こらえきれないバナナの秘蜜

作者:塩田多弾砲

 大阪、大阪城。
 その付近。
 攻性植物に制圧されたが、とりたてて変化も、不具合も無いため、大阪府民はその状況に『慣れ』を覚えてしまった。
 普段通りの生活に戻りつつある中、彼……春日野駆は、不満を覚えていた。
『……きて……』
「はー、彼女欲しいなあ……」
『……きて……きて……』
「って、さっきから誰や……?」
 駆は、自分を呼ぶ声に導かれ……雑木林の奥へと歩を進めた。
 果物の芳香にも似た漂う匂いが、駆をどこか興奮させる。
「えーと……そこで何しとるん?」
 すぐに駆は、芳香の源、そして声の主を発見した。
 そこにあるは、大きな樹木。様々な果物がたわわに実り、その樹の幹には、
『裸の女性』がいた。
 緑色の長く、美しい髪を持つ彼女は、その肌も緑色がかかっていた。
 ほとんど裸で、形の良い双丘は丸く張りがあり、何より大きかった。駆にとって理想的な大きめのおっぱいが、まさにたわわに実っている。女性が身じろぎすると……、
『ぷるん』と音が聞こえた気がした。
 足先は樹と同化しているようだったが、駆は気付かなかった。彼の目はそこから上の、ふとももとお尻、くびれたお腹へと向けられていたからだ。
 彼女は駆へ、微笑みを向けていた。
『きて……』
 駆はその一言で理性が吹き飛び、駆け出し、双丘の谷間に飛び込んで顔をうずめた。心地良い柔らかな感触が、駆を包み込む。
 美女は、両腕で駆を優しく抱き留め、撫で、体を押し付ける。女体の感触が、駆の思考を痺れさせ……。
 それとともに、彼は感じ取った。自分の体内の何かが、徐々に『搾り取られていく』のを。
 数刻後。色々と『搾り取られた』駆の動かぬ体、下半身を露出させたままの干からびた身体が、ごみのように放り出される。
 樹の根が穴を掘ると、その死体を穴に入れ、土をかけ、埋めていく。それを見た『女性』は、満足げな笑みを浮かべていた。
「あー。ミルラ・コンミフォラさん達から、新たな情報が来ましたッス」
 ダンテが、君たちへと依頼内容を伝えている。
「あの『爆殖核爆砕戦』後に、大阪城に残った攻性植物たちの調査してたッスけど、それによると、大阪城周辺の雑木林で、新たな攻性植物を発見したそうなんス」
 その名も『バナナイーター』。
 その姿は、男性を魅了する『たわわに実った果実』的な姿。形の良い大きな胸と、くびれたお腹に形の良いお尻。きれいな太もも、すらりとした足。男性ならば魅了されずにはいられない、美しい裸の女性の姿をしている。
「っても、足首あたりは樹に『同化』してるんで、動けはしませんッスけどね。で、こいつは15歳以上の男が近寄ると現れて、木々の果実の力で魅了して、抱き付かせ、絞りつくして殺し、グラビティ・チェインを奪いつくしちまうって寸法ッス」
 そして、グラビティ・チェインを奪った攻性植物は、それを用い何か新たな作戦を行うつもりではないか……と。
「つーわけで、こいつを退治してほしいッス。で、作戦ッスが」
 皆は、春日野駆がこの攻性植物に出会う場所に、先回りする事が出来る。そのうえでこいつを出現させるためには『一般人をそのまま囮に』、または『一般人を避難させた後にケルベロスの男性が囮に』。この二つのどちらかが必要だという。
「バナナイーターは、今は攻性植物の拠点になってる大阪城から、地下茎を通じ送られてるようで、囮になった人数に応じて、数を増やして出現できるようッスね」
 つまりは、三人で囮になると、バナナイーターも三体出現する、というわけだ。もっとも、最初の一体以外は戦闘力が低いので、ある程度数を出させて一気に叩く事も可能らしい。
「それともう一つ。こいつが出てすぐに攻撃すると、出現した地下茎を通り、すぐ退散しちまうッスね。だから出会って三分間、奴とは戦闘せずに接触する必要があるッス」
 その三分の間、相手もまた攻撃はしない。その代わり……対象とした男を誘惑する行動をするため、それに耐える必要がある。それゆえに、一般人が囮となってもすぐに殺されるような事は無い。
 とはいえ、ケルベロスには誘惑の効果は無い。ゆえに囮をかって出る場合は、誘惑されている振りをする必要もあるかも……と、ダンテは付け加えた。
 そして、誘惑に耐えた後の戦闘に移行する場合。
 バナナイーターは、蔓草を伸ばして人間を絡みつかせ、自分の胸に顔を押し付けダメージを与える、『捕食形態』。
 その両胸を相手に向け、母乳を絞り出すように胸から破壊光線を放つ『光花形態』。
 そして、ダメージを受けたら、両胸を始めとする体のあちこちから果実を実らせ、それを食すことで癒す聖なる光を放つ『収穫形態』。
 これらを用いて、戦うだろうとの事。
「ま、こういう奴に殺されるのは、流石に犠牲者が忍びないんで、どうかやっつけて下さいッス。皆さん、よろしくッス」
 ダンテはそう言って、君たちに頭を下げた。


