アウトレット&遊園地へ行こう!~撫子の誕生日

作者:波多蜜花

●遊ぶのも、買物も!
 五月も半ばを迎えた頃、信濃・撫子(撫子繚乱のヘリオライダー・en0223)がやけに楽しそうな、ウキウキとした表情をするようになったと猫塚・千李(三味を爪弾く三毛猫・en0224)が首を傾げた。はて、五月に何かあっただろうかとカレンダーを見ればいつの間にか花丸が書かれていて、千李はぽんっと手を打ったのだった。
「誕生日か」
「そうなんよ~! 折角やからその日は買物に行こかと思ってな?」
 撫子が買物に行くと言えば、それは1日掛かりになる事も珍しくない。どこに行くのかと問えば、アウトレットモールに行くのだと言う。
「小さな遊園地も併設されとるとこでな、1日で回りきれるかどうかってくらいなんよ」
「へえ、それなら皆も誘って行けばいいんじゃねぇの?」
 千李がそう言うと、撫子がパチリと目を丸くする。
「ええねぇ、それ! 折角やし皆も誘って行こか!」
 破顔した撫子が千李の腕を引っ張ってヘリポートへ向かったのはすぐの事だった。

●お誘いは突然に
「小さいけど遊園地もあるアウトレットパークなんよ、大人も子どもも楽しめるようになっとるんやって!」
 満面の笑みを浮かべた撫子が、アウトレットパーク&遊園地のフライヤーを興味を持ったケルベロス達に配っていく。
 アウトレットパークの店舗名を確認すれば、大抵の物はあるのがわかる。種族特徴に特化した衣類を扱う店も多々あり、特に今は水着や浴衣の品揃えがいいようだ。
「水着と浴衣、これからの季節に向けて早めにゲットするんもええと思うんよー。もちろん普通の服も鞄も靴も化粧品もあるよってな、気に入るもんがひとつはきっとあるはずや!」
 遊園地の乗り物に目を通せば、こちらも大規模な遊園地にあるようなアトラクションはないけれど、ジェットコースターに観覧車、メリーゴーランドといったものがあるようだ。
「お化け屋敷なんてのもあるみたいだぜ」
 カップルでも友人同士でも、間違いなく楽しめるだろうと千李がフライヤーを指で弾く。
「1人で行っても楽しいと思うんやけど、皆で行った方がきっともっと楽しいやろからな? 折角やから皆の都合さえ良かったらウチらと一緒に行かへんやろか」
 ウチら、と言う言葉に自分は問答無用で参加なのだなと千李が悟った顔になったのはまた別の話。
 日頃の激務のリフレッシュも兼ねて、思いっきり遊びに行くのは如何だろうか?


■リプレイ

●本日晴天
「白馬! ボク、白馬に乗りたいです!」
 メリーゴーランドを指差してシェリンが言うと、レンカが、
「メリーゴーランドって白馬だの馬車だの、童話の世界みてーだよな。結構好きだぞ!」
 と、楽しそうに笑う。
「オレは白馬もいいけど、ペガサスとかがいいな!」
 どうせ乗るならカッコいい馬がいいと、ラルバも乗り気だ。
「写真なら任せてくださいね!」
 列に並んだ3人を捉えたカメラのシャッターを、シルクが切る。パシャリといい音がして、後ろから眺めていたムギと彼方にも笑顔が浮かぶ。
 見事白馬をゲットしたシェリン、ペガサスを見つけてご機嫌で跨ったラルバ、迷ったけれど馬車に決めたレンカを乗せたメリーゴーランドが軽快な音と共に回りだす。ゆっくりと動くそれを楽しむ3人に、シルクが声を掛けた。
「撮りますよー! こっち向いてくださいねー!」
「わ、わ! ラルバさん、レンカさん、シルクさんが!」
「お、写真を撮ってくれるのか。なら、カメラに向かってピースだぜ!」
 ピースサインを向けたラルバに、シェリンも倣うように笑顔とピースを向ける。
「メリーゴーランドと美少女、だーいぶ絵になってるだろ? 可愛く撮ってくれよな」
 赤い瞳を輝かせてレンカが言えば、シルクの任せてくださいという声と、シャッター音が響いた。
「いやー流石に見学にしたが、こうやって皆が楽しそうにしてるのを眺めてるのも悪くないな!」
 己が年齢を省みて見学にしたムギが、ソフトクリームを片手に笑う。
