五月病事件~都会は眩しすぎて

作者:一条もえる

「う……」
 カホは小さなうめき声を上げて、顔を上げた。
 カーテンのわずかな隙間から差し込む日差しが、横顔を照らす。
 といっても、それは夕日だ。
「合格おめでとう!」
「あの難関校に? がんばったんだねぇ!」
「ははは、我が校一の秀才だな」
 難関大学に合格し、親や親戚、友人や学校の先生の暖かい賛辞を受けてから、ほんの2、3ヶ月ほどしか経っていない。
 今日は平日。もちろん講義はあった。
 それにも関わらずカホは、夕方まで寝こけていたのだ。
 今日だけではない。もう何日大学に行ってないだろう?
「だって、なんだかやる気出ないんだもん……」
 地方から出てきたばかりの生真面目なカホに、都会育ちでいいとこのお嬢さんたちは眩しすぎたせいもある。
 ファッションに興味がある方でもない。普段着ている服も、地元の量販店で去年買ったもの。ファッション誌など、見たこともない。
 そもそも、そんな洒落た服を買うゆとりなどない。都会の私学に通わせるため、両親がどれほど無理をしてくれているか。このアパートだって、家賃で決めたのだ。
 そんなみすぼらしくて垢抜けない自分を、皆が笑っているように思えてならないのである。
「あーあ、来るんじゃなかった。こんな大学……」
 カホはため息をついて、布団に潜り込んだ。

「病魔のせいねー、それは」
 崎須賀・凛(ハラヘリオライダー・en0205)は、はっきりとそう言い切った。
 日差しもまぶしくなり葉の色も濃くなり、まさに初夏というすがすがしい季節。
 だがそこに、五月病の病魔が蔓延していた。
 死ぬような病気ではないが、あまりに長く続くようであると社会復帰が難しく、新入生にとってはこれまでの頑張りも無駄になってしまう。
「せっかく頑張ったんだからね。それじゃ可哀想でしょ」
 と、凛はコンビニで買ってたとおぼしき唐揚げに、楊枝を刺す。
「もぐもぐ……。
 だからみんな。撃破しちゃって!」
 5個の唐揚げをあっという間に飲み込み、凛はケルベロスたちに笑顔を向けた。
 目標は、カホという地方から上京してきたばかりの大学生だ。
 ずっと大学に行かず、家からも出ずに引きこもっているようである。ウィッチドクターとともに家を訪ね、接触して病魔を引き剥がしてもらいたい。
「そうしたら、戦って撃破することが出来るようになるからね。
 え? みんなのなかにウィッチドクターがいなかったら?」
 手を突っ込んだビニール袋から出てきたのは、またしても唐揚げ。まどろっこしくなったのか、凛は全部を卓上にのせた。いくつ買ったんだ。
「もぐもぐ……。
 大丈夫。そういうときは、地域の医療機関に協力しているウィッチドクターがいるから、臨時に手伝ってもらうね」
 住まいは、昔ながらの込み合った住宅街。築50年になろうかという風呂なしの古いアパートの2階である。かろうじて鳴るチャイムを押しても、相手は出てこないだろう。
「もぐもぐ……。
 事情が事情だからね。、いざとなったら、ドアを破壊して踏み込んでもいいけど……」
 卓上と、口元。凛は楊枝をリズミカルに動かして、唐揚げを移動させていく。
「もぐもぐ……。
 んん? そういえば、カホちゃんはずっと学校に行ってないし、昼間も寝てるみたいなんだけど……お腹が空いたら、どうしてるのかな?」

「もぐもぐ……。困ったことにね」
 凛が眉を寄せる。
「五月病って、一度病魔を撃破しても、再発しやすいみたいなのよねー。
 できれば、カホちゃんの話を聞いてあげて、原因みたいなのを探れるといいかなぁ」
 お願いね、と凛は片目をつぶった。


