花開け、扇に舞え

作者:こーや

 闇の中。
 白と黒のハーリキン・チェックが特徴的な衣服に身を包んだ女の前に、少年と少女が姿を現した。
「お呼びとあらば即参上♪ ふふ、ミス・バタフライ、私達にどんな御用?」
 ころころと少女は笑う。それに合わせ、ワンピースを彩る鮮やかな鳥の羽がひらひらと踊る。
 対し、少年は口を閉ざしたまま。代わりに、くるりくるりと手中でナイフを弄んでいる。
 女――ミス・バタフライは2人の反応をさして気にすることなくカードを切る。
「この町に本物の花を使った扇子を作る人間が居るようです」
 赤く染められた唇が言葉を紡ぐと、少年は一際高くナイフを投げた。
「……それと接触しろって?」
「ええ。仕事内容を確認し、可能ならば習得した後、殺害しなさい」
「グラビティ・チェインは?」
「略奪してもしなくても構わないわ。好きになさい」
 喜色満面。あはっと笑い声を零した少女は、飛び跳ねながら少年の腕を取った。
「この事件の意味、きっと人間には分からない♪ ぐるぐる巡って大きな事態を引き起こす、その時まできっと分からない♪」
 無邪気な歌声をBGMに、少年は微かに頭を下げるのであった。

「ミス・バタフライいう螺旋忍軍が動いてるのを知ってる人もいるでしょうけども」
 切り出した河内・山河(唐傘のヘリオライダー・en0106)の手には華やかな扇子。
 トレードマークであるいつも赤い唐傘は、ヘリオンに立てかけられている。
「彼女が起こそうとしてる事件は……目に見える被害で言えば、大したことやないんです。せやけど、巡り巡って大きな影響が出るかもしれない、そういう厄介な事件です」
 そこまで言うと、山河はゆるりと扇子を広げた。
 生成りの紙を淡い青とピンクの紫陽花が彩っている。
 よくよく見れば、花は絵ではなく本物の花が使われているのが分かる。
「今回の敵の狙いは、この扇子を作ってはる職人の村上・公司さんです。仕事の情報や……技術の習得。それらを得た後に、職人さんを殺害するつもりです」
 『花扇』と書いて『カオウ』と読むこの扇は、金箔のように限界まで薄くした花を扇紙に乗せたものだ。
 花を薄くする技術自体は難しいものではないのだが、扇の開閉によって花が破れないように貼るという部分が難しいらしい。
 この事件を阻止しなければ、ケルベロスに不利な状況が発生してしまう可能性が高いと山河は言う。
「それを抜きにしても、一般人がデウスエクスに殺されてしまうような事態は見逃せません。一般人の保護と、螺旋忍軍の撃破をお願いします」
 ただし、問題がある。
 狙われる職人を警護し、現れた螺旋忍軍と戦えばいいのだが――事前に避難させてしまえば、敵が別の対象を狙うなどの行動にでてしまい、被害を防ぐことが出来なくなる。
 ただ避難させるということは無理という訳だ。
「せやけども、事件の3日くらい前から職人さんと接触することはできます」
 事情を話して仕事を教わり、ケルベロス達が職人だと思い込ませればいい。つまりは囮だ。これならば職人を避難させることも出来る。
 その為には見習い程度の力量を身につけなくてはいけない。しっかり修行をする必要はあるだろう。
 職人の公司は少しばかり気は弱いが穏やかな人柄で、多くの人に花扇を知ってもらいたいと思っている。
 事情を説明すれば技術を教えることをすんなり受け入れてくれるはずだ。
 敵は少女と少年の外見をした2人。
 少女の名はヒルザキ。少年はツキミ。
 どちらも螺旋氷縛波を使う。
 それに加え、ヒルザキは螺旋掌と、猛犬を出現させてけしかけてくる。
 ツキミは分身の術と、大量のナイフを豪雨のようにばらまく。
「上手く囮になれたら、螺旋忍軍に技術を教える修行っていう名目で、有利な状態で戦闘を始めることも可能や思います」
 説明を終えた山河はぱたり、扇子を閉じた。
 黙って話を聞いていた秋野・ハジメ(沈む茜・en0252)が扇子を指さす。
「それって、どんな花でも丸々使えるのかな?」
「ううん。紫陽花くらいに小さいんやったら大丈夫やけど、薔薇とかカーネーションくらいの花やとぶ厚すぎるから、花びらだけになるみたい」
 土台となる扇紙は様々な色があるという。
「へぇ。作ったヤツはプレゼントにも出来そうだね」
 そう言うと、ハジメはくるりとケルベロスを振り返った。
「よし、じゃあ行こうか。この際だし、楽しめるところは楽しむのが一番だよ」