「そうですね、こう言った何もない日常が平和っていうんだなって……実感します」
 同じくソフトクリームを口に運ぶ彼方が頷く。カメラ係りをラルバと交代したシルクが控え目ながらも手を振るのが見えて、ソフトクリームを食べ終えた二人が手を振り返しながら立ち上がる。
「来れなかったみなさんに、おみやげ買っていきましょー♪」
 楽しい気持ちを詰め込んだお土産を! とシェリンが歌うように言えば、何にしようかと笑顔が6つ咲いたのだった。
 度胸試しだとお化け屋敷の中を歩くのは、尻尾が下がってきているヒノトとエルピス。
「すごくリアルなの……」
「へへっお化けは平気、が『うそうそ』だったら、正直に白状してもいいんだぞ?」
「ヒノトこそ、本当は怖かったんだーって言うのは今のうちなのよ」
 先に悲鳴を上げた方が負け、そんな勝負にエルピスは悪戯を思いつく。
「何かいるのよ……!」
「どこにだ?」
 ヒノトの注意が逸れ、エルピスの尻尾がそっとヒノトの足を触った瞬間、左右の障子から無数に人の手が飛び出した。
「う、うわー!」
「きゃー!」
 同時に出た悲鳴に、ヒノトがエルピスを引っ張って全速力で駆け抜けた。勝負は引き分けだと、外に出た2人が笑うのはすぐ後の事。
 遊園地は久しぶりだと歩くのはメリルディとユスティーナ。今度は弟を連れてこようかなと言って顔を上げたメリルディは、隣の顔をじっと見つめ、
「ねえねえ、ユナ。ちょっと楽しいことしてみない?」
 と、何かいい事を思いついた顔で彼女の手を取ると、ジェットコースター乗り場へ向かう。
「え、最初からジェットコースター?」
「前から一度乗ってみたかったんだよ。……ははぁん、さてはユナってジェットコースター苦手?」
 にやっと笑ったメリルディに、馬鹿言わないでと返すけれど。
「こういうのはね、最後の締めに乗るのが丁度いいのであってって、メ、メリルー!?」
 ユスティーナの叫びも虚しく、2人はジェットコースターの波に飲まれていったのだった。
「あっちから行けばいいのでしょうか?」
「あ、地図なら俺が見てあげるよ」
 頑張って遊園地の地図を見ていた愛が首を傾げると、斑鳩がそれを覗き込んで言った。それならばお任せしますと地図を渡すと、リティリシアが初めて訪れた遊園地へのドキドキとわくわくを隠し切れないまま、辺りをキョロキョロと見回す。そのまま迷子になりそうな彼女に、夜と斑鳩がこっちだよと声を掛けた。慌てて皆の所へ戻るリティリシアに、
「迷子にならんようにな?」
 と、後ろから見守るように歩いていた累音が微笑んだ。ジェットコースターの乗り場に着くと、まず愛とリティリシアが並ぶ。その後ろで、夜と斑鳩が保護者よろしく見学を決め込もうとしていた累音の手を引っ張って列へと並んだ。渋る累音に、
「かさねくんも、一緒に乗りましょう」
 と、愛が笑えば否はなかった。順番がきて、ジェットコースターが五人を乗せて出発する。徐々に早くなるスピードに胃が浮き上がるような浮遊感、そして思ったよりも受ける風圧に手を上げて喜び、楽しげな悲鳴を上げて――コースターは出発地点へと戻るのだった。
「とっても楽しかったです!」
「わたしもです! 大騒ぎしちゃいました」
 楽しげな女の子2人を眺めつつ、斑鳩が累音へ声を掛ける。
「カサネは、ずっと真顔だったけど大丈夫……?」
「こういう乗り物は久しぶりなのでな……。ああ、でも楽しかったよ」
 乱れた髪を直してやりながら、累音が微笑む。
「喉、乾いたよね?」
 いつの間にか人数分の飲み物を買ってきた夜がどうぞと差し出せば、ありがとうの声が上がってキャップを開ける音が響く。ひんやりとしたドリンクで喉を潤し、今度は観覧車だと5人は歩き出すのだった。
「遊園地なんて久しぶりだねぇ、流石におじさん1人じゃこないしね」
「真白も1人では来た事ないですし、故郷の田舎にはあうとれっともーるもありませんでしたから」
 だから、遊びに来れて嬉しいのだと言外に真白が言うのを、寂燕は笑みを浮かべて聞いていた。
