●雑木林のお宝
『爆殖核爆砕戦』が終結してはや数ヶ月。当初懸念されていた攻性植物の進攻も無く、大阪城は緑に覆われた魔境となりながらも、今もその沈黙を守っている。
最初は戦々恐々としながらと日々を過ごしていた近隣住民の人々も、やがて怯えることに疲れたか、今はその『何も起きない』という現状を受け入れその活動範囲を大阪城付近まで伸ばしていた。
「よし、誰もいないな」
深夜。そんな大阪城周辺の雑木林の中をキョロキョロと周囲を確認しながら歩く不審な青年が一人。そんな彼の手には縛られた古雑誌の束が2つ握られている。
束の一番上の本には表題として緊縛特集と書かれていた。それはいわゆる紙資源回収の日に自分の家の前にはちょっと出しにくい類の本であり――。
ええい、濁しても仕方がねぇ! つまりエロ本である! 古来より雑木林はエロ本の投棄場所と相場は決まっているのである!
「……よっと」
さて、こうして投棄しても、次の日の夜にはだいたい無くなっていることを青年は経験上よく知っていた。
そう、青年がかつて『少年』だったとき、雑木林で『お宝』を見つけたように……。男達の歴史は紡がれ、次代へと託されてゆくのである。
「……フッ」
エロ本を捨て終えた青年がクールにその場を去って、その帰り道。林の奥で何かが揺れたのを彼は視界の隅に捉えた。
「ん……?」
目を凝らしてよく見ると、それは2つの大きな果実のようなものだった。たわわに実ったその二つの果実はまるで青年を誘うかのようにプルルンと揺れていて――。
ええい、濁しても仕方がねぇ! つまりおっぱいである! おっぱいが青年を誘っていたのである!
「な、なぜ、こんなところにおっぱいが?」
不思議に思いながらもおっぱいに引き寄せられてゆく青年。
近づいてみれば、やや切れ長の目を持つ妖艶な女性が蔦の様な紐に縛られて雁字搦めとなっていた! 女性が身動ぎをしようとすると局部がより一層ギュッと締り、女性が苦悶の表情を浮かべながらおっぱいを揺らす。
「……!」
女性のすぐ脇には先程青年が捨てた雑誌『緊縛特集』があった。まさに本の内容を現実としたような光景。青年があまりのエロさに言葉を失っている間に、彼の足には既に蔦の様な触手が巻き付いていた。
「ひっ!」
短い悲鳴と共に、青年の身体が地上を離れてゆく。
「あ! そこ!? だ、だめぇええ!!」
シュルル、と複雑に巻き付いてゆく蔦紐。緊縛の奥義をその身に刻みながら青年は女性に色々と搾り取られ、哀れ、養分とされてしまうのであった。
●緊縛のバナナイーター
とまぁ、そんな感じの予知を語り終えたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がコホンと咳払いをひとつ。
ちょっと耳が赤くなっているが、そこは見て見ぬふりをしてやるのが人情と言うものだろう。
「『爆殖核爆砕戦』後、大阪城に残った攻性植物達の調査を行っていた、ミルラ・コンミフォラさん達から、新たな情報が得られました」
その調査によると、近頃大阪城付近の雑木林などで、男性を魅了する新たな攻性植物『バナナイーター』が出現しているようだ。
バナナイーターは15歳以上の男性が近寄ると現れてその果実の魅力で魅了し、絞りつくして殺害する事でグラビティ・チェインを奪いつくしてしまうようだ。
「攻性植物は、こうして奪ったグラビティ・チェインを使って新たな作戦を行うつもりなのかもしれません。皆さんには、このバナナイーターを撃破して、誘惑されてしまう犠牲者を救っていただきたいのです」
セリカの説明を要約するとこうだ。
まず、バナナイーターを出現させるための方法は2つ。そのまま一般人を囮として誘い出すか、ケルベロスの男性が囮となるかである。ケルベロスが囮となった場合、一般人の青年は事件に遭遇せずエロ本を捨ててそのまま家に帰ってゆく形になるだろう。
「そしてもう一つの注意点なのですが……」
バナナイーターは、攻性植物の拠点となっている大阪城から地下茎を通じて送られているようなのだが、攻性植物が出現してから3分以内に攻撃をしかけてしまうと、出現した地下茎を通ってすぐに撤退してしまうようなのだ。
「つまり、それは……」
察しの良いケルベロスの一人が呟く。
「撃破するためには3分間はバナナイーターの誘惑行動に晒される必要がある、ということです」
言いにくそうに俯きながらセリカ。ちなみに、今回のバナナイーターは蔦紐のような触手を自由自在に操る個体で、なんの因果か人間を緊縛することに強い興味を持っているようだ。
幸い、攻性植物側もその3分間は攻撃などはせず、対象の男性を誘惑する行動を行うため、囮が一般人であってもすぐに死んでしまうという事は無い。