参加者
上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)
難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)
樋廻・朔(サキュバスの鹵獲術士・e11609)
アリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)
レオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059)
月守・黒花(黒薔薇の君・e35620)
アイシャ・イルハーム(純真無垢な黒き翼・e37080)
リオ・ドゥ(ジャンクアート・e37302)

■リプレイ

●バナナの涙、バナナ事言ってんじゃねー。
「まあ、一般人に危険な真似を差せるわけにゃいかねーし、仕方ないよな」
 リオ・ドゥ(ジャンクアート・e37302)が何気なく言葉を放つ。
 ドワーフではあるが、彼は髭を付けてない。中性的で子供っぽい顔つきもあって、美少女にも見える顔立ちをしていた。
「うむ、仕方が無いのぅ。これも任務を遂行するためじゃ」
 などと、言葉と裏腹に妙なやる気を見せているのは、ドラゴニアンのレオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059)。その足元に付き従うは、オルトロスのゴロ太。
「……なあ、レオンハルトさんよ。俺の目には嬉しそうに見えるんだが」
 訝しげに言葉をかけるリオだが、レオンハルトはそれを否定した。
「なーにを言っておるのかね。これは演技! 偽りの感情、我は自制心の鬼であるからして、全てが演技!」
 力説するが、リオの目に映る彼の顔は緩みまくっている。
「というか、リオ殿も期待しとりゃせんか? 何、今は我しかおらぬ、吐露してもいいのじゃよ?」
「んなわけねーよ! ったく、本当に演技か」
 リオは突っ込みつつ、頭の中で今回の作戦を確認する。春日野駆とは接触し、事情を話して既に避難させていた。
「俺とレオンハルトが囮になり、奴らをおびき出して三分間耐える。で、他のメンバーが三分経ったら出てきて、攻撃しかけてやっつける……っと」
 自分の武器はライドキャリバーに預けてあるため、若干不安を覚えていたが……。
「成功、させねーとな」そう呟いて、リオは気を引き締めた。
「たわわなおっぱい! 我を裸の美女が待っておる! 演技だから豊満なおっぱいに埋もれ、揉み揉みしちゃって、それから色々とぱふぱふしたり挟んだりあれこれしちゃっても問題無し! なんちゅう役得なんじゃ、今行くからのう!」
「……成功、させねーとな」
 レオンハルトの前に、不安が再び増大したリオだった。
 そんな二人を遠くから見つめるは、六名の女性ケルベロスたち。
「しっかり見ていてやる……! なぁに、骨は拾うぜ!」
(作戦のためとは言え辛い任務、頑張ってくれ!)
「あのー、本音と建前が逆になってませんか?」
 難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)は、傍らのオラトリオの少女、アイシャ・イルハーム(純真無垢な黒き翼・e37080)から問われたが、本人は気にしていない様子。
「でも、誘惑する時はどんなふうにするんでしょうね。ちょっと色々お勉強しないとです」
「ですねぇ。特に男性陣お二人は……どこまで無駄に抵抗して下さるか……楽しみです」
 アイシャに続き、にやっ……と笑みを浮かべるは、上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)。サキュバスの彼女の笑みには、どこか凄惨さと狂気とが含まれていた。
「そうねえ。男を襲うバナナが倒される様、凄く見てみたいわぁ。それに……襲ってる様もね。良い玩具になりそう♪」
 同じくサキュバスの、樋廻・朔(サキュバスの鹵獲術士・e11609)もまた、口元をにやり。紫緒と同じように、狂気がどことなく感じられる笑みだった。
 それを横目に見つつ、アリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)は気づいた。
「どうしたの?」
 月守・黒花(黒薔薇の君・e35620)が、自分の身体を見下ろしていたのだ。
「い、いえ。なんでもないです」
 などと黒花は答えたものの、自分の平原めいた胸を見下ろしつつ、
「……やはり、大きい方が良いのでしょうか」
 という呟きが漏れた事には、本人気づいてなさげであった。

