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「日本でモーテルなんて、ちょっと珍しいよな」
青年は、車をモーテルの正面に停めると、車のエンジンを切った。車から降りた彼は、壁が所々崩れ、ガラスが割れた廃モーテルを見て、ヒューと口笛を吹く。
「これなら、俺達のサークル、夏の恒例行事である肝試しにもピッタリの舞台だな」
青年は、躊躇なく廃モーテルのドアを開けて、内部に入った。内部は、予想通り荒れていて……。
「……ん、なんかこの中だけ気温が低いような……」
外とはまるで、空間が隔絶しているかのように、内部は冬のような肌寒さを保っていた。
「ま、肝試しは夏だしな。涼しい方が皆も喜ぶだろ。あとは、夢喰とかいうのが出るんだったよな。確かネットの噂で見た部屋は――」
部屋番号102号室。そこは、モーテルらしく寝るためだけの部屋であり、ホテルなどよりも狭い。そして、埃に塗れたベットが一つ、鎮座しているだけの部屋。
「うわ、汚な! 夏前に掃除しとかないと、女の子が来てくれないな、こりゃ。それで、ここに横になればいいんだっけ?」
青年はベッドのシーツを手で軽く払って最低限の埃を取ると、そこに横になり、目を瞑った。
「夢喰か、体験してみたいもんだ。エロい夢とか見せてくんねぇかな。それで、女の子といい感じになって……って、喰われるんだから見られねぇか、ちぇ!」
青年は、横になって邪な想像を膨らませる。だが、そこで思い出すのだ。噂には、続きがあった事を。
「……夢を喰われて、それで終わり……じゃないんだよな。このモーテルが恐れられてるのは、この部屋で発見された死体に、脳が入ってなかったから……」
ブルリと、青年は背筋を震わせる。夢喰と呼ばれる存在は、脳にゾウのような鼻を突き刺して、脳を啜るという。脳を啜る事で、夢喰は同時に、主食となる夢を得る。……犠牲者の、死を対価に……。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』には、とても興味があるわ」
その時、青年は、ふと聞き慣れない声と、胸に衝撃を感じて目を開けた。
「……こ、これは……」
次第に薄れていく意識の中、青年は胸に突き刺さる鍵状の凶器と、魔女の姿を見た。
そして――。
「お前の夢……いただく……」
意識を完全に失った青年に変わり、奇妙な狸にもパンダにも似た生物が、青年の脳に鼻を突き刺そうとしていた。
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「モーテルといえば、アメリカのイメージがありますよね。ソンビ映画とか、ミステリーでは定番ですし、だからこそ肝試しの舞台として選ばれたのかもしれませんね」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、ケルベロス達を会議室に迎え入れながら、苦笑を浮かべる。
「レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)さんの懸念通り、不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
元凶となるドリームイーターは姿を消しているが、廃モーテルに関する噂を元に生み出されたドリームイーターは健在だ。
「どうか被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい! また、ドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった青年も、目を覚ましてくれるはずです!」
セリカは、事件の概要を纏めた資料をケルベロス達に配る。
「現れたのは、『夢喰』と名乗るドリームイーターのようです。人間程度の大きさで、一見狸やパンダに似た外見をしていて、まるでゾウのような長い鼻を持っています。攻撃方法は、夢喰という名の通り、人を【催眠】状態にする事を得意してしていて、多用してくるので注意が必要です」
ドリームイーターは自分の事を信じていたり、噂している人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。上手く誘えれば、有利に戦闘が進められるだろう。
「モーテルの部屋は非常に狭いです。もしお引き寄せるなら、候補としてはモーテルのエントランスや、駐車場などがいいと思います」
そこまで説明を終えると、セリカは資料を閉じる。
「夏の肝試しを楽しみにするのもいいですが、もう少し身の危険にも気を遣ってもらいたいものです。とりあえず、このモーテルは諦めてもらう事に致しましょう! 青年の事、よろしくお願いしますね」
参加者 | |
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四之宮・柚木(無知故の幸福・e00389) |
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448) |
リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164) |
ヒルメル・ビョルク(夢見し楽土にて・e14096) |
妹島・宴(交じり合う咎と無垢・e16219) |
西城・静馬(創象者・e31364) |
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349) |
ターニャ・グラッツェル(葡萄の瞳・e35160) |
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「一般人が周辺にいたらと思って見回りをしてみたが……」
「こんな場所にいるはずもない、ですよね」
周囲を見回っていた四之宮・柚木(無知故の幸福・e00389)とリコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)は、顔を見合わせて息を吐いた。
モール前の駐車場には、本場の風を想起させるような乾いた風が靡き、柚木のツインテールを撫でている。
「ただいまー! あっちに人はいなかったよ。そっちはどうだったの?」
そこに、息を切らせたターニャ・グラッツェル(葡萄の瞳・e35160)が戻ってくる。予想道りの答えに、問われた2人は問題ないと首を振った。
「このモーテル……出るらしいですね」
周辺確認を終えたケルベロス達は、駐車場の片隅に集まった。一同の顔を見渡したレーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)は、満を持してといった風に、そう口にした。
「廃モーテルといえば、B級ホラーの定番ですからねー。まさか日本にあるなんて!」
妹島・宴(交じり合う咎と無垢・e16219)は、一見何もないはずの虚空を見上げながら、「ぼく、気になりますっ!!」という定番台詞と共に、目をキラキラ輝かせている。
「夢を食べる存在と聞けば、私も思い当たる節はありますが、例の噂通り、脳も食べてしまうとなると……」
「ええ、夢に巣くう『妖』は洋の東西を問わずポピュラーですが、それはもうサイコホラーの領分ですね」
「とてもじゃないけど許せないよ、頭の中を吸うなんて……!」
夢喰は、ゾウのような鼻を突き刺して脳を啜り、その過程で夢を得る……らしい。想像するだにおぞましい光景に、レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)と西城・静馬(創象者・e31364)、ターニャですらも、閉口するしかない。
ただ、レクシアはそれ以上に――。
「宴さん、その……何かいるのでしょうか?」
虚空を興味深そうに見上げる宴が気になるらしい。宴はレクシアに、意味深な笑みを返す。レクシアは救いを求めるように柚木に視線を向けるが、「気にするな」とだけ言われ、さらに不安になった。
「伝承に聞く貘は悪夢を払う存在であるとか。……趣味良し悪しの観点から言いますと、此方は些か、好意的に捉えるのは難しいかと」
「好意的どころか、噂によると死者が出ているらしいですからね」
鉄面皮のまま、夢喰の代表格とされる一般的な貘と、モーテルに現れるという貘らしき存在を比較をするヒルメル・ビョルク(夢見し楽土にて・e14096)。話をじっと聞いていたリコリスはモーテルを一瞥すると、綺麗に整えられた灰色の前髪の下に灯る、金の瞳を細めた。
「それにしても……夢喰い、バクって……ナマケモノに似ておりませんか?」
――と、脳を啜るだの、死者などと、おどろおどろしい話題で支配されていた駐車場に、ポツリと、レーヴの呟きが花を添える。確かに夢喰いの話題には違いないが、場違いとも言える内容に、呆気にとられるケルベロス達。
「……に、似ていませんか? し、失礼いたしました……!」
その事に、言った後で気付いたのだろう。レーヴは顔を真っ赤にすると、俯いてしまう。
「確かに似てるかも! ナマケモノさんには失礼かもだけど、少し似てるかもだよ!」
だが、ターニャが同意してくれた事で、レーヴの表情は一気に元気を取り戻す。
「似てる……んでしょうか?」
「女性のそういった感性については、深く触れないのが吉かと」
苦笑を浮かべて首を捻る静馬に、ヒルメルが口元を僅かに綻ばせると――。
「さて、夢に惹かれいらした模様……」
ヒルメルの視線の先には、少女達の言う所の、ナマケモノに似ているらしい夢喰の姿があった。
●
「……オラ……何者か、分かる、カ?」
それは、本当にゾウのように長い鼻をしていた。そして鼻を引き摺らせ、人によっては狸やパンダに似ているという胴体。まさに、奇妙という他ない夢喰は、しゃがれた声で、ケルベロス達にそう問いかけた。
「『夢食いバク』でしょう」
「バクですね」
ヒルメルが殺界形成を構築するのに合わせて、間髪入れずに返答したのは、宴とレクシアの二人であった。
果たして、その答えは正解か、否か。夢喰は、全身を震わせるように「クック……ググク」と嗤っている。だが、次の瞬間!
