●五月病事件~布団がともだち~
五月の大型連休、ゴールデンウィークが終わり、程なくした頃。
「……うー……やだなぁ……行きたくないなぁ……ずーっと、布団の中で、すごしていたいなぁ……」
と、暖かいベッドの中で、うだうだ、ごろごろとしているのは、先月、都内の大学に入学したばかりの新大学生。
……最初の内は、がんばるぞー、と気合いも入っていたのだが……ゴールデンウィークの日々にすっかりだらけてしまい、ゴールデンウィークが終わっても、ベッドから抜けられなくなってしまっている。
友人からの電話に対しても。
『だいじょーぶだいじょーぶ。明日はいくよ明日ー』
と、繰り返すばかりで、すっかり五月病に毒されているのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね。それじゃ、早速ッスけど、説明させて貰うッス!」
と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロス達に一礼すると、早速。
「ゴールデンウィークも終わって暫し経ったッスけど、世間ではどうやら五月病が大流行してしまっている様なんッスよ」
「今回、ジゼル・クラウンさんをはじめとした、多くのケルベロスの皆さんが調査した所、五月病の病魔が大量に発生してしまっている事がわかったんッス」
「そこで、皆さんにはこの五月病の病魔の撃破を頼みたいんッスよ!」
そして、更にダンテは。
「今回、五月病の病魔に冒されている人は、学校に行かずに部屋へと閉じこもってしまっている様なんッス。ただ、意識とかは普通にあるッスから、家を訪ねれば逢うことが可能ッス」
「まぁ、面倒くさい、と思えば居留守を使われるかもしれないッスけど、普通のぼろアパートッスから、ドアを壊せば踏み込むことは十分可能ッス」
「そして五月病の患者へと接触した後は、チームにウィッチドクターの人が居れば、患者を病魔から引き離し、戦闘を行なうことが可能ッス。逆に居なくても、その地域の医療機関に協力しているケルベロスのウィッチドクターの方が臨時に手伝いをしてくれるッスから、心配は無いッス」
「ちなみにこの五月病の病魔ッスけど、いっつもいっつも眠たげな病魔ッス。攻撃手段はそのもふもふの枕を投げつけて、眠りへと誘う催眠攻撃、周りに居る羊っぽいのを飛ばして、めーめー鳴いての催眠攻撃。枕をぶんぶん振り回しての打撃攻撃、の三つある様ッス」
「特にバッドステータスの降下が強化されている様ッスから、多重に掛からぬ様注意して欲しいッス!」
そして、ダンテは。
「五月病は、傍から見ると怠けているだけだという誤解をされやすい病気ッス。ケルベロスの皆さんが病魔を撃破して、五月病を治すことで、この誤解を解いて貰えると幸いッスよ!」
と、拳を振り上げるのであった。
参加者 | |
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イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025) |
セフィ・フロウセル(誘いの灰・e01220) |
ユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876) |
神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405) |
鬼島・大介(最終鬼畜喧嘩屋・e22433) |
スノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453) |
ヒビスクム・ロザシネンシス(地中の赤花・e27366) |
ウィルフラ・グレイシャー(絡みつく獄炎・e36730) |
●五月の夢
ゴールデンウィークも終わり、少し経過した五月の下旬。
しかし、五月の大型連休という休みの誘惑に、既に負けてしまった人達がちらほらと……。
「……五月病か、四月で心機一転したと思ったら、いきなりの大型連休で気持ちが折れるのは分からんでもない。実際俺も学生時代はそういう事があったしな」