参加者
西水・祥空(クロームロータス・e01423)
ニクス・ブエラル(失楽園・e06113)
白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
ジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)
フィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935)
リン・イスハガル(凶星の氷闇龍・e29560)
マリー・ブランシェット(蝋の翼は誰が為に・e35128)

■リプレイ

●古くさいアパート
「自分とはぜんぜん違うなっていう気持ち……よくわかるな」
「左様。かく言う我も、田舎者ゆえ街に出てきたときには本当に困ったことばかりであった」
 白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)の呟きを耳ざとくとらえ、リン・イスハガル(凶星の氷闇龍・e29560)は腕組みして頷いた。
 ふたりは件のアパートを遠望している。それにしても古くさいアパートだ。築50年はくだるまい。
「リンさんは田舎の出というより……廃墟ですよね、お話聞く限り」
「田舎と言えば、田舎よ。都会の者にはわからぬ悩みがあるというもの……」
「廃墟暮らしの気持ちは、さすがにわかる人少ないと思いますけど……。
 うちはそれなりに人がいて、にぎやかな人もいますし」
 そんなやりとりをしながら見張っていると、
「慣れない土地でひとり暮らしでは、鬱々としてくるのもわからなくもないけど」
「モチベーションを維持するのも、難しいですよね」
 そんなことを言いながら、ニクス・ブエラル(失楽園・e06113)とマリー・ブランシェット(蝋の翼は誰が為に・e35128)が、姿を見せた。
「管理会社に行ってきたよ。事情を説明してきた。アパートの住人にも、訳を話して避難してもらったよ」
 事件解決に赴いたケルベロスの正当な要請には否も応もあるまいが、ニクスの人当たりのよい物腰がスムーズに事態を進めたことは間違いない。
 一方のマリーは。
「周辺はテープで封鎖しました。これで、誰かを巻き込む危険は少ないはずです」
 一般人の不意の侵入に、対策を取っていた。
「生きていれば、どうにもやる気が出ないことはございましょう」
 西水・祥空(クロームロータス・e01423)が、白手袋をはめ直す。
「それを乗り越えるのも必要ですが……病魔が原因とならば、話は別でございます」
「そうだ~! 病魔はウィッチドクターの敵だ! 撲滅だぁ~ッ!」
「いや、ふつーに人類の敵だよね、僕たちに限らず」
 拳を振り上げるジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)の横で、施術黒衣に身を包んだフィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935)が淡々と返す。
「もぉ~、フィオナちゃんはそういうところもカッコカワイイなぁ!」
「子供みたいに撫でないでよ。背格好、同じくらいでしょ!」
「さぁさぁ、そろそろ取りかかりましょう。夜も更けてきました」
 ジェミ・ニア(星喰・e23256)がフィオナにじゃれつくジャスティンを制し、仲間たちを促した。
 念のため、ジェミはカンカンとやかましいアパートの階段をのぼり、チャイムなんぞないドアをノック。少し強めに叩くが、カホは出てくるのも億劫なのか布団でもかぶっているのか、反応はない。
 非常事態だ。鍵も借りてある。このまま押し入っても、構いはしないが……。

