黒交し二つ

作者:幾夜緋琉

●黒交し二つ
「皆、集まったな? よし、先ずは話を聞け」
 と、螺旋忍軍が一つ、月華衆の頭、『機巧蝙蝠のお杏』は、目の前に並ぶ月華衆 黒鋤組の面々の前に立つと。
「螺旋帝の一族が、とうやら東京都の都心部に現れた様だ。一刻も早く、我らが月華衆が、その御身を保護せねばなるまい。お前達は新宿区の探索を行い、どんな些細な情報でも報告する事!」
「しかし、既に他の忍軍も動いている様だ。もしも、他の忍軍と接触した場合には……最優先でこれを撃破するのだ! 他の忍軍に奪われるわけには行かん!」
 と、そんな頭からの指示に、反論出来る訳も無く……黒鋤組の面々は、はっ、と頷き、新宿区へと向かう。
 ……その一方、黒螺旋忍軍・『黒笛』のミカド率いる、黒螺旋忍軍も、配下である、紫の陰陽師の様な格好をした螺旋忍軍達へ。
「集まりましたね。それでは、指示を与えましょう」
「新宿区に異変の兆しあり、速やかにかの地へと向かい、あらゆる異変をつぶさに調べ、持ち帰るのです。そして他の忍軍の調査部隊を発見した場合、速やかに排除し、その目論見を阻止するのです。さぁ、疾く行き、使命を果たすのです」
 その指示に黙って頷き、黒螺旋忍軍の者達を赴かせる。
 二つの螺旋忍軍達は、各々の思惑と共に、新宿区、高田馬場へと向かっていくのであった。
「皆さん、集まりましたね。それでは、説明を始めます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスらに一礼し、すぐに。
「東京の都心部において、螺旋忍軍が活発化しており、複数の螺旋忍軍の組織が、螺旋忍軍同士の戦闘へと発展し始めている様なのです」
「デウスエクス同士が争うだけならば放置して置いてもいいのですが……この戦闘により、都心が破壊されて、一般人の犠牲者が出るとなると放置は出来ません。皆さんには、この争い始める螺旋忍軍の撃破をお願いしたいのです」
「周囲の被害を抑えるには、両者の戦いに割り入り、敵を連携させないよう片方の忍軍を撃破し、返す刀でもう一方の忍軍を撃破する必要があります」
「忍軍同士を戦わせ、疲弊した所を叩く……というのも可能ですが、この場合市民の方々へ被害が出かねません。呉越同舟……敵同士協力し、ケルベロスに敵対してくる為、戦いを長引かせ、敵を疲弊させる工夫がないと、却って戦況不利になる可能性もあり、注意が必要です」
 そして、セリカは続けて。
「今回、皆さんが向かうは東京都は新宿区、高田馬場になります」
「現れる螺旋忍軍は、『機巧蝙蝠のお杏』率いる月華衆の配下達と、黒螺旋忍軍・『黒笛』のミカド率いる黒螺旋忍軍の二軍になります」
「月華衆の者達は、特段強いという者達ではなく、寧ろ技量的には平均値を下回る者達です。しかしかれらの怖い本質は、事前に多くの下準備を行い、堅実に事を進める為、目立たなくとも一定の成果を必ず上げる、という事です。今回も、どこかに罠を仕掛けている……という可能性は捨てきれません」
「今回相手にする月華衆は4人。その懐に月下美人の模様を彫り込んだ短刀を備え、接近しては、深手を食らわせ、離れる様です」
「一方、ミカド直属の螺旋忍軍は六人。何処か平安風の喋り方をしており、その戦闘方法も陰陽師の如く、符を扱い、飛ばしてくる遠隔攻撃で、バッドステータスを与えるのがメインの攻撃手段の様です。
 そして、セリカは。
「何故螺旋忍軍同士が争うかは不明です。ですが、彼らは頭の指示に従い、事を遂行している様ですから、深いことは知らないでしょう。つまり、速やかに撃破して頂きたいと思います」
 と、頭を下げた。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)
テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242)
龍神・機竜(その運命に涙する・e04677)