「まずはティーカップに乗りたいですの」
「あの良く回るやつだよねぇ? お化け屋敷でもいいんだよ?」
「ティーカップ、で」
 ふいっと目を逸らした真白が、寂燕の袖を引いてティーカップへ歩き出す。
「信濃さまですの」
 ふっと目に入った緑の髪の毛に真白がそう呼べば、撫子が手を振って応える。一緒に乗りませんかと声を掛ければ、喜んでと笑顔を見せた。
「お祝いぐるぐるですの」
「ええねぇ、お祝いぐるぐる!」
「ちょっとお前さん達回しすぎじゃないかねぇ?」
 楽しそうに回す2人を見て、お酒を飲んでなくて良かったと思ったのは寂燕だけの秘密だ。
「遊園地に来る時は身軽な方が良いのですね」
「よく似合うよ」
 カットソーとショートパンツ姿のティルエラがロゼットとトーマに小さくありがとうと微笑む。遊園地が初めてのロゼットをエスコートするべく、まずはジェットコースターからと2人がロゼットの手を引いて乗り込んでいく。歓声をあげていたのも束の間、地上に戻ったロゼットの顔は固まっていた。
「ロゼ、どうだっ……大丈夫?」
「ジェットコースター、舐めてました……でも、怖かったけど楽しかったです!」
 トーマが気を使うように聞けば、ロゼットは固まった顔を解すように笑う。
「2人共、どうぞ」
 ティルエラの差し出した飲み物をありがたく受け取って、次は観覧車だと移動する。オルトロスも乗れると聞いて、ロゼットが微笑む。3人と1体で観覧車に乗れば、広がる景色に溜息が漏れた。
「あんなに遠くまで見えるのですね!」
「とても綺麗……そうだ、記念写真でも撮りませんか?」
「いいじゃん、撮ろうぜ!」
 ティルエラが手にしたスマホを自撮りする為に構えると、全員が写る様に肩を寄せ合って微笑んだ。
 人生初の遊園地が恋人の雅也と一緒なのは、影乃にとって記念すべき事。緊張で硬くなりつつも、久しぶりのデートを楽しんでいた。
「おぉ、結構高いな!」
「こんなに……高くまで来るんだね……」
 観覧車から見える景色はとても素敵で、2人の距離も自然と縮まるというもの。少しの揺れが来る度、怖さからか小さな声を漏らす影乃に、雅也が笑って手を握る。恥ずかしがり屋の影乃も、誰も見ていないという安心感からか、そっとその手を握り返した。
「空を飛んでるみたいだ……。きれいな景色だね……海とか、見えないかな?」
「高い場所からも良いけど、今度一緒に海に行こうぜ」
 それは次の約束。次もきっと、あなたと一緒に。
「これが遊園地……」
「白は初めてか?」
 乗り物に目を瞬かせる白空に、弥鳥が問う。頷いた白空を見て、楓が微笑んだ。
「あたしははしゃぐには少し年を取り過ぎですから、弥鳥は沢山遊んであげてくださいね」
「楓ばーちゃん、そんな事言わずに一緒に楽しもうぜ~」
 弥鳥がそう言って、楓と白空の手を引く。目指すは白空が乗りたがったメリーゴーランドだ。白馬の王子様よろしく、弥鳥が白空をエスコートして馬に乗せる。楓に手を振る無邪気な少女に、いつか白空も彼女だけの王子様を見つけるのかと思うと、少し寂しい気持ちになったのは内緒の話だ。
「楓、あの、大きなヤツ、乗れる……?」
 観覧車を見る白空に頷けば、それなら一緒に乗ろうと弥鳥が列に並ぶ。すぐに順番が回ってきて、三人だけの空の旅を楽しんだ。
「全部、小さいの……鳥に、なった、みたい、だった……!」
「そうですね、こういう世界に暮らしているんだなと思えるのがあたしは好きですね」
 顔を綻ばせたレディ達に、弥鳥がソフトクリームを差し出す。それを見て、更に輪を掛けたように微笑みが増すのを弥鳥は自分もソフトクリームを口にしながら嬉しそうに眺めるのだった。

●買物日和
「遊園地、とても楽しかった、ですっ!」
「楽しそうな希月ちゃん見てて、オレも楽しかったよ」
 希月と崎人は希月の母の遺言により婚約者という間柄。けれど、まずはお友達からだと2人で出掛けるようになったのだ。
「え! あ、あの……! 僕も黒根さんが楽しかったら、嬉しい、です」
 自分の言葉1つで慌てる姿を好きだと思う位には、崎人は彼女に惹かれていた。
