裸エプロン原理主義

作者:ハル


「この世には、一つの至高が存在する! それこそが――!」
 とあるアパートのキッチンでは、ビルシャナが、集結した信者達に教義を聞かせている真っ最中であった。ビルシャナは、溜めに溜めた上で、一番言いたかった事を大声で叫ぶ。
「裸エプロンであるっっ!!」
「おおっ!」
 ようやく告げられた一言。その時、信者達の間でどよめきが起こり、次いで感動の涙と共に拍手が巻き起こった。
「裸エプロン……それは、まさに男の夢ですね、ビルシャナ様!」
「誰かに恋をしたならば、必ず一度は裸エプロン姿を想像するものです! むしろ、しない男なんているんでしょうか!?」
 信者達は、鼻の下を伸ばしながら、妄想を語り合う。
「HAHAHA! いるはずがないじゃないか!」
 それに対しビルシャナがそう言うと、「ですよね~」と信者達がドッと笑った。
「裸エプロンよりも男を滾らせるものなど、この世には存在しない! 俺達で、裸エプロンを普段着とする世界を創造しようではないかっっ!!」


「……裸エプロンって……本当に男性は、そういうエッチなのばかりですね!」
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)の冷めた瞳が、会議室内を急速冷凍していく。だが、あのような頭の悪い教義は、早急にどうにかしないといけないと危機感を持ったのだろう。ねむは一息つくと、資料をケルベロス達に配っていく。
「とあるアパートにて、裸エプロンこそが至高! あまつさえ、それを普段着としよう! なんて主張するビルシャナが出現しちゃいました!」
 今回も例の如く、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響によって、ビルシャナ化してしまった元人間が相手になる。
「皆さんには、ビルシャナ化した元人間とその配下と戦って、撃破してもらうことになりますです! このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、配下を増やそうとしている所に乗り込む形になりそうですね」
 ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は配下になってしまう。
 ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれない。
「あと、ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加してくるです。ビルシャナさえ倒せば元に戻るので、救出は可能ですが、配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になっちゃいます」
 そこで、ねむは一息つき、先を続ける。
「まず、みんなに伝えなければならないのは、ビルシャナと信者さん達も、裸エプロン姿だという事です!」
 無論、ビルシャナも信者も男である。会議室に、ドンヨリとした空気が漂った。
「まぁ、裸エプロンを普段着にしようとしている人達ですからね……それは予想できなくはなかったのですが……」
 問題は――。
「彼らとコンタクトをとるには、裸エプロンの着用が必至な事です。女の子も……そして男の子もですっ!」
 何故そうなるかについてだが、ビルシャナ達は世界に改革を起こす上で、裸エプロン着用者だけを新人類として認めているようだ。裸エプロンを着用していない旧人類の話しは一切耳に入れないというスタンスらしい。
「ただ、裸エプロンを至高とする方達ですから、裸エプロンを剥ぎ取ろうとしてきたり、それ以上の事に及ぶことはありません。だから、安心……は、できませんよね」
 苦笑を浮かべるねむ。イヤらしい視線に晒されるのは間違いないのだから、当然である。
「どうしようなく馬鹿で変態さんな方々ですが、必ず……いえ、できれば助けてあげて欲しいなー……なんて思わなくもないので、ケルベロスのみんな、よろしくお願いするのですよ!」


参加者
ティセ・ルミエル(猫まっぷたつ・e00611)
ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)
クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
メルーナ・ワードレン(小さな爆炎竜・e09280)
リュリュ・リュリュ(リタリ・e24445)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)

