らぶこめ☆

作者:七凪臣

●みわくのかじつにはあらがえません。
 『爆殖核爆砕戦』が終結して、早数か月。
 大阪城は緑に覆い尽くされているが、人間とは『慣れる』生き物である。
 というわけで。
 攻性植物の動きがなかったお陰で、近隣住民たちはすっかりちょっと前までの『異様』にすっかり馴染んでしまっていた。
 どれくらいかっていうと。早朝ジョギングだって近辺で楽しめちゃうくらい。
 この日も、夜が明けきるか否かくらいの時間帯。同じコースを走るせいで顔見知りになった零次(ななじゅうにさい)と征(高校二年生)の二人は、爽やかな汗を流していた――の、だけれども。
 不意に耳に忍び入った甘い音色に誘われコースを外れた零次と柾は、思わぬ事態に遭遇して頬を紅潮させる羽目になっていた。
 だって彼らの視線の先には、ほぼほぼ一糸纏わぬ女性の姿。ちなみに彼女(?)、フルーツがたわわに実った一本の木と一体化してるような感じなのだけど。二人にとって、そこは大した問題ではないっぽい。
 だって。
 たゆん。
 そう聞こえそうなくらいの魅惑的な二つの膨らみが、二人を誘っているのだ。たゆん。たゆん。
「あ……あ、……あ」
 温かく、柔らそうな魔性の双丘に、まずは耐性(何の)の低い柾がふらふら。
「ちょっ、柾くん!」
 年長者として、立派な大人として。零次は踏ん張った。しかーっし、たゆんたゆんなお胸にぱふんと顔を埋めた柾の、「やわらか……っ」という呟きを聞きつけたが最後。
「仕方なかろう! 男だしぃ」
 柾を天国に連れていってるのとは色んな意味で(色んな意味で!)小振りなもう一人の女性っぽいのに飛びついた。

 結果。
 零次と柾は、命やら何やら(何やら)を吸い尽くされ、「やだ、柾くんったら不潔! 変態!」とか「年甲斐もなくはしゃぐからですよ、あなた」とゆーよーな、批難だったり冷めきった眼差しを向けられるような格好で、あの世に召されてしまったのである。悲劇!

●だって、賢者じゃないんだもの。
 『爆殖核爆砕戦』後、大阪城に残った攻性植物達の調査を行っていたミルラ・コンミフォラらが新たな情報を得た。大阪城付近の雑木林などで男性を魅了する『たわわに実った果実』的な攻性植物、バナナイーターが出現していると言うのだ。
「バナナイーターは15歳以上の男性が近付くと姿を現し、その果実の魅力で魅了し、絞り尽くして殺害することでグラビティ・チェインを奪うようです。皆さんには、誘惑されそうになっている方を救う為にも、このバナナイーターを撃破して頂きたいと思います」
 どことなーく普段より棒読みちっくにリザベッタ・オーバーロード(ヘリオライダー・en0064)は手元の資料を読み上げると、思い出したように一つの懸念を付け足す。
 こうして奪ったグラビティ・チェインを用い、攻性植物たちは新たな作戦を行うつもりなのかもしれない、と。
 何はともあれ、このバナナイーターは倒さねばならない。
 幸いな事に、今回の被害者である零次と柾がバナナイーターに遭遇する前にケルベロス達は現地に赴く事が出来る。
 ただし出現させるには囮が必要。ケルベロス達のチーム内に該当する性別・年齢の者がいたら、その者が囮を担えるが、いなかった時には零次か柾が誘惑されるのを待つしかない。
「バナナイーターは大阪城から地下茎を通じて送られているようなので、囮の人数に応じた数が出現するようです。けれど、最初の一体以外は戦闘力は低いと思われるので、ある程度の数を出してから一気に殲滅する事も難しくはありません」
 されど、注意すべき点もある。バナナイーターは出現してから3分以内に攻撃を仕掛けてしまうと、地下茎を通ってすぐに撤退してしまうのだ。
「そういうわけですので。囮になった方には3分ほど、バナナイーターと接触して頂く必要があります。あちらもこの3分間は、対象男性の誘惑に専念し攻撃はしてきません。一般の方が囮となっても、すぐに死んでしまうことはないはずです」
 またしても棒読みちっくだが、そこはこの際、スルーするとして(リザベッタ少年、難しいお年頃らしい)。
 囮役の男性は、3分耐えろと。何だったら、誘惑されてるようなフリをしろと。周囲もじっとそれを見守れと。状況によってはとんだ羞恥プレイだが、我慢せよと。
 因みにバナナイーター。実ってる南国フルーツちっくなものを捥いで投げたり、マシュマロボディでハグアタックしたり、甘くて熱い吐息で誘惑してきたりするそうな。
「とっ、とにもかくにも。放ってはおけない相手ですから。全ては皆さんにお任せしますので。どうかよろしくおねがいしますっ」