攻性植物の誘惑は、ケルベロスには効果は無いが、囮となる場合は誘惑されているような振りをする事も必要かもしれない。
「次にバナナイーターの戦闘能力ですが……」
今回のバナナイーターの個体は蔦紐で敵の動きを止めたり、その本体の果実部分でもって相手のグラビティ・チェインを吸収する攻撃を得意としている。
「果実部分?」
「つ、つまりですね。人間でいうところの胸の部分、といいますか……」
歯切れ悪くセリカ。つまるところ、一言で言うとそれは『おっぱい』である。おっぱいを当ててくるということである。一見ご褒美だが、グラビティ攻撃なので普通に殺傷能力があるので注意が必要だ。
「他にもバナナを食べて自己回復する能力も持っているようですね」
やたらとエロい食べ方をするらしい。どこで勉強したんだよコイツ。
「色々と危険な敵ではありますが……」
いつもより大分疲れた様子でなんとか説明を終えたセリカさん。ヘリオライダーという仕事の苦悩の一端が見えた気がするが、まぁそれはともかく。
「どうか、宜しくお願いします」
そう説明を結び、セリカは深々とケルベロス達に頭を下げるのだった。
参加者 | |
---|---|
久遠・翔(銀の輪舞・e00222) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709) |
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205) |
ダスティ・ルゥ(名乗れる二つ名が無い・e33661) |
土門・キッス(爆乳天女・e36524) |
ルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238) |
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272) |
●驚異の生態! バナナイーター!
夜も深く、また藪も深い雑木林の中。
そこに息を潜めながら小声で会話するケルベロス達の姿がある。
「さて、初のデウスエクス狩りか」
その瞳と喉の奥に、僅かな痛みを感じながらルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238)が呟く。
狩猟民族の一人として生まれ育った彼女にとって『狩り』はライフワークであると言えるが、こと対デウスエクス戦となると今回が初めてだ。自分の狩猟技術が不死の怪物達にどこまで通用するのか、少し楽しみでもあるルコである。
「ルコ殿も初任務でござるか、拙者と同じでござるな」
その隣で忍装束の金髪少女、カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)がHAHAHAと明るく笑う。
「全く緊張してないな。カテリーナは」
「ふっ、拙者、NINJAでござるから!」
ばちこーん、とウィンクするカテリーナ。あまり理由になってねぇ。
「さあさあ、ダスティ殿を囮役にバナナ釣りと洒落込むでござるよ」
カテリーナの言葉に皆が頷く。敵は健康な男子を喰い物とする新種の攻性植物『バナナイーター』だ。
「……妙な進化を遂げたっすね。攻性植物。……いや、ある意味人類の半分を狙った効率的な搾取方法……なんっすかね?」
対男性用特化のデウスエクス。いやな予感しかしない久遠・翔(銀の輪舞・e00222)である。
「デウスエクスの中でも、攻性植物はとくに謎が多いですね」
これまで倒してきた攻性植物たちのことを思い出しながら彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)。
意志の無い蟲のような存在と思いきや、ときおりこうやって人間の心を探る様な、奇妙な行動を見せる個体も出てくる。
「本当に心があるのか、それとも擬態なのか……」
様々な考察をしながら悠乃。
「意志を持っているように見えるのも犠牲になった誰かの心を真似ているのかもしれませんね」
人間に寄生して宿主にするタイプも最近ちらほらニュースの話題になっている。あり得る話だ。
「師曰く。敵を知り、己を知らばなんとやら。というわけで、こんなものを用意してきました」
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)がスチャッと取り出したのはガチで本格的なビデオカメラだった。バズーカ砲を思わせるその巨大な望遠レンズがなんとも頼もしい。
「あ、カメラだ☆」
小鳥を思わせる甘い声と共に土門・キッス(爆乳天女・e36524)がカメラを覗き込むと、彼女のその大きな胸が、たわわん、と豊かに揺れた。今ちゃんとカメラ回ってました!?