参加者
ミシェル・マールブランシュ(肉親殺し・e00865)
浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
フィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)
メルエム・ミアテルシア(絶望の淵と希望の底・e29199)
彼方・走(イカロス・e29385)

■リプレイ

●ロゼット
「いらっしゃいませ」
 薄紅色ののれんを潜ったケルベロス達に、穏やかな声がかけられた。
 こちらは販売用のスペースらしい。低い衝立超しに作業台のようなものが見える。
 レジを置いたカウンターの向こうに、紺色の甚兵衛を着た男の姿がある。この人物が村上・公司だろう。
 メルエム・ミアテルシア(絶望の淵と希望の底・e29199)は開口一番己の身分を明かした。
「唐突で申し訳ありません。私達はケルベロスです」
 薄桃色にカスタマイズされたフィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)のケルベロスコートがその裏付けになったのか、公司は目をぱちくりさせながらも疑いはしない。
「えっと、僕に何か?」
「デウスエクスが貴方とその技術を狙っております」
 丁寧にミシェル・マールブランシュ(肉親殺し・e00865)が事情を説明していく。
 単純に公司を逃がすわけにはいかないこと。
 公司の安全を確保するためにも、自分達が公司に成り代わりたいということ。
 自身が狙われているという事実に動揺しながらも、公司は真剣に耳を傾けている。
 ミシェルが説明を終えるのを待って、浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)が頭を下げた。
「誠に失礼だと思いますが、村上さんの身の安全の為に、村上さんの技術を教えて下さい」
「あ、頭を上げてください……! そういうことでしたら、こちらこそよろしくお願いしますっ」
 あわあわと響花の頭を上げさせようとする公司を尻目に、翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)は棚に飾られた花扇へゆるりと視線を投げた。
 彼方・走(イカロス・e29385)はするりとその隣に並び、一緒になって花扇を眺める。
「花扇、美しいわね」
「ええ。……素敵な技術をデウスエクスに奪われるわけには参りませんね」
 その言葉に、砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)がこくりと頷いた。
「そうだね。先生と花扇を護るためにもがんばろう」

 百聞は一見に如かず。
 参考にと渡された花扇を、ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)ためつすがめつ。
「花扇とはすごいのじゃな」
 扇とは頻繁に開閉するものだ。それなのに花が破けることはない。閉じた際に厚みが出ないように、ギリギリまで薄くしてある。
「この技術を使って手裏剣などをギリギリまで薄くして持ち運ぼうとしているのじゃな。螺旋忍軍め、なんとずる賢いのじゃ」
「そうだったら分かりやすいけど、実際のところどうなんだろうねー」
 自分達が来たからにはこの技術は奪わせないと意気込むウィゼに、秋野・ハジメ(沈む茜・en0252)はへらへらと笑う。
「花の加工もありますけど、まずは花を貼ってみましょうか。ストックはいろいろありますけど、花の希望はあります?」
 公司は花を収めた箱を次々に開いていく。自身の作品用に用意しておいたものらしい。
「う……迷うっちゃうね」
 花を見つめ、フィオがぼそり。
 風音がくすりと、同意の笑みを零す。
「本当に。公司さんのお勧めは?」
「最初は花びらがやりやすいですよ。今だと薔薇ですかね。白詰草は葉っぱも特徴がありますから、そっちもいいですね」
 この時期の花で言えば薔薇と紫陽花を好む風音は、それならばと薔薇の花びらを。走は白詰草の葉。
 他の面々も勧められるままに決めていく中、最後まで悩んだのがイノリ。
 悩みに悩んで選んだのは青いアネモネの花びら。
 公司が丁寧に箱から取り出すのを見守りながら、イノリは悩んだ理由を漏らす。
「桜や、桃や、どの花も好きで……」
「分かります。僕も、いつもどの花にするか悩むんです」
 それで困っているのだと、公司は深々と溜息を吐いたのであった。

