●平社員はつらいよ
そこは、とあるビル内部。
たくさんの社員の前に立つのは、スーツを着た白髪の中年男性だ。
「代表取締役社長、鈴木・鈴之助である。今、我が社は千載一遇のビジネスチャンスを掴んだ」
『羅泉』と呼ばれる会社を率いる鈴木は、螺旋忍軍の一員でもある。
それに従う社員達は、ごく普通のサラリーマンといった風貌だ。
「お前達エリート社員は港区を虱潰しに捜索せよ」
鈴木によれば、 螺旋帝の一族が東京都内に潜伏しているという情報を得たとのこと。
「……他者の妨害が入るのであれば、速やかに排除せよ」
「「「はっ……」」」
頭を垂れた社員達へ、鈴木は最後にこう一言告げる。
「エリート社員ならば、給料分の働きをしてみせるのだ」
別所、こちらもビルの中。
『株式会社スパイラルハート』の社内において、黒頭巾に黒装束といった姿の者達がひざまずいている。
「傾注! これより、我が部署は24時間残業体制に突入する」
指示を出すのは、頭巾から出た2本の角が目に付く、こちらも黒ずくめの忍者だ。
彼らは、螺心衆と呼ばれる集団だ。表向きは一般企業を装いながらも、螺旋忍軍の一集団として、諜報活動を主として活動している。
「下忍社員は4~6名の班を作成、都内全域を分担して調査活動を行うように」
上忍である男が指令を出すと、下忍達はただ首を縦に振る。
その調査対象は、東京都内に潜伏していると思われる螺旋帝の一族その人とのことだ。
「調査中、他忍軍の調査部隊を発見した場合は、最優先で他忍軍の排除を敢行せよ。検討を祈る」
指令を聞き終えた下忍達はこの場から飛び去り、任務へと当たっていくのだった。
螺旋忍軍の活発なる活動。
それを聞いたケルベロス達がヘリポートへと集まっている。
「東京都心部で、螺旋忍軍による内部抗争が起こっているようだね」
リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は端的に情報を話し、具体的な話に移る。
複数の螺旋忍軍の組織が活発に活動する中、螺旋忍軍同士での戦闘に発展しているようだ。
デウスエクス同士が争うだけなら放置してもよいが、この戦闘により都心が破壊され一般人の犠牲者が出るとなれば放置できない。
「皆には、この螺旋忍軍両グループの撃破を頼みたいんだ」
周囲の被害を抑える為には、両者の戦いに介入した上で敵を連携させぬように片方のグループを撃破し、さらに、もう一方のグループを撃破するという手順をとることになるだろう。
「忍軍同士を戦わせて疲弊した所を叩くという作戦も可能だし、効率的ではあるけれど……。一般人に大きな被害が出る恐れがあることを留意しておいてほしい」
状況によっては、螺旋忍軍の両グループが協力してケルベロスに敵対してくる。介入前に戦いを長引かせて敵を疲弊させる工夫がないのであれば、戦況が悪くなる可能性もある。この為、こちらの作戦をとりたいのならば、慎重に判断して作戦を考えたい。
「争う螺旋忍軍だけど……」
まず、片方は大企業グループ『羅泉』所属のエリート社員6人だ。
一見、スーツを纏ったサラリーマンだが、螺旋忍軍であるのは間違いない。敵と判断した者に対しては、栄養ドリンクを飲んだ後、名刺とアタッシュケースでの攻撃を行う。
もう一方は、螺心衆の下忍4人。表向きは『株式会社スパイラルハート』の社員だが、諜報をメインに活動する者達とのこと。敵対する者は日本刀で排除してくるようだ。
「両者の争いは、東京都港区、新橋駅西口広場で始まるようだね」
よく、汐留の某テレビ局が中継やインタビューをしているSL広場だ。
また、新橋はオフィス街としても知られる場所。平社員の彼らがかち合うのには最適な場所だったのかもしれない。
とはいえ、人通りの多い場所であるのは間違いない。抗争直後から介入はできそうだが、効率を求めるか、それとも人命第一で動くのか。どういった作戦を取るかは皆に任せたいとリーゼリットは語った。
