落ちたビンが床にぶつかる。転がる筒の、栄養ドリンクのラベルを眺め、青年は時計を見やった。午前九時過ぎ。大学では一時限目の始まる頃だ。がくりと頭を伏せる青年。
「……あー、めんどくせぇー……」
青年の耳に、時計のコチコチと時を刻む音だけが響く。かたわらにはいくつも並んだ栄養ドリンクの空きビン。強壮のために毎日飲んではいるものの、一向に効果が出る気配なし。もはやゴミを出すのはおろか、ゴミ箱に投げることすら面倒。とにかく、眠い。
「ちっくしょ……何がやる気を引き出すだクソめ。なんもやる気でねーよチクショー。単位落としたらどーしてくれんだクソったれ……」
死んだ魚めいた目でブツブツと言う。閉めっぱなしのカーテンを透かす光が暗い自室を照らす中、彼はそのまま突っ伏していた。
時間が、無為に過ぎていく。
●
「……ユズル、万年五月病」
「ノーッ! 断じてノー! 仕事してるじゃんちゃんとー!?」
さらっとした口調のミッシェル・シュバルツに、跳鹿・穫は焦った顔で抗議した。
そんなこんなでゴールデンウィークは終了。春も過ぎ、五月に入った……のはいいのだが、ここで困った事態が起きた。ケルベロスの調査の結果、五月病の病魔が大量発生しているというのだ。
この病魔の被害を受けるのは、今年合格したばかりの大学生。命にかかわる病気ではないので、放置しても死にはしない。ただ、下手にこじらせてしまえば、彼は社会からドロップアウトしてしまうだろう。ケルベロスの力を以って、この病魔をどうにか退治してほしい。
今回被害に会ったのは唐沢君という男子大学生。病魔に侵された彼は自室に閉じこもり、何をするでもなくぼーっとしている。家を訪ねれば会うことはできるが、彼の様子を見ると居留守を使われる可能性もある。その場合は鍵を破壊するして踏み込んでもいい。
唐沢君に遭遇した後は、チーム内あるいは現地医療機関のケルベロスウィッチドクターに協力を求め、病魔を引っ張り出して倒してほしい。
五月病の病魔はパジャマ姿に枕を抱えた羊少女の姿をしており、敵に強烈な睡魔を与えて深い眠りに誘おうとする他、羊毛めいたふかふかの物体を放出してくる。うっかり眠らないように注意だ。
「五月病の病魔ってなんかよくわかんないけど……ともかく、よろしくね!」
参加者 | |
---|---|
ファン・バオロン(剥ぎ取りは六回・e01390) |
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470) |
メアリベル・マリス(グースハンプス・e05959) |
虹・藍(蒼穹の刃・e14133) |
スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678) |
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801) |
黒岩・白(シャーマン系お巡りさん・e28474) |
エリファス・ヴァーミリオン(炎落のテスタロッサ・e35636) |
某アパート、駐車場にて。
「しっかし、五月病の病魔とか……まさにこの時期にぴったりなやつだな……」
「ミョーに季節感重視っスよねえ。毎度毎度悪質っスけど」
本をあらためるエリファス・ヴァーミリオン(炎落のテスタロッサ・e35636)に、最後の車を送った黒岩・白(シャーマン系お巡りさん・e28474)はつぶやいた。メアリベル・マリス(グースハンプス・e05959)が小首を傾げる。
「メアリ知ってるわ。急にやる気がなくなるメランコリックな心の病よね」
「そうだな。色々と理由はあると思うが」