●恋バナナ、濃いバカな。
 とかなんとかやってるうちに、現場に到着。
 そこは、雑木林の中の、開けた場所。そして……その中心部に屹立するは、ひときわ大きな樹木。その幹の洞には……『彼女』がいた。
 薄緑色の肌と、濃い緑の髪は確かに人外のそれ。足首が木の幹と一体化しているものの、その全身から醸し出す雰囲気は、魅力を引力に変化させて男を引き寄せているかのよう。
 ほぼ全裸のその体は、すらりとした両足から、形の良い腰とお尻、なだらかでくびれたお腹、そして『たわわ』と呼ぶにふさわしい両胸に続く。整った顔に浮かぶは、妖しい笑み。そして両胸と腰を申し訳程度に覆うのは、小さな葉。
『彼女』が動くたび、両胸が『ぷるんっ』と揺れる。艶めかしい仕草で、
『……きて……』
 妖艶に呟き、唇をぺろり……と舐めた。その舌の動きは、やたらと淫ら。
「……わ、あんなポーズを……足をあんなに広げて……わ、わ、あんなポーズも……」
 近くの樹の陰に隠れつつ、アイシャは赤面しつつもその様子をじっくり観察していた。他の女性陣も、木の陰や藪に隠れつつ、誘惑する様子をしっかり見ている。
「くっ……これは……っ!」
 リオはその誘惑に、悩殺するかのような『彼女』……『緑色』のバナナイーターを警戒するが。
「うひょー! なんちゅうたわわっ! ぷるんぷるんじゃぞ! もぎたてじゃぞ! フレッシュじゃぞ! ナチュラル・ピュアテイスト百%じゃぞ!」
 などと叫びつつ、レオンハルトは全力疾走。そのまま『緑色』の豊満な両胸の谷間へ、文字通りダイブした。
「って、本当に演技なのか……って、あっ……」
 木の幹、別の場所からの声が……リオの耳に響いた。そのまま引き寄せられるように向かうと……。
 そこには別の洞、別のバナナイーターの姿が。今レオンハルトを虜にしたのと同じ姿をしているが……こちらの方は肌がやや黄色く、何よりリオにとって理想の女性像に近い姿をしていたのだ。
『……きて……』
「お、俺は騙されない……」
 と言いつつ顔を背けるも、ついちらちらとその胸、その腰、秘められた女体の部分へと視線を向けてしまう。心臓の鼓動が高鳴り、体に血が滾る。
『……きて……』
「ひゃっ……!」
 自分でも知らぬうちに、『黄色』のバナナイーターに歩み寄っていたリオは、そのまま……しなやかな彼女の両手に引き寄せられ、抱きしめられていた。
「くっ……うっ……は、ああ……」
 むにゅ……という感触が、リオの頬を包み込む。柔らかな女体の双丘に顔を埋めていると、もっとこのままでいたい……という心地よさに従いそうになる。
「や、やめ……はああっ……」
 愛撫され、リオは確かに快感を覚えていた。その事が屈辱的で悔しいのに……快感を植え付けられた身体が、ビクン、ビクンと反応してしまう。
「あ、ああ……くっ……」涙目になりつつ、強がって快感を否定する。が……次第に抗いも弱々しくなっていった。
「はあー。ぷるぷるのふにふにじゃー。この肌触り、確かな弾力、吸い付くような感覚、まさに至高!」
 リオからは見えない位置にいる、レオンハルトの嬌声が聞こえてくる。
『緑色』もまた、レオンハルトの顔だけでなく、首筋に唇を滑らせたり、両手で彼の身体中を愛撫。
「ふあっ、そこは……そんなとこを挟まれたら……天国じゃー、ヘブンじゃー、パラダイスじゃー。我は今楽園におるのじゃなー」
 もはやその声に、演技らしさなど全く感じられない。
 二人のその様子を見て、
「はー、羨ましい。……アタイも、あんな感じにたわわダイブしてぇ……」
「お、大きくて形がいいだけが、全てじゃありませんっ! ……多分」
 と、ナナコと黒花は自分の両胸と見比べつつ、羨望の言葉を。
「うーん……囮のお二人、演技の割には、本当に喜んでるようにも見えますね。というか、少し嬉しそうな……」
 アイシャもそこまで言って、自分の胸を見つつ……。
「……ナナコさん、どう思います?」
 少々ムッとした口調で、問いかけた。
「あらあら♪ 殿方ってあんな風に誘惑されると弱いみたいですね♪ 参考にさせてもらいますね」
「ふうん、ウチの男二人の反応もいいねえ、あの弄ばれっぷり、癖になりそうじゃあないの」
 紫緒と朔、二人のサキュバスは、目前の淫らなやり取りに満足げ。
 そして、
「……そろそろ、三分ですね」
 アリシアがそう告げると、全員の顔が引き締まった。