参加者
春日・いぶき(遊具箱・e00678)
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)
日色・耶花(くちなし・e02245)
善田・万造(命のもとから鉄拳治療・e11405)
茶野・市松(ワズライ・e12278)
幽川・彗星(剣禅一如・e13276)
ジン・エリクシア(ドワーフの医者・e33757)

■リプレイ

 修行一筋61年。素人様とも玄人様とも、女性に纏わるアレソレは身綺麗なもので。
 今じゃすっかり、チェリーじいじの称号を(哀しいかな)我が物とし。
(「これはわしの人生最大の難敵が現れたと言っても過言じゃないじゃろう……」)
 そんな善田・万造(命のもとから鉄拳治療・e11405)のドキドキを他所に、
「ここから向こうはケルベロスの領分ですので」
 今日も黒一色(とみせかけ、ホントはちょい違う)の施術黒衣を隙なく纏った春日・いぶき(遊具箱・e00678)は和やかにニコリ。
「大丈夫、ケルベロス(男児)が囮になるんですって!」
「え」
「あ、はい」
 そして早朝の眠気を吹き飛ばすような日色・耶花(くちなし・e02245)の朗らかな笑顔に、ジョギングの足を止めた零次と柾は何となく頷く。でもって。耶花に瞬間チラ見されたイカした人派ドラゴニアンの茶野・市松(ワズライ・e12278)はびくぅっ(詳細は後程☆)。
「悪ィな、せめて二人の分も楽……いや二人がまた安全にジョギング楽しめるよーに頑張ってくるからな!」
 鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)氏、明らかに取り繕った風。
「零次殿、わし等に任せて避難して下され」
 でも謎の気合いに満ちた万造の最後の一押しに、イマイチ現状を理解してない感じの二人は、雅貴が放った殺気(!)の効果もあってか「分かりました」と素直に踵を返し。小さくなる背中に、いぶきはまたニコリ。
「さてさて、初夏の実りを収穫しに参りましょうか」

●へぶん
「おわぁ~ここどこだろう」
 色付き始めた空の端。地上へ齎される光は、未だ頼りなく。鬱蒼とした木々の茂みは、人を異界へ手招くよう――なんて情景描写はさておいて。普段より幾らか幼い容貌になった幽川・彗星(剣禅一如・e13276)は、迷い人よろしく周囲を見渡す。
 さて、ここで問題です。どうして彗星はいつもより幼くなってるんでしょうか?
 答は簡単。エイティーン発動してるからです。だって18歳って言えば、大人と子供の境。絶妙に成熟し、それでいてちょーっとでも気を緩めようもんなら、頭の中が桃色(敢えてぼかしていくスタイル)に染まるお年頃! むしろそれしか考えてな以下略。
 まさに今回の囮としてはうってつけ! そしてそんな彗星を誘惑しようと、緑の美女はさくっと現れた。
『おいでなさい?』
「わ、ちょ……裸!?」
 甘い囁きに、身を竦ませた若彗星、これみよがしに狼狽える。彼は懸命に視線を逸らした。が、足は裸体へ引き寄せられ、堪らず手が伸びる。しかし必死に堪えた。が逸らした筈の視線はいつの間にやらガン見モード。かと思いきや、また目が泳ぐ。
 初々しきかな、未経験(何の)者の葛藤(つまりヘタレ)。
「……あ」
 されど抵抗空しく、若彗星は女の腕につかまり――ぱふん。ふよん。あ、ナニコレ。極楽。
 かくて柔らかいお胸に顔を埋めプルプルした若彗星は、夢見心地(演技)で同士を誘う。
「お、おーいみんな! 凄いよこれ!」