「……は、外れ……バグは、脳を啜らない……お前達も、そう言っていたはず……」
目を見開いて、夢喰は不正解を導き出したケルベロスに襲い掛かかろうとする。
「宴殿!」
「分かってるッす!」
宴に飛びかかる姿勢を見せた夢喰に、柚木が「今ここに武士集いて戦に挑む。――照覧あれ!」祝詞と舞を捧げながら注意を呼びかける。
柚木の加護を受けて力を増した宴は、夢喰が体内へ忍び込まそうと伸ばす長い鼻を握りしめ、なんとか抵抗を試みた。
「外れか。だが、己が何者か決めるのは自分自身だけだッ!」
夢喰は、脳を啜らない。確かにその通り。ならば、『脳喰いバグ』とでも言った所か。静馬は目を細めると、漆黒の手袋の裾を引っ張って、グッと鎌を握る拳に力を込めた。「虚」の力を纏う鎌は、宴と周囲に催眠を振りまく夢喰の背中を深々と抉る。
「ギィッ!?」
背中を襲う激痛に、夢喰は思わず宴にかけた圧力を緩める。
「こちらが現にある時に現れるとは、夢喰としては少々情緒に欠けている様子かと」
「同感ですね。体裁くらいは整えて欲しいものです」
その隙に、ヒルメルは呪詛で夢喰の影を分離、利用して夢喰を混乱の極致に陥れ、リコリスのチェーンソー剣が与える激痛も相まって、夢喰を宴から離れさせる。
「なかなか問いの難易度が高いですね!」
一連の攻防を終えて解放された宴は、重力を宿した飛び蹴りで、夢喰とひとまず間合いをとった。
「……ねんねんころりよ おころりよ」
すると、夢喰は次の手に、後衛に向けてゆったりと子守歌を歌い始める。
「その不快な歌をやめてください」
地獄の炎を噴き上げる翼とエアシューズで高機動を実現し、蒼の軌跡を輝かせながら、レクシアが奔る。
「追い縋る者には燃え立ち諌め、振り離す者には燃え上り戒めよ。 彼の者を喰らい縛れ――迦楼羅の炎」
レクシアの周囲に生み出された無数の蒼の炎弾。それらが夢喰に着弾し、尽きることなく静かに熱を発し続ける。
「さぁ、プラレチ。ともに踊りましょう。あと、どうやらナマケモノに似ていると思ったのは、私の勘違いのようです」
「だねぇ、やっぱり見た目も悪趣味だよ……」
レーヴがエクスカリバールの先端で、プラレチが研ぎ澄まされた爪を誇示して夢喰に飛びかかる。ターニャはそれを援護するように、氷結の螺旋で夢喰を氷漬けにしようと試みるのであった。
●
「レクシアさん、正気を取り戻してください!」
リコリスの身体は、レクシアの操るケルベロスチェインによって締め上げられていた。レクシアの翼に宿る蒼い炎は著しく弱まっており、彼女が催眠状態にあるのは明白だ。レクシアの肩口には幻影となって分裂した夢喰が居座っており、耳から長い鼻を突っこんで脳を弄り回している。
「妹島様!」
「分かっています! ここはぼくに任せて!」
レーヴに声をかけられた宴が、レクシアに桃色の霧を纏わせる。無事キュアの効果が発動したのか、正気を取り戻したレクシアの翼が、再び炎を噴きあげた。
「申し訳ありません、皆さん!」
「いえ、お互い様ですよ。レクシアさんはディフェンダーとして私達を庇ってくれていますからね」
申し訳なさげなレクシアに、リコリスは柔らかく頬笑む。
「リコリスさんの仰る通り、気にする必要もないかと」
ヒルメルが、攻性植物に黄金の果実を宿し、そこから聖なる光を放って前衛に耐性を付与させる。
「実際、夢喰の催眠攻撃に対して、狙っても効率の悪いヒルメル殿以外のポジションにいる私達は、いつレクシア殿のようになってもおかしくはないからな」
言いながら、柚木はレクシアと同様に消耗の激しい宴にも、光の盾で防護させた。
だが、警戒しようにも、いつ催眠状態に陥るかは運次第であり、陥った場合の症状も様々。
