ばいんばいんのふっかふか

作者:天枷由良

●やわらかふるーてぃ
 攻性植物に侵食されていても、大阪市には生活する人々がいた。
 彼らは緑のデウスエクスが側にあっても、それを日常に受け入れつつあった。
 だからもう、酔っ払ったまま大阪城の近くを歩くなんて珍しいことでもなかった。
「飲んだら乗るなぁーい! 乗るなら女ぁー! ってか、うぃひひ!」
 へべれけに酔ったスーツ姿の男が、夜更けとはいえど人目も憚らずに下卑たことを言いながら、千鳥足を踏んでいる。
「城も草の上に乗っとるしなー! 俺もふっかふかの上に乗りてぇなー!」
「――あら、じゃあ乗ってみる?」
「……? んん?」
 飲みすぎたのだとも思いつつ、男は声の聞こえた方へと向かう。
 そこには。
「ほわぁー! バナナ、バナナ! それと、ばいんばいん!!」
 たわわな果実を実らせた一本の木と、それに同化したような一糸まとわぬ感じの美女。
 男はふらふらと木に近づき、片手を果物に、片手を美女の双丘に伸ばす。
「おほ、おほっほほ! ばいんばいんのふっかふかじゃーい!」
「……うふふ、まだ一つ余っているわよ。その手を離して、さぁ、こっちに乗って」
 促され、果物を手放した男の腕がまた柔らかなものを掴む。
 有り余るほどの大きさを持つ双子の宝玉は先端に一際輝く膨らみを備えており、それを擦り上げるたびに美女からは熟れた果実よりも甘美な吐息が漏れた。
 なるほど、地上の楽園はこんなところにあったのだ。
 男は夢中となり、いつの間にか半身を夜風に晒していたことにも気付かない。
「……うふふ、お兄さんも美味しそう、ね」
 美女の手が這いずり、男はあれよあれよと言う間に弄ばれ。
 半身を露出したまま木の下に埋められて、文字通り美味しく頂かれたのだった。

●ヘリポートにて
「男子諸君、出番よ」
 ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は溜息を漏らし、手帳を開く。
「『爆殖核爆砕戦』のあと、大阪城に残った攻性植物を調査していたミルラ・コンミフォラさんたちから得た情報によって、新たな事件が予知されたわ」
 場所は大阪城付近の雑木林など。そこに、男性を魅了する『たわわに実った果実』的な人型の攻性植物、バナナイーターが出現するのだという。
「バナナイーターは15歳以上の男性が近寄ることで出現。果実の力で男性を魅了すると、まぁ色々なあれこれを絞りつくしてから殺害することで、グラビティ・チェインを奪い尽くしてしまうの」
 もしかすると、攻性植物は奪ったグラビティ・チェインを使って新たな作戦を始めるつもりなのかもしれない。
「何にしても、止めなきゃならないわ。バナナイーターの撃破と、それから誘惑されて近づいてしまう男性の救出、お願いできるかしら」
 現場には、犠牲となる男性会社員が通りすがる前に到着出来る。
「けれど、バナナイーターは15歳以上の男性がいないと出てこないから、彼が誘惑されるのを待つか、或いはケルベロスの男性から囮を出す必要があるわ」
 そして注意すべきは、敵が出現した後も3分間は攻撃出来ないこと。
「バナナイーターは攻性植物の拠点になっている大阪城から地下茎を通じて送られているらしくて、出現から3分以内に攻撃すると地下茎を通って撤退してしまうのよ」
 幸い、バナナイーターも3分間は攻撃せず、男性を誘惑し続ける。
 それは一般人が受けても、すぐ死に至るようなことはないものだ。
「ケルベロスの皆には誘惑なんて効かないけれど、無反応じゃバナナイーターも訝しむでしょう。皆から囮になる人を出した場合は、演技でいいから反応してみせるのよ。……人によっては演技じゃなく反応してしまうかも、しれないけど……」
 また、バナナイーターは囮となった人数に応じて、最大4体まで出現する可能性がある。
「1体目以外は、戦闘力をはじめとして色々な部分がスケールダウンしているみたいだから、ある程度数を出して殲滅を狙うのもいいかもしれないわね。……片付けられなくなるほど出しちゃダメよ?」
 それから、バナナイーターの戦闘能力に関して。
「まずはバナナを始めとした果物型爆弾。これは広範囲に爆発する果物を投げるという、至ってシンプルなものね。次に自己回復。僅かな光や大地の養分を集めることで、代謝を早めて傷を埋めるわ」
 ミィルは言葉を区切り、ケルベロスたちを一度見回してから続ける。
「……あとは、相手を思い切り抱きしめて胸に埋め、柔らかな快感に浸しつつ生命力を奪う攻撃があるの。密着した状態から繰り出されるあれやこれやは、男性でなくとも苦しむ……そう、苦しむことになるはずだから、気をつけてね」
 ミィルは説明を終え、最後に念を押した。
「……特に男子諸君は、囮になったり戦いの最中だったり、いろいろ大変な事になるかもしれないけれど……その、負けちゃダメよ。美女でも、デウスエクスだからね?」


