美味しい和菓子を作りましょ!

作者:なちゅい

●和菓子職人の業
 薄暗い部屋の一室。
 電気もつけずにいるその場所で、道化師風の姿をした螺旋忍軍の女が傘を持つサーカス団員のような姿の女性を従えていた。その2人の頭には、螺旋模様の仮面が装着されている。
「あなた達に使命を与えます」
 指示する女の名は、ミス・バタフライ。彼女が出す指令はなんとも珍妙なものだった。
「この町に、和菓子職人がいるようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認。可能ならば習得した後、殺害しなさい」
 また、グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないと、ミス・バタフライは配下に告げた。
「……ミス・バタフライのおおせのままに」
 それを聞いた女性配下は、上司の思惑がいまいち理解できぬ様子である。
「その任務にどういった意図があるかは図りかねますが……、これも地球の支配権を大きく揺るがす一手となるのでしょう」
 最善を尽くしてまいりますと告げた女性配下は立ち上がり、傘を持つ女性と共にこの場から姿を消したのだった。

 依頼を求めてヘリポートに向かうケルベロス。
 その途中で、ロビーでお菓子を食べているリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)を発見し、声をかける。
「あ、早いね」
 至福の表情でリーゼリットが食べているのは、こしあんのお饅頭。それを熱いお茶と一緒にいただいている。
「そういえば、和菓子職人さんの繊細な業が螺旋忍軍に狙われているとか……」
 集まるケルベロスの中から、レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)が声を上げると、リーゼリットはうんと頷き、お茶をすすってから説明を始める。
 この敵が計画する事件は、直接的には大した事は無い。だが、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないという厄介な事件だ。
「螺旋忍軍は和菓子職人の仕事情報を得た後、その職人を殺そうと動くようだね」
 この事件を阻止しないと、『風が吹けば桶屋が儲かる』といった具合にケルベロスに不利な状況が生まれる可能性が高い。直接的な関係がない事柄であっても、何がどこで繋がって影響を及ぼすかは分からないのだ。
「螺旋忍軍の動きは、可能な限り止めておきたいね。何より、デウスエクスに一般人が狙われる状況を見過ごすわけには行かないよ」
 目的は2つ。この職人の保護と、螺旋忍軍の撃破だ。
 螺旋忍軍は和菓子職人宅を訪問するよう予見されているが、今回はそれが早かったこともあり、事件の3日前から準備ができる。
「心苦しいけれど、事前避難はNGだよ。敵が別の職人を狙って被害を防ぐことが出来なくなるからね」
 対策としては、狙われた和菓子職人と接触、事情を話して和菓子の作り方を教えてもらうなどが考えられる。そうすれば、螺旋忍軍の狙いをケルベロスへと向けられるかもしれない。
「和菓子づくりを3日で極めるのは難しいけれど……、一つに絞って学べば、職人に認めてもらえるかもしれないね」
 それが難しいと言うことであれば、事件当日は職人に囮となってもらう必要もある。それを踏まえて作戦は練っておきたい。
 次に、現れる螺旋忍軍だが、2人1組で現れる。
「1人は道化師風の衣装を纏った女性、もう1人は、傘を持ったサーカス団員の女性だよ」
 ミス・バタフライ配下の女性道化師は、フープ、ナイフ、カードと攻撃方法を使い分ける。女性団員は手にする傘でグラビティを使って道化師をフォローしてくるようだ。
「場所は、京都府某所の和菓子職人の自宅だね」
 個人経営の店らしく、自宅と店、工場(こうば)を兼用している。饅頭をメインに、砂糖菓子や羊羹を販売する店だ。
 工場は小規模なものの為、敵と戦いを考えるならば相手を別の場所に誘導するか、職人にヒールグラビティでの修復を行うことについて予め説明した上で、工場内で戦うことになるだろう。
「基本的には、職人を護りながら戦うと思うのだけれど……」
 状況によっては、戦況は大きく変わる。職人に認めてもらい、自分達が囮となれるのであれば、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となる。
「上手くいけば、2体の螺旋忍軍を分断するとか……、一方的に先制攻撃ができるかもしれないね」
 囮となるのが難しければ、予め和菓子職人を護る作戦を行う方が無難かもしれないので、どういった作戦をとるかは仲間内で作戦を詰めておきたい。
 説明を終えたリーゼリットは饅頭を食べ終え、お茶を飲み干してからさらに続ける。
「和菓子作りは本格的に行うと、大変って聞くけれど……」
 作戦の兼ね合いもあるが、任務の為に一生懸命覚えるもよし、経験だと楽しんで学ぶもよし。螺旋忍軍と戦う作戦もそうだが、3日間をどう過ごすかもじっくり考えたい。有意義に過ごすか、無為に過ごすかはメンバー次第だ。
「それでは、よろしく頼んだよ」
 立ち上がったリーゼリットはにっこりと微笑い、ヘリポートへと向かっていくのだった。