久遠寺・眞白(豪腕戦鬼・e13208)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)
月詠・鴉夜(鬼追鴉・e35403)
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)

■リプレイ

●混じる黒紫
 螺旋忍軍同士が争い、そして螺旋帝を奪取せんとて暗躍している忍軍同士の抗争事件。
 新宿区は高田馬場に現れし二つの忍軍……月華衆【機巧蝙蝠のお杏】率いる月華衆・黒鋤組と、黒螺旋忍軍・『黒笛』がミカド率いる、黒螺旋忍軍。
 そんな二つの螺旋忍軍の暴走を止めんが為、ケルベロス達は高田馬場へと向かう。
「まったく、こんな所で暴れるなんて近所迷惑も良い所だねぇ……」
「ええ、螺旋忍軍……厄介な集団ですよね」
 カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)に月詠・鴉夜(鬼追鴉・e35403)が肩を竦め頷く。
 ……と、それに藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)とシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)の二人も。
「そうじゃのぅ……本当、他人の迷惑を全く考えぬ者達じゃな」
「そうデスねー。ほんと、人に迷惑を掛けるのはいけないデスね!」
「うむ。まぁ話そうにも、全く聞いてはくれぬじゃろうがな」
 そして、一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)が。
「見ず知らずの人のためっていうのは柄じゃないんだけど、ケルベロスとして戦うって一度決めたからね。好きにはさせないよ」
 と言うと、カナメも。
「そうだね。ここはきっちり両成敗っと行こうか」
 ……と、そうしていると……。
「……ふむ……変装はこれで良いのだろうか?」
 とやってきたのは、眼鏡を着用し、髪をオールバックにした龍神・機竜(その運命に涙する・e04677)と、テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242)。
「ええ。大変似合っております。後は……『眼鏡の衆』としての合言葉でございますわね」
「合言葉……?」
「ええ……『世界に眼鏡を、眼鏡に光を』、でございますわ」
 と言いながら、眼鏡をキランとさせるテレサ。
 ……今回の作戦は、二つの螺旋忍軍に対し、更にもう一つの螺旋忍軍として割り込むという作戦。
 ケルベロス達は、今回偽螺旋忍軍『眼鏡の衆』として……二つの螺旋忍軍に対峙するもう一軍として対峙しようと。
「流石に二勢力を同時に相手取るのは難しいからな……仕方ない」
 と久遠寺・眞白(豪腕戦鬼・e13208)が溜息一つ。
 ……ともあれ、螺旋忍軍の暴走、そして一般人への被害を防ぐ為には、ここで必ずや止めねばなるまい。
「それじゃ、行くデスよー!」
 とシィカが拳を振り上げながら、仲間達と共に、その諍い現場へと急ぐのであった。

●黒紫の混迷
 そして、ケルベロス達は二つの螺旋忍軍の抗争現場へ……。
『全く。お主達に構って居る暇はないのじゃ。さっさとここから去れい!』
「何を言う! お前達こそここからされ!! 螺旋帝は我らの物だ!!」
 と声を荒げ、言い争っている両者の忍軍は、周りから何あれ、とざわめいている。
 そんな一般人達に対し、事前に話を付けていた警察にすぐ連絡を入れて、一般人の避難をしてもらう。
 そして避難させながらも、ケルベロス達は……二者の抗争現場へと突撃する。
 一層ヒートアップしていく二軍の間に、飛ぶ込むはカナメ……螺旋手裏剣を二軍の間に割り込ませるように投げつける。
「うぉっ……な、何だよっ!!」
『そうじゃ。邪魔するな!』
 と、ケルベロス達に向けて叫ぶ。