と、鬼島・大介(最終鬼畜喧嘩屋・e22433)が肩を竦め、遠い目をしながら言うと、イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025)とウィルフラ・グレイシャー(絡みつく獄炎・e36730)、セフィ・フロウセル(誘いの灰・e01220)らも。
「まぁ五月病……長期化すると、案外深刻になったりするケースもあるからな」
「そうですね。でもその原因は病魔でしたか……まさか、五月病も彼らの仕業だったとは驚きですよ」
「ああ。人生のオンオフの切り替えは間違えると本当大変になるしな」
……そんなセフィの言葉に、大輔が。
「ああ。ダラけたいと言って何時までもダラけてたら何も始まらんからな。その原因が病魔だってんなら、さっさとぶちのめして社会復帰させんとな」
「ええ……何はともあれ、やる気なし子ちゃんがどんどん増えていっても困りものです。とっとと『治療』することにしましょうか」
「そうだな。単位不足どころか人生も大変な事になる前に、救いに行くとしよう」
と、四人の会話を横で聞きつつ。
「全く、御寝坊さんな人っすね。まるで家の眠り姫みたいっすね」
と、ジト目でスノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453)を見つめる神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)。
そのメイドのユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)と、スノードロップのメイドのヒビスクム・ロザシネンシス(地中の赤花・e27366)らも。
「ええ。この時期は気持ちよくていつまでも寝て居られますが、そんなのは家の眠り姫だけで十分ですとも」
「そうだな。起きろー!! いつまでも寝てんじゃねーぞ! ってな。ったく、寝坊助んさんは家のお嬢さんで十分だっつーの。毎朝、俺がどれだけ苦労してると思ってんだかな……まぁ、五月って色々大変だし、疲れるのは分かる。分かるが、そこは気合いと根性で乗り越えないとな」
……そんな三人の言葉に対し、スノードロップは。
「まぁこの時期に寝て居たい気持ちはすごく分かるネ。アタシもビッキーに毎朝起こされる度にもっと寝て居たいトすっごく思いマス」
「……スノーお嬢さん……うう……」
ううう、と涙目なヒビスクム。目覚まし時計がガンガンに鳴り響いている中、肩をゆさゆさ揺らしてる毎朝の努力について……余り効果が無い様である。
……ともあれ。
「マアデモいつまでも寝てても体に悪いデスシ、そろそろモーニングコールの時間デス。だから思いっきりやっつけマスよ! それに今回はオネエサマ達と、アタシのメイドのビッキーと一緒デス。カッコ悪いところはみせられないネ!」
鼻息荒く拳を握りしめるスノードロップに、結里花、ユーカリプタス、そしてヒビスクムが。
「そうっすね。ま、さくっと病魔を倒して気持ちよく目覚めてもらうっすよ。散歩したり、外に出歩くには今が一番いい時期っす。そうやって気持ちを入れ替えて頑張って貰いたいっすね」
「ええ。きっちりと目覚めて頂き、これからもっと頑張っていただきましょう。そして……無様な所は見せられませんから、最後まで清廉に仕事をこなしましょう。神宮寺家の侍女として……ヒビスクム、続きなさい」
「ああ。お嬢さん二人とメイド調も一緒だしな。がんばっていいとこ見せるぞ。ガブリンも気合いを入れて行くぞ!」
『ギャウウウ!!』
咆哮を上げて気合いを入れる、ボクスドラゴンのガブリン、そして結里花はくすりと笑い。
「そうっすねー。まあとにかく、神宮寺家のミコとして、人に仇なす病魔を倒すっすよ」
と言う間にも……ケルベロス達は、青年の棲むアパートへと到着するのであった。
●憩いを邪魔するのは誰だ
「……さて、ここですね」
と、アパートの一部屋の前に辿りついたウィルフラ。
……大学生が多く住むアパートとなれば、周りに住むのも同じ様な大学生達が多い。
