立ててネリシアは驚き、更に敵の姿にもう一度驚く。
「なんか撃ってきた! ちょっこれシャレにならないでしょ……」
ヒメルは飛び退いてクリームの飛沫を回避しながら、御業でマルレーネを包み込むようにキャッチして治療する。
「すごい! 本当に大砲サイズなんだ。コレだけ大きかったら食べがいがありそうね!」
ユーロも大袈裟に驚いてみせる。
『そうだぞー、世界最大最強のバウムクーヘンなのだー!!』
威張るようにその巨体がゆっさゆっさと揺れる。
「太さはそれなりだけど、故郷のイベントでみた世界一に挑戦したバウムクーヘンのがよっぽど大きかったわよ。そんな豆大福で人を驚かそうなんて、小事戦艦ね!」
平然とした態度でルリィは相手を侮辱にする。
「『食材として』見られる覚悟はおありですか? これでも私、フードファイターなので」
逆に驚かせる勢いでプルミエは、食材として相手を見る。
『食べられるものなら、食べてみるといい! このケーキを避けられたらねーファイヤー!』
放たれるチーズケーキの砲撃を前に出たプルミエが受け止めた。体がケーキ塗れになる。
「暖かさで傷んでしまっては食べられなくなるからな」
側面に回ったベルンハルトはハンマーを叩き込み、賞味期限の可能性を奪い取って表面を凍りつかせた。
「大きい……今回はみんなも一緒だし、張り切って頑張る、よ……」
思わず見惚れてしまったリーナは頭を振って意識を戻し、隠れながら近づき引き抜いた小太刀に雷を纏わせて突っ込み刃を突き立てた。
『美味しいケーキの爆撃だー! たっぷりご馳走するぞードドーン!』
様々なケーキの砲弾が飛んできて爆発して、ケルベロス達の体を爆風が煽る。
「そんな攻撃じゃあクリーム一つ付けられないわよ」
ルリィが銃を抜き撃ち砲身の中でを撃ち砕いた。
砲撃が止んだところでベルンハルトは刀を振るいバウムクーヘンを大きく斬り裂く。
「ちょっとだけだ、うん。ちょっとだけなら大丈夫だから」
自分に言い聞かせて、ベルンハルトは切り口から拝借した生地を口に放り込む。
「むっ、皆。結構いけるぞこれ、甘い」
もぐもぐと口を動かし、柔らかく口に広がる甘さに頬を緩める。
「では、いただきます」
続いて反対側からプルミエは腕を敵の体にずぼっと突っ込んで千切り、無表情の内にもそこはかとなく嬉しそうな雰囲気を醸し出して頬張る。
「あまーいおいしそーな香りがするわね!」
自分もと鋼を纏ったユーロは腕を突っ込み、千切ってパクリとケーキを食べる。
「みんな美味しそう……わたしも、食べる、よ」
その様子にいそいそとリーナはケーキナイフのように形状を変えた漆黒の短剣で生地を切り裂き、その破片を口に運んだ。
「あれ……食べるんだ」
皆がバウムクーヘンに寄ってたかって貪り食うのを見てマルレーネのクールな顔に汗が一筋流れる。そして今は眺めている暇はないとライフルを構え、敵を弱らせる光弾を撃ち込んだ。
「ケーキ食べたいわね……でも今は治療が先!」
我慢我慢とヒメルは紙兵を散布して、傷ついた仲間を守りるように配置し治療を施す。
「……確か……凍らせたバウムクーヘンって………アイスみたいに美味しいんだよね」
ネリシアの纏う鉛のオウガメタルがワッフル型の盾となり、それを使って思い切り殴りつけた。凹んだ箇所から凍り始める。
『勝手に他人のものを食べるのは悪い子だー!』
バウムクーヘンの穴から強烈な吸引が行われ、ルリィの体を吸い込みポッコリと中央部が膨らむ。
『ドォォーーン!!』
凄まじい爆発音と共にルリィの体が発射され、空高く飛ばされた。
「そこだ!」
ベルンハルトは生地の層を見抜き、刀をすっと通して大きな欠片を切り取った。