●病魔
 部屋の中で、むっくりとカホが目を覚ます。
 なぜか、今日はやたらと腹が減る。いつもは、寝ていれば食欲も失せてあまり食べなくても平気なのに。
 カホはドアの鍵を開けて、襟がよれたスウェット姿でサンダルを履き、外に出た。
 コンビニに行こう。いつものように。
「出てきました!」
「題して『食・天の岩戸』作戦、大成功だね」
 夕璃とニクスとが、歓声を上げた。
 辺りに漂うのは、夕璃が、
「カホ~、ご飯よ~」
 と、呼びかけながら作った味噌汁の匂い。
 そして、ニクスが煮込んだ香辛料をふんだんに使ったカレー。
「おにぎりもできたわい」
 リンが、用意した台に大量に並べ、手についた米粒をぺろりと舐める。
「おにぎり、うめぇであるのよ。この誘惑に耐えられる者など、おるまいて」
「欠点があるとすれば、私たちもおなかが空いてくることですね」
 と、マリーが笑う。
「アパートを荒らさずに済むなら、それにこしたことはありません。後を追いましょう」
 ジェミも笑って、ふらふらとした足取りで進むカホを追う。
「来ましたね」
 茂みの中から、祥空が様子をうかがっている。彼は一足先に、戦いになっても被害が少なくて済みそうな、開けた場所を探していた。
 明かりのあるコンビニを想定していたが、数台分の駐車場しかないそこでは、巻き込むかもしれない。
 そう思った祥空は川を見つけて、それに沿った土手に陣取った。草に覆われた荒れ地だ。
「よーしよし、こっちだよー」
 ジャスティンがうちわであおぎ、焼ける秋刀魚の匂いを届けていく。ふらふらとコンビニに向かう足が、こちらに向いた。
「キアラちゃんも食べる?」
 と、ジャスティンはフィオナのウイングキャット『キアラ』に問いかけた。
「焼きすぎて、消し炭にしないでね」
 カホがやってきたのを確かめて、フィオナが飛び出す。はじめはツンとそっぽを向いていた従者は、けっきょくその誘いに抗しきれなかったようだ。
「カホ! その病原を、断ち切ってあげる!」
 フィオナの手が、カホの肩に触れた。それに召喚され、ずるり、と姿を現したのは……!
 見るからに、「だるーい」とでも言いたげな姿の病魔。
「……拍子抜けする、姿ですが」
 しかし敵は、振り下ろされた祥空の鉄塊剣を、予想外の素早さで避けたではないか!
「なんと!」
 リンの放った氷結の螺旋も、
「あ~~~~~~」
 と、けだるげな奇声をあげて転がって避ける。
「な、なんなのぉ?」
 傍らで、狼狽した声があがった。カホは意識はあったようだが、よろけて斜面を転がりそうになる。
「おっと」
 ジェミが手を引いて抱き寄せ、その身を抱え上げた。
「ひゃあ!」
「すみません、手荒な真似を。あの病魔はなるべく早く追い払いますので、ご協力願います!」
 そう言って穏やかに微笑むと、もともと怖がったというより、抱き上げられたことに驚いたのだ。顔を真っ赤にして、コクコクと頷いた。
「お、重いですよ……」
「いえいえ。軽いものですよ」
「疾き刃よ、切り裂いて!」
 カホは大丈夫。それを確かめたマリーは、刀剣型の試作兵器を手に切りかかる。振動する刃が病魔を切り裂き、敵は土手の下方に転がり落ちていった。
「あんな見た目のくせに、けっこう素早いね。
 補助展開コード、鷹の目。千里を見通す眼となって!」
 渋面を作ったジャスティンが、仲間たちの眼前に眼鏡に似たホログラフィを生み出した。視力が増し、攻撃に正確さが増す。
 一方で敵は、草の上に転がったままの体勢から、催眠の力を放ってきた。あぁもう、寝ていたい。
「く……この威力は、やっかいだね」
 ニクスが顔をしかめた。
「刃に宿りし魂に願う、御霊を護りし守護の衣を彼の者らに!」
 ニクスが『黄金の果実』を実らせるのと呼応して、夕璃も斬霊刀を高々と掲げる。そこから生み出された光の羽衣が、仲間たちを覆って護る。
 仲間の支援を受け、祥空が間合いを詰めた。
「我が地獄を治めし、可憐なる乙女達に願い奉る!」
 それに呼応するように、リンは氷と雹、ふたつのルーンを組み合わせる。
「氷の礫よ、荒々しく舞うがよかろ」
「神討つ力を、我に与え賜えッ!」
 橙、白、青……九つの色の炎が燃え上がり、それが刃となして祥空は病魔に打ちかかった。
 ふたりの攻撃は敵を捉え、病魔は無様に転がってのたうち回る。リンの放った氷は威力こそさほど大きくはなかったが、敵を氷に包んで苛んでいく。
「よぉーし、一気に叩き潰すよ!」
 言葉通り、ジャスティンは一直線に敵に向けて飛び込む。
「わかりました」
 マリーが応じ、ジェミは無言で頷いて、槍を構えて後に続く。
 ジャスティンの音速を超える拳が腹部に深々と食い込み、ジェミの槍が肩口をえぐる。全身を駆けめぐった稲妻で、病魔は身を強ばらせた。
 そこに光の翼を暴走させて全身を光の粒子と化したマリーが突進し、敵を吹き飛ばした。
 ケルベロスの猛攻とすさまじい威力に、病魔はたまらず倒れ込んで……いや、基本的にこの病魔はこういう格好なのかもしれない。
 負傷してもなお戦意を失っていない証拠に、病魔は、
「んんんん~」
 と、あくびしているのか背伸びしているのかわからない奇声を上げる。何にも縛られない自由の心は、その身を苛む氷や稲妻も打ち消して、ふたたび病魔に力を与えてしまった。
「しぶとい!」
 それだけやっかいな病と言うことか。フィオナの放った蹴り渦巻く炎を伴って、病魔を押し包んだ。しかし、その炎はすぐに消え失せてしまう。
「く……!」
 夕璃は刀を構え直して神速の突きを繰り出したが、
「もぉぉぉぉぉぉぉッ!」
 病魔は身をよじってそれを避け、耳を覆いたくなるような奇声を放った!
「う……? あぁ!」
 夕璃が悲鳴を上げ、来ないで、とでも言うように手を前に出す。
 病魔の叫びは彼女のトラウマを刺激して、形を為して襲いかかったのだ。
「まずい……しっかりして!」
 ニクスが、桃色の霧を放って夕璃を包む。
 しかし、こんどはニクスに向かってトラウマが襲いかかった。
 消える、消える。大切な人が。聞こえる、耳をふさいでも聞こえ続ける。女の、高笑い……!
「今は、いまはこっちへ集中するんだ……!」
 脂汗を流しながらも、ニクスは治療を優先する。
 そのおかげで、夕璃は一度は膝をつきながらも、なんとか立ち上がった。
「……わかってます。私だけ、逃れたこと。
 ても、だからこそ、私は進まなきゃ……駄目なの!」
 小さく呟きながら。

