踊る骨格標本

作者:白黒ねねこ

●よくある学校の怪談?
 少し肌寒い夜、時計が零時をさす頃。誰も居ない校舎内に足音が響いていた。
 その正体は一人の少年、右手には懐中電灯を左手にはスマートフォンを握りしめていた。
「夜の学校はさすがに、不気味だな……」
 高校生くらいの少年だが、静まり返った夜の学校は怖い様だ。落ち着きなく、辺りを見回している。
「うちの高校には、校舎内を踊りながら、徘徊する骨格標本が居て、踊りの邪魔をされると襲いかかるっていう噂。オカルト研究部員の俺が確かめてやる。まずは……理科室か?」
 骨格標本そのものがあるのは理科室だ。もし、そこに骨格標本が無ければ、噂は本物ということになる。
 理科室に近づくにつれ、少年の歩調はゆっくりとしたものになっていく。そして、理科室の前に立つと、懐中電灯とスマートフォンを持ち替えた。
 録画ボタンを押し、自撮りで自己紹介をした少年はドアを映し、慎重に手を掛ける。
 覚悟を決めたようにドアを一気に開けたその瞬間、背後から少年の心臓が貫かれた。その衝撃にスマートフォンが落ち、どこかへと転がって行ってしまう。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 その言葉と共にズルリと刺さった物が引き抜かれ、少年はその場に倒れ伏す。気を失った少年の傍には、カタカタと楽しげに踊る骨格標本が残された。

●骨格標本を退治せよ
「どこの学校にも怪談話とか、七不思議とかあるもんなんっすねぇ」
 唐突に黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はそう言った。
「自分の学校の怪談話を調査しようとした男子高校生が、第五の魔女・アウゲイアスに『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったっす。アウゲイアスはどこかへ去っているっすけど、生み出されたドリームイーターが事件を起こそうしているっす。他に被害者が出る前に、皆さんに退治してほしいっす!」
 ダンテは勢いよく頭を下げた。
「ドリームイーターは現場になった学校にまだ居るっす! 今から行けば、学校から出る前に倒せるっすよ。このドリームイーターは噂をしていればそこへ引き寄せられる性質があるんで上手く活用してくださいっす。あ、でも理科室の前には、被害者の高校生が倒れたままなんで、注意してくださいっす」
 そして、ダンテは苦笑いを浮かべた。
「ドリームイーターなんっすけど、自分が誰かを問いかけて、答えられなければ襲いかかってくるっすが、外見がその……骨格標本で、それが愉快に踊って現れるっす。インパクトが凄いっすけど、油断しちゃだめっすよ。踊りながら体当たりしたり、回転しながら足払いしたり、変な踊りで怒らせてきたりしますんで」
 かなりシュールっすけど、と、ため息を吐いたダンテは姿勢を正した。
「せっかくの人生、眠ったままなんてあんまりっす! 彼がこれからの青春を楽しく過ごせるように、皆さん、助けてあげてくださいっす!」
 言い切ったダンテはケルベロス達に向かった頭を下げたのだった。


参加者
セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)
天津・総一郎(クリップラー・e03243)
ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)
ルイ・カナル(蒼黒の護り手・e14890)
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)
デニス・ドレヴァンツ(月護・e26865)
弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)
リネ・アステラ(砂漠の燈・e37250)