(「男には毒すぎるデウスエクスだなぁ……まぁ、俺様は医者で一応女の裸にも慣れてるし大丈夫だけどなぁ!」)
 この世の物とは思えぬ温もりに頬をサンドされ、ジン・エリクシア(ドワーフの医者・e33757)は半端ない弾力に圧され苦しい息を吐く。
 種族的に子供扱いされたらどうしよう(ブチ切れるだけだが)という懸念は、無事に払拭されるどころか、むしろ甲斐甲斐しい抱擁がジンを歓迎。
「お、俺様は医者……」
 もごもご抗っても、頬をすりすりしちゃうのは止められない。医者だけど、興味ないとは一言も言ってないし。ともかく漂う熟れた果実の甘い香りも相俟って、此処は地上のふわとろヘヴン。
 先陣切った彗星に続き、ケルベロス男児は我が身を投げ出し。気付けば彼らは四体のバナナイーターと濃密ピンクタイム。
「言っとくが、オレは生半可な手じゃ落ちないぜ?」
 少し小振りのお胸ちゃんレディを顎クイして雅貴はニヒルに笑む――けど、鼻の下が若干伸びてるのは誤魔化せない。
 勇者を冷静に見守る賢者もいいかなって思いはした。だが、雅貴だって男廃れさせたくないし。あと、悪友とか妹分とか姉貴分(男)に生暖かい視線で送り出されちゃったから、もう怖いもんなんてないし。
「この程度じゃダメだなー。もっと愉しませてよ?」
「……どうせなら、本気出して誘惑して下さいね?」
 ホントは清楚系が好きらしい雅貴がマシュマロボディに包まれる頃、同じ個体をいぶきは背後から掻き抱いた。振り仰ぐ瞳はとろりと溶け、淫靡な眼差しが『男』を誘う。圧倒的な魅了力。しかし、いぶきだってサキュバスの端くれ。
「でないと僕、周りの果物の方が気になってしまいますよ……?」
 やれるもんならやってみろの気概で挑むと、雅貴に胸を預けたままのバナナイーターは手袋さえ外さぬいぶきにムキになったように、空いた腕と足先を明らかな意図をもって絡めてくる――と、いい感じにいってはみたが。
(「快楽エネルギー摂り放題じゃないですかやだー」)
 いぶきの本音は、コレだ。
(「お仕事ですもんね、お仕事ですから仕方ありませんよね合法ですよね」)
 棒読み内心はさておき、男児たちは其々に我儘ボディを堪能している――弱冠一名、市松を除き。
「わ、ワー……お姉さんステキー。スッゲーカワイイネー、イマカラオチャシヨウゼー」
 市松、明らかに挙動不審。つゆ(市松の翼猫)に呆れられても気にしない覚悟で太腿お胸ダブルサンドを受けてはいるが、額に浮くのは冷や汗。
(「目の前に乳があんのに全然嬉しくねぇ……! 寧ろこの乳も凶器に変貌するんじゃねぇか……?」)
 市松が耶花をこの世で一番恐れている。そして耶花の豊満なおっぱいのお陰で、市松にとってきょぬー女性のお胸は凶器になるって信じてる(おっぱいロケットげふごふ)。
「キレイスギテ、キンチョウスルー」
(「やべぇ……死ぬ(まがお)。これも全部ロケットのせい……!」)
 そんな恨み言(?)を向けられたロケット氏こと、耶花と言えば。
「まー楽しいー」
 つゆとシャーマンズゴーストのカジテツに懐かれ、物陰で男児らの奮戦ぶりをのんびり堪能してた。
「そういえばカジテツ、お胸はお好きだったのかしら?」
 主からの思わぬ問いに、神霊の頬がぽぽっと染まったり何だったり。その様子と桃色ゾーンを交互に見遣り、エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)はことりと首を傾げる。
「みんな、楽しそう……? そんなにいいことなんですか……?」
 齢十二に加え過去の記憶も薄いエルスは、こっち(どっち)方面の知識はあまりなく。の割りに、好奇心旺盛なもんだから。
「うわああれは、なにをしてるの……?」
 素直に耶花に教えを乞うた。
「あれはね、正しく意思疎通を図るためのコミュニケーションよ。嘘だって見抜けちゃうのー」
「すごい……!」
 耶花、ある意味正しく答えた。そしてエルス、拡大解釈で信じた。そしてジンの連れである白衣の神霊、トーリは懸命に顔を覆ってた。