説明を終えたリーゼリットは、それともう一つと付け加える。
「螺旋忍軍の目的については、直接末端構成員から話を聞き出すよりは、彼らの行動を元にして独自調査をする方が有益な成果が出ると思う」
この事件の陰で何が起こっているのか。それを導き出せるかどうかは、ケルベロスの行動如何と言える。
「だけど、まずは、螺旋忍軍の抗争を止めないとね」
よろしく頼んだよと、リーゼリットは参加するケルベロス達へと微笑んで見せたのだった。
参加者 | |
---|---|
ラビ・ジルベストリ(意思と存在の矛盾・e00059) |
朝霧・紗奈江(カフェテラスオーナー・e00950) |
幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515) |
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079) |
鵜松・千影(アンテナショップ店長・e21942) |
響命・司(霞蒼火・e23363) |
ヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829) |
ザハク・ダハーカ(スカーレッド・e36065) |
●上辺だけの共闘
螺旋忍軍が現れる現場へと向かうヘリオン。
「エリートと平社員の戦いか」
「他の奴らは定命やらで忙しそうなのに、コイツらは身内で揉めてるのか」
銀の髪を揺らすラビ・ジルベストリ(意思と存在の矛盾・e00059)がマイペースな調子でそう口にすると、金髪に日焼けした肌とチャラい見た目のヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829)は口の中で棒つき飴を転がしながら、「デウスエクスもいろいろと大変だね」と呟きつつも相槌を打つ。
「しかし本当に、螺旋忍軍さんははた迷惑な方ばかりなのです~……」
普段から着用するにんにんスーツ姿の朝霧・紗奈江(カフェテラスオーナー・e00950)は、元螺旋忍軍の家系な螺旋にんじゃ~とのことだが、正義の為にとこの依頼に参加している。
「いやはや、ほっとくと大変なんだっけ。全力で止めさせてもらうよ」
現地に到着したのを確認し、ヴァーノンが腰を上げる。眠っていた響命・司(霞蒼火・e23363)も目を覚ましていたようだ。
軽薄な表情を浮かべる幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)もビハインドの八重子と共に扉へと向かい、左足から踏み出すように真下に広がる大都会へとダイブしていったのだった。
東京都港区。
新橋駅へとやってきたケルベロス達はすぐに、向かう合う螺旋忍軍2グループを発見する。
「やれやれ、下賤な連中の相手はこれだから困る」
「…………」
片方はやや上から目線の態度をした羅泉の超エリート社員6名。そして、もう片方は言葉少なに構えを取る螺心衆の下忍4名だ。
「ふ、その上自身で考えられぬ木偶ときた」
鼻を鳴らす羅泉の姿に、ヴァーノンは呆れる。エリートという人種……人なのかどうかと浮かぶ疑問はさておき。
「まぁ、人種はどうも鼻につくよね。こう、偉そう。下っ端なのに」
「個人実業家の私には、どちらに肩入れする気にもならんが。しかし、仮初でも協力してやろう」
「ボク達も戦い続けるのはしんどいだろうし、出来る限り煽って消耗してもらおうぜ」
判官びいきが好きだと言うラビに、ヴァーノンはにやりと笑い、仲間と共にその抗争へ介入していく。
ある程度近づいたところで、無表情な鵜松・千影(アンテナショップ店長・e21942)が避難を優先させるべくパニックテレパスを発した。
「ここに近づくな」
「此処は危険だから逃げろ! 俺達ケルベロスに任せろ!」
やる気なさげな口調で千影が言い捨て、司がやや怒鳴り口調で叫ぶ。やや混乱していた人々は、慌てながらも、ここから離れるように逃げていく。