●蕾
 細かい作業は神経を使う。ピンセットと筆を操る手を一度止め、フィオは顔を上げた。
 ぎゅっぎゅっと強く瞼を閉じては開いてを繰り返し、疲れた目を休める。
「お疲れさまー。そろそろ休憩にしようよ」
 初日からずっと雑用係と茶汲みをしているハジメが奥へと引っ込んで、また戻ってくる。
 盆にはポットと急須、人数分の湯飲み。
「手伝いましょう」
 自身の息抜きも兼ねてミシェルが手伝いを買って出る。
 急須にはほうじ茶。ティーポットにはハイビスカスティー。目の疲れにいいからと、公司が愛飲しているらしい。
 ミシェルに礼を言ってから、フィオは湯飲みに口をつけた。疲れを癒すような温もりにほうっと息を漏らす。
「こういう、花を使った小物ってちょっと憧れてたんだ」
「分かります。実際に花を使った小物は、なかなか携帯できませんから」
 水面にふぅと息を吹きかけ、舌触りのいい温度まで下げようとする風音。
 その足元にボクスドラゴン『シャティレ』が寄り添っている。
「そうなんだよね。……ちゃんと覚えたら、新曲出すときに使えたりしないかな」
 作業途中の扇をじっと眺め、フィオの野望がぽつり。
 ちゃんと形になったらしっかりとしたアイディアが湧くかもしれない。
 さて、作業を再開しようという段になって、ウィゼがじっとメルエムを見つめる。
「ウィゼさん? どうかしましたか?」
「いや、なかなかに愉快なことになっておると思ってのう」
「え?」
 ウィゼの視線は、よくよく見ればメルエムの顔ではなく頭部に向けられている。
 なんだろうと手を持っていくと――。
「にゃ?! 閣下!」
 貼る前の段階で使えなくなった花がメルエムの髪に刺さっていたのだ。シャーマンズゴースト『閣下』の仕業である。
 修行の間にもちょっかいを出してくるサーヴァントを叱ってはいたものの、こういう悪戯をされるとは!
 まだまだ刺さっている花を落としながらも閣下を叱るが、犯人ならぬ犯サーヴァントは何を言っているのかわからないという仕草で右から左へ。
 そんなやり取りに笑ってから、今度こそ作業再開。
 響花は下準備を終えた花をピンセットで摘み上げた。
「……これを作るのも難しかったら厳しかったわね」
 花の準備そのものは押し花の作り方に似通っており、数度試しただけで全員が飲み込めた。
 問題はやはり貼る作業で、貼りたい部分にギリギリの量の接着剤を塗って、花を乗せ。さらにニスに似た保護液を筆でこれまたギリギリの量を塗ってやるのである。
 慎重に手を動かし、一つ目の花を乗せて響花は詰めていた息を吐き出す。
「この技術を習得してなにするのかな? 何かのお土産品でも作るのかしら?」
「それだとパッと見、平穏っぽく感じるからタチ悪いねー」
 ホント、何が目的やらとぼやいてハジメは茶をすする。
「どうしても切れ目が出来てしまうのだけど、どうすればいいかしら?」
「接着剤がちょっと多いんだと思います。花が水分を吸って、強度が落ちちゃうんです」
 走は言われたとおりに接着剤を減らしてみた。上手く調整が出来ず、やはり切れ目は出来てしまったが今までと比べると目立たない。
 練習を続ければどうにか出来そうだ。
 公司は試行錯誤の末、この技術を身に着けたのだろう。
 隣から眺めていたイノリがキラキラした目を公司に向けた。
「先生、きれいな花弁が扇になるなんてすごいですね」
「そうね。村上さんの努力は、尊敬に値するわ」
 2人からの賛辞に公司は顔を真っ赤に染める。
 こうして穏やかに、けれど一定の緊張感を持って熱心に、二日目は進んでいった。