深夜の時間ともなれば、普通は寝て居る人が多いのだろうが……サークル活動やら、バイトやら、飲み会やらで……半分以上の住民達は忙しなく、外に出ている。
……更に住民達へ、今日一日は戻ってこない様に伝達し、避難は既に完了している状態。
勿論、五月病病魔に冒された青年は、そんな避難の通知をしたとしても、一切従う事は無いと思われるし……彼には当然、通知はしていない。
……そして、彼の部屋のドアを、管理会社から借りてきた合鍵を使い、彼の部屋へと……乗り込んでいく。
……既にぐー、ぐー、といびきを掻いて眠りへ落ちている青年。
ベッドの上でゴロゴロ蠢きながら、春眠をひたすらに啜り続ける。
……そんな青年の肩をポンポン、と叩き、起こしてみようとするが。
『うー……ねむいよぉー……まだ、だいじょーぶだよぉー……』
と、決してベッドの中から出ようとはしない。
「……んー……こりゃ仕方ねえなぁ……」
「そうだな……ほら、このままだと、後々辛い事になるぞ? 経験済みの私が言うから間違い無い」
と、大介、セフィが言葉を掛けていくのだが……。
『んもー……うるさいよぉー……むにゃ、むにゃぁ……』
と、全く以て聞く耳を持たない。
「んー……こりゃダメデスネ」
「そうだなぁ。しゃーない。ベッドと一緒にドナドナしとこうぜ。ここで戦うと部屋に被害与えちまうしな。まぁ、与えたとしてもヒールすりゃ何とかなるだろうが、多分」
スノードロップに、頷くヒビスクムの提案……そして、イグナスも。
「了解。んじゃ……大介、ウィルフラ、手伝って貰って良いか?」
「ああ」
と頷き、そしてケルベロス達がベッドを持ち上げて、窓から、外の駐車場の方へと降ろして行く。
……駐車場のど真ん中にベッド一つ……しかし、まだまだ眠りこけている青年。
その間に、結里花は。
「それじゃ自分は身を清めるっすよ。ユーカリ」
「はい、結里花お嬢様」
と、青年の部屋にあるユニットバスを使い……狭いながらも、水垢離を始める結里花とユーカリ。
……そして、残るケルベロス達が、青年を取り囲み……そして、イグナスに。
「それじゃ、イグナス、宜しく頼むぜ」
「ああ、了解だ」
と大介の言葉にイグナスが頷き……病魔召喚を発動。
眠りこけている五月病の男の傍に、パジャマと枕を着た病魔が姿を現わす。
……そんな五月病病魔の姿に。
「ここまでくると、この世のありとあらゆる疾患や未病も病魔の仕業と思えてきますねぇ」
「そうですね」
とウィルフラに頷くセフィ……と、そうしている間に病魔は。
『うー……』
と、ちょっと幼げな言葉を吐きながら、周りのケルベロス達を睨む。
……そして、みんな眠っちゃえ、とばかりに……早速、周りに羊っぽいのを召喚し、めー、めーと鳴かせ始める。
そんな羊の鳴き声は、眠気へと誘う夢の様なメロディ……。
「あ? んだコレ、羊? てめぇなめてんのかコラ! こんなんで寝る訳がねーだろ!」
「……んー……何だか、眠くなるネ」
仁王立ちの大介に、スノードロップの言葉に、はっ、と表情を変えるヒビスクム。
「スノーお嬢さん、寝るな、寝ちゃダメだ!!」
と慌てて叫ぶ。スノードロップは笑いながら。
「大丈夫ネ!」
と……いや。
「……すぅ……」
確かにスノードロップは寝て居ないが、その横の大介が……明らかに寝て居る。
「おい、大介っ!!」
と、慌てて背中をたたき、起こす。
はっ、と気づく大介。
「……はっ、いや、寝てねえ、寝てねぇって。ちょっと冥想してただけだ!」
そんな言い訳をする大介……そして、いつの間にか合流したユーカリプタスと結里花が。
「まぁ、何でも構いませんので、さっさとそこの病魔を倒す事と致しましょう」
「そうですね……さあ、迅きこと、雷の如く!! はためけ! 雷装天女よ!!」
ユーカリプタスに頷きつつ、結里花が『雷装天女』を放つと、それに連携し、スノードロップも。
「バッキバッキに砕いてやるネ!」
と病魔に接近し、スカルブレイカーの一撃を叩き込んでいく。
その一方、ヒビスクム、ユーカリプタスのメイド二人が続き。
「まずはバッドステータス対策でございます」
とユーカリプタスの紙兵散布に、ヒビスクムも。