■リプレイ


「ねむの頼みじゃなかったら、問答無用で燃やしてるんだからね……!」
 アパートの壁を反響するように、メルーナ・ワードレン(小さな爆炎竜・e09280)の罵声が轟いていた。
「……こ、こんなの絶対におかしいのです……!」
「隠してるようで隠れていない感がすごい……」
 無理もない。涙目のティセ・ルミエル(猫まっぷたつ・e00611)に、激しく落ち着かない様子のリュリュ・リュリュ(リタリ・e24445)。そして、その場にいる全員が――。
「よくぞ来た! 始まりの場所、いずれ裸エプロンの聖地と呼ばれるであろう我が家へ!!」
 裸エプロン姿だったのである!!
 ビルシャナが、動く度に際どい部位を時折晒しながら、ケルベロス達に歓迎の意を示す。
「裸エプロンというか、私のはもう殆ど裸ですよね。胸がはみ出ちゃいそうですし」
「あほーなことをのたまうとーりは何処ですかー、ここですよー。……相変わらず、変な鶏さんですねー」
 爆乳でエプロンと胸が同化しかけているロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)と、どこかずれた歌を唄うリフィルディード・ラクシュエル(集弾刀攻・e25284)も、さすがに呆れ気味。
「貴方達はこの格好が素晴らしいと、そう言いたい訳ね。遍く人類すべては、裸エプロンを着て過ごすべきだと……」
「まぁ、おさなづまで専業主婦(自宅警備員)の私に、こういう格好をさせたいという気持ちは分かります! だって、私ってばスレンダーでナイスバディですからねっ!」
 人生経験の差か、ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)の態度には、大人の余裕が。逆に、クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)は、白いフリルでも誤魔化しきれない薄い胸を張り、何故か自信満々である。
「一言で言おう、ケルベロス共よ、お前達の裸エプロンは素晴らしい!」
 どうやらビルシャナ達は、身体を張ったケルベロス達に満足しているようだ。むしろ、そうでなければ困るというもの。
 だが、今回に限り、女性陣の脅威は、ビルシャナと信者だけではないようで――。
「妖艶さが出る方も、男の娘も、すんなり着こなせる方も皆、良い。何故なら皆、それぞれ魅力的、素晴らしい!」
 羞恥に、風に、細かな動きに震えるエプロンとお尻。それを目に焼き付けるように眺め、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)は鼻血を溢れさせていた。
「…………」
 その男としての感動には、ビルシャナと信者達も共感している。だが、ラプチャーが裸エプロンを着用した新人類ではないため、反応を返すことはない。
 だが!
「これを見るでござる!」
「おおっ!」
 ラプチャーがケルベロスコートの前を開け、その下から覗くは裸エプロン。さらに、そのエプロンには、頰を赤らめた裸エプロン姿の2次元少女が宿っており、究極の2段構えにビルシャナ達は戦いた。そして、自然と互いに親指を立て、力量を認め合う。
「あんたは一体どっちの味方なのよっ!」
 まったくもって、メルーナの言う通りである。


 ニヤニヤと、女性陣に突き刺さるイヤらしい視線。恥ずかしがる者、羞恥を欠片も見せない者など、様々いるが。
「裸エプロンを至高という割に、見る目がないですねぇー?」
 そんな中、イヤらしい視線を受けながらも、リフィルディードが不敵に笑い、裸エプロンをバサッと捲り上げてみせる!
「お、ほほほっおおお!」
 当然、信者達はその下から、女体の秘奥を余すところなく目撃できると、奇声を上げる。だが……。
「だ、だましたなーー!」
 裸エプロンの下から現れたのは、チューブトップにホットパンツ! そう、リフィルディードの格好は、一見裸エプロンに見えるだけの格好だったのである!!
「もしかして本当に気付いていなかったんですかー? そうじゃないなら、こちらを見ることはせんよなぁ?」
「ぐっ!」
 ビルシャナ達が、彼らの定義する所の旧人類であったリフィルディードと会話を重ねてしまっていたのは事実。悔しがる彼らはリフィルディードから視線を逸らし、リフィルディードはそれを好機と見て、信者達の背後にジワリと回り込んでいく。
(……うわぁ)
 リフィルディードの手の中にある、何本かのモップ。それがどういう意図で使われるものかを察してしまったリュリュは、信者達の冥福を祈り、無意識にお尻を庇った。
 そして、信者達の注目をこちらに集めるため、リュリュは口を開く。
「裸エプロンが普段着って、それ冬場とかどうするのさ一体……。気温にも紫外線にも弱ければ、物理防御力も無い。普通の野郎が着ても面白いことも無い。そこにあるのはロマンという名の妄執だけじゃないか」
「何を言う! ロマンこそこの世の、男のすべてではないか!」
「いやいや、男としてお前達と一緒にされるのはすごく嫌だ」
 信者達の反論に、リュリュも必至で応対する。時折、ティセから「大丈夫です! あたしはリュリュさんの事は、女の子として認識していますですから!」……なんて、励ましているんだか、どうかよく分からない声援を受けながら。
「ともかく、チラリズムがどうのこうの言ったって、メルーナやロージーたちならともかく――」
 リュリュは女性陣の中でも、そっとドローテアからは視線を逸らしながら、
「……ラプチャーやリュリュのチラリには絶望しか待ってないよ。ねぇ、ラプチャー……ぇ?」
 リュリュが、ラプチャーに同意を得ようと振り返る。すると、そこにはリュリュを見て、ハァハァしているラプチャーがいた。
 そう、ラプチャーは語っていたのだ。『妖艶さが出る方も、男の娘も、すんなり着こなせる方も……』と。『男の娘も!』良いと!!!!
「……メルーナ」
「了解よ」
 リュリュがメルーナに声をかける。すると、たちまちラプチャーは心の焔に包まれた。
「ぎゃああああ!」
 悲鳴が上がるが大丈夫。焔は仲間を優しく包んでいる……はずなのだ。