参加者
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
キルロイ・エルクード(復讐者・e01850)
コール・タール(極彩色の黒・e10649)
北・神太郎(大地の光の戦士・e21526)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
ユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288)
ミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)

■リプレイ

●挺身
 夜の帳が下りた大阪城近く。雑木林を行く四人の男性ケルベロスたち。
 彼らは今日、平和のために身を捧げようとしていた。
「それにしてもだ。悪事のスケールが小さくなりすぎじゃないか?」
 帽子と仮面で素顔を隠すキルロイ・エルクード(復讐者・e01850)は、侵食された城を眺めて言う。
 攻性植物の新たな活動は地域も対象も限定的で、確かにちゃちく――コール・タール(極彩色の黒・e10649)などに言わせれば「小賢しく」思えた。
 しかし、この事件も根のように張り巡らされた策謀の一部かもしれない。
「さっさと倒して、企みを潰してしまおう」
「あぁ。だが、その前に……」
 コールに頷きつつ、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は神妙に前を見据える。
 そこには沢山の果実を実らせた木と、あられもない姿で座り込むバナナイーター。
 一目で人外と分かるそれは妖しく笑い、男たちを誘う。
 全く馬鹿馬鹿しい。そんなことでケルベロスが動じるわけがない。
 ないのだが――今日は敵を倒すため、敢えて罠に嵌まる必要があった。
 敢えて罠に嵌まる必要があった。大事なことなので二回言いました。
「据え膳……フルーツ盛り合わせ、食わぬは男の恥!!」
 両手をわきわきと動かした蒼眞が誰よりも早く、敵の胸元に飛び込んでいく。
「やれやれ、男のサガって奴なのかね」
 思わず笑いをこぼしたのは、北・神太郎(大地の光の戦士・e21526)。
 しかし彼も男だ。獲物が複数と見るやいなや現れた、諸々のサイズを一回り小さくしたバナナイーターの手招きに挑戦的な目つきを返す。
「へへ、ねーちゃん、いいのかい? このナリで甘く見てんなら大間違い……とんでもない事になっちゃっても知らないぜ?」
「あら、どんなことされちゃうのかしら。うふふ」
「まずはガッツリ埋もれさせてもらうぜ! イエーイ!」
「……やれやれ。二人とも、なっていないな」
 先走る仲間を見やりつつ、三体目にはキルロイがゆっくり近づいて腕を回した。
 もう一方の手で柔らかな果実を軽く持ち上げれば、降りかかる甘い吐息。
 キルロイは満足気な笑みを見せ、さらに褒め言葉を投げながら実を捏ねる。
 まるで人の女性を相手取るのと変わらない。彼にかかれば鬱蒼とした雑木林も百万ドルの夜景、バナナイーターが座す幹はキングサイズのベッドに見えてくる。
「レディは優しく扱わねば。こうやってな」
「ふっ、確かに優しさも必要だろうな……だが!」
 ちらりと目を向けて呟くのは一瞬。蒼眞は本能に従って両手を双子の山に、顔を谷間に埋めて熱情をぶちまける。
「男には力強さも必要だぜ!」
「あんっ……うふふ。元気なお兄さんねぇ」
 最も肉感的なバナナイーターは熱烈なアプローチに応え、身体に手を這わせた。
 細い指が服の隙間から入り、あちこちを弄んで男の悦びを味わわせようとする。
「くうっ、ならばこちらも!」
 力には力、技には技。双子山を両頬に任せ、相手の背後へ腕を持っていく蒼眞。
 そこにはあるのは丸い月。山に負けない肌触りのそれを撫でさすれば、刺激の変化にバナナイーターは声と果実を弾ませる。
「いいねぇ。この感触! たまらん!」
 神太郎もオッサンじみた台詞を吐きつつ、身体を預けて膨らみを揉みしだく。
 その触り心地もよいが、全身を包み込むようなふかふか加減がまたよろしい。
 にも関わらず。
(「……ま、デカいのも正義だけど? 俺はこういうドーンバーンボーンみたいなのより、お淑やかなねーちゃんが見せる色気……みたいな方が好みだけどな!」)
 なんてことを、神太郎は考えるだけでなく口から零した。
 途端、バナナイーターの手があちこちを巧みに弄りだす。受けに回った神太郎は耐えるため、己に強烈な自己暗示を掛けようと独言した――が、肉体を硬化させるその技は大変よろしくない現象を催した。
「お、俺は……誰、よりも、大きな男に……っ!」
「あらあら、立派じゃない。これなら十分よ?」
 逃げられないよう胸元に押さえ込んで、バナナイーターは果敢に攻勢を続ける。
 その間、まだまだ青い神太郎は意識が滑落しないよう、二つの出っ張りにしがみつくことしかできなかった。
「うふふ。お兄さんも楽しみましょう?」
「……あぁ」
 広がる痴態の数々に、初心なコールの演技は強張るばかり。
 この機に乗じて弾けることも、余裕を見せることもままならず。
 しかしコールも多感な年頃の男子であって。
 相手が好みの――ふくよかな女性の姿をしている分、気恥ずかしさは天井知らずの倍々ばいんばいん。
「もしかして、お兄さんこういうの初めて?」
「……いや、その、だな」
「あらあら、それじゃあたっぷりと可愛がってあげなきゃね」
 口ごもる様子を肯定と受け取ったのか、バナナイーターはコールを導く。
(「なに、たった三分だ。三分しっかりしていれば良いだけだ。簡単じゃないか」)
 唆られているふりと言い聞かせ、コールは促されるまま揉んだり擦ったり挟んだり、したりされたりした。
 デウスエクスとケルベロス。生命を賭けて争う間柄でありながら一体全体、ナニをしているのだろう。
 思考力が急低下する一方、コールの全身は熱く、息遣いも荒くなるばかりであった。