瞑想の姿勢で薄目を開き、ファン・バオロン(剥ぎ取りは六回・e01390)。メアリベルは隣に座る。
「それで、その病魔をミスタ唐沢から追い出すのがミス虹よね!」
笑顔が、深呼吸を繰り返す虹・藍(蒼穹の刃・e14133)に向けられる。一呼吸する度に、両手に虹の粒子が集まる。それを幾度か続けたのち、広げた青い翼を脈打つように輝かせたまま、藍は背後を振り返った。
「眸さん、どうかしましたか?」
「ム?」
蒼い瞳が、あごに左手を当てた君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)のものとかち合う。眸は瞬きし、浅くうなずく。
「うム。病魔召喚は初めて見ルものデな。このようにすルのか……興味深イ」
「まぁ、あんまり見る機会もないしな」
言いながら、エリファスはロッドを点検し始める。直後、藍の足元で鳴き声。見下ろせば、子猫が甘えた声で藍の足に頬ずりしていた。藍はしゃがみ、頭をなでる。
「あのね、今から戦いがあるの。向こうに行っていてくれると助かるわ」
嬉しそうに子猫鳴いた子猫は駐車場から出ていった。
●
一方その頃、アパート内唐沢の部屋前。
ドア越しにインターホンを聞くアジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)は、五度目のコールで腕を組んだ。
「ふーむ。やはり出てこないか……」
コールが止んだ部屋からは、物音ひとつ聞こえてこない。静寂の中、スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)が肩をすくめる。
「ま、こんぐらいは想定内だ。予定通り行こうぜ」
「そうするか。フォローは頼むぞ、リンハート」
うなずき返し、アジサイは握り拳で扉を叩いた。
「唐沢、いるんだろう! 少し話をさせてくれ」
やや強めの打撃音。少しの沈黙の後、気だるげな声が微かに届いた。
「……新聞、間に合ってまーす」
アジサイはスピノザと顔を見合わせ、ドアに向き直る。
「聞いてくれ。今、お前は怠くて仕方ないんだろう。あまりに怠くて大学にも行けない。違うか」
再び無言。部屋の奥にいる青年に、アジサイがさらに声を投げかける。
「それはお前に憑りついた、病魔というやつの仕業だ。俺達はケルベロス。病魔を払い、お前を治しにここに来た。少し時間をくれないだろうか」
間を置かず、深い溜め息が響く。
「……漫画の見過ぎ」
アジサイは首を振ってスピノザに目配せ。彼は頭をかくと、アジサイと入れ替わってドアに立つ。
「お前さ、しばらく学校行けてねーんだろ? 俺ら、あんたのダチに見てきてくれって頼まれたんだ。顔見ないつって、だいぶ心配してたんだぜ。それに、単位取れなきゃ困るんだろ?」
返答なし。スピノザはスラックスから出した合鍵を鍵穴に差し込んだ。
「しゃーねえ。そんなら悪いが入らせて……ん?」
鍵を回した手を止めノブをひねると、ドアはあっさり開かれた。スピノザの横から、アジサイが中をのぞき込む。
「……開いてるな。チェーンもなしか」
「戸締りする気力もねーってか。こりゃ本格的に重傷っぽいな」
小さくつぶやき、スピノザは紺の海賊帽を頭に乗せた。
●
「……お?」
白が駐車場からアパートを見上げる。窓が開き、青年を担いだアジサイとスピノザが飛び出した。
「すまんな。待ったか」
「問題なイ。唐沢だナ?」
眸が問うと、アジサイは首根っこをつかんで青年を掲げる。吊るし人形めいてだらんとした唐沢に、ファンは目を細めた。
「……生きてはいるな?」
「まぁな」
スピノザが海賊帽を目深に下げる。
「けど、さっきからこの有様だ。早いとこ片付けてやろうぜ」
「わかりました。ではアジサイさん、唐沢さんと重ならないように……そうです」