最悪、地面にグラビティをぶっ放してでも危機感を煽ろうと考えた司だったが、杞憂に済みそうだ。
避難に手間取る一般人に付き添う形で、赤い鱗と大小無数の傷を上半身に刻む竜派のドラゴニアン、ザハク・ダハーカ(スカーレッド・e36065)がこの場から一時離れる。
「一般人の無事は大切だが……」
仲間3人が人払いに当たっている。九助は翼を羽ばたかせつつ、大胆不敵に抗争の間へと入っていく。
ケルベロスはその片方に味方し、先にその相手を倒す作戦を事前に立てていた。数の少ない螺心衆を倒すという意見もあったが、結局は栄養ドリンクで力を高めるエリート社員が面倒という結論に至った形だ。
真っ先に突っ込んだラビは螺心衆の刃を浴びながらも、彼らに背を向ける。
「あのエリートを速やかに潰し、我々と雌雄を決さんと」
刃を受けた相手へ、ラビが態度を大きくして呼びかける。
敵対姿勢を見せぬ新手の集団に警戒を見せる下忍達は、小声で何やら語り合う。
「敵の敵は味方、俺らはあっちを倒したい。お前らもあいつらを倒したい。こいつはもう共闘するっきゃねえだろう?」
九助もまた、螺心衆を説得する。相手のエリート社員どもは新手の存在に顔を顰めるが、お構いなしに攻撃を続ける様子だ。さすがに、説得だけを行うわけにも行かない。
「……まあ、敵の敵は味方っていうし」
露出度高めな服で自らの豊満なスタイルをさらす、マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)。鞘に収めたままの白銀の長剣を振るいながらも、彼女は下忍達へ告げる。
「協力とまではいかなくても、三つ巴になるよりはこっちの方があなた達にも都合が良いんじゃないかしら?」
剣より放たれる衝撃波で羅泉に攻撃するマイアは、ラブフェロモンを全開にした。マイア自身も螺心衆に効くと考えていないが、色気を撒き散らずにいて何がサキュバスかと矜持を抱くからこそ。
藍色のストレートヘアを靡かせ、紗奈江は駅舎の壁を利用して高く跳ぶ。
「桜の花のひとひら達は、風に舞う火の粉の様に舞い、やがて一つに集まり、そして、全てを焼き尽くさんとす……」
蝶のように戦場を舞う紗奈江は宙を飛ぶ名刺カッターを捌きながらも、何か言葉を紡ぐ。
「朝霧流螺旋忍術、桜花炎舞!」
詠唱を完了すると、紗奈江は両手合わせ10本の指から炎の球を放つ。それぞれが弧を描き、エリート社員を襲う。
「ちっ、低俗な連中め……!」
「我らエリートの力、思い知れ!」
彼らは栄養ドリンクを飲み干し、活力を得てからアタッシュケースで殴りかかってくる。
その殴打を受けるヴァーノンは降魔の力を弾丸に込め、魂を喰らう一発をエリート社員に叩き込む。
「エリートなのに、こんな攻撃も避けれないのかよ」
「何……?」
いきり立つエリート社員を尻目に、ヴァーノンは螺心衆へと声をかける。
「エリートだとか自分から言っちゃうようなヤツって、嫌いんだよね」
もっとも、どっちもどっちだと彼は本心では考えているが……。
「下っ端って辛いらしいね、がんばれ」
「…………」
小さく頷く下忍達。心を開いたと言うわけではないだろうが、彼らは羅泉メンバーに向けて居合いで切りかかっていく。
少なからず、あちら……螺心衆に利があると印象を持たせることができた。ラビは九助の降らせる薬液の雨を浴びながら、螺心衆と羅泉を挟むような布陣をとりつつ、自身の魔力で白い立方体を構成する。
「食うといい、恵んでやる」
創造したいくつかの角砂糖をラビは投げ飛ばす。エリート社員に命中したそれらは爆ぜ、そいつに強烈なダメージを与える。そこで、ビハインドの八重子が周囲のガレキを飛ばし、敵の足止めを行っていたようだ。
「結局のところ、一番効く薬ってぇのは、いつだって己の内側だ。この世界を愛したんなら、生き晒せ!!」
九助が左手で仲間へと振り撒いた薬は、脳のリミッターを狂わせるもの。その上で彼が周囲を見回すと、どうやら避難もある程度済んだらしく、誘導に当たっていた者達が戻ってきた。
