たわわな果実を美味しく……

作者:なちゅい

●そのたわわな……
 『爆殖核爆砕戦』が終結して、数ヶ月が過ぎた。
 大阪城の攻性植物の動きが無かった為、大阪の人々はその現状に慣れ、大阪城付近まで日常活動の範囲を広げ始めていた。
 ――そんなある日のこと。
「いやー、めっちゃ飲んだわー」
 千鳥足で帰路に着く男性会社員は、かなり気分良さそうに住宅地を歩いていく。
 その途中、雑木林のそばに差し掛かった彼は、何かの声を耳にする。
 くすくす、くすくす……。
「んー……、なんやねん?」
 それが何なのかを確かめようと、彼は雑木林へと立ち入っていく。
 木々の間を歩く彼は、驚くモノを発見した。
「お、おおおっ!!」
 それは、フルーツがたわわに実った一本の木と、その木と一体化したような、たわわな2つの果実を胸部に実らせた、ほぼ裸の女性の姿が。
 笑いかけるその女性が手招きすると、会社員はふらふらと女性に近づいて、果実を手に取ろうとする。
「…………なっ!?」
「くすくす……」
 すると、女性はものすごい力で男性を抱きかかえる。最初はその柔らかさに恍惚としていた男だったが、徐々に色々なモノを搾り取られてしまって。
「馬鹿な男。くすくす……」
 その女性……いや、攻性植物は男の全てを搾り取ってしまう。そして、下半身を露出させた状態の男を土の中へと埋め、さらなる自身の養分とするのである……。

 とあるビルへとやってきたケルベロス。
 ロビーに向かうと、ベンチに座ってバナナを食べているリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の姿を発見する。
 小さく頷く彼女は、食べかけのバナナをきちんと食べ終えてから笑顔を見せる。
「ようこそ。来てくれて嬉しいよ」
 彼女は、「一本食べる?」とバナナを差し出す。
 少し前にこれを使ったダイエットがあったなとむいたバナナを食べるケルベロスへ、リーゼリットはそのままでいいから聞いてねと促す。
「大阪城付近の住宅街にある雑木林で、男性を魅了する攻性植物が出現しているようだよ」
 『爆殖核爆砕戦』後、大阪城に残った攻性植物達の調査を行っていた、ミルラ・コンミフォラ(翠の魔女・e03579)らがもたらした新たな情報によると、『たわわに実った果実』のようなバナナイーターと呼ばれる攻性植物の存在が確認された。
 バナナイーターは15歳以上の男性が近寄ると現れ、その果実の魅力で魅了し、絞りつくして殺害する事でグラビティ・チェインを奪いつくしてしまう。
 攻性植物は奪ったグラビティ・チェインを使い、新たな作戦を行うつもりなのかもしれない。
「このバナナイーターを撃破して、誘惑されてしまう犠牲者を救ってほしいんだ」
 到着は被害者よりも早く、攻性植物に出会う場所に先回りすることが可能だ。
 攻性植物……バナナイーターを出現させる為には、そのまま一般人を誘惑させるか、或いは、一般人を避難させた上でケルベロスの男性が囮となる必要がある。
「バナナイーターは攻性植物の拠点となっている大阪城から地下茎を通じて送られているようで、囮となった人数に応じた数の攻性植物が出現するようだよ」
 出現する攻性植物だが、1体目以外の戦闘力は低いらしく、ある程度数を出して一気にたたくことも可能だ。
「あと、攻性植物が出現してから3分以内に攻撃を仕掛けてしまうと、出現した地下茎を通ってすぐに撤退してしまうから、注意してほしい」
 この為、囮となった者は3分程度、攻性植物と戦闘せずに接触する必要がある。
 幸い、攻性植物側もその3分間は攻撃行動などに出ることはなく、対象の男性を誘惑する行動を行う。囮が一般人であっても、すぐに死んでしまうという事はないようだ。
「相手は、ケルベロスであっても男性であれば、獲物として扱うようだね」
 攻性植物の誘惑はケルベロスに効果はないが、囮となる場合は敵を逃がさぬよう誘惑されているような振りをする事も必要かもしれない。
 戦闘となると、バナナイーターはその身に実った果実をもぎ取って投げつけてくる他、女性にすら効果をもたらす強力なフェロモンを放ったり、近づいた相手を捕まえてあれやこれやして生気を奪い取ることもあるようだ。
「前列に立つ人はくれぐれも注意してね。敵に魅入られて体力を吸い取られると、キリなく回復されてしまうし……」
 何より破廉恥だよと、リーゼリットは少しだけ顔を赤くして呟く。
 ともあれ、バナナイーターのたわわな身体を堪能するのは程々に、ということである。
 そろそろ、ケルベロス達もバナナを食べ終わる頃と見て、リーゼリットは立ち上がる。
「本当に卑猥な相手だね……。皆の手でしっかりと討伐を頼むよ」
 とりわけ、囮役となる人がいるならば、気をつけてほしいと気をつけるよう一言添え、彼女はヘリポートに向かうようケルベロス達を誘うのだった。