「ハニーシロップなんかつけても美味しいかも……クリームもいいな」
戦いの最中にも関わらず、ベルンハルトはひと時の間ケーキに夢中になってしまう。
「いくらでも、食べられそう……」
リーナも小太刀で斬り裂き、切り取った生地をモグモグと頬を膨らませる。
「本当に、これならいくらでも食べられそうです」
その隣でプルミエもナイフで食べやすく切り分けながら、パクパクと無表情のまま食べ続けた。
『ちょっと! こっちが大砲撃ってる間も食べ続けるのは止めー!』
ブンブンと長い体を回して振り払う。
「あんなに大きなバウムクーヘンに思いっきりかぶりついてみたい……」
そう思いながらもぐっと我慢してヒメルは御業を呼んで落ちてくるルリィを受け止め守護する。
「やってくれたわね、お返しにたっぷり食べてあげるわ」
ルリィはチェーンソー剣で生地を斬り刻み、破片を口に運ぶ。
「焼いてみても美味しいかもしれないわ!」
ユーロが竜の幻影に炎のブレスを吐かせて焼き目をつける。するとほわっと湯気と共に甘い香りが広がった。
「焦がしてみるのもオツじゃない?」
マルレーネの御業が更に炎を浴びせて真っ黒に焦がす。
「もっと凍らせて……食べ頃にして……」
ネリシアがライフルの銃口を向け、冷凍光線で敵を凍らせていく。
●ホット&クール
『熱ッ冷たッそういうのはどっちかにするべきでしょー!』
怒ったようにケーキ弾を適当に撃ち出して牽制し、その間に白い糖衣が傷を覆うように全身に広がり固くコーティングされる。
「え? なぜ私を狙う……」
食べていないのに何故自分が狙われるのかと疑問に思いながらも、飛んできたケーキの爆風に巻き込まれたマルレーネの体が宙に舞う。だがマルレーネは空中で銃口を向け光弾を撃ち込んだ。
「甘い砂糖をつけるなんて、ずるいやつだ」
目の色を変えたベルンハルトが刀で硬い糖衣を斬り分け、シャリッとする砂糖の頃もごと堪能する。
「手が止まらないな……!」
もう少しと襲い掛かり食べやすく切り取っていく。
「次は糖衣有りのバウムクーヘンね、ちょっと動かないで、綺麗に切れないわ」
ルリィはケーキを押さえつけ、その体を斬り刻んで甘い糖衣のついた部分を口にした。
「焼いたらいい香り……美味しそう……」
リーナも焼き目を入れようと竜の幻を呼び出して炎を吐かせ、ケーキの表面を炙る。そして焼き立てのように香りの強くなった部分を夢中で食べ始めた。
「お茶がほしくなります」
バウムクーヘンを食べながらプルミエがそう言ってカードを取り出すと、拳闘士が召喚されてお茶を差し出しそれを飲んで口を潤しまたケーキを食べる。
『お茶を飲んでる場合かー!』
バウムクーヘンが唾を飛ばすような勢いでフルーツタルト弾を撃ち出し、プルミエを吹っ飛ばした。
「次は凍らせた部分を食べるわよ!」
思いついたユーロが精霊を召喚して吹雪を起こして敵を凍りつかせていく。
「凍ったバウムクーヘンの体……頂きます」
ネリシアは鎧装のシステムでモニターを展開し、そこに手を突っ込みハードワッフル型の剣を取り出す。その刃をフォトンを散らしながら振るうと、ケーキがどんどんスライスされていく。その破片を一つ手に取り間合いを開けながらがぶりと固くなった生地に歯形をつけた。
「みんなばっかり……ヒメルにも一口食べさせなさい!」
もう我慢できないとヒメルが元は宝剣だったバールを剣のように振り抜き、三度の斬撃を浴びせバラバラにして欠片を口に放り込む。
『ここは地獄かー! ドーン!』
食べる為に抉られぼろぼろになったバウムクーヘンは動きを鈍らせながらも、中に吸い込もうと吸引を始める。