●断っ
「こ、この様な、子供騙しの誘惑に屈するわしでは無いのじゃ!」
 ふら~。ぱふぱふ。ぷにぷに、つんっ。
「平静にならねばっ!! 心頭滅却……乳桃折角……乳と――」
 おーっと、万造。そこまでだ! な、声が聞こえたかどうかは知らぬが。可愛い愛娘(義理?)に嫌われぬ為、そして大人として必死に耐えようとしていた万造氏。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前……臨・乳・桃・者・快・珍・裂・前・立……乳尻太ももフォーッ!!」
 余裕で誘惑されてた。
 けれど運命は残酷なもの。十二時の鐘ならぬ、けたたましいアラームがくんずほくれつ極楽タイムに終わりを告げる。
「はいはいー、男児の皆さんー。ちゃんと聞いてね? 終わりよ、終わり」
 アラームをセットしていた耶花、パンパン手を叩いて物陰から姿を現す。
「ほら、貴方達がバナナイーターから離れないと攻撃し辛いしぃ」
 え、し辛いだけ!? というツッコミはさておき。耶花は臨戦態勢に移行する。
 けど。
「……ね、あの幸せな世界に邪魔入れて、本当にいいの?」
 純粋エルスちゃん、可愛らしくまた首を傾げてた。うん、男児たちがよっぽど幸せそうに見えたんだねー。

●闘!
「どうやら無事に時間を稼げたようじゃのぅ。若き日、今では漢だけが集う某塾の塾長となった漢と競って鍛えたこの股間、筋肉の様に自在に操り、強烈な珍立て伏せも可能! たとえお主の両乳で我が両手の自由が奪われようとも、無敵の珍力で、この桃源郷……もとい、苦境から脱出するのじゃ! ぬぅおぉぉ~~!! とーう♪」
 長尺台詞を一気に吐き出し、万造パーフェクトボディを発動。
「ゼンダマンZo只今参上!」
 精一杯の努力でバナナイーターから身を引き剥がすと、景品で貰った手拭でほっ被りして正義の守り神(自称)へ、いざ変身!
「さぁ、ここから本番じゃ! ……あ、いや、その本番では無いのじゃっ!!」
「耶花様、本番って何ですか? あと、チェリーじぃじって何ですか?」
「エルスちゃん、それはね~」
 以下自主規制な愉快なやり取りを経て、ケルベロス達はバナナイーター四体と相対す。今度は、戯れる為ではなく、倒す為に(勿体ないとか思ってないヨ)!