●差し込む朝日
「トラウマね……僕は思いつかないな。怖いとすれば、お化けくらい?」
 仲間たちを庇って、ボクスドラゴン『ピロー』とともに前に出たジャスティンだったが、いざとなると顔をひきつらせた。
 本人にさえ気づかぬトラウマを、刺激してくるのだ。お化けにしたところで、予想していたものの10倍は恐ろしげに。
「こ、これはきつい!」
 たまらず悲鳴を上げ、戦場に薬液の雨を降らせる。
「お主も、喰ろうてみるがいい!」
 リンがナイフをかざすと、その刀身が妖しく光る。しかし、敵の束縛されない自由は、放たれたトラウマを阻んでしまった。
「打ち破ってあげましょう!」
「デウスエクスにあげる経など、ございませんので!」
 ジェミと祥空とが、一気に間合いを詰める。
 ジェミの拳が土手っ腹に叩き込まれ、相手の身体がくの字になったところに、祥空のグラビティ・チェインを込めた鉄塊剣が襲いかかった。
 すさまじい威力は病魔の身体を宙に浮くほど吹き飛ばし、敵の護りを打ち破る。
「五月病の病魔よ……かの身体から、討ち祓う!」
 夕璃の一閃した斬霊刀は空の霊力で、敵を切り裂いた。
 もはや、敵に力はほとんど残されていないはず!
「んあああああああ~!」
 しかし病魔は、心底けだるそうに奇声を上げた。戦いも何もかも嫌になって、寝てしまえという破壊の力。
 それはケルベロスたちに襲いかかり、マリーはふらつく頭を手で押さえた。
「マリー君!」
「いえ……大丈夫です。なんとか正気は保てています。
 それより、敵はもう満身創痍です!」
 そう言ってマリーは案じるニクスに返し、ナイフを構える。跳躍して懐に飛び込むと、深々と病魔のわき腹に刃を食い込ませた。溢れ出た血かなにかわからぬ液体を浴び、傷が癒えていく。
「わかった!
 ……栄光と知恵は習慣すら変える。天上の意志を、我々は知ることはないだろう」
 ニクスが朗々と口上を述べると、そのグラビティによって小さな火が生じた。
「啓蒙は 既に遅く、骰子は投げられた!」
 それは病魔に向けて降り注ぎ、大きく、熱く、身を焼き尽くす業火へと変ずる。
「ああああああああッ!」
 病魔は耳障りな叫びを上げ、自棄になったように襲いかかってこようとしたが。
「やらせない! この剣と拳とが届くところまでは……!」
 フィオナが、敵を真正面から睨みつける。
「光を纏いて貫け! 何が相手だって、押し通るッ!」
 その手に現れたのは、神をも殺す光の剣。その刃はカホを蝕む病魔の身体を貫き、ついには霧散させた。