 ……勿論、今は彼らはケルベロスであるとなど解ってはいない。邪魔しに来た、という程度の認識。
 そして、それをカモフラージュする様に、皆テレサの眼鏡真教から購入した眼鏡を着用し、その服装もどこか螺旋忍軍然している。
「なんだか楽しそうだね。オレ達も混ぜてよ」
 と、何処か嬉しげに言葉を紡ぐカナメ、それに。
『何じゃとぉ? これは遊びではないのじゃ!』
「そうだそうだ! お前達何者だよ!!」
 と不平不満を口にするのに対し、テレサとカノン、シィカが。
「世界に眼鏡を、眼鏡に光を……螺旋帝は我ら眼鏡の衆が頂く。邪魔するものは全員眼鏡の汚れにしてくれる!」
「そうじゃ。我らが掛けているこの眼鏡こそ、眼鏡の衆が標しじゃ」
「そうデース!! ニンニン! ロック忍者の参上デース!!」
 そんな三人の言葉に、それぞれが顔を見合わせる。
「眼鏡の衆……そんなの、聞いた事無いぞ?』
『うむぅ……わらわもじゃ』
 ……と、そんな二軍の動きは下手すると、共同戦線を張られかねない。
 が、更にアヤメが。
「知らなくても良い。螺旋帝の一族は我々が確保させて貰う。邪魔するというのならば、全て討ち倒す迄だ」
 と、眼鏡の下から睨み付けるアヤメ。そして眞白が。
「貴方達が螺旋帝を欲するのならば、私達を倒してからね。月華衆と、黒螺旋忍軍『黒笛』の雑魚共」
「なにをぉ……くそっ。とっとと殺してやる!! そして螺旋帝は俺達のものだ!!」
『何を言う!! 螺旋帝は妾らのじゃ! 邪魔するでない!!』
 ……幸い、螺旋忍軍同士が手を取ることなく、互いに嫌い合いながら、対峙する。
 都合、三軍が一つの戦場に対峙する状況で……月華衆は2人ずつ、黒笛は3人ずつという形で、敵対勢力へと攻撃を嗾ける。
 ……その攻撃を、機竜のライドキャリバー、バトルドラゴンがホイールスピンで土煙を上げて視界を覆う。
 更に、鴉夜とそのボクスドラゴン、白夜も併せて、対峙する二軍の攻撃を上手い具合にカバーリングする。
 そして、一通り敵陣の攻撃を経て、逆にケルベロス達の攻撃へ。
「……何処に罠があるか解らないから、注意して行こう」
「そうだな。取りあえず、月華衆を集中攻撃するとしよう」
 と鴉夜の言葉に、眞白が先ず螺旋射ちを、月華衆の一体へと放つ。
 更にカナメがくすりと微笑みながら、催眠魔眼で月華衆を催眠に堕とそうとする……が、余り効果は無い。
「……ふぅん、意識高いみたいだね」
 とカナメの言葉に、月華衆は。
「あ、当たり前だ!! 螺旋帝を手に入れる為に、負ける訳には行かん!!」
 と威声を上げる。
 ……そしてカナメ、眞白のクラッシャーに続き、テレサがマルチプルミサイルを月華衆に放つと、バトルドラゴンがガトリング掃射、そしてカノンも轟竜砲で攻撃。
 更にシィカが。
「これでも喰らうデース!!」
 とヘリオライトを掻き鳴らし、催眠効果のギターメロディで催眠を黒笛達に付与する一方、アヤメがシュリケンスコールを空から降り注がせ、更に黒笛達を攻撃。
 最後に、鴉夜が前衛陣にスターサンクチュアリ、白夜が属性インストールで仲間達のここを強化。
 更に機竜も。
「回復と援護は俺に任せろ!」
 といいながら、ヒールドローンを飛ばし、盾アップを付与する。
 ……そして、全軍行動が一巡し、次の刻へ。
「くそっ……強えな!! そんなら!!」
 と、月華衆はその手に爆破スイッチを。
「! 退避!!」
 と叫び一端その場から避難……次の瞬間、足元がボーン、ボーンと次々と爆発。
「これが、月華衆の仕掛けた罠かのう……全く、危ないものじゃ」
 とカノンが肩を竦め、元の位置に復帰。
 更にカノンが気咬弾を放ち、アヤメも。
「白雪に残る足跡、月を隠す叢雲。私の手は、花を散らす氷雨。残る桜もまた散る桜なれば……いざ!」
 と、軽く笑みを浮かべながら、スプリングレインの近接攻撃を月華衆に畳みかけ……一人目を討ち倒す。
「なっ……!?」
 と驚愕の表情を浮かべる月華衆の仲間達。