ぶら下がる唐沢から離れた位置に藍が立つ。蒼翼を広げ、組んだ両手で銃を模す。手と翼に集まる虹色の粒子。それぞれの場所で身構える面々を見る。
「準備はいいですか?」
仲間が無言でうなずくと同時、藍は指先を唐沢に突きつけた。
「では行きますッ! 邪悪なる病巣、忌むべき魔物。その身より速やかに出で去るが良いッ!」
翼が一層強く輝き、指先から虹色の光がほとばしる。光線は唐沢にえぐり込み、曲がった背に光球を生む。
「がッ……ぐぉぉぉぉぉ……ぐはッ!」
光球が弾け、パジャマ姿の羊少女が弾き出された。枕を抱きしめ硬い地面に尻餅をつく。
「ふぎゅっ!」
転がった病魔がもそもそと動き、目をこする。口元がへの字に曲がった。
「いたぁーい! なーにすーるのーっ!」
「唐沢を頼むぞ」
「はい!」
唐沢を受け取った藍が移動。魔導書を開いたエリファスは目前に浮く杖に魔力を注ぐ。
「んじゃ、やるか」
「こんにちは、ふわふわもこもこの羊さん! メアリ達と遊んで頂戴?」
病魔は頬を膨らませ、枕を強く抱きしめる。変形するほど強く力を込めたそれを、やおら宙へ投げ出した。
「やーあっ!」
ボフッ! 噴出した白い綿毛が病魔を飲み込む。そびえる羊毛の山にスピノザは獣に弾丸装填。
「やれやれ。本体も引きこもんのかよ」
「なに、さっきと同じだリンハート。……力尽くで引きずり出すッ!」
吠えるアジサイと共にファン、メアリベル、白が弾かれたように走り出した。その背後で時計の針めいた回転を見せるエリファスの針が稲妻を放つ!
「雷壁、展開……! これでしばらく凌いどけ」
仲間に降り注いだ雷が仲間達の浄衣に変わる。その下のかぎ爪を振り上げたファンが特攻! 負けじと加速したメアリベルが乳白色の戦斧を携えて回転。斬りかかる!
「アナタの血はぁー! 何色かしらっ!」
「フンッ!」
爪と大斧の連撃が白綿の山を削り取る。刈り取られて散乱する羊毛の中、跳躍したアジサイが傾きかけた山中腹を黒い斧で一閃した。浮き上がるフタの下、病魔は枕を掲げて陽光を遮る。
「んゃーっ!」
「見ぃつけたっ、ス!」
「行くぜッ!」
奇声を上げる病魔の頭上に白とスピノザが跳躍接近! スピノザにまとわる電光が銃口に吸い込まれ、撃鉄が雷弾を弾き出す。うがたれ弾ける枕の中身が吹き荒ぶ中、白はナイフを回した。腕先を覆う半透明のロボ狐!
「幽っ!」
狐の鼻が打ち込まれ衝撃波が空気を打ち割る! 綿に埋め込まれた羊娘は涙を浮かべ、綿山を手あたり次第に千切って投げた!
「むきゃーっ!」
「ぼふ!」
「ぼあっ!?」
羊毛の塊が二人の顔面にぶつかり吹っ飛ばす。放物線を描く二人の奥、浮遊する昭和学生めいたビハインドが両手を突きだし緑の糸で病魔をきつく締め上げた。
「んぎゃっ!」
「キリノ、そのままダ」
暴れる病魔に向かって眸が飛び出し、黒鉄のかぎ爪を振り上げる。エメラルドグリーンに輝くそれを、角生えた頭部めがけて振り下ろした! 病魔は縛られたまま羊毛の海に潜ってギリギリ回避。斬れた髪と綿毛が一緒に跳ね散る!
「いーたーいぃぃぃっ!」
綿の中からくぐもった声。眸は即座にブーツの底でボロボロの枕を蹴って飛び下がり、ビハインドに指示を出す!
「キリノ、前を頼ム」
光のヒモを引っ張るキリノが滑空! 埋もれた一方で病魔は足をばたつかせ埋もれた頭でヘッドバット! 従者ごと眸を襲う羊毛塊の前にファンが割り込み背を向ける。空中で一回転、肩甲骨を白い綿毛に打ちつけた!
「真武活殺法・巌抜きッ!」
衝撃を受けた綿はあっけなく四散。だが欠片が着地した眸やスピノザに降り注ぐ。その間に真綿を引き裂いたメアリベルとアジサイが病魔に肉迫し、それぞれの斧を掲げる!