●花
 予知された日の前の晩、ミシェルは一睡もしなかった。
 当日に眠気が来てはいけないと初日は皆と同じ頃に就寝したが、睡眠を後回しにし、夜を徹して技術を高めることにしたのだ。
 その甲斐あって、ミシェルは見習いとして十分な技量があると評価された。
「組み合わせ方もいいですね。どれも風情があっていいですよ」
「ありがとう御座います」
 紙と花の色を組み合わせる『魅せ方』を重視したのがよかったらしい。
 アドバイスを真摯に受け入れていった走もケルベロス達の中では高い技術を得ていた。
 他にも習得できた者はいたものの、高い技術と年長者という二点を考慮した結果、ミシェルと走が囮役に決まった。
「危ないですから、公司さんは奥に隠れていてくださいね」
 風音に言われた通り、公司は奥へ下がった。
 近くで戦場にしてもよさそうな場所は、いくつか公司が挙げた中からすでに絞り込み、下見もしてあるので抜かりはない。
 囮の2人を残し、7人は待機場所へ向かうことにした。
 のれんを潜る直前、響花が振り返った。長い黒髪の尾が綺麗な弧を描く。
「それじゃ、こっちはお願いね」
「お任せください」
 ミシェルが胸に手を当て、走は頷く代わりに僅かに首を傾げた。きらり、雪の結晶を模った耳飾りが揺れる。
「そっちもね。また後で会いましょう」