参加者
パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)
泉本・メイ(待宵の花・e00954)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)
玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)
レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)
咲宮・春乃(星芒・e22063)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)

■リプレイ

●修行の前に
 京都府某所を歩くケルベロス一行。
 彼らは螺旋忍軍に狙われた和菓子職人を守る為、その職人を訪ねに向かう。
「おいしい和菓子の技術は、あたし達の手で守らなきゃ!」
 この依頼に意気込む、咲宮・春乃(星芒・e22063)。
 周囲を見回せば、師団、旅団の仲間や、依頼での顔見知りばかりである。もちろん、唯一初対面の狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)にも挨拶を忘れない。
「和菓子作りですか……」
 普段は戦ってばかりだという、玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)。
「こういうこととは縁がないのですが、設楽さんの安全の為にも全力で臨みます……!」
「美味しい和菓子の敵なんて許せないっす!! 楓さんが絶対止めるっす!!」
 ややおどおどと彼が頼りなさげに語ると、楓は笑顔で叫ぶ。
「はい、繊細な和の世界を守りましょうね」
 レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)は柔和な笑みを浮かべ、職人を守りきろうと仲間達に促すのだった。

●和菓子を作ろう!
 ケルベロス一行は和菓子職人、設楽・隆夫の元を訪ねる。
「ほんなら、修行しましょか」
 事情を聞いた職人は、二つ返事で了承してくれた。
「せやけど、指導はしっかり行いまっせ」
 ケルベロスとはいえ、自身の見習いを名乗らせるならば、それなりの技術がないと困る。職人としての彼の矜持だ。
 メンバー達もまたそれを受け入れ、3日間の修行を始めるのである。

 とはいえ、和菓子職人の業を極めるのに、3日はさすがに短すぎる。
「1つに絞って、皆で修行なのだ! 最高に美味しい練りきりを作りたい♪」
 お菓子大好きなパティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)が叫ぶように、練りきりと呼ばれる和菓子だけを集中して覚えることとし、その製造工程を教えてもらう。
 それは、練りきりあん。白あんを主とした食材で作られた、見た目を楽しませる装飾を施した和菓子だ。
 まずは、元となる材料の作り方。白玉粉に水と上白糖を混ぜて火をかけて練り、求肥をつくる。高級品は材料がよいものとなるが、これが和菓子作りの基本だ。
 特訓好きな部分もあり、神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)は真面目な顔でそれらを見つめる。レクト、ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)もまめにメモを取っていた。
 そして、白あんに求肥を入れながら加熱。販売するならば、量が要求され、製造過程は力作業になることもある。
 それまでノートに工程を書き記していた泉本・メイ(待宵の花・e00954)も、礼儀正しく職人と接しつつ実践する。事前に予習してはいたが、やはり見るとやるとでは大違いだ。
「これ、すごく難しいね!?」
 春乃とて、普段から料理、御菓子作りは完璧にできてはいるが、業務用の量に苦戦していたようだ。
 その上で、型に入れたり、へらで形作ったりして食用色素で彩色して仕上げていた。まずは、職人が仕上げる花の形の練り切りを皆で見つめる。
 そんな中で、甘いものが大好きな楓や、うまく作ることができずにブーたれるパティががつまみ食い。ギロリと職人に睨まれる一幕も。
 しばし、職人に教わりながら、工程をなぞるメンバー達。
 その結果、大量の練りきりが出来ると、職人は仕上げ作業をケルベロス達に行わせる。
 レクトはその実践の間に近隣の地図も確認し、螺旋忍軍との戦闘にも備えていた。
 休憩中はだらけるレクトだが、作業となればビハインドのイードが見守る中、ストイックに練りきり製作に当たる。
 集中力は普段から鍛えてはいるものの……。やはり、慣れない作業で不出来な一品が出来上がる。彼はそれをぼんやりしていたラグナシセロの口へと突っ込んだ。
 少しむせるラグナシセロだったが、友人であり、頼れる兄貴分であるレクトの作るそれが思った以上に美味しい事に気づく。
(「さすが、レクト様ですね」)
 それをもぐもぐと食べつつ、ラグナシセロは職人が作る華やかな練りきりに目を向ける。
「たくさん種類があって、綺麗ですねぇ……!」
 形も色も豊富。目でも舌でも楽しめる素敵な文化だと、ヴァルキュリアの彼は絶賛し、負けないよう頑張ろうと意気込む。
「一生懸命、技術を覚えなきゃ!」
 泣き言などは言わない。春乃は気合を入れて、修行に臨んでいた。
 仲間と一緒ならば、きっとなんとかなる。そう信じて。