「たんぽぽみたい! ロマンチックねっ!」
「寝たいならお前一人で永遠に寝ていろッ!」
落ちる断頭の斬撃! 大斧が頭をかち割るその寸前、病魔の口が大きく開いた。
「んみゅ、ふぁぁぁぁぁ……」
「む……!?」
「ふわ……」
軌道が逸れて斧が空ぶり綿の地を打つ。ぐらつく二人の間を蒼い矢と化した藍の飛び蹴りがつんざいた! 顔面強打でキリノのヒモが千切れて病魔が吹っ飛ぶ!
「ふぎゃあっ!」
綿山から弾き出された羊娘が地面を転がりもんどりうった。藍がぐったりしたアジサイを、メアリベルのビハインドが娘を抱えて下がる。真綿を飛び越えて走る白とファンの後方、藍は振り返り叫ぶ。
「エリファスさん、治療を!」
「はいよ」
バラバラめくれる魔導書を手にエリファスは短く祝詞を唱える。地面に寝そべったスピノザと片膝立ちで頭を揺らす眸が力なくつぶやいた。
「あー……もういい。何もしたくねー……戦いとかマフィアの仕事とかよ……心がすり減るだけだぜ……」
「すまなイ、虹……スリープモードに、入っテも……善イだろうか」
「ダメに決まってるだろ。ちーとばかし痛いが我慢しろよ。ていうかしっかりしろよ!」
エリファスが静かに叱咤しロッドが天を突く。同時に眠りかけた四人に落雷が落ち強制的覚醒! 一方羊毛を挟んで反対、座り込んだ羊娘は硬い地面をばしばし叩く。
「もーやぁーだ! 寝ーるーの!」
「うおっと!」
白が一歩下がって間欠泉めいて吹く羊毛柱をすんでで回避。低姿勢で走るファンの指先で紫炎が収束、カミソリじみた刃に変わる!
「地獄の底まで、灼け堕ちろッ!」
「むぅーん!」
病魔の丸まる背中に炎刃の爪を振り下ろす。寝間着を包む綿毛が黒焦げ焼失し、裂けた肌が露出する。浅い。ファンは病魔の真下を戦槌で打ってうち上げてさらに蹴り上げた!
「真武刃斬刀法・天蓋断ち!」
宙に跳ね飛ぶ羊毛の玉。綿毛柱を避けきった白は鋼鉄狼に覆われた左腕を突き上げあぎとを開く! 機関銃めいた速度で飛ぶ幽玄の牙が毛を削る。雪雲めき綿を落とす病魔の真上に藍が飛び出し縦回転!
「眸さん、パスッ!」
ローラーシューズのかかと落としが地に落とす! キリノの念力で持ち上がった山の下、眸は地面を黒鉄の爪で引っかきながら落下点めがけて疾走。巻き上がる翡翠色の火花!
「失礼しタ。スリープモードは撤回すル」
緑の瞳が白い影に狙いを定め、零距離でアッパーを繰り出した。柔らかな毛を刻むエメラルドの剣閃。その光を突っ切った弾丸がオウムに変じて病魔をつかむ。
「俺としたことが、仕事の愚痴を言っちまうなんてな……どうかしてたぜ」
「目覚めたようで何よりだ。そらっ、内なる力を解き放て!」
エリファスの電撃を浴びたスピノザが次弾装填。羊毛はがれた羊娘の額を狙って呪弾を発射! 額から血を流して倒れた病魔をメアリベルのビハインドがリボンで縛り、アジサイとメアリベルが突撃していく。仰向けに倒れた少女は大粒の涙を浮かべた。
「うっ……うっ……」
滴がこぼれたその瞬間、病魔は大声で号泣し出す!
「うえええええええええええええっ!」
泣き声に応じて大地が揺らぎ、噴き出す羊毛が少女を取り込む。山の両側から真っ白な丸太の腕が飛び出し、欠伸めき大口を開けた。すさまじい吸引力が八人と二体を捉える!