●バナナあむあむっ ソイヤッ!
「……っ!? 時間かっ!」
 その言葉とともに、レオンハルトは生き返ったかのように飛び起き、『緑色』から離れ、距離を取った。
「リオ殿?」
 こちらは、『黄色』に固く抱きしめられていた。脱出できそうになかったが、
「はいっ、お楽しみのところ申し訳ありませんが、お時間ですよ! そこまでです!」
 スターゲイザーで飛び込んできたアイシャに蹴り飛ばされ、なんとか体をもぎはなす事ができた。
「い、今……離れる!」
 彼もまた距離を取り、体勢を整える。
 二体のバナナイーターは、表情を変えはしなかったが……困惑しているようにも二人には見えた。
 リオを待っていたかのように、ライドキャリバーが藪から現れ、彼と合流する。
「まんまと騙されおったのう、実は演技じゃよ」
 レオンハルトもまた、不敵に言い放ち……身構える。
 二人に対し、二体のバナナイーターは触手を伸ばしたが……。
「たわわを自慢しおって! バナナに対する風評被害だ!」
 藪の中から突進してきたナナコの先制攻撃が、裸の女体へと襲い掛かった。
「右手にバナナ!左手にもバナナ!2本のバナナを合わせれば!」
 両手に構えた、バナナを十字に交差させ……繰り出したナナコの攻撃が、『緑色』へと襲い掛かる。
「100倍以上の威力を生み出すぜぇ! 『C・C・B・S(クロス・クラッシャー・バナナ・スペシャル)』ッッッ!!」
 バナナへの愛も込められた、目にも止まらぬ連続斬撃。それがバナナイーターの蔓を斬り飛ばし、本体をも斬撃し、鮮血……めいた樹液をほとばしらせた。
「ナナコさんに続いて、乗り込め―!」
 続き突撃するは、マインドリング『Fortuna』を腕にはめた紫緒。リングより光の剣を具現化させ……、
「はーっ!」
 マインドソードによる斬撃が、新たなダメージをバナナイーターへと与える。蔦がのたうち回り、明らかに苦痛を感じていると、紫緒は理解した。
「貴方方にも……痛みはありますか? 血は?」
『黄色』の方に襲い掛かるは、アリシア。
「アリシアにどうか、その様を見せてくださいね。無様に切り刻まれ、のたうち回る様を!」
 言うが早いか、旋刃脚を直撃させた。植物の樹液めいた液体が流れ、こちらもまたダメージがあった事を本能的に察知する。
 反撃しようと蔦を伸ばすが、
「させません!」
 黒花の放った気咬弾が食らいつく。蔦のみならず、女体もまたのたうち回り、アリシアは満足げに微笑んだ。
「くっそ、よくも好き勝手やってくれたな!?」
 受けた屈辱を倍にして返して貰うとばかりに、リオはガトリングを構える。
 アリシアと黒花もまた、第二撃を放とうと戦闘態勢を維持。
「竜王の不撓不屈の戦い、括目して見よ!」
 レオンハルトが、携えた扇子を鳴らし、雄々しく言い放った。
「……ってゴロ太よ、たまにはちゃんと働かんか!」
 が、足元のオルトロスは変わらずごろ寝。
 彼の後ろに控えるは、ナナコと紫緒、それにアイシャ。
「まったく……ん?」
 だが、そこまで言ったレオンハルトだが。
「みんな、伏せるのじゃ!」