 その後、メンバー達は職人の工場で、練りきりの製作を続ける。
 たった3日だが、晟は丹念に清掃や道具の手入れも行い、睡眠時間を削って練習を繰り返す。
 春乃は時に、教える立場で仲間とコツやポイントを教え合う。ユウマもなかなか慣れないながらも仲間と技術の共有を行い、できるだけ早い段階での習熟を目指す。そうして、楽しく修行に取り組んでいたようだ。
 楓も張り切って作業にあたり、美味しい練りきりを作ろうと奮起する。やや天然な彼女は要領得ずに作ってはいたが、持ち前の器用さで上手く仕上げていた。
 こちらも、手先が器用と自負するパティ。作業工程はボクスドラゴンにお願いし、パティ自身は造形を行って職人と同様の花の形に仕上げて見せる。挽回できたと彼女は満面の笑みを浮かべていた。
 その最中、春乃はそっとレクトの作る練りきりを眺める。彼は作っていたのは華やかな桜だ。これもメリハリをつけて集中した成果だ。
 ラグナシセロも負けぬようにと桜を象る。初日に比べれば、格段に進歩し、店に並べてもよいレベルになってきていた。
 さらに、春乃はメイに視線をやると。
「こんな感じでどうかな?」
 メイは少し複雑な花にチャレンジしていた。これからの季節の花をと作っていくが、色合い、仕上げの細かい部分に彼女も苦戦している。
 途中、職人に怒られ、悩んでいたメイであったが、小さな手で一生懸命製作に励み……。最終日には綺麗な紫陽花の形の練り切りを作っていた。職人に褒められ、彼女は満面の笑みを浮かべていたようだ。
 皆と一緒の作戦に、春乃は楽しそうに笑って出来上がった練り切りをトレイに乗せる。職人はケルベロス達の真摯な姿に、腕組みしながら唸っていた。