 カホを連れ、アパートに戻った一行は車座になって座り、料理を広げた。
 狭いアパートは9人も座り込んでギュウギュウ詰めだ。
「女性なのだし、もう少しセキュリティのしっかりしたところに住んだ方が」
 祥空は言ったが、カホは恥ずかしそうに笑うしかない。
 少し騒がしいが、他の住民は避難からまだ戻っていない。多少は勘弁して貰おう。
「他人の目が気になるのは致し方ないが、それで雁字搦めに囚われるのは、愚かなことよ」
 と、リンが手厳しくカホを諭す。
 もっとも、おにぎりをむしゃむしゃと食べながら、頬に飯粒をつけたままでは緊張感のカケラもないが。カホが思わず噴き出す。
「目的があって来たんじゃろう? それを誇るといい」
「お袋の味って、こういう感じなんでしょうか」
 汁椀を手にしてそんなことを言っていたマリーは、
「聞かせてください。カホさんのことを」
 そう言ったあとは急かしたりせず、カホの瞳をじっと見つめた。フィオナも無言で、視線を向ける。カレーを一口。
 それに押されて、カホは少しずつ口を開き始めた。
「僕、勉強ぜんぜんダメだから、できるってすごいよー!」
 と、ジャスティンが大きな声を上げる。ニクスは騒がしさに苦笑いしつつ。
「その努力は無駄にはならないよ。君の気の持ち方で、きっと毎日が楽しくなる」
「そうですとも。案外、自分のことは自分では見えないもの。素敵なところはいっぱいあると思います」
 と、こちらはジェミ。
「おいしいものを食べて、元気出してください」
「あ、どうも……」
 おにぎりを受け取ったカホが頬を赤くする。社交的とはいえなかったカホ。同年代の男性たちとこんなに近くで話をしたことなどないのだ。
「あはは、照れてるー。
 おしゃれなら、僕が教えてあげるよ。お金をかけなくても、できることはたくさんあるんだから!」
 と、ジャスティンは冷ややしつついろいろと話をしてやった。
 カホとケルベロスたちは、それからたくさんのことを話した。気がつくと食べ物はなくなっていて、コンビニまで行って飲み物やお菓子を買い足した。
 酒も入っていないのに、皆は陽気に、互いのことを語り合った。
「もし、また困ったときには……お母さんに、電話もしてみたら……どう? 不安な思いも、話せばきっと支えてくれるわ」
 うちの場合は……「よそはよそ!」で終わりにされそうだけどと、夕璃は苦笑しながらカホの手を握る。
「それか……困った時は、私たちでもかまいません」
 と、祥空がケルベロスカードを手渡した。
 気がつくと、外が明るくなってきていた。
「む……すまんのぅ、長居しすぎた」
 そう言ってリンは、頭をかいたが。
「いえ……私、今日から大学に行きます。眠いけれど……すごく、行きたいんです!」
 笑ったカホの顔は、思わず見とれてしまうくらいに愛らしかった。

作者:一条もえる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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