「リュリュくんが、アタシから目を逸らした事に対する追求は一先ず置いて。貴方達はどうかしら、例え今期を逃したアラフォー独身女でも、老婆でも……裸エプロン姿で嬉しいの?」
「……プッ」
 きっと、誰もが見ないフリをしていたのだろう。10代、20代の少女達に混じる、アラフォーとしてもギリギリのドローテアの姿を。
「今、アタシを見て笑った貴方、そして、心の中で絶句しているであろう貴方! ……ダメよ、全然ダメね」
 ドローテアが、やれやれと首を振る。
「異議を申し立てるワ。その滑稽さと浅はかさに嘲笑を浴びせるワ。『例え四十路過ぎの独身女や枯れ果てた老人でも皆裸エプロンを着るべき』と言うなラ結構! 称賛に値するワ! しかして『若い女子でなければダメ』とおっしゃるなら、その教義は破綻しているワ!」
 結局、裸エプロンではなくて、ただ単に女の子のエロい姿が見たいだけなんでしょう? そう告げるドローテアの言葉は、信者だけでなく、彼女自身をも切り裂く諸刃の剣となって、アパートに沈黙をもたらした。
(……なんで黙るのよ。誰か一人くらい、アラフォー独身女でも大歓迎! ……ぐらい言いなさいよ……)
 毎週末のジョギングに、趣味のエステと岩盤浴も、月日の流れには逆らえないのかと、ドローテアは大人としての余裕の裏で、悲嘆に暮れる。
「アンタ達男は楽しいのかもしれないけど、ただのセクハラで犯罪よ! そんな教義、成立するはずないじゃない! どーしてもやりたいなら、ヌーディストビーチみたいな所で勝手にやってなさいよね!」
 女として、そんなドローテアの気持ちの一旦ぐらいは理解できるのか、メルーナは怒りと羞恥で顔を真っ赤にし、エプロンの裾を握りしめながらも、前に出る。
「やはり、拙者は間違ってはいなかった! 恥じらう女の子こそ、至高! 見るのでござるよ、このメルーナ殿達の姿、1つの芸術、女性の秘奥。これはもう激写して後世に残すしかないでござろう!」
「この、馬鹿馬鹿っ! 何撮影してんのよっ!」
 ツンデレスキーのラプチャーとしては、「また燃やすわよ!? 信者と纏めて今すぐ燃やすわ!」と羞恥に悶えるメルーナの反応すら、ご褒美でしかない。
「そもそも、こういう格好は好きな人に特別にやってあげるから良いのであって、いつもやってたら有り難みが薄れちゃうのですよ。料理だっておなかが減ってるのが一番のスパイスだって言うじゃないですか」
「おお、さすがはティセ殿!」
 白いエプロンから覗く、バランスのいいツンと先端の張った胸をプルンと揺らしながら語られるティセの言葉に、同意するように頷くラプチャー。ティセは、ラプチャーと主張が被った事に対し、嫌そうに眉を細めながら、先を続ける。
「あと、男の人が裸エプロンしてると、なんていうか貧乏な感じに見えるです。落ちぶれても元上流階級みたいなのです? イケメンの人なら違うかもしれないのですけど」
「それはブサメン差別だ! ブサメンだって裸エプロンでもいいはず!」
 そもそも、先に差別を始めたのはそっちの方だ。「どの口が?」ドローテアの鋭い視線が飛ぶ。
 と、そこでロージーは、リフィルディードの準備が終わっていることに気付いた。これが最後のチャンスにして、ご褒美となるか。
「皆さんは、恋人さんや奥さんのこういう格好を、自分以外の人に見られる……というのは平気なんでしょうか?」
 ロージーが、ずっと気になっていたことを問いかける。
「男性にとって、恋人さんとかのこういう姿は、自分の為だけのものだって聞きますけれども」
 その至極当然の問いかけに、ビルシャナと信者は何故か胸を張って言う。
「「「恋人も嫁も、いたことがないから、そんな事を言われても分からない!」」」
 何故、そんなに力強く情けない事を言えるのかはともかく、ロージーはやっぱり誰でもいいから女性のそういう格好が見たい、えっちなことがしたいというだけでは……? と、122cmのSカップに集まる彼らの視線に、そう思ってしまう。
「あなた、ごはん? お風呂? それとも……わ・た・し?」
 ならば、最後の手段。クリームヒルデが、エプロンの隙間から素肌を覗かせながら、ニッコリと信者達に微笑みかける。言いながら、クリームヒルデは冷やすそうめんを啜ると、麺の数本が零れ、かろうじてある胸の谷間に滑り落ちてしまう。
「やんっ♪」
 零れる甘い声。
「早くとって☆」
 そして、エプロンの胸元を引っ張りながら、クリームヒルデは信者達を誘った。
「ぐ、おおおっ!」
「我慢だ、我慢するんだ!」
 前屈みになる信者達に、ビルシャナが懸命に声援を送る。彼らの教義は世界を裸エプロンで満たす事であり、エプロンをいろいろと穢す事ではない。誰にとってもエロい優しい世界こそが理想!
「ええー、おねーさんがこんなに頑張ってるのに襲い掛からないとか、ありえなくないですか?」
 不満げなクリームヒルデ。だが、すぐに天誅は下された。
「後ろがお留守だぁぁ!!」
 ドス! リフィルディードのモップによる突きが、前屈みになっていた信者達の、身体の一部に飲み込まれていく。
「……無防備な背中を晒すから、そうなるのですよ」
 ある部分――お尻からモップを生やす羽目になった信者達は、「アッー!」と断末魔の叫びと共に、崩れ落ちた……。