「――おっと静かに。どうやら敵が現れたようだ」
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)が皆に注意を促す。彼女が見つめる視界の先には、バナナイーターを釣るための囮役を引き受けてくれたダスティ・ルゥ(名乗れる二つ名が無い・e33661)の後姿が見て取れる。その彼の眼前の藪が今、ガサガサと大きく揺れ動いている。
「あぁーん」
そして悩まし気な吐息と共に、自らの身体を蔦紐で縛り付けた薄緑肌の美女が現れた。
「まずは誘き出し作戦成功か。あとは三分間……頼んだぞ、ダスティ――!」
藪に隠れながらエールを送るモカ。
かくして大阪の平和は一人の少年に託された。集いし7人の仲間達はその過酷な運命の見届け人となる!
●3分間の攻防
仲間のケルベロス達が見守る中、ダスティの戦いが今始まる。
「あら、可愛い子。ふふ、私ってば、とってもラッキーだわ」
美味しい食事を前にしたように舌で唇を湿らせる緑の美女。
「わわ!」
既にダスティの周囲には蔦紐が張り巡らされていた。手錠をかけるように両手を縛られ、そのまま中空へと引っ張り上げられるダスティ。持参していたランプが彼の手から離れて足元に転がってゆく。
「あ、光源の確保ですね。ダスティさん、お見事です」
悠乃がその意図に気がつき一言。ナイスな機転だが、当のダスティはそのまま大変なことになってゆく。
「や、やめて下さい」
シュルル、と蛇のように巻き付いてゆく蔦紐。瞬く間に完成されたその縛りの型は――!
「あ、あれは!? 諸手上げ縛り及びM字開脚縛り☆」
知っているのか土門! 10歳の女の子が知っていていい知識なのか土門・キッス!?
「見ないで……」
身体の自由が奪われたダスティに出来ることと言えば、懇願ぐらいしかない。だが、美女はそのダスティの反応にいっそう加虐心をそそられた様子だった。
「大丈夫よ。痛いのは最初だけ。すぐに気持ち良くしてあげるから――」
蔦紐を伝いながらにじり寄ってくる美女。その姿はどこか女郎蜘蛛を思わせた。美しくも妖しい、女の魅力。
「本当に助けなくて良いのか? 苦しんでいる様に見えるが」
困惑しながらルコ。ダスティが大切な何か失うのはもはや時間の問題だった。
「でも、まだ1分しか経過してないでござる」
持参してきた愛用のラーメンタイマーで経過時間を確認するカテリーナ。いま救出に飛び出してしまえば敵に逃げられて任務失敗だ。
つまり、あと二分は耐え忍ぶしか無い。
「人の心をもてあそぶ、そして束縛する……そういう挙動の敵に見えますね。やはり進化の果てに知性と心を得たのでしょうか……?」
うーん、と考えながら考察を深めてゆく悠乃。
「蔦に絡まれて苦しんでいる美少年……いけないシーンを見ているのは解っているが、目が離せない」
そしてモカ姐さんはガン見である。やめたげてよお!
「拙者も後学のためにじっくりしっかり観察させて頂こう。見るのも勉強のうちでござる」
カテリーナも腕を組みながら真剣な表情で見稽古に励む。何をどのように後学に活かす気なのか。
「武士の情けっすから、あんまり見ないでやってあげてくださいっす……」
両手で顔を覆い隠しながら翔。なぜか、涙が溢れてきそうになった。
「ふふ、可愛いバナナね……」
さて、そうこうしてる間に、バナナイーターがダスティの強制的に開かれた脚の間に辿り着く。
「あ! そこ!? だ、だめぇええ!」
ダスティの悲鳴が夜空に響き渡る。何が起こったのかはご想像にお任せするが、一言で言うと色々と酷い。
「これは……何だか興奮してきたぞ……」
ダスティを見守りながらモカ。
「むー、キッスのほうが美少女で果実もたわわん、なのにー!」
頬を膨らませるキッス。張り合ってどうする。
「バナナにイーター……そうか、そういう事だったのですか」
碑文の謎が解けたように呟くジュリアス。そしてカメラは今も回り続けている。
「皆さん時間になったら動いてくださいっすよ……!? うっかり見すぎちゃったとかはなしっすからね!?」