参加者
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)
露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)
因幡・白兎(非情食・e05145)
アーシィ・クリアベル(久遠より響く音色・e24827)
ピヨリ・コットンハート(ぴょこぴょん・e28330)
ロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)
ターニャ・グラッツェル(葡萄の瞳・e35160)

■リプレイ

●熟れた果実に対して……
 大阪府某所の住宅地。
 ケルベロス達は歩いて、現地となる雑木林へと向かう。
「何か起きるかも~って思ってたけど、ついに出てきちゃったんだね……」
 騎士鎧姿だが、紫の長い髪を靡かせる姿が子供っぽいアーシィ・クリアベル(久遠より響く音色・e24827)が何気なく呟く。
「き、きき、聞いた話だとなんだかちょっと……。あれな敵が相手なんだよね」
 現れる相手は、ぼんきゅっぼんな体型の攻性植物だと言う。透き通るような白い肌を持つ、ターニャ・グラッツェル(葡萄の瞳・e35160)は自身の体型に目をやり、ぷるぷると細身の身体を震わせる。
「く、悔しいとかじゃないよ? 悔しいとかじゃないけど……」
「バナナイーター……? 襲われる男性が、バナナという事でしょうか。謎です」
 ひよこのファミリアを頭に載せた白うさぎの少女、ピヨリ・コットンハート(ぴょこぴょん・e28330)が首を傾げた。
「Question……男の人も皆、バナナを持ってますの?」
 同じく、シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)は不思議がる。狂的と言えるほどに攻性植物を愛する彼女は、今回現れるバナナイーターの周囲に実る果実や蔦と触れ合うことが出来ればと考えてやってきていた。
(「珍しい果実が食べられるお仕事って聞いたけど……。なんか違うっぽい?」)
 男の人、というよりは男の娘に近い見た目の露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)。
「……興味ないから、帰っちゃダメ?」
 依頼に参加をしてはいても、睡蓮は攻性植物にまるで関心がない様子である。
「恐ろしい敵が出てきましたね……」
 一方で、整ったアゴヒゲを蓄えるワイルドな印象のトリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)は、攻性植物に戦慄すらしていた。
 予知では一般人が被害に遭ったというが、ケルベロス以外では耐えることすら敵わないだろう。
「これは、私達が体を張って解決しなければ」
 朴念仁な彼だが、依頼解決に意欲を見せる。
「攻性植物? なんだっていい! おっぱいに挟まるチャンスだ!」
 こちらも見た目は中世的な白うさぎの少年、因幡・白兎(非情食・e05145)。ただ、その頭の中は……。
(「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」)
 思考が完全に、おっさんのそれである。
 男性陣がバナナを持つならば、取ってしまえばと真面目に考えていたシエナだったが。
「Difficile……無理そうですの」
 自身の攻性植物ヴィオロンテに視線を落とし、彼女は唸りこむ。
「搾り取る……」
 見た目は優雅な振る舞いのお嬢様である、ロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)が呟く。
(「あぁ……それもまた、新しい刺激を感じられそうですね……」)
 彼女もまた、よからぬことを考えている様子だ。
「……なんだか、腑に落ちないから倒そう。物凄く倒そう!」
「よーっし! 大阪の安全は私達、地球の勇者ケルベロスが守ってみせるよ!」
 身体を震わせていたターニャがそこで、ようやく我に返る。アーシィも気合を入れるものの。
(「男の人の誘惑する技を掴むチャンス!」)
 密かに大人の女性になるべく技術を身につけられるチャンスと、彼女は胸を躍らせていた。