「夢……いただく、全部いただく……」
戦場に響く、掠れた子守歌のメロディーが、ケルベロス達の胸中を掻き乱す。
(それに加え、見たところ夢喰はジャマーだと見受けられます。不運が重なれば、一度の列攻撃で複数人に、複数の睡眠がつくことも考えられますから……)
「……うっ!」
と、これからの方針を思案していたレーヴは、隣のターニャを見て目を見開いた。自己回復の手段を用意していなかった彼女は催眠に犯され、自傷行為に走っていたのだ!
「ターニャさん!?」
それはレーヴにとって、自分が催眠を喰らうよりも心苦しく感じさせたのかもしれない。
「安心してください、ターシャさんの催眠は、私が責任を持って解除しますから!」
レクシアが、ターニャにオーラを溜める。正気を取り戻したターシャも、最初こそは「ボ、ボクは何を!?」と動揺を示していたようだが、傷つけたのが仲間ではなく自分自身だったため、すぐに落ち着きを取り戻し、レクシアに感謝を告げた。
「……やってくれましたね」
だが、ターニャ以上に怒りを見せていたのがレーヴであり、夢喰の長い鼻を巻き込むようにして、バールをフルスイングする。
(こうなったら、一刻も早く夢喰を撃破するしかない)
キュアが万能ではない事を、医師であった経験上から静馬は深く心得ている。何よりも、クラッシャーである彼、そしてリコリスが仲間を背後から襲うような事態になれば、戦況はより混沌と化すだろう。
「静馬さん」
リコリスの名を呼ぶ声に、静間は横目でそちらを見た。リコリスの首飾りの勾玉が、幾何学的に明滅しているのを確認した静間は――。
「ハァ!」
「グギギッ!?」
夢喰の胴体に、鎌に雷を帯びさせ突きを繰り出した。
それによって夢喰の動きを一時的に停止させた静間は、その場から離脱。
「残骸、残影、残響。疵より膿まれし者達よ。彼の者と共に滄海へ還れ」
リコリスが、静間が時間を稼いでくれた事に感謝するように、詠唱しながら目を伏せた、その瞬間!
駐車場に、不穏な空気が流れる。召喚されたのは、リコリスによってサルベージされた残霊。それは、夢喰よりも遥かに禍禍しい気配を発しながら、夢喰のお株を奪うように長い鼻で夢喰の頭部を穿つ、そして夢喰は炎に包まれた。
「さっきのお返しだよッ!」
「ゲブッ!!?」
ターニャの獣化した拳が、夢喰に深々と突き刺さる。重なるBSに、夢喰の回避率が、明確に落ちている事をケルベロス達は感じ取る。
「夢……脳……全部、オラの……ヨコセ!」
しかし、夢喰はただ夢を、脳を求めて鼻を伸ばし、子守歌を奏でる。対応するために、宴とレクシアが壁となって立ち塞がり、
「プラレチ、出番でございます」
プラレチが、催眠の被害を最小限に抑えようと、攻撃の手を一旦休めて翼を羽ばたかせた。
「……っ」
ケルベロスチェインを展開するヒルメルは、痛みに僅か目を細める。それは、戦闘の最中、静馬によって負わされた傷である。だが、幸か不幸か、ヒルメルの鉄面皮は感じた苦痛をほぼ表に出すことはない。ゆえ、相手に気を遣わせる事もない。
(人ならば、やはり他者を傷つけることに『恐怖』を抱くものなのでしょう。生憎と、私にとっては縁遠い感情ではあるように思いますが)
この戦場でも、ヒルメルは幾度かそういった場面を目にした。ヒルメルは、己が内に芽生えた『興味』に内心で含み笑いながら、夢喰を締め上げる。
「……ギビィッ、う、動かぬ……!」
拘束された夢喰が、藻掻くように身体をばたつかせる。だが、拘束は一向に緩むことはなく――。
「畳みかけさせてもらう!」
ここが勝負所と読んだ柚木の、禁縄禁縛呪が、夢喰をさらに強固に締め上げた!