「奥の方は味が違うのでしょうか?」
敢えて中に飛び込んだプルミエがナイフで切り取って食べていると、そのまま大砲のようにケーキから撃ち出され空に舞う。
「なるほど、少々の焦げがついても美味しいかも……」
仲間が焼いて食べているのを見て、物は試しとばかりにベルンハルトは刀を地面に突き刺し、大地に流したグラビティが火柱となって敵を包み込み、甘く砂糖が焼けた匂いを充満させる。
「うん、うん、これもいける!」
その焼けた生地を切り取ってパクパクと食べてしまう。
「凍らせたのも、凍ってないのも……美味しい」
ネリシアは刃物のように爪を鋭く伸ばして突き刺し、千切り取るように生地を抉ってすぐに食べながら離れる。
「なかなか美味しい、みんなが夢中で食べる気持ちもわかるわね!」
ペロリと浴びたクリームを舐めたヒメルはバールの先端を突き差し、大きく生地を引き千切ってかぶりついた。
『体が無くなってしまう! 離れるのだー! ドドド――ン!』
滅茶苦茶にケーキ弾を飛ばして当たりを甘く染めていく。
「自分も甘いものは好きだけど、これは食べる気にならない……」
敵を食べるのはどうにも気が進まなと、マルレーネは桃色の霧でケーキを包み込み溶かしていく。
「満足……一気に消し飛ばしてあげるよ……!」
続いてリーナはそのグラビティを自らに集め、魔力と合わせて小太刀に込めて振るう。爆発するように魔力が砲撃と化して放たれ敵を貫いた。大きな穴を空けて敵の体が地に転がる。
「お姉様、アレをやりたいわ!」
「ええ、よくってよ」
その機にユーロのルリィは応じて二人同時に必殺技を放つヒーローっぽく叫ぶ。
「Rosenheim!!」
紅く光り輝く巨大な槍が放たれ地面に串刺しにし、続いて巨大な炎の剣が振り抜かれる。するとバウムクーヘンは両断され、バラバラに吹き飛び消滅していく。それを背景に二人はくるっと回ってポーズを決め、ハイタッチを交わした。
●夜のお茶会
「男の子は無事だった、よ……」
皆で周辺の建物にヒールを掛けていると、被害に遭った少年の様子をこっそり覗きに行ったリーナが帰ってきた。
「それは良かった……これで任務完了だね」
それを聞いてネリシアは安堵の息を吐いて気を楽にする。
「ふう、美味しかったな……。こういう相手も、たまには悪くないかな……」
事件解決とは違う満足感を得ながら、ベルンハルトはお腹を撫でて砂糖のように甘い笑みを零した。
「ごちそうさまでした。もう少し食べられましたけど」
プルミエはどこにあれだけ食べたものが入っているのかといった具合に表情もお腹も変わらぬままだった。
「こんな美味しい敵を探し出すなんて、よくやったわね」
「ありがとうお姉様、けーきもいいけど、次はパフェとか食べたいな」
食後の紅茶を嗜みながらルリィが褒めると、にっこり微笑んだユーロがまだ甘いものが食べたいとこの後の予定を提案する。
「アイスが乗ったのがいいわね」
それに同じように笑顔で応じてルリィが楽しそうにどこに行こうかと相談し始めた。
「普通のケーキが食べたいわね」
最後まで食べなかったマルレーネが、皆が食べていたのを見てお腹が空いてきたとその話に混じる。
「バウムクーヘン……この時間に売ってるお店、あるかしら?」
お土産にしたいなとヒメルは売ってそうな店を思い巡らす。
皆でお茶でもして帰ろうと、ケルベロス達は駅前に開いている店を探しに歩き出した。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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