●妖艶なる攻性植物
 そんな思惑バラバラのケルベロス達は、目的の雑木林へと足を踏み入れていく。
「お化けが出てきたほうがまだいいよねー」
 緊張感なく仲間と行くアーシィは何かが聞こえて耳を澄ませる。
 くすくす、くすくす……。
 聞こえてくる女性の笑い声はその存在を主張していた。
 事前の話によると、攻性植物バナナイーターの誘い出しには、15歳以上の男性が必要だと言う。
「ボクの出番はないっぽい~」
 14歳の睡蓮は万全の状態とすべく、現場周辺を殺界で包む。
 他の女性メンバー達は茂みや木陰に隠れ、囮役を見守ることにしていた。また、万一殺界を越えて被害者の男性が近づくのを抑える役割もある。
 仲間の配置が完了し、条件を満たすトリスタン、白兎が囮役として進み出た。
 そこにあるのは、フルーツの実る1本の木。姿を現す攻性植物バナナイーターはたわわなボディを惜しげもなく見せ付ける。
「ほんとうになんていうか……、く、くやしくなんかないもん……!」
「有害な植物は許可が出次第、即駆除しましょう。3分間待ってやる」
 噂のバナナイーターのボディに、ターニャはほろりと悔し涙を零す。ピヨリは淡々と害虫駆除でもするように言い放った。
「囮をする。これは仕方ないことなんだ」
 白いマフラーを靡かし、白兎は迷いなく流れるようにスッと近づき、そのわがままボディへと挟まっていく。
「おっぱい! おっぱい!」
 そのたわわで柔らかな果実を、白兎はむしゃぶりつくそうとする。
「青臭くなく、それでいて温かい」
 その大きな2つの塊へと、頭からぐりぐり。しかも、彼はむんずとその熟れた果実を鷲掴みして揉んでしまう始末。
 くすくす……。
 バナナイーターはそれでも余裕の笑みで、白兎からあれこれと絞りつくそうとその身体に密着し、優しい手つきであちこちを触り始める。
 対して、トリスタンに対しても別のバナナイーターが姿を現していた。
「これは……いや、しかし……」
 ギリギリ触れない位置で彼はその胸へと手を伸ばしたが、傍と気づいて大きく首を振る。
(「頑張れ、頑張れトリスタン……!」)
 双眼鏡を構えて見つめるアーシィが、固唾を呑む。
 くすりと笑うバナナイーター掴んだ体を指で、または直接豊満な体を擦ってくるのだが、トリスタンは顔を反らして堪えようとする。
 2人の下半身を擦り、情欲をそそる恐るべき攻性植物。その攻めは徐々に激しくなって……。
「ええっー!? あ、あんなことまで……!?」
 本心では、女性としてのテクニックに興味津々なアーシィはじっくり観察していた。
「縛られるのとも、ただ攻撃されるのとも違う、じわじわと苦しめる、嫐るような行為……。ふふふ……想像するだけで素敵です……」
 ロフィはやや鼻息荒く、バナナイーターの行為を目にしている。その様子は、傍から見るだけでもかなりダメっぽい。
「Envie……わたしもバナナの子達と触れ合いたいですの」
 シエナは、別の方向で羨ましがっている。彼女の場合は人間部分には眼中がなく、植物と戯れるというこの一点のみなのだが。
(「あんなボインな緑の物体に触って、嬉しいのかな」)
 一方で、無表情なままのピヨリは、しっかりと目の前の光景を見つめていた。それはまるで、ハエトリソウの捕食シーンを興味深く眺め続ける子供の図である。睡蓮もまた用意していたバナナを食べながら、感情のない瞳で見つめていたようだ。
 くすくす……。
 バナナイーターはしばし、2人からあれこれ搾り取ろうとする。
「はふう……」
 白兎は完全に、恍惚とした表情すらしていた。
 そんな時間も、長くは続かない。3分経過と共に、トリスタンは力任せに敵から腕を引き抜く。
「お色気タイムはそこまでだよ!」
「観察が済んだら、容赦なく焼き払いましょう」
 アーシィ、ピヨリは攻性植物の前に仲間と共に姿を現し、攻撃態勢をとる。
 ふふ……。
 すでに根を張っていた攻性植物は笑ってこそいたが、しばらく動けぬと察して応戦の構えを見せていた。