●盗視
「楽しそうだね」
 少し離れた茂みに身を隠し、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)は意地悪そうに口元を歪めている。
「男心を見事に利用してるわね。おばちゃんのお仕事でも、客引きに使いたいくらいだわ」
 狐獣人のユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288)も余裕の笑みを見せながら言って、人様に危害を加えるようじゃリピーターもつかないけれどと、冗談を締めくくる。
 ミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)は淡々と、いつでもヒールドローンが展開できるように備えて。
 レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)は――真っ赤になった顔を両手で覆い、月夜の下で繰り広げられる光景から一人だけ目を背けていた。
「あ……あんな、あんなこと……」
 とても見ていられない。見ていられないが、気にはなる。
 レクシアは現状把握のため、オラトリオの証として花冠のように咲くトリテレイアの下についた、二つの耳だけを盛んに働かせる。
 この声は澄まし顔の。それとも仮面の。いやいやあどけない。はたまた煩悩全開の。
 合間に聞こえる切ない響きは音階を駆け上り、時折聞こえる水音は――。
「……ふー」
「ひゃっ!」
 唐突に耳を撫でる風。レクシアが驚きを飲み込んで横を向くと、悪戯を仕掛けたサキュバスが薄笑いを浮かべていた。
「どうしたの? 気になるなら、ちゃんと見ればいいのに」
「そ、そんな破廉恥な」
「その破廉恥がないと人類はとっくに滅びてるわ。仕方ないことなのよ、あぁいうのを男の子が好きなのは」
 プランの戯れに、養護教諭じみた口ぶりで加わるユーシス。レクシアは一縷の望みをかけてミスルに目を向けるが、彼女は「また厄介なのが出てきたなぁ……」と独り言ち、彼方を眺めているだけ。
「ほらほら、おばちゃんと一緒に生暖かく見守りましょうねー」
「皆通ってきた道だよ。何も恥ずかしくないよ」
 逃げ場なし。レクシアは両側から、どんどん追い込まれて。
「……! 三分! そろそろ三分経ったはずです、行きましょう!」
 言うが早いか地獄の翼を噴き上げ、滑るように茂みを飛び出していった。