■リプレイ

●骨格標本、現る
 零時過ぎの体育館に年齢も、性別も違う男女が集まっていた。教師でも無ければ、ましてや生徒でも無い。大学でなら見かけたかもしれない面々が集まっているのは、彼らがケルベロスだからだ。
 灯りが点いた体育館の中で最初に口を開いたのは。
「ダンスを心得る骸骨などが居るとは、本当でござろうか……」
 弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)だった。無表情だが仕草や声のトーンから、彼女が興味深々なのがわかる。その足元で、太っちょ羽猫のむらさきが尻尾をユラユラとさせていた。
「いるなら是非、どの音楽に乗せて踊るのがいいか、聞くのも手でござるか」
「そうね、私としても興味深いわ」
 頷いたセレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)は頬に手を当て、ウフフと夢見る少女の様に笑う。
「あぁ、エイミー夫人と一緒に踊らせられたら素敵なのに!」
「エイミー夫人?」
 リネ・アステラ(砂漠の燈・e37250)が首を傾げて、聞き返した。
「私の部屋に居る骨格標本よ。それは、それは素敵でね……」
 圧倒されるリネをよそに、セレスティンはエイミー夫人や骨の話を始めていた。
「いやァ、この手の噂はほんと何処にでもあるモンじゃのォ、そン中でも、なンちゅーか……王道?」
「骨格標本だけなら、王道だけどな。踊るって何だ、踊るって……何で踊るって噂にした、ここの生徒」
 一部の女性陣の様子を視界に入れつつ、ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)と天津・総一郎(クリップラー・e03243)は困惑気味に言う。
「ただ徘徊すンじゃのォて、踊るっちゅーのがなァ、どンなダンス踊るンじゃろーな?」
「確かに、骨格標本や人体模型が動き出す話は定番ではありますが…踊るとなると珍しいですし。どういった踊りなのか、興味はありますね」
「あ、わたしも! 敵なのはわかってるんだけど、ちょっと楽しみで……って、ラーシュ、頭ペシペシしないでよー」
 ドミニクに頷いたのはルイ・カナル(蒼黒の護り手・e14890)とマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)の二人だが、マイヤは相棒であるボクスドラゴンのラーシュに、頭を二回ほど小突かれていた。肩に乗ったラーシュが、ジト目をしているのは気のせいではない。
 そんな一人と一匹の様子をデニス・ドレヴァンツ(月護・e26865)は微笑ましそうに見つめていた。
 そうケルベロス達が噂をしていたその時、体育館の照明が一気に落ちる。
 驚きの声が上がり、照明を持って来ていた面々が灯りをつけ始めたその時、カタタンとリズムの様な音が聞こえてくる。そして、舞台のスポットライトが点いた。
「そこの方々にお尋ねしたい」
 スポットライトに照らされた骨格標本が、ポーズを決めながらケルベロス達に問いかける。
「わしは、何者なのでしょうか?」
「え、えーと、踊る骨格標本?」
「ここのダンス部の部長さん? 面白い格好だねー」
 マイヤは若干引きながらも真面目に答え、リネはスマートフォンで撮影しながら答えたが、まるで容疑者の様に伸びた横一文字のモザイクに、笑いを抑えながら答えたため、手元がかなりブレている。
「エイミー夫人のお友達?」
「知らん!」
 セレスティンは小首を傾げて答え、総一郎は腕を組みながらきっぱりと答えた。
 ケルベロス達と骨格標本の間に沈黙が下りる。踊るのをいったん止めた骨格標本は、考える様な仕草をした。
「わしはダンス部の部長ではないですな、エイミーというご夫人ともお友達ではないですぞ、そちらの青年はいっそ、清々しいですなー」
 カカカと笑った骨格標本はマイヤに向かって一礼した。
「きちんと答えてくれた事、嬉しいですぞ。しかーし、間違っている方々が多いですなぁ」
 ヒラリと舞台から降りた骨格標本に、ドミニクは好戦的に笑う。
「お、やるか?」
「こっちは、いつでもいけるぜ!」
 帽子をかぶりなおした総一郎はグローブを嵌めなおし、構える。その隣にセレスティンが歩み出た。
「それでは皆様、わしと踊りで勝負じゃぁぁぁ!」
「さぁ一緒に踊りましょう、骨のパートナーは大歓迎よ!」
 この一言を合図に、戦いは始まったのだった。

●イラッとくるダンス?
「わしからいきますぞ! あ、それ!」
 そう言って骨格標本は踊りだした。だが、その踊りはどこか可笑しい。いや、踊りなのだろうか? 何とも形容しがたい奇怪な動きを骨格標本はしている。
 踊っている本人は黙々と踊り続けているため、ふざけている訳ではなく本気で踊っている様だ。その様子はかなり、シュールだ。
「何故でしょう、イラッときますね」
 ルイにはそう感じられたようだ。彼の武器を握る手からギリギリと音がしている。
「ルイ、落ち着くんだ!」
 異変に気が付いたデニスが声かけをしたのと同時に、セレスティンと総一郎が動いた。
 硬質化し槍の様になった黒い液体と、牙をむいた気弾が骨格標本を襲う。黒い液体はかわせたが、気弾はかわせず、両腕に食らいつかれた。
 そこに若干、目の据わったルイが飛び込み、蹴り上げるもかわされてしまう。無言になる彼にマイヤが慌てて、オーラを飛ばして回復した。一方、相棒を守る様に立ち塞がったラーシュは、骨格標本にブレスを吐いていた。
「……やはり、シュールだな」
 ブレスをあの踊りの動きのまま避ける骨格標本に、デニスは呟く。何故、踊ろうと、むしろ、これを踊りと認識している理由を問いかけたいと思ってしまったが、やめておこう。
 ハンマーを自身が愛用する銃の形に変形させ、構えて放つ。右足の付け根を撃ち抜かれ、骨格標本が一瞬だけ、よろめいた。
「うーむ、小生が思っていたダンスより、いけてないでござるな」
 骨格標本の踊りをまじまじと見ていた、むささきは残念そうに肩を落とした。だが、すぐに何かを思いついたのか、ぐんじょうと骨格標本を交互に見る。そして、ぐんじょうの肩にポンと手を置いた。
「ほら、ぐんじょう。ダイエットに丁度良いかもしれんでござるよ。ほら、あんな骨だけになっているでござ……」
 言い終わらないうちに、ぐんじょうはサッと目をそらした。聞こえませーんと言いたげな態度に、ため息が零れる。
「ぐんじょう、後でゆっくりと話すでござるよ。さて……」
 目を閉じ、むささきは感覚を奥へと向けて研ぎ澄ませる。そして……。
『研ぎ澄ませ、凍てつく感覚を呼び起こし、眼前へ向かう礎となれ』
 仲間を奮い立たせるように歌い始めた。その効果は前衛組に現れ、彼らの顔に笑みが浮かぶ。
「おー、こっちの方がいけとるのぉ」
 銃に弾を装填したドミニクは、骨格標本に照準を合わせた。
『大人しゅうせンなら、喰い千切ってやらァ』
 神速の早撃ちで、骨格標本の四肢を撃ち抜いていく。右足の付け根をもう一度、撃ち抜かれた骨格標本はピキリと動きが少し遅くなった。
「支援するよ!」
 リネの声と共に輝く粒子が前衛組を包み込んだ。
 支援を受けたセレスティンや総一郎が果敢に攻め、それを仲間達で援護する流れが続いた。
『結びし誓約の元、我が呼びかけに応えよ。東方を守護せし者、東海青龍王敖広』
 青龍の雷が宿る武器をルイが振るった瞬間、骨格標本が雷に打たれた。その様子はまるで……。
「リ、リアルギャグ漫画だよ、これー!」
「マルヴァレフさん?」
 ツッコミを入れたマイヤにルイは半眼を向けた、もちろんラーシュもである。
「気持ちはわかりますが、真面目にやって下さい」
「ご、ごめんなさい」
 と、怒られていたり。
『――逃がしはしない』
 デニスは自分の元に現れた白い狼を一撫でし、骨格標本を指さした。
「さぁ、行っておいで。食事の時間だよ」
 主の一言と共に狼は駆け出し、骨格標本に食らい付く。その様子はまるで……。
「テレビ番組にこんなのが、あったでござるなぁ」
 むささきの一言で呼び出した本人が、吹き出してしまうなどあったが、確実に骨格標本を追い詰めていく。そして。
「ぬおわぁっ!?」
 奇妙な悲鳴と共に骨格標本の左腕が吹き飛んだ。