「さぁ、盛り上がっていこーぜ!」
とブレイブマインで、前衛陣に壊アップを付与し、ガブリンは大介に属性インストールで、キュアを飛ばす。
……そして、セフィ、ウィルフラのディフェンダー、そしてスナイパーのイグナスが続く。
「取り逃しだけは避けないとな!」
「そうですね。と、勿論、男性も被害を負わせないようにしなければいけませんね」
と言いつつ、ウィルフラのストラグルヴァイン、セフィのスターゲイザー、そしてイグナスも殺神ウイルスで一気に攻め込んでいく。
……と、ケルベロスらの行動も一巡し、次の刻。
病魔は、更にうー、と唸りながら……今度は枕をぐるんぐるんと振り回して攻撃。
……何だか、癇癪を起こしている子供の様な、そんな風体に見えなくもない。
でも、その攻撃をセフィのボクスドラゴンのシルト、ユーカリプタスのボクスドラゴン、ミミックが身を呈してカバーリングしていく。
そんな病魔に対し、敢て。
「本当、危うく寝たばこで大惨事になる所だった……じゃねえ、ふざけた攻撃しやがって……ぶち殺す!!」
……何だか逆恨みの様に叫び、大介がスカルブレイカーの一撃を叩き付けると、更にイグナスの轟竜砲。
更にセフィの月光斬に、ウィルフラのスパイラルアームがしっかりと体力を削り行く。
更に結里花、スノードロップがそれぞれ。
「そこです!」
「死ト希望ヲ象徴する我が花ヨ。その名に刻マレシ呪詛を解放セヨ!スノードロップの花言葉、アタシはアナタノシヲノゾミマス!」
と旋刃脚と、『待雪草の花言葉』で息の合った連携攻撃に、更にユーカリプタス、ヒビスクムも。
「跳び蹴りはメイドのたしなみでございます」
「さあ、吹っ飛べ!!」
と、スターゲイザーにスピニングドワーフを叩き込む。
……そして、次々と攻撃が嗾けられ……数分後。
『うう……』
と、膝から崩れ墜ちる病魔、そんな病魔へ。
「病魔よ! 俺の命の輝きで消滅しやがれ! これが光の奔流、オルゴンストリームッ!!」
と、左の掌に炉心からのエネルギーを集中させ、『命中奔流』の一撃を深く叩きつける。
その一撃に、病魔は……甲高い悲鳴を上げて、崩れ墜ちて行くのであった。
●夢か幻
そして……無事、ケルベロス達は病魔を倒す。
……病魔が消え失せ、残るは病魔も消えて、ぐぅぐぅとベッドの上で眠りこけている青年……。
「……まだ、起きない様ですね」
とユーカリプタスの言葉に、そうっすねぇ……と頷く結里花。
「ま、一端彼を部屋に連れ戻すっすよ」
と言うと共に、皆で協力し、再度ベッド事、部屋の中へ。
……そして、彼の肩を大きく揺らして、たたき起す。
『うう……むぅぅ……』
と、眼を擦りながら、むくりと起き上がる彼に……。
「おはよう、デスよ!?」
と大きな声で声を掛けるスノードロップ。そしてセフィも。
「どうだ? スッキリしたか? ……体調が良くなったら、友人達や大学に顔を出すと良い」
と声を掛ける……が、青年はうーん……という感じで、まだ完全に目覚めていない模様。
そんな彼の前に跪き、目の光やら、意識、具合などを問診するイグナス……ウィッチドクターの本領で、しっかりと問診していく。
……そんな彼のカウンセリングをしながら、大介と結里花も。
「もう五月も下旬だぜ? このままじゃ単位取れないぜ? ……遅れた分はしかり取り返せよ。短い学生生活を棒に振るもんじゃねえ」
「そうッス。これからは遅れを取り戻す為にも、ビシッとするっすよ!」
二人の言葉に、発破をかけられ、スロースタートなりも気合いも入る青年。
……そして、一通り対処も終わり、部屋を出るケルベロス達。
その帰路にて。
「……ふぅむ……」
とウィルフラがぽつり呟くと、それにヒビスクムが。
「ん、どーした?」
「いや……ウィッチドクターで活動するというのも、幅を拡げる意味で悪くはありませんねぇ、と思っただけです」
と……自分の未来を想像するウィルフラなのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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