●闘争
 確かに三分以上は経っていたのだろう。敵は逃げることなく其処にいた。
 もっとも、男どもにそんなことを考える余裕があったとは思えない。バナナイーターと種々様々に組んず解れつしていた彼らは、猛烈な勢いで滑り込んでくる青い燐光によってプレイ時間の終了を知ったはずだ。
「そのふっかふか、かっちこちに凍ってもらいます!」
 頬に僅かな朱色を残したまま、言い放ったレクシアが氷上の舞姫が如く駆け抜ける。
 一団とのすれ違いざまには時空を凍結する極小の弾丸が波のように生じて、バナナイーターから時の歩みを奪い取りつつ、男たちを現実に呼び戻す。
 彼らが惜しみながらも肉感的な肢体に別れを告げれば、入れ違いにユーシスの歌声と数多のヒールドローンを引き連れたプランが槍で薙ぎ払って抜けた。
 諸々搾り取ろうと盛り上がってきたところに水を差されて、顔をしかめるバナナイーターたち。
 反撃に放られるのはバナナを始めとした果実型爆弾。それらが破裂することで飛び散る果肉やら汁やらによる被弾を、キルロイは増幅した感覚に頼って最小限に抑え、特にヒドい面になっていた個体を指して吐き捨てる。
「知ってるか? ブスの語源は植物から来てるらしいぜ。そうだテメェのことだ! そこのブス!」
 ヤるだけヤッといてとんでもない手のひら返しである。しかし、さんざ楽しんだ相手に後足で砂をかけるのは彼ばかりでなく、蒼眞も天空から喚んだ数多の刃で果実を串刺しに貫き、コールは指輪から生み出す光の戦輪で次々と枝葉を切り飛ばしてみせた。
「悪ぃな、ねーちゃん」
 そそり立つような鉄塊の剣で以って、神太郎も一番ふくよかな個体を殴りつける。
 容赦ない男たちの振る舞いは極悪非道にすら見えたが、バナナイーターたちはどれだけ乱暴を働かれても健気に笑ったままだった。身体のふかふか加減に違わない包容力なのかもしれないが……しかしどことなく、ダメ男製造機な雰囲気も漂う。
 それは攻撃手段にも滲み出ていた。果実爆弾の投擲を止めたバナナイーターたちは狙い澄まして神太郎を取り囲み、四方から身体を押し当てる。
 そのまま上下左右に前後に揺れて。たゆんたゆんのくるんくるん。
 あらゆるものを搾り取られる神太郎の顔は締りなく――しかし何処か満足そうで、引き気味のミスルが黄金の果実から放つ光に照らされると、極楽へと達したようにも見えた。
「くっ、羨ましい! 俺もおっぱいに包まれたい! おっぱい!!」
「もう、真面目に戦ってください! ……神太郎さんも!」
 欲望をストレートに吐いて悶える蒼眞を一睨みしてから、レクシアは少年に向けて闘気を放つ。淑やかさの中に混ぜた恥じらいを取り除くことが出来ない彼女の一挙手一投足は、実のところ昇天寸前だった彼にそれまでと違うやる気を漲らせた。
「っ、俺の命が! 燃え上がる!」
 程なく抱擁から抜け出し、両腕の炎を大地に伝えて噴出させる神太郎。
 だが格好などつかない。ついているのは乳で押された痕に、青臭い液とか甘い汁とかそんなものばかりだった。
 一方、悔しさから熱意を生み出した蒼眞は幻惑をもたらす桜吹雪に紛れて、バナナイーターたちを一刀のもとに斬り捨てる。
 俄に訪れた春の気配はプランが喚んだ氷河期の精霊によって二つ飛ばしで冬に至り、温かさが戻る前にコールとユーシスが仕掛けたことで、一体が死の淵に追いやられた。
 それはキルロイに詰られた、あのバナナイーター。
「あばよ」
 最期にとびきりの贈り物として放たれた弾が下腹部を貫き、哀れ醜女は枯葉と散った。