「攻守交替、手玉に取られてたのはどっちか思い知らせてやる!」
 かっこよく言い放つ雅貴の口角はちょっとぴくぴく痙攣。顔が緩みそうになるのを堪えるのって、実はとっても大変なの。ともあれ、気合一閃。雷纏し突撃に、さっきまでご一緒してた小振りちゃんが土塊と化す。
「三分と掛からなかったわね、仕事が早くて助かるわー」
 戯れ男児らを観察ついで、最初に出現した一体をしっかりマークしていた耶花。仲間があっと言う間に弱々三体を片付けたのに感嘆し、抑えとして対峙していた強者と改めて向かい合う。
「逃げたければどうぞ、動いてもいいわよ」
 人様の物を盗ったらば、捕まるのは世の倣い。例えそれがハートでも。逃げる者を(本能的に)追う気質の耶花、鋭い弾丸を狙いすまして撃ち放ち――。
「そういえば、この子たちバナナイーターって言うけど。バナナ味なわけではないのよね? ……っていうか、私より大きいとかないわよね? カタチでも負けてないわよ。ねぇ、市松くんもそう思うでしょう?」
(「ひぃっ」)
「……ねぇ?」
 残念美女(本人談。だってセクシーOLなのに、彼氏いない歴は4年に突入しちゃったし。けど、恋愛力は無くとも外見には自信あるんだ)、市松に同意を求めた。市松、さっきまで以上にキョドった。
「え、あ、え、あ――えぇい、これでも喰らえっ」
 そして初手でばら撒いたカリカリラーメンもしゃって上げた命中率を披露するかの如く、攻撃に逃げた(逃げた)。だって続いて攻撃を仕掛けるつゆもガンテツも耶花シンパ。市松に味方はいない。
 されど複雑な男心を理解するには未だ未だ早いエルス、市松の動揺を違う風に勘違い。
(「男の方って、やっぱり大きい方が好ましいのでしょうか……」)
 大きいのが好きと宣言してた恋る相手を思い出し、少女の心にぽっと小さな炎が灯る。
 確かに、むいんむいんは羨ましい(エルス、自分を見る。目を逸らす)。
「結局、男の人ってー!」
 だいじょーぶ、だいじょーぶ。育つのはこれからだから。華奢だけど出るとこ出てる人いるから。そんな慰めもエルスの耳には今は届かず。少女はやや八つ当たり気味にドラゴンの幻に炎を吐かせた。えぇい、焼きバナナにでもなってしまえ。
 そしてそんなエルスの様子に、いぶきは慈愛のニコニコ。共に癒しを担う仲だが、単体攻撃ばかりの敵なお陰で、回復はいぶき一人で超余裕。敵が盾役である市松ばっかり狙ってるのもケルベロス達には幸いしてる(多分、反応が面白いから)。
「あーマジ虫唾虫唾!」
 ぴちぴちの18歳から大人の風情もやや身に着けた23歳に戻った彗星、さっきまでの貪欲さを別方向へ転じ、道化じみた大仰さで刃を翳す。
「ぶっ殺しまーす!」
 冷笑は、裡なる怒りの顕れ。激おこ彗星、レッツ突撃。
「喰えない果実は収穫してゴミ箱へに……ってね」
 クソ不味いデウスエクスの魂は、幾重にも切り刻んで血みどろに。人を弄ぶ事が好きな男は、紅に舞い。
「ふぉっふぉっふぉ、もう誘惑なんぞされませんのじゃ!」
 万造改めゼンダマンZoはスッキリ爽やか笑顔で、二本の雷杖を魅惑のボディに叩きつけた。
 迸る雷。それは、次手に控えたジンが繰る力と同じ属性。
「電気ショックの時間だぜぇ……ひひっ!」
 前髪で厚く隠した目の代わり、口元に皮肉な笑みを浮かべ、白衣を翻したジンは電気を帯びさせた両手で焦げバナナに触れる。
「……!」
 弾ける何かに、たわわなたゆんたゆんがぶるんぶるん。その揺れは、真っ黒になりかけてても煽情的で。
「行け、トーリ!」
 ジンに命じられたトーリは、やっぱり顔を覆ったまま炎を放った。

●お終い
 そろそろ頃合いですね、と攻撃に転じたいぶきに負けじとゼンダマンZoも張り切りあたーっく。ジンも医者らしく、まるでオペのようにチェーンソー剣を振るう。
 気付くと、敵は丸焦げ冷凍バナナになっていた。だもんで、一生懸命市松をハグろうとしたけど、途中で同化した樹ごとすっ転ぶ。
『酷い、酷いわ……』
「いい思い、させてくれてありがとな?」
 それっぽく(あくまで演技と主張します)敵を睥睨し、雅貴は終いを宣告する。
「――オヤスミ」
 詠唱は囁き一つ。音も無く死角へ回った男は、未練ごとバナナイーターを断つ。
「やっと終わりだぜっ」
「ねぇねぇ、だからさっきの答えは? ねぇ、答えは?」
 迫る耶花を必死に振り払い、市松は綺羅星の蹴りを見舞い。それでも尚、追う耶花はついでとばかりに機械腕を展開してデウスエクスをぶん殴り。其々のサーヴァント達は耶花に付き従って行動し(続・市松孤立無援)。
「彗星様」
 もにょり乍らも冷静さを欠かさぬエルスは、幾度目かのアイスエイジの後に、次こそ終焉の一手と確信して彗星の名を呼んだ。
 果たして、その読みは正しく。
「先の先じゃ甘すぎる。歪めて戻して……首を刎ねるッ!!」
 ――殺セ殺セ殺セェッ!!
 甘美な殺意を吼え、彗星は解放した剣鬼の霊力によってバナナイーターの命脈を完全に断った。

「恐ろしい敵だったのじゃ……」
「ま、これもシゴトだしな」
 万感籠った万造の呟きと雅貴の建前という正義に、市松を除く男児たちは頷く(市松氏は耶花嬢から逃げるべく脱兎。当然、耶花は追った)(あと、エルスは「やっぱり、育たないと……?」と難しいお年頃らしく首を捻ってた)。
 世界は、ケルベロスらの手によって平和な朝を迎える。
 ありがとう、ケルベロス!
 君たちの勇者っぷりは忘れない!
「ごちそうさまでした☆」
 そしていぶきの満腹ぶりも(あれ、これ。いぶきの一人勝ちじゃね?)。

作者:七凪臣 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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