すっかり観戦モードの仲間達を叱咤する翔。
「ふふ、強情ね。これならどうかしら?」
多種多彩な縛り技を次々と繰り出してゆくバナナイーター。
「あ、う……くっ!」
ダスティの肌に刻まれてゆくほのかに赤い縄の痕。羞恥にその端正な顔を歪める美少年。なにこれエロい。
期せずして、新世界の扉が開かれようとしたその瞬間――。
●バナナ退治
ピピピピ、と時を告げるアラーム音がラーメンタイマーから響き、我に返るケルベロス達。
「3分経ったでござる!」
「さぁ、皆さん行くっすよ!」
二振りの鉄塊剣を構え、ダスティの救出に駆けだす翔。
「でや!」
翔が刃を振り抜くとダスティを吊り下げていた蔦紐が切断される。そして落下したダスティを優しく受け止めるのはルコだ。
「よく耐えてくれた。ダスティ」
氷の様に冷たい印象を持つ彼女が、一瞬だけ微笑んだように見えた。
「お、恐ろしく長い3分でした……」
すぐさま残りの蔦紐を引き剥がし、仲間からケルベロスコートを受け取るダスティ。
彼を護るようにバナナイーターとの間に割って入るジュリアスと翔。
「さて、まずは皮剥きからですね」
「覚悟するっすよ! バナナイーター!」
バナナイーターに武器を交錯させながら突き付ける二人。
「あら、貴方達も素敵ね」
うっとりとした表情で二人を見据えるバナナイーター。舐めるような彼女の視線は、顔から始まり、そして下半身の一点へ注がれてゆく。
「とっても……美味しそう」
突きあげてくる衝動に身を震わせ、自らの胸を揉みしだく妖女。男性陣にぞわぞわとした悪寒が走る。
「さあ、縄痕を刻み付けてあげる!」
妖女がその腕を振るうと、まるで蛇のように蔦紐がうねり出す。
「くらいなさいな!」
放たれる緊縛の奥義! まず標的とされたのはモカだ!
「って、私か――!?」
おい、今の男性陣が狙われる流れだっただろ!? と抗議するモカ。
「えー、だって貴女もかっこいいし、とっても綺麗なんですもの……」
守備範囲が広い個体だった模様。不意を突かれて雁字搦めにされたモカ。その着物が微妙にめくれて非常に艶かしい姿になる。
「う、ぐ……締まる」
着物と縄、組み合わせとしては最強に近い。本人は大ピンチだが、ビジュアル的には無敵に近い。
「ひ、怯むな、かかれー!」
やられる前にやるしかないと判断し、次々と反撃を叩き込んでゆくケルベロス達。だが敵もデウスエクスの端くれ、そう易々と倒されはしない。
「さぁ、次は貴方よ!」
奔る蔦紐、緊縛の奥義が翔を襲う!
「く……!」
敵の攻撃を受け、翔が痛苦に顔を歪める。複雑に絡まったその縛りの型は緊縛の代名詞たる『亀甲縛り』!
「っ――!?」
攻めようとしていた矢先に動きを阻害されてよろけてしまう翔。攻撃の勢いそのままにずっこけると、その顔の先にバナナイーターの胸の谷間が待ち構えていた。
「はぐっ!?」
敵のおっぱいをまともに喰らい、鮮血を散らすことになる翔。ちなみに鼻から出てくる血である。
「翔ちゃん! 大丈夫!?」
すぐさまキッスがヒール・グラビティ『喜見城(ミトゥナ・ミトゥナ)』で翔を癒してゆく。
「オン・マ・カ・シリ・エイ・ソワ・カ☆」
豊穣神の加護を込めた癒しの舞踏。キッスの豊満な胸がたゆんたゆんと揺れる。ロリ巨乳、それは見ているだけで幸せになる究極の癒し。
「あ、ありがとうキッス……もう大丈夫っす」
キッスの援護を受け再び立ち上がる翔。だがダメージは回復したものの、鼻血は悪化した。
熾烈を極める前衛陣へのエロ攻勢。難局を打開するための鍵を握るのは攻めの要となる後衛のスナイパー達である。
「さあさあ、読者サービスの時間でござるよ!」
カテリーナがどこからともなく無数の手裏剣を取り出す。それは攻撃と同時に敵の着衣をズタズタに引き裂くという恐ろしき忍術『忍法マッパの術』!
「てや!」
裂帛の気合と共に一気に放たれる無数の手裏剣。
対するバナナイーター。その着衣といえば最初から葉っぱ3枚のみである。これ以上破っていいのか!?