●決着
 弄ぶつもりが弄ばれ、バナナイーターから非難の声と果実爆弾が飛ぶ。
 男はともかく、女性陣に咎はないだろう。レクシアの生むオーロラのような光と、ミスルの果実から放たれる輝きを受け、神太郎は小さな身体一杯に責め苦を受けた。
 そして倒れた。ふかふかを味わった代償は大きかった。
 さすがのケルベロスたちにも緊張が走る。弱い個体から確実に仕留めようと気を入れ直し、炎纏う蹴りを打ったキルロイを追って、コールが目にも留まらぬ速さで斬り抜ける。
 ところが緊張感を醸す二人に続いたのは、紫の瞳を妖しく光らせる娘。
 プランだ。危うい美しさを湛えた彼女は傷を負った敵に絡みついて、そっと囁く。
「気持ち良くして搾っちゃうのはサキュバスの得意分野だよ。気持ち良くシテあげるね。何度も咲き乱れちゃえ」
 それから片腕を回して抱きすくめ、もう一方の手で果実を嬲り、重ねた唇は次第に貪るような激しさとなって、ついには足に絡む白い尻尾が、幹の中心を這う濡れそぼった峡谷の最奥へと潜り込んだ。
 繰り出される妙技の数々は異形を恍惚の境地に至らせる。やがてプランの味わってきた快楽と苦痛をも一身に浴びたバナナイーターは、周期的に起こしていた震えを一際大きなものにしてから地に還るように崩れた。
「イっちゃったね」
 尻尾に残る蜜を啜って、あどけなくも妖艶な笑みを浮かべるプラン。
 ここで蒼眞の理性は限界を超えた。神聖なる四文字――つまるところ「おっぱい」と何度も叫びながら、残る二体の弱そうな方へ恐ろしいほどの速さで向かっていく。
「……ハメを外しすぎちゃ駄目よ」
 手遅れだろうと思いつつ、警告と一緒に満月型の光球を送るユーシス。
 それによって完全な獣と化した蒼眞は、今こそ好機と吼えた。
「ランディの意志と力を今ここに! ……全てを斬れ……いや、揉めェッ!」
 目的はただ一つ。とにかく揉むべし、揉むべし、揉むべし。
 余りの一体に挟み込まれ、反撃として柔らかな抱擁を喰らっても彼の手は止まらない。
 もはや途中からグラビティでも何でもなく、情熱のままに双方の膨らみを揉みしだいて、満足した蒼眞は腕を突き上げた。
「どれも素晴らしい! 皆違った、でも皆よかった! おっぱいに貴賎なし!!」
 そして倒れた。ふかふかを味わった代償は大きかった。
「だから加減なさいって言ったのに……」
 ユーシスは背中で充足感を語る青年を見やりつつ、ドラゴンの幻影を飛ばす。熱烈な愛撫に息も絶え絶えだったバナナイーターは、容易く燃えて灰になった。
 残るは最も濃艷な肢体を持つ一体のみ。空と大地から力をかき集めて、より扇情的な容姿に変貌したそれを、ケルベロスたちは容赦なく叩いて元に戻す。
 やがて、ユーシスの喚んだ雷纏うドラゴンの幻影が足元から天に昇っていくと、たわわな果実も萎びて、力なく落ち始めた。
 それをただ敵の滅びる間際と捉え、コールは上段に構えた蒼白い騎士剣を振り下ろす。
「断ち、別つは不滅の刃。その命を絶つ!」
 竹を割るように両断された女体は所詮、攻性植物。
「貧相で美味しくなさそうなバナナだったわね」
 呟くユーシスの前で、最後の一欠片まで塵になっていく。

「あー、俺も彼女ほしいなーちゃんと優しく埋もれさせてくれるさー」
「そうですか。さ、清潔にして帰りましょう」
 戯言を流しつつ、面倒見のよいレクシアは粘液まみれの神太郎を何度か叩いてやって、すっきり綺麗な状態に。
「だいぶ楽しんでたよね、綺麗なお姉さんに色々シテもらって気持ち良かった?」
 冷やかすように言ったプランには、蒼眞が無言で親指を立てて返す。
 男というのは、如何ともしがたい生き物だ。
 それが態度で証明される中、コールだけは心底疲れた顔で、項垂れているのだった。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 1
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