●フィナーレは黒い舞姫と共に
 動きにキレを無くし、片腕が吹き飛んでもなお、骨格標本の闘志は消えなかった。
「まだまだ、いけますぞー!」
 ひび割れた足で駆け出し、総一郎へと体当たりする。それを庇ったのはむささきだ。
「くぅっ……」
「ありがとな、助かる!」
 前へと飛び出し、骨格標本へ一直線に向かう。勢いをつけその拳を叩きこんだ。
『お前を仕留めるのは……俺の拳だッー!』
 骨格標本の肋骨が砕けるが、まだ、足りない。倒すには後、一撃足りなかった。
「頼んだぜ、ウィンディア!」
「えぇ、任されたわ」
 入れ違いざまに言葉を交わし、セレスティンは舞う様に骨格標本に近づいた。
 ピンヒールが鳴り、耳飾り煌めく様はとても優雅だ。骨格標本の手を取り見つめた。手を取られた骨格標本はビクリと震える。
「ダンスに誘ったのはそちらよ?」
 嘲笑を浮かべ、一気に距離を詰めて囁く。
『生と死は、等しく全て私のもの……』
 ガクリと骨格標本が膝をついた。なけなしの体力が奪われ、そのまま倒れこむ。
「ま、参りました……」
 最後にそう言い残して、骨格標本は砂の様に崩れて消えたのだった。

●真相は手ブレの彼方へ
 体育館の片づけやヒールを終え、少年を迎えに行った一行。目を覚ました少年に驚かれたものの、事情を話した事で少年は落ち着いた。
「そ、そんな事になってたんですね。ありがとうございます、助けてくれて」
「まぁ、無事でよかったわ」
「ですが、こういった事は程々に! 研究熱心なのは結構ですが、あまり無茶はなさらぬよう……折角の発見も、貴方自身が無事でなければ公表もしようがないのですから。実際、怪談よりも厄介な目にあっていらっしゃいますしね」
 苦笑したセレスティンと叱っているルイに、少年は縮こまる。
「確かに気持ちは分かるンじゃが、夜の探検は程々になァ」
 ドミニクに頭を撫でられ、少し気分が盛り返したのか少年は顔を上げた。
「皆さん、踊る骨格標本を見たんですよね。どんなのでした?」
「意外と根性あるな、キミ」
 呆れ顔のデニスに少年は笑う。あんな目に遭っても彼の好奇心を押さえる事は出来なかったらしい。
「動画になら撮ってあるよ、見る?」
「ぜひ!」
 リネからスマートフォンを受け取り、再生ボタンを押した。が、そこにはブレまくって、何が写っているのかわからない映像があるだけだった。
「あ、ごめん。失敗してたみたい」
「不思議は不思議のままで終わらせとくのも、一つのロマンかもしれないな」
 気を遣うように総一郎が少年の肩を叩く。
「そ、そんなぁぁぁ!」
 少年の情けない声が、夜の校舎に響き渡ったのだった。

作者:白黒ねねこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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