●様々な想いを抱いて……
 攻性植物バナナイーター。
 被害者として予見されていた男性が現れぬこともあり、ケルベロス達はその駆除を本格的に開始する。
「な、なんて引力だ!」
 白兎は最初に出現したバナナイーターを、嬉しそうに抑えている。一応は先祖代々伝わる秘薬を塗りつけ攻撃を仕掛けているが、それすらも胸を思いっきり触る為にしか見えない。
「それ以上は、放送禁止だからねー!?」
 飛び出すアーシィが、敵に向けて日本刀「星河」に地獄の炎を纏わせて切りかかっていく。狙うは、トリスタンに取り付こうとする敵。燃え上がる炎に、そいつは痛みに声を上げた。
 敵は男性陣を捕らえて離そうとはしない。その艶かしい体を絡め、頬に口付けして生気を奪おうとする。
「ぐっ……、この程度では屈しません。根こそぎ引き抜いてやりましょう」
 敵を抑えるトリスタンは隙を見て、降魔の拳で殴りかかっていく。
 ロフィも身を呈する彼の横で盾となるべく、身構える。
「せめて、バナナを投げるのだけでも、全て私へ向けて頂けないでしょうか……」
 攻性植物の矛先は主に、男性メンバーに向いている。敵はその身に成る果実も投げてくるようだが、できれば、自ら攻撃を受けたいとロフィは願いつつ、空手のように一撃に体重を乗せた拳で敵を殴りつけていく。
 そのロフィにメイドのように付き従うテレビウムのクーは、いつもは率先して傷つく主を置き、攻性植物に絡まれる男性陣を応援動画で支援していた。
「誘惑なんてされない!」
 暗殺者としての訓練を受け、サキュバスの義姉がいる睡蓮は攻性植物の艶姿には惑わされぬと素早く接近し、敵の露出した肌目掛けてゲシュタルトグレイブを突き出す。
 その少し後ろでは、シエナがボクスドラゴンのラジンシーガンに仲間の盾を任せていた。
「ヴィオロンテ! 激励お願いしますの!」
 そして、彼女は自身の攻性植物へと呼びかけると、ヴィオロンテが咆哮を上げる。
 さらにその後ろでは、ピヨリが弱った敵を見定めていた。
「ほろびろ」
 ピヨリが大胆に投げつけるのは、ひよこのファミリア。それは敵に命中した爆発を起こす。
 あぁぁぁっ……。
 直撃を受けたそのバナナイーターは小さく叫び、緑色の体を茶色に変色させて枯れ果てていく。
 話の通り、分身ともなる敵はさほど強くはないようだが……。
 ターニャは白兎が襲っているようにも見えるバナナイーターを見定め、金の長髪を翻して氷結の螺旋を放出する。
「いきます!」
 刀身を冷気で包むアーシィも、重ねて攻性植物の体を切りつけていく。
 宙に残る砕氷がパラパラと舞い落ちる中、凍りつく自身の肌が砕けるのに、攻性植物は顔を引きつらせていた。