「こんにちはー♪」
 元気良くにこやかに挨拶する少女と、無言のままに軽く会釈をする少年。
 ミシェルが丁寧に応対すると、少女『ヒルザキ』は無邪気に花扇を作ってみたい、作らせてほしいと頼んできた。
 2人は努めて自然に、では花を見繕おうと外へ連れ出す。生命力の強い野の花は練習にいいからと、尤もらしい理由をつけて。
 そこは人気のない、数本の木が立つ広場だった。
 ヒルザキは花を探すべく腰を屈めたが、少年『ツキミ』は怪訝そうな表情を浮かべた。
 走はパーカーのファスナーを静かに引き上げ、フードを目深に下す。
「芝居は終わりよ。お互いね」
「……っ、ケルベロス……!」
 ツキミがヒルザキに警戒を促すと同時に、物陰に身を潜めていたケルベロス達が飛び出した。
 待機中、不安の色が浮かんでいた響花は駆けながらも安堵の言葉を零す。
「上手くいったわね」
「うむ、うむ。計画通りじゃな」
 ウィゼはつけ髭を扱くと、導火線付きハロウィンボムモドキをツキミに投げつける。
 着弾した瞬間、ボムモドキが爆発する。
 爆発音が治まるよりも早く、響花の電光石火の蹴りがヒルザキに叩き込まれた。
「もうっ、もうっ、もうっ! 邪魔されるの大っ嫌いなのに! ツキミ!」
「分かってる」
 タンッと後方へ跳び退ったツキミはヒルザキに幻影を纏わせた。
 直後、ミシェルがばら撒いた見えない地雷が一斉に起爆。月見は再び爆発に巻き込まれる。
 シャーマンズゴースト『カエサル』は忙しく駆けまわりながら、祈りを捧げる。
 首にかけたアラベスク模様彫金の銀時計が、足を止めたメルエムの胸を打った。
 この事が将来的に何処につながるかは判らない。しかし、ここで無視するわけにはいかない。
 最初から、最後まで全力で。理由など決まっている。
「悪事は許しません! 此処で潰させて頂きます」
 小さな拳から放たれたドラゴンの幻影がツキミに迫る。
 舌打ちし、回避を試みるツキミだが幻影は容赦なく少年を焼いた。
 続けて攻撃を受けた相方を援護したいヒルザキだが、張り付くように動く閣下と――。
「っ、邪魔は嫌いだって、言ったじゃない!」
「あなたのお相手は私です」
 じゃららららと伸びた鎖が少女を絡めとったのだ。
 封印箱に入ったボクスドラゴン『シャティレ』が体当たりを仕掛け、畳みかける。
 もがき、鎖から逃れたヒルザキを今度はイノリが降魔の技で魂を食らう。
 反撃とばかりに、突如として出現した猛犬がイノリを襲う。
 流体金属に覆われた腕がそれを阻むと、澄んだ音が響いた。
 その音をかき消さんばかりの勢いで、噛みつくようにガルルルとイノリは威嚇を返す。
「カッコいいねー。よーし、俺もいいとこ見せないと」
「真面目になさいな」
 へらり笑って小型無人機を飛ばすハジメに、走の呆れた声。
 ふぉふぉふぉとウィゼが笑う。
「余裕があるのはいいことじゃ。ところでハジメおにいも螺旋氷縛波の準備があるようじゃが、これはあの螺旋忍軍の者に自分も同じ技を使えるというアピールかのう?」
「へ?」
 その気はなかったらしい。螺旋忍者はなんらかの理由で螺旋忍軍の力を身につけた者なので、偶然同じ技を準備していただけということだ。
 真剣に戦いながらも、こんなやりとりが出来るほどにはケルベロス側に余裕があった。
 押されているツキミとヒルザキは苛立ちを隠さない。舌打ちと、癇癪を起したような声が飛ぶ。
 それでも1人目が倒れるのに少しばかり時間がかかったのは、ケルベロス側の攻撃が分散してしまったからだ。
 先にツキミをと考えていた者もいれば、ヒルザキをと考えていた者、特に対象を定めていない者。
 流れを逃すわけにはいかない。強気に攻めねばというフィオの言葉に応じ、ヒルザキの抑え役だと己を定めていた風音と閣下以外がツキミに集中した。
「っ、あっ……」
「ツキミっ!」
 集中攻撃を受けたツキミがぐらり、傾ぐ。少女が少年の名を叫んだが、応えることなくツキミは倒れ伏した。
 怒りに目を燃え滾らせるヒルザキの眼前にフィオが現れた。
 狂月病を発症したかのように変貌した姿がそこにある。驚くべき瞬発力で死角から跳び込んできたフィオの目は、紅く爛々と輝いている。
 ひっと少女が声を漏らした。
「喰い千切る…!」

 戦闘を終え、ミシェルは裾をはたき、リボンタイを整える。
「一件落着で御座いますね」
「ええ」
 頷いた風音だが、その顔色は冴えない。
 過去の出来事により氷が苦手な彼女は、螺旋忍軍が氷結の螺旋を放つたびに顔を曇らせていたのだ。
 そっと息を吐き出すと、心配そうにシャルティレが風音にすり寄る。
 体をほぐすべく伸びをした響花が息を吐き出した。
 切り替えるように折角だから、と前置いて。
「戻って花扇をじっくり見て行きましょうか」
 自分達が守った技を愛でに行こう。
 言うまでもなく、反対の声は上がらなかった。

作者:こーや 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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