「なんて事を!」
 ビルシャナは、顔を真っ青にしてお尻を押さえている。
「えげつないわね……。あと、ミカン、あんまりこっち見ないでね」
 自分が考えていたお仕置きよりも、はるかに惨い末路を辿った信者達から視線を逸らしつつ、ミカンに属性を注入してもらったメルーナは、地獄の焔を纏った鉄塊剣で、ビルシャナを炎で包む。
「あやや!? ラブチャーさん、そのポジションだめです!」
「グヘヘ……仕方ないでござろう! 後衛なんでござるから!」
 ティセは、お尻の谷間を両手で隠しながら、「女の子の気持ちも考えてくださいです!」そう叫びながら、炎を纏った蹴りを放つ。だが、そうすると必然的に胸が強調され、ラブチャーを喜ばせてしまう始末。
 さらにラプチャーの暴走は止まらず、ビルシャナへと放出した魔力の余波を利用して、周囲に合法的に突風を生み出した。
「きゃっ……私の秘境が! いけない花園が!? うぷっ!」
「大丈夫ですか、クリームヒルデさん。でも、運良くこれなら大事な部分は死守できそうですね」
 風に煽られ、舞い散るエプロンに、飛ばされる身体。そんな中、クリームヒルデとロージーの身体が絡み合い、互いの大事な部分だけが隠されるという奇跡も実現していた。
「もうっ、さすがにやりすぎだね!」
 リュリュは、飛ばされたエプロンに変わり、裸の上にワイシャツを羽織っていた。その姿は、裸エプロンに負けず劣らず――。
「なんと甘美な……と、いかんいかん! エプロンを忘れる所だった!」
 ビルシャナを別の方向に目覚めさせる程の威力。我を取り戻したビルシャナが、孔雀型の炎を放つ。
「これが裸エプロンの限界だ!」
 しかし、リュリュが放つ「進化可能性」を奪う事で凍結させる一撃が、ビルシャナを凍えさせ、他の仲間の花園を守るため、クリームヒルデがオーラーの光を発する。
「鶏にも信者さん達と同じ目を! さぁ、イこうか」
「それだけはーー!」
 無防備なのは防寒だけではない。ビルシャナの背後に回ったリフィルディードの弾丸が、執拗に羽毛に塗れた汚いお尻を狙い打つ。
「悪いけれど、鬱憤は貴方で晴らさせてもらうワよ?」
「ぎゃっ!」
 お尻を押さえてのたうち回るビルシャナには、ドローテアの流星の如き飛び蹴りが突き刺さった。
「申し訳ありませんが、お触りはNGですから!」
 蹴られた勢いのまま、吹き飛んでくるビルシャナに、ロージーは笑顔を向けた。そして、振りかぶられるチェーンソー剣は、裸エプロンごと、ビルシャナの身体を両断!
 ……破廉恥な一日は幕を下ろすのであった。

「あれ、もしかしてこれ、最初から倒せば良かったです?」
「結果的にそうなるねー」
 信者達は、リフィルディードのモップで天誅を喰らった。ティセの言うように、初めからそうしていれば……。
「今更考えても仕方ない。……疲れた」
 最早、考えるだけ無駄である。戦装束に着替えたリュリュが、ホッと息を吐く。
「さて、アタシも着替えましょうかね」
 ドローテアも着替えを始める。その時、メルーナはある事に気付いた。
(……着替え、忘れたわ)
 ラプチャーが全員分のケルベロスコートを持っていたはずだが、彼は作戦終了後、袋にされ、どこかへ吹き飛んでいったのだ。
「ほんと、使えないわね! 早く帰ってきなさい、ラプチャー!」
 昼下がりのアパートに、メルーナの理不尽な叫び。だが、どんな理不尽でも許せてしまえそうになるのは、きっと彼女が裸エプロンだから……なのかもしれない。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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