「あ、少しお買物、良いです、か……?」
 その言葉に頷いて、アウトレットを巡る。雑貨店に入ると、暫くして希月が笑顔を浮かべているのが見えた。
「良い物に巡り合えたのかい?」
「ふふ、はいっ!」
 希月の手にはどこか崎人を思わせる猫のストラップ。だから、笑顔の理由は――。
 服が見たいと言うトーヤに自分も見たいとエリザベスが頷き、目に付いた店で立ち止まる。
「つい緑や白を買っちゃうから、違う色のシャツも欲しいんだけど」
 確かに彼が手にしたシャツは緑系だ。
「僕も男性の服には詳しくないからなぁ」
 彼女が悩みながらも手渡したのは、薄い灰色のジャケットと白いTシャツ。ジャケットは緑のシャツとも合うチョイスだ。
「トーヤさん、イケメンさんだから何でも似合うね」
「別にイケメンじゃないけど」
 くすくす笑うエリザベスからトーヤが衣服を受け取とる。
「しかし、エリザベスは何色でも似合いそうだよな」
 どれがいいかと服を身体に当てている姿を見てトーヤが言えば、元がいいからと彼女が嘯いた。
「皆は何か気になるものはある?」
「やっぱり水着か浴衣よね」
 クローネの言葉に、さくらが華やかに飾られた浴衣を指で示す。
「浴衣、着た事ないんだよ! 私でも着れる?」
「折角だから、みんなで選びっこしない?」
 ベラドンナが興味を示した浴衣に、シルの選びっこという言葉。それはとても楽しそうだと4人は浴衣を選ぶ。
「クローネさんには淡い色かな?」
「肌の色が栄える白地はどうかしら」
「それなら、この赤い金魚が泳いでるのは?」
 褐色の肌が綺麗だから、と皆が選んでくれた浴衣をクローネが鏡の前で当てては離す。
「シルちゃんは大人っぽく、紺とか藍色はどうかしら」
「あ、百合の柄があるよ」
「涼しげでいいね、青系の浴衣が似合いそう」
 シルの手元には涼しげな浴衣が集まり、並べては悩む。
「さくらさんとベラドンナさんはお揃いもいいかもっ♪ さくらさんが夜桜で、ベラドンナさんは昼桜とかどうでしょ?」
「それに暖色系の帯を合わせても良いんじゃない?」
 さくらとベラドンナの手には、色違いの浴衣が並べられていく。
「べるちゃんは何を着ても可愛いと思うんだけど、矢絣柄も捨てがたいわね」
「お姉ちゃんと色違いもうれしいし、カラフルな矢絣柄もいいし……どれが似合う?」
 体に合わせてみたベラドンナに、さくらが全部買うわと口走る。
「でも、全部お買い上げしちゃいたくなるね」
 クローネが、だって夏になったらこれを着て皆とたくさん遊びたいと言えば、全員が笑顔で頷いた。
 お互いの浴衣を選ぼうと、あれもこれもと見ているのはヒメだ。樹は喜んでもらいたい気持ちと、男の自分が女物の浴衣を選んでいるという光景は見た目的にアレではという気持ちがせめぎ合いながらも、白地の浴衣に絞ってどれがいいか悩んでいた。これぞ、という物を見つけてヒメに声を掛ける。
「これはどうかな?」
 ほんのり藍色がかった白地に、青い朝顔が咲いた浴衣。
「とても綺麗で良いわね。樹にはこれがいいと思ったんだけれど、どうかしら?」
 紫めいた藍色に、笹竹が白抜きされた浴衣。シンプルだけれど、それは樹によく栄えた。
 お互いが選んだ浴衣を着て、どこかに出掛けられたら――手にした浴衣に、2人の微笑が零れた。
「破壊力はあるけど、防御力は0よね」
「……布はどこですか? 咄嗟の襲来に敵を縛る武器になるのでしょうか?」
 紐のような水着を見て郁がそう言えば、その発想に小町が笑い、次は普通の水着を引っ張る。
「踝まで隠すパレオとか人魚みたいで好きなんだけど、今は流行ってないのかなぁ」
「流行はわかりませんが、とても似合うと思います」
 人魚姫みたいに消えないでと瞳を揺らした郁に、大丈夫だと小町がウィンクし、郁に似合いそうなフリルの水着を手にすると体に当てる。
「に、似合いますか?」
 照れた様子ではにかむ郁は、これが女子会と呟いて。ちょっと違う気がしたけれど、女の子の買物はまだまだこれから。