先行して介入したメンバーはうまくやっていたが、螺心衆全員が納得しているように司は見えなかったらしい。
「テメェ等の任務や命令を思い出せ。最優先はあるだろうが!」
羅泉は6人。螺心衆4人では元々不利な状況。彼らにとっても悪くない話だ。
「こっちはこっちで色々あってな。ったく、面倒くせぇ……」
悪態づく司はウイングキャットのゆずにゃんに仲間の回復を任せ、自らは加速して敵へと突撃しながら、惨殺ナイフを振り回す。
続いて駆け込む千影は、弁当箱型のミミックのベンさんと共に仲間の盾となって名刺カッターを受け止める。
「エリート嫌いだから、先にぶっ潰す」
そうして、死んだような目で言葉を発した千影は攻撃の前に、自身を中心に鎖で展開した魔法陣で防御を高めていく。
「安心しろ、私達も羅泉の撃破が狙いだ」
戦いとなったことで精神を昂ぶらせるザハクも螺心衆へと言い放ち、すでに全身に傷を負っていたエリート社員を狙う。
「さぁ、貴様達の魂を己に喰わせろ……!」
好戦的な笑みを浮かべるザハクは咆哮を上げ、突き出した縛霊手の掌から、巨大光弾を発射する。それを浴びた羅泉がついにその場へと倒れていく。
「く、こんなはずは……」
ザハクの光弾は前に立つ隣りの社員にも及んでいた。苦しそうに息する敵へ、ヴァーノンは螺心衆の陰からリボルバー銃の照準を合わせ、確実に敵を仕留めるべく敵の頭を狙う。
「さようなら」
乾いた銃声の直後、弾丸を受けた社員が崩れ落ちる。
そして、ヴァーノンは何気なく前方を見ると、そこでは2グループの螺旋忍軍が互いに傷つけ合う光景があった。
「いやー、潰し合いをみるのって、ちょっと楽しいね」
そんな敵の姿に、彼は微笑みすら浮かべてしまうのである。
●返す刀で……
ケルベロスと螺心衆の共闘。
それによって劣勢となる超エリート社員達は、冷や汗を流し始めていた。
「大変だな、おめーらも。所詮は只の駒のくせに」
「何を言う、我らエリートが……」
「は? エリートなら、残業してまで仕事してんじゃねーよ」
ただの社畜でしかない敵へ、常に両手に手袋をはめる千影が銃を抜いて発砲する。
「鵜松の名のもとに――。御魂を喰らいて、花を咲かせよ」
それを打ち込まれたエリート社員の体に、小さな花が咲く。魂を完全に奪い去った花は紅紫の光となって。
「俺らは残業なしで、きっちりと仕事終わらしてやんよ」
光を受け、幾分か体力を回復させた千影はそっけなく残る羅泉に言い放つ。
エリート社員達は栄養ドリンクを飲み、活力を得ようとする。マイアはそれを見過ごさず、解き放ったブラックスライムに食らいつかせていく。
「いきますよ~」
その隙を狙い、紗奈江はアクロバティックに宙返りしてスライムに食われた1人の肩へと触れる。敵の内部で暴れる螺旋がそいつの身を苛む。
「うおおおっ!」
うめき声を上げた羅泉の意識が途絶える。順調に羅泉の数が減る中でも、紗奈江は螺心衆がこちらに襲ってこないかと十分に注意していた。
前方では電光石火の蹴りでラビが1体を屠り、最後の羅泉を見据えた司が正面から攻め入る。
「全て壊れろ、デウスエクス。これがテメェ等の送り火だ」
敵の体を右腕で殴る司は同時に、その右腕に巻き起こした蒼炎と烈風を敵へとぶつけ、爆発を起こす。全てを滅ぼす蒼い鳳凰がかすみのように消えると、羅泉は無残な姿で散っていく。
全ての羅泉を倒し、ケルベロスと螺心衆の各メンバーは息つくものの。緊張の糸は現場に張り詰めたままだ。
「……さてと、大人しく私達に螺旋帝の情報を渡して、引き下がってくれないかしら?」
マイアが話を持ちかけるが、螺心衆は刀に手をかけた態勢のまま。彼らも全面的にこちらを信用したわけではなさそうだ。
「まあ、無理な相談よねぇ。そもそも最初から貴方達は両方とも殺す予定だったしね」
「……悪いな。共闘しておいてなんだが、お前等も倒す」
マイア、司の言葉と同時に、両者から殺意が溢れ出る。