「くぅ……!」
なんとか葉っぱだけは死守するバナナイーター。もはや全てがギリギリの戦いだ。
「さて、バナナイーターさん。あなたのその心が『怒り』によって縛られた時、どういう反応を示すか、私に見せて下さい」
後方から刻魂揺霊法(コクコンヨウレイホウ) で敵を撃ち抜くは悠乃。『御業』が与えてくる激痛に苛立ち、怒り狂うバナナイーター。
「く……邪魔をするんじゃないわよぉおお!」
冷静さを失い、悠乃にその攻撃の矛先を向けるものの、近攻撃しか持っていないバナナイーターには後方から十分に距離を取って狙い撃ってくる悠乃を捕らえることは出来ない。せっかくの攻撃の機会を失ってしまったバナナイーター。
そこに氷の粒子を纏ったルーンアックスを構えたルコが襲い掛かる。
「ひとつの獲物に囚われすぎたな。バナナイーター」
獲物を狙っている時こそ隙が出来る。それは大型の肉食動物を仕留めるときの知恵であり、狩人自身への戒め。
まるで雪原を吹き抜ける風のように一気に距離を詰めるルコ。
「くらえ!」
放たれるは達人の一撃。大きな裂傷がバナナイーターに刻まれた。そして――。
「見目麗しくも貴方は人に害なす存在。ゆえに斬捨てさせていただきます」
ジュリアスの振るう刃が闇夜に冷たく光る。もはや命綱たる地下茎を途切れさせてしまったバナナイーターには、これを逃れる術はない。
「い……や、ん」
妖女の身体が両断されて地面に沈み、その周囲に蜘蛛の巣の如く張り巡らされていた蔦紐もまた徐々に枯れ落ちてゆく。
バナナイーター、撃破完了だ。
●そして
戦いが終わり、大阪城に静かな夜が戻ってくる。
「まずまずだが、まだ物足りんな。もう少し私を愉しませてくれる奴は居ないものか……」
少し物足りなさそうにルコ。
「まぁ、ある意味で強敵だったっす……」
鼻血を拭いながら翔。ダスティも頷く。
「……僕も、二度と相手にしたくないです」
ダスティはいつの間にか動物変身で黒ウサギの姿となり、地に突っ伏していた。
「倒されてもバナナは残るのでござるな」
拙者アケビのほうが好みでござるが……と言いつつも、しっかりと腕一杯に果物を回収してゆくカテリーナ。
「食べれるんでしょうかね? 湯上り卵肌な樹皮に、骨格とかどうなってたんでしょうか?」
見たところ実はなんの変哲もない普通の果物のようだ。バナナを拾い上げて頭を捻るジュリアス。
色々と敵の生態に謎は残るが、ともあれ任務は成功だ。あとは同種の事件が起こらない様に祈るばかりであるが――。
「よーし、男の人たちがバナナイーターに誘惑されないように、次は美少女キッスが誘惑してあげる☆」
バナナイーターに負けじと着衣を薄めてゆくキッス。バナナイーターに巨乳美少女の商売敵が登場か!?
なお、どちらにせよ男達は絞り尽くされてしまう模様。あれ? なにも解決してねぇ……。
「図らずも我々は、このような事件が多発していますと注意喚起できる、それはそれはとても貴重な映像資料を手にしました」
カメラを掲げながらジュリアス。
「あ、バナナイーターの生態の一部始終ですね」
確かに貴重な資料です、と柔らかに微笑む悠乃。
「人々への注意喚起のためなら、動画投稿サイトにアップするのがいいんじゃないか」
とても真剣な表情でモカ。小声で「よし、何回でもあのシーンが見られる!」とか聞こえた気がするが、それは気のせいであってほしい。
「――!?」
長耳で会話を聞き取りガバッと飛び起きる黒ウサギのダスティ。たしかに敵の生態の一部が撮影されているが、ダスティが襲われている様もバッチリ写っている。
「すいません! お願いですからそれはやめてください! って、なんで縛るんですかモカ様ぁ!?」
まだ残っていた蔦紐で黒ウサギなダスティを縛ってゆくモカ。
「いや、せっかくだし私も緊縛の奥義を覚えてみようと思ってな」
どう見てもカメラを死守するためにしか見えない。
「や、やめてぇええ――!」
悲痛な叫びが大阪城に木霊する。
バナナイーターは倒したものの、ダスティの受難はもう少し続くのであった。
作者:河流まお |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 4
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