「おっぱい! おっぱい!」
 もはや、己の欲望を隠そうともしない白兎は獣となった自らの手で、その裸体をこれでもかと掴み取る。
 一応は盾役の彼だが、さすがに敵を完全に抑えるとはいかない。
 くす……。
 妖艶に笑うバナナイーターは、周囲へとフェロモンを振り撒いていく。
 そのフェロモンを浴びた睡蓮が目をくらくらさせる横で、狐の拳で敵を殴打していたターニャもまた視界が歪んでしまって。
「く、くらくらするのはそれかな……? 女性なのにドキドキしちゃう」
 同性すらも虜にしてしまうそのグラビティに、ターニャの胸が高鳴る。
「ボクもそのくらいキレイになれたら……とか、思っちゃうなぁ……。なんて……!」
 魅了されかけたターニャは、バナナイーターの姿に頬を赤らめてしまう。
 そんな所作を目にするアーシィは男女問わず落とす敵にふむふむと頷きつつも、仲間の攻撃が当たっていないことを察して、大きく弧を描いて切りかかった。
 トリスタンも強烈なフェロモンに気をしっかりと持ち、音速を超える拳で殴りかかっていく。
「Demande! そんな女性よりも、わたし達の元に来るですの!」
 シエナはあくまでも植物だけに気を掛け、呼びかける。ヴィオロンテを移植させることで蔦や果実の回収を試みるのだが、敵もしっかりと対策を練っているのか、そう簡単には自身の果実を手放そうとはしない。
 さて、攻性植物に対して、苛烈に攻撃を続けるメンバーもいる。
 ピヨリは古代語を紡ぎ終え、魔法光線を撃ち出す。それによって敵のくびれ部分が石となれば、ロフィが祝詞のように呪言を読み上げる。
「赤、緋、紅い空。生命を喰らいし紅い空。堕ちよ汚れし紅い空」
 ロフィの指から滴る血。それは空へと立ち上り……いや、落ちていき、空を赤く染めていく。
(「……あまり楽しんでも居られなさそうなのが、残念ですが……」)
 思った以上に自身が攻撃の的になれないことに、歯痒さを覚えるロフィ。手遅れレベルな被虐趣味な彼女は見た目が優雅なお嬢様だけに、なんとも残念である。
 そんなロフィの組み上げたグラビティは空中で赤い球体となり、バナナイーターへと落下、爆散した。
 生命をも蝕むその血飛沫は確実に、敵の生命力を奪う。敵もなんとか、白兎から活力の全てを搾り取ろうとするが……。
「茨の魔弾は束縛の魔弾。魔弾の御業は茨の乙女」
 そこで、睡蓮が青いポニーテールを躍らせつつ、魔弾に御業を宿らせる。生成した少女の姿の式神は茨を操り、弱ったバナナイーターの体をきつく縛り付けていく。
 う、ああぁぁっ……。
 艶かしい声を上げて昇天する攻性植物。そいつは見る見るうちに枯れ果て、見るも無残な姿を晒すのだった。

●目的を果たして……
 攻性植物の撃破後。
 ピヨリはファミリアのピヨコを綺麗に拭いてケアし、再び自らの頭の上に載せていた。これ以上なく、可愛らしいピヨコが大好きな彼女である。
 トリスタンは、攻性植物の種らしきものも残されていないかとバナナイーターの残骸をチェックしていた。
「Excusez-moi……ごめんなさい……」
 こちらも、バナナイーターの残骸を見下ろすシエナ。倒したことで枯れ果てたそれらを手に取る。
「凄く太くて、立派なバナナでしたのに……」
 シエナは残念そうな素振りで、それを林の中へと弔う。
 トリスタンは敵の残骸を確かめ、根を伸ばしていた方向を調べる。大阪城方面に伸びているようにも見えるが、完全に萎れてしまった敵の状態では確認が難しい。
「トリスタン、おつかれ!」
「ああ、折角だ。この後肉でも食べに行こうか」
 アーシィがほっこり顔で囮役を果たしたトリスタンに礼を述べると、調査を終えた彼がアーシィを含めて仲間を食事に誘う。腹ペコのシエナも賛同していたようだ。
「あー、催眠ヤバイわー。たわわなお胸のケルベロスに挟まれないと、治りそうにないわー」
 そこで、仲間を見回した白兎が、バナナイーターほどたわわな胸の持ち主はいないのを確認して。
「ぼくは しょうきに もどった!」
「「「…………」」」
 そんな彼をスルーしたメンバー達は腹ごしらえをすべく、雑木林を後にしていく。
「しょうきに、もどった、もどったんだよ……」
 1人ぽつんと白兎は林の中に残され、しょんぼりとしてしまうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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