流水のような動きで切りかかる螺心衆を、千影がベンさんと止める。
「結局、俺達も排除対象だろ? 奇遇だな、俺らもそうだ」
「…………!」
肯定の意であるのは間違いない。ベンさんがエクトプラズム出作り出したフォークやスプーンで殴りかかった直後、千影はそいつにリボルバー銃の銃口を向けた。
「『昨日の友は今日の敵』……、サラリーマン世界の合言葉。ヤなもんだな、大人の世界ってよ」
苦笑しながら、彼は弾丸をばら撒くように発砲した。
日本刀で応戦する敵に切りつけられながらも、長身を活かして敵へと攻め入るザハクが一度距離を取る。
「心すら喰らい侵す魂の叫び……抗って見せろ!!」
すっと、息を吸い込んだザハクが発した狂気の咆哮は、かつて喰らったビルシャナの魂。それを耳にした下忍1人が惑わされていたようだ。
(「さすがに、不意打ちとはいかなかったか」)
先ほどの戦いの傷をあり、ラビは虚の力を纏わせた刃で斬りかかる。
引き続き、攻撃指示を受けた八重子が心霊現象を起こして敵を縛り付ける。ほぼ連戦となる状況もあり、その横で九助が左手で振るった錫杖から、電気ショックを放って仲間の回復を行う。
敵は素早さを行かした斬撃を得意とするが、長引く戦いはその機敏さを少しずつ奪っていく。
マイアの呼び出した氷河期の精霊が螺心衆らを氷に閉ざし、その中にいた1人へ、敵から距離をとった紗奈江が毒を精製した手裏剣を投げ飛ばした。
毒に犯される敵へ、ヴァーノンがすかさず、愛用のリボルバー銃から弾丸を撃ち出す。それは美しい折り鶴を象り、敵の喉を撃ち抜いた。
「下っ端も大変だね。俺達も似たような物な気がするけど」
倒れる敵に、彼は哀れみを覚えてしまうのだった。
ケルベロスとて長引く戦いに疲れてはいたが、螺心衆の疲労はそれを大きく上回っていた。
連携にも、少しずつ穴が出来始めている。そこを狙い、司はナイフの刀身を煌かせると、螺心衆の下忍は何かを思い出して唸り始めていた。
下忍達は空を切る1人に連携が乱されて。千影、ベンさんが彼らの刃を受け止める。
うろたえ始める敵へ、ザハクが降魔拳士として螺旋忍軍の魂を喰らうべく、その長身で敵へと躍りかかった。猛然と振るわれたザハクの脚をみぞおちに喰らった敵は、体に電撃を走らせて蹲る。
すかさず、ラビが惨殺ナイフを振り回す。事切れる螺心衆の全身から噴き出す血を浴び、彼は次なる敵を見定めた。
一方で、疲れを見せるケルベロス側も、ウイングキャットのゆずにゃんが必死に翼を羽ばたかせ、九助も錫杖型のライトニングロッドを振るって仲間へと癒しを振舞い続ける。
仲間がそうして前線を持たせている間に、マイアは結晶花『Amber Mistelten』を蔓触手形態に変形させて、螺心衆へと食らいつかせていく。
動きを封じた敵へ、紗奈江が愛用のリボルバー銃「ギリ2ゴウ」から素早く銃弾を発射する。胸を射抜かれた敵はがっくりと膝から崩れて落ちていった。
気づけば、残るは1体。退路を探す螺心衆へ、ヴァーノンが躊躇なく降魔の弾丸を撃ち込むと、司が颯爽と肉薄する。
「これがテメェ等の送り火だ。……強かった事は覚えておく」
再び、彼は先ほどエリート社員を屠ったのと同じように、蒼炎と烈風を拳で同時に叩き込み、爆発を起こす。
霞のように消える青い鳳凰。最後の螺旋忍軍の討伐を確認し、九助が長い髪を振るいつつ叫ぶ。
「漁夫の利、漁夫の利! いや、使い方が少し違うか?」
ケルベロスの作戦勝ちといったところだろうか。その勝利を知り、徐々に駅前に戻ってくるサラリーマン達がケルベロスへと喝采を上げる。
職場という戦場から、帰宅の途につくビジネスマン。それを目にした一行は、次なる戦場へと赴くのである。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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