●忍軍を連れ出して……
 さすがに、職人の技を3日で習得などできるはずもないが、その真摯な姿勢を見た職人は、晟、メイ、レクト、春乃、ラグナシセロと、半数以上のメンバーのひたむきな姿勢に、設楽も舌を巻いていたようだ。
 そうして、職人の見習いとして囮役となったメンバー達。職人を予め避難させ、彼らは工場で待機する。
 程なく、訪問してきた螺旋忍軍の女性2人。道化師クラッサと、傘を手にするサーカス団員の姿をしたライザだ。
「おこしやす」
 応対したのは、白い付け髭をし、熟練の職人らしく見せた晟。彼は職人、設楽の口調を意識して振る舞う。
「我々の許可が無いと、先生も会ってくれません」
 ラグナシセロが忍軍らにそう告げ、早速和菓子製作工程を教えようとする。
「それなら、材料が必要だね!」
 春乃が買い出しに出かけるよう誘導し、囮メンバー全員で女性らを工場から連れ出す。
(「ふむ、慣れない演技は些か緊張するな……」)
 しかしながら、蒼いドラゴニアンの和菓子職人ということで、敵も警戒しているようにも見える。そこは、レクトがフォローを入れ、この3日で得た技術を小出しに教えていた。
 予め人気のない空き地へと忍軍を誘導した一行。彼女達はすぐに、木陰に隠れていたケルベロス達の姿に気づく。
 姿を現すメンバー達。前髪で隠れた左目を地獄の炎で燃え上がらせたユウマは普段とは違い、冷静な態度で鉄塊剣「エリミネーター」を携えて敵へと突撃していった。
「偽物ですか……!」
 構えを取るクラッサがすぐさま攻撃に出る。抜いた数本のナイフをジャグリングさせながら、晟へと切りかかってきた。
 それをボクスドラゴン、ラグナルが受け止める横で、晟が思う。
「和菓子の技術が、戦闘そのものに役に立つとは思えんのだがな」
 螺旋忍軍にとって必要な技術とは。蒼竜之戟【漣】の切っ先に稲妻を纏わせた彼が武器を突き出すと、ライザが身を手にしてクラッサを守る。
 盾役となる相手はかなり面倒だ。ラグナシセロはそいつを目下の討伐対象と見なしつつ、前に立つ仲間に光り輝くオウガ粒子を飛ばしていく。
 その間に、ライザも傘を使って淡々と攻撃を仕掛けてきた。盾役のカバーが間に合わず、楓が傘を乱れ突きを受けることとなる。
「まずは、攻撃っす!」
 戦い好きな楓は怪我を負いながらも楽しそうに飛び出し、「楓さん特製ドデカ注射器」に雷の霊力を纏わせ、ライザへと突き出す。
「すごく、頑張って習ったんだよ」
 メイも前線に飛び出し、ちょこまかと動いて敵を翻弄する。
 たった3日とはいえ、上手く形にできない練りきりに彼女は凄く思い悩んだ。辛くともやり通し、ようやく今朝、思った一品を完成させることが出来たのだ。
「簡単に習得なんて出来ないし、そんな野望は駄目なんだよ」
 メイは仲間に合わせる形で槍を携え、ライザへと繰り出した。鮮烈なるその一撃はグラビティを伴い、敵の腰部を凍りつかせる。
 ビハインド、イードが交戦によって抉れた土砂に念を込めて投げ飛ばし、ライザの足を止め、レクトがハンマーを砲撃形態として砲弾を撃ち込む。
 敵の攻撃に備え、後方では春乃が地面に描いた守護星座を光らせ、仲間を援護する。ウイングキャットのみーちゃんも大きく背の翼を羽ばたかせた。
「基本は回復メインで動こうね」
 彼女はみーちゃんと一緒に、仲間の回復メインで動いていく。
 パティはボクスドラゴンのジャックに仲間のカバリングを任せ、自らは紙兵を撒き、仲間に支援を行う。
 前線では交戦が続く。ライザが閉じた傘の先端から眩い魔法光線を発射してくる。それをジャックが受け止めてくれたところで、ユウマが飛び込む。
「『身』頭滅却すれば、火もまた涼し。燃えるものが残らねば、熱さなど感じないだろう?」
 前線でクラッサの投げ飛ばすカードを鱗に突き刺しながらも、晟が口から蒼い炎を吐き出す。その息吹で火炎旋風を巻き起こし、ライザの体を焼き払う。
「畳みかけましょう……!」
 ユウマはそのタイミングを見定め、手にする大剣を叩き込む。狙うは敵の機動力に繋がる足。傘を持って宙を舞うライザを見ていたユウマは、その腕にも切りかかっていく。
「…………!」
 ライザは手から傘を零し、音を立てて崩れ落ちる。クラッサは戦場を駆け回りながらも、歯噛みして伸縮自在のフープをケルベロスへと投げ飛ばすのだった。