「こいつ……まだこんな力を残していたか!」
「向こうもようやく起きた感じか。やれやれだ」
メアリベルをつかんで踏ん張るアジサイに、ロッドを突き立てたエリファスが混ぜ返す。綿毛の巨人は眸を庇って立つ白の制圧射撃を腕で払いなおも吸引! その時、エリファスのロッドがほのかな緋色に輝き、巨人の足元に陣を生み出す!
「異次元より出でし異形の草木よ。我が命に応じて、敵を喰らえ!」
緋の魔法陣が強く輝き三本の赤いツルが伸びあがった。ツルは先のハエトリグサめいた大口を開き巨人に食いつく! 悲鳴を上げて吸引を止めた直後、アジサイは斧を持って走り出した! 植物を離そうと暴れる巨人の拳を潜り、斧を振り抜く!
「そこだ」
綿の巨腕が半ばで千切れた! 同時に植物が巨体を吸い込みむさぼり食らう。断末魔とともに消え去る巨人にメアリベルは真紅のイバラが絡んだ斧を打ち振る! 残る綿にめり込んだイバラは中の病魔を引きずり出して弧を描く。咲き乱れるバラの花と甘い匂い。
「悪い子には……おしおきよっ!」
放られたイバラに向かって藍が跳躍。虚空をかく指先に虹に光る銀弾を作り、羊娘に突きつける!
「心臓に楔を。星虹っ!」
指から飛んだ銀弾はイバラを貫通して病魔に命中! 羊娘は膨らむ閃光の中で絶叫し、コットンとして爆散した。
●
「いやその……ほんとに、あんがとございました」
後ろ髪をかきながら、唐沢が頭を下げる。
「ていうかその、すいませんでした。なんか色々、失礼なこと言っちゃったみたいで……」
謝罪のお辞儀に、スピノザは軽く肩をすくめた。
「いいって。別に気にしてねーよ」
「気分はどウだろうか」
唐沢をまじまじと眺めつつ、眸。唐沢は自分の手の平に目を落とす。
「なんていうか、なんであんなんなってたんだろって。憑き物が落ちたってか……」
「憑き物か。言い得て妙だ」
ファンが微笑するのと同時、駐車場に藍が滑り込む。
「お待たせしました。住民の皆さんに説明してきましたよ。それとスピノザさん。大家さんに鍵」
「やべ、忘れてた。行ってくるわ」
藍とすれ違い、スピノザは慌ただしく駐車場を後にする。紺スーツの背を見送ると、藍は唐沢に向き直る。
「ってことで、後は任せて。せっかく受験勉強頑張って入った大学でしょ? キャンパスライフ、謳歌したまえよ!」
「今しかできない、掛け替えのない経験だ。大切に学ぶといい」
「きっと、大学で友達が待っテいる。行ってらっしゃイ」
「あ、はい! すんません……ありがとうございました!」
再三頭を下げると、唐沢は駐車場を走って出ていく。やや離れた所で一部始終を見ていたメアリベルが、羊毛のベッドでばた足をする。
「いいなぁ。メアリも大学行きたい! サークルで合コンとかするのでしょ? ところで合コンってなあに? 大人はみんなするって聞いたわ?」
好奇心に光る目が、羊毛を集めるエリファスに向く。当の彼は手を止めないままさらりと言った。
「どこから得た情報だそれ。アジサイ、パス」
「俺か!?」
水を向けられたアジサイが腕を組む。数秒難しくうなり、首が傾く。
「合コン、合コン……ウーム、何と言えばいいか……白、頼む」
「僕っスか」
顔を上げた白が犬耳を動かしあごに手をやる。
「あー……んと、なんて言ったらいいっスかね。……飲み会?」
「それって会社でやるものじゃないの?」
「大学でもやると思うっス。一応」
釈然としないメアリベルに、二人は首を傾ける。
そうして、五月のある日は過ぎるのだった。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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