 恋人であるコンスタンツァと買物に来たのはファルケで、試着中の彼女に付き合って試着室の前に居た。
「どうっスか!?」
 試着室のカーテンを開けて水着姿のコンスタンツァが現れる。
「それも可愛いねぇ。でもビタミンカラーのそっちの方がスタンには似合うと思うよ」
「了解っス!」
 再びカーテンが閉まると、ファルケは水着を買わないのかと問われた。
「ファルケの水着ちょー見たいんスけど! それで、水着のファルケと一緒に目一杯遊べたらサイコーにうれしーんスけど……」
 恋人の可愛いお願いに、ファルケの頬が緩む。
「後で、僕の水着を一緒に見に行ってくれるかい?」
 もちろんっス! とカーテンが開かれる。眩しい夏を先取りしたようなコンスタンツァの笑顔が溢れていた。
 水着選びに苦戦していた有理が、丁度同じ様に水着を選んでいた撫子に声を掛けた。
「信濃殿の意見を聴かせてくれると嬉しいな」
「勿論! 任せといてや!」
 なるべく腹部を隠すタイプの水着、までは決まっているのだが、色や柄で迷っているのだと有理が零す。
「どんな水着なら、彼は喜んでくれるだろう?」
「どんな水着でも、有理の好きになった人やったら喜んでくれるんとちゃう?」
 そう言って笑うと、撫子がミニドレス風のワンピースタイプの水着を有理に渡す。夜の帳に星が瞬くようなそれは、どこか彼を思わせて有理が微笑んだ。
 一緒に来るはずだった友人が急用で来れなくなったのは残念だけど、1人で買物も悪くないとベルベットは水着を選ぶ。
「このビキニ悪くないじゃん」
 赤いビキニを手に取って、オレンジ色のと見比べた。
「オレンジのが私っぽいかな」
 そして赤いのは友人に似合いそうだと写メを撮る。送信ボタンをタップして、返事が来るまでまた水着を選ぶのだった。
「わぁ……! 色々あるのね?」
 青いチェックのワンピースを揺らして、如月がガーリーなギャルワンピを着た萌花を振り返る。
「まずは日焼け止めとスキンケアかな、いいの選んであげる」
 大きなコスメショップはまるで宝石箱のようで、色鮮やかなコスメや女の子達は宝石のよう。如月の為にコスメを選ぶ萌花の表情は真剣で、それを邪魔しないように如月はそっと香水を眺める。気になる柑橘系の香水を内緒で手にし、萌花お墨付きのコスメが入ったカゴを受け取るとレジへと急いだ。
「もなちゃん、はい」
 そっと渡された香水のプレゼントに、萌花の頬が緩む。それを見て、如月も花が咲いたように笑った。

●甘い喜び
「ルルの全財産で買えるものが、搾りたての高原ミルクソフトクリームくらいだなんて、思いもしなかったんだよ……」
「逆に何故500円で店の物を全部買えると思ったのかが知りたいんだよ……あと何故撫子ちゃんにプレゼント買おうって話になったのに500円で買える妥当なラインをすっ飛ばしてソフト買った挙句、溶けるからって自分で食べてるのかもな。本当に何しに来たのかさっぱり解かんねぇ」
 フードコートの椅子に座りニヒルを装うルルに、チロの諦めが混じった言葉が響く。
「で、撫子ちゃんへのプレゼントだけど……」
 懐から取り出した色紙に、ルルが『かたたたたたたたきけん』と書き込むのを見て、チロは自分の言葉がルルに響いてなかったのだけは理解した。
「撫子ちゃん、肩たたき券って使うかなぁ……?」
「ウチ? あったら使うよ?」
 ひょい、と後ろから覗き込んだ撫子に受け取ってください! とルルが色紙を渡すまで3秒、ありがとうと受け取って、ルルとチロを纏めて撫子が抱き締めるまであと10秒の出来事であった。

作者:波多蜜花 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月29日
難度:易しい
参加:45人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 1
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