追撃に、レーヴの電光石火の蹴りが、リコリスのチェーンソー剣が夢喰に殺到し、血を盛大に巻き上げる。
「静馬さん、止めを!」
「我が手に宿るは悪夢を切り裂く光――妖かしよ、雲散霧消せよ」
宴に声を背に、すでに静馬は駆け出している。駆けながら、静馬は拳を天に突きだした。その拳を中心に、目映い閃光が煌めく。瞬きの間に放たれたのは、夢喰が逃れる隙もない、全方位の乱撃。
「……ガッ……今日は……オラにとっての……悪夢……だった……か……」
波が引くように、静寂を取り戻した戦場……駐車場の中央で、夢喰は断末魔の叫びと共に、影となって消えゆくのであった……。
●
部屋番号102号室。埃まみれのベットに横たわる青年は、足音と人の気配によって目を覚ました――のだが。
「うおっ!」
彼の目に一番最初に飛び込んできたのは、リコリスの胸元に宿る地獄の炎。暗闇に宿る炎と、浮き上がるようなリコリスの顔と特徴的な手足に、青年は身体を反らせるように驚いた。
「これは失礼しました」
青年が驚いた事を察したリコリスは、胸元を隠すようにして背後に下がる。すると、青年はリコリス以外にも、7人のも見知らぬ姿にようやく気付いた。
「ええっと……」
「……イイ夢は、見れましたか?」
困惑して目を泳がす青年に、宴はベッドサイドに腰掛けると、くすりと頬笑む。その飄々とした態度と、無駄に近い距離感に青年は若干後ずさるが、「あなた、危ない所でしたよ? 肝試しは中止に為て、お化け屋敷に行く方がいいと思います」そう事情を知らされると、無碍にはできない。
「人には恐怖などより、より重要な感情があるかと。どうぞ、お忘れなきよう」
「噂話を確かめるのも、程ほどになさってくださいませね? 今回のように、本物よりも質が悪いデウスエクスが潜んでいる事もあるのですから」
さらに、ヒルメルとレーヴにまでそう言われると、青年は素直に「すんませんでした」と頭を下げるしかない。
「気分はどうですか?」
「一先ず、問題はなさそうだな」
軽い小言が済んだ所で、静馬と柚木が青年の状態を調べ、問題ない事を確認する。
「駐車場の損傷は綺麗にしておきました。彼の様子どうですか?」
「お帰り~♪ 彼は大丈夫そうだよ、元気元気!」
と、そこに外をヒールしていたレクシアも合流する。ターニャに心配ない事を伝えられ、ホッと胸を撫で下ろしている。
「そ、そろそろ行きましょう?」
となれば、長居する必要もない、レクシアが、帰りの支度を調えていると。
「あ、そうだ」
青年が、何か思いついたと言わんばかりに声を上げ、
「君、お化け屋敷する事になったら、協力してくれない?」
そうリコリスに頼んだ。抱いた第一印象から、お化け役を期待しているようだ。さすが大学生。転んでもただでは起きない。
無論、リコリスの返答がノーだったのは、言うまでもない事。
そんな中、宴は一人、腕まくりをしていた。
「霊も居なくはないみたいですから」
本業で、もう一仕事しなければならないようだ。
作者:ハル |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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