 クラッサは手ごわい相手だ。
 ただ、それは、ライザという相棒がいてこそ。独りとなれば、彼女の力は半減されたと言ってもよいだろう。
 縦横無尽に動いて攻撃してくるクラッサを、イードが敵を金縛りで縛り付けた。動きを鈍らせた敵へ、レクトが迫り、オウガメタルを纏わせた拳で殴りつけることで敵の服を破る。
「敵の攻撃、きます」
 彼の声に応じ、晟を始め、サーヴァント達が代わる代わる盾となり、クラッサを抑えていた。
 自身の専用術だと近場の仲間しか治せないと考えた春乃。彼女は大きく地獄となった天使の翼を広げ、オーロラの光を発して仲間の傷を癒す。
 回復をし続けていたパティはそれを見て、自身は前線メンバーと合わせて攻撃を仕掛ける。
「お菓子をくれぬなら……お主の魂、悪戯するのだ!」
 幻想となるパティの周囲がハロウィンのように見えて。同時に、クラッサの背後に大鎌を持ったジャック・オー・ランタンの幻影が現れ、その首を狙って刃を振り下ろす。
 クラッサはそれをすんでのところで避けるも、首の皮を裂かれて血を噴き出してしまう。
 彼女も易々と全ての攻撃を受けはせず、軽やかに戦場を待ってジャグリングさせたナイフで切りかかってくる。距離を取ったかと思えば、フープやカードを投げ飛ばし、正確に狙いを定めて投げ飛ばしてきた。
 仲間の感覚をオウガ粒子で高めたラグナシセロはダメージを稼ぐべく、バスターライフルから凍結光線を撃ち出す。果敢に攻撃する彼の一撃でクラッサの足が凍る。
 続けて、ユウマが素早く敵の腹へと蹴りを叩き込んだ。
「さすがですね……」
 痺れを走らせるクラッサは呻きながらもフープを飛ばす。それを受け止めた晟の武器に、フープは巻きついて収縮する。チェーンソーを振り回す彼はそのフープに邪魔され、思うように威力が出せずにいた。
 そばでは主と同じく蒼い竜のラグナルが大きく息を吸い込み、ブレスを吐きかける。それに合わせて魔女服を纏うジャックが封印箱に入り、クラッサに体当たりをぶちかます。
「その調子なのだ!」
 それに、パティは嬉しそうに声を上げた。
 いくら身のこなしに優れるクラッサでも、やはり多勢に無勢といったところ。全ての攻撃を避けるというわけには行かない。
「見え見えっす!」
 楽しそうに戦う楓は敵のナイフで傷つく傷も気にして、咎闇の鎌をクラッサへと振り下ろす。突き刺さる刃がその体力を奪い、彼女は自らの傷を塞ぐ。
 舌打ちして下がるクラッサに向け、メイは詠唱を始める。
「たくさんの星の中の、たったひとつのお星様」
 その言葉に応じて降り注ぐは一陣の流星。それは、いつか見た夜に見た記憶の通りに、眩い光と共にクラッサへと降っていく。
「ミス・バタフライ……。お、お許しを……」
 流星を頭上から受けたクラッサは意識を失い、そのまま地へと果ててしまったのだった。

●職人にお礼を
 螺旋忍軍を倒したメンバー達。
 上手く敵を誘導できたことで、戦場となった公園にラグナシセロが穏やかな微風を起こし、レクトが月の光で補修を行う。
「しかし、あれだな……。流石に眠いな」
 インソムニアで無効化していた眠気が襲ってきたのか、晟が顔に手を当てる。
「皆で和菓子いっぱい食べよー!」
 楓がそこで、嬉しそうに皆が作った練りきりを持ってきた。
 この3日、失敗作をずっと食べてきていたメンバー達だったが、依頼達成後に食べる和菓子は格別だ。ユウマも幸せそうに花の形の練りきりを口にしている。
「作った練りきりを家族や友達にもあげたいな」
 職人には及ばぬ出来ではあるが、皆で頑張って美味しく出来た一品。パティはいっぱい職人作の和菓子を土産にと購入していた。
 また、レクトは春の香り漂う桜の練りきりを。春乃は色鮮やかな花の形をした手作りの数々を土産にしようと考えている。
「折角なので、今後も少々お世話になって、饅頭や羊羹の作り方も教わりたいところだな」
「これからも沢山練習して、もっと上手に作りたいな」
 眠気を振り払い、晟は職人へと礼を述べる。メイも本当にありがとうございましたと頭を下げると、皆一様に頭を下げた。
「また、きぃや。……待っとるで」
 設楽は嬉しそうに手を振り、去り行くケルベロス達を見送るのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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