●「knight of Banana~♪」
 数秒間のうちに、二体のバナナイーターは両胸の先端に蕾を生やし……大きく成長させ、開花。
「あぶないっ!」
 リオが叫んだ瞬間。
 強烈な光線が、『緑色』と『黄色』、両者の両胸から放たれた。
 ヒールドローンのサポートで、何とか光線を避ける事は出来たが……距離を離さざるをえない。
 時間を稼いだバナナイーターは、周囲に実った果実をもぎ取り、それにかじりつく。それとともに、負わせた傷が回復していくのが見て取れた。
「くそっ、ならば射撃戦だ!」
 リオが怒りとともに、ガトリングを放った。弾丸がバナナイーターを貫くが……、
「なっ……しまった!」
『黄色』の蔦が、彼の身体に絡みついていたのだ。
 触手めいた蔦が、リオの身体を引きずり込もうとする。そしてその双丘の谷間……つい先刻にリオの顔を埋めていた場所に、ハエトリソウめいたおぞましい口が開く。
 リオを捕食せんと、蔦を引く『黄色』。しかし、激走したライドキャリバーがそれを切断した。
 それにめげず、更なる攻撃を試みる『黄色』だが……。
「うふふふっ、面白いわぁ……男を襲うバナナも面白いけど、それを不様に倒す様を見るのも……面白そうだわっ!」
 知らぬ間に、『黄色』の死角に、朔の姿が。
 振り向く『黄色』だったが……既に手遅れ。鹵獲術士の彼女は、既に古代語を詠唱し終えていた。
「……『ペトリフィケイション』、コリコリでカチカチのバナナに、おなりなさい」
 放たれた光線が当たり、『黄色』の体色が、徐々に灰色のそれに……石の色へと変化していった。石化の力は、そのまま『黄色』の全身に回り……。
 バナナイーターを、石像と化した。
『緑色』はそれを見て、驚愕したかのように一瞬だけ……動きを止めた。
 その隙を狙い、『ハウリングフィスト』……バトルオーラを纏った紫緒の音速の鉄拳が、バナナイーターへと叩き込まれる。
 直撃した拳は、バナナイーターの顔を殴り飛ばし、『緑色』の顔を奇妙に歪ませた。
「ナナコさん……かっこよくお願いします!」
 紫緒の叫びに、
「おうさ!」
 ナナコが雄々しくそれに答える。
「たわわにメロンメロンしおってぇ! バナナもザクザクカットできる、美味しくカットしてやんよぉ!」
 いささか意味不明な事を叫びつつも、その手に握る『簒奪者の鎌』の刃が、『緑色』の身体へと叩き込まれ、斬撃とともにその生命力を吸い取った。
 斬撃音と、流血のように迸る植物の汁、そして……バナナイーターの身体が茶色くしなびていくのを見て……。
「……どうやら、こちらも終わったようですね」
「ですね」
 アリシアと黒花は、事態の収拾を悟っていた。

●そんなバカな、損なバナナ。
「うーん、なんと言いますか……あの『たわわ』を思い返せば……」
 アイシャは周囲を調べつつ、呟き、溜息をつく。
「……はぁ、やっぱり……恐ろしい相手でした」
 一行は、事後にヒールを周囲にかけていたが、元の樹木と抉れた土以外、場所への破損は見当たらなかった。
「やっぱり、男性はたわわな方がお好き、なのでしょうか? というか、男性陣はバナナを常に持ち歩いているのですか?」
 黒花が純粋な眼差しで、リオとレオンハルトに問いかけるが。
「さ、さあな?」
「うーむ、なかなかいい質問ですな(答えるとは言ってないですが) 」
 と、二人はそしらぬ顔。
「んもー、バナナに襲われて死んだ人も中々面白いから見てみたかったなぁ」
「ともあれ、地球での誘惑は、現地のサキュバスにお任せくださいね」
 朔と紫緒がそんな事を言う横で、
「勝利の後のバナナはうめーな!」
 房のバナナを、次々に平らげるナナコの姿があった。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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