 しかしながらケルベロス達の勢いは止ることない……更にカナメが。
 カナメは再度催眠魔眼を放つと……今度は月華衆の一人が催眠へと落ちる。
「ふふ。さぁ、同士討ちでもしてもらおうか」
 と指示を与えると、それに従うかの様に、月華衆は同士討ちを始める。
 ……そして、月華衆が攻撃を仕掛けた一匹へ、更に眞白がグラインドファイアで攻撃、そしてテレサも。
「当たれっ!!」
 と、ループバレッドを射出し、強烈な一撃を叩き込む。
 ……そして、バトルドラゴンがキャリバースピンでタイヤの超高速回転に巻き込んでいくと、シィカもドラゴンブレスで攻撃……更に一体が崩れ墜ちる。
 ……残る月華衆は二体。しかし一体は催眠効果で、もう一体へと同士討ち。
 一方、黒笛達は、今がチャンスとばかりに、5人が月華衆の催眠に陥っていない者へと攻撃……みるみる内に体力が削れ、月華衆は催眠の残り一体に……。
 ……仲間が居ない状態となれば、後は目に付いた敵を攻撃するばかり。
 彼の次なるターゲットは、黒笛が一体に決まる。
 そして、狙われる一体へと、ケルベロス達も集中攻撃。
『くぅ……邪魔じゃのう!!』
 と黒笛らは苛立ちながら、どうにか対峙。
 ……しかし、時が経過すると共に、一人、また一人と月華衆の催眠者とケルベロスの一斉放火の前に崩れ墜ちて行く。
 そして、抗争現場へと割り込んでから、十数分。
 ……いつのまにか、月華衆も、黒笛も、残るは一体ずつ……催眠効果も解けて、黒笛に。
「くっ……くそ!! こいつ、ケルベロスだ!!」
『何じゃとぉ!? ぬ……!!』
 と、気づき、共同戦線を張ろうとするが……時既に遅し。
「気づくのが遅い」
「そうだな。さあ、一気に仕掛けるぞ!」
 鴉夜に頷き、機竜がマルチプルミサイルを放つと共に、併せて鴉夜がヴァルキュリアブラスト。
 その二撃に、黒笛全部が崩れ墜ち……そして、残る月華衆へ、カナメが。
「さぁ、そろそろ終わりにしようか」
 と言うと共に、『舞姫』の一撃を畳みかけ……最後の月華衆も、崩れ墜ちて行くのであった。

●薄暗い紫怨に
 そして……どうにか二つの忍軍を倒し終えたケルベロス達。
「ふぅ……終わった終わった、っと。みんなもお疲れ様」
 とカナメが皆に労いの言葉を掛けると、それにテレサも。
「ええ……カナメ様も、お疲れ様でございました。大変格好良い眼鏡の衆でございました」
 にこっと微笑むテレサに、カナメは苦笑。
 そしてアヤメが、周囲を見渡しながら。
「後は周りの片付けをしないと。やれやれ、倒すだけじゃダメ……っていうのは大変だね……」
 と言うと、いつのまにか髪を元通りに戻した機竜が。
「そうだね……よし、と」
 と言いながらヒールドローンを出して。
「ここの修復と近所へ夜分遅くにすいませんって謝りに行って来てね」
 とヒールドローンで辺りの修復を始める。
 それと並行して、シィカやカノン、アヤメらも次々と周囲の修復を開始。
 ギターをギンギンに掻き鳴らしたり、気力溜めや分身の術で回復をしていく。
 勿論、どこかにまだ月華衆達の仕掛けた罠が、いずこかに残っている、と言う可能性は十分にある。
 それら罠を発動させない様に注意しながら一つ一つヒールと対処を行い続けて……十数分。
 大方の部分を修復し終わると共に、改めて周囲を見渡し、問題無い事を確認して。
「問題無さそうデスね? それじゃ、そろそろ帰るデース!!」
 シィカの笑顔に、カナメが。
「そうだね。そういえばここは高田馬場だったね? ……んー……どうしようか? みんながよければ、ご飯でも行く?」
「……別に、気にしないでいいわ」
 アヤメの言葉に、まぁ、そうだね、と頷き合い……そしてケルベロス達は、早々に其の場を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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