「おーいしいーいメーロンー♪」
椅子に座った少年がテーブルの上の白い皿をフォークでチンチンとリズムよく叩く。
「あーまくーて、ほっぺーたと~ろけーるぞー」
音程のずれた歌を唄いながら、少年が楽しそうにしていると空からふわふわと緑で縞々模様の球体、メロンが皿の上に降り立った。
「わぁっメロンだー! いただきまーす!」
喜んで丸々したメロンにスプーンを突き差すと、パカッと綺麗に切れ目が入って食べやすくスライスされ、淡い緑の果肉が露出した。
「あっまーーーい! じゅーーーしーーー!」
それを美味しそうに少年はかぶりつく。旺盛な食欲で次々に食べると、薄皮だけを残して食べ尽くしてしまう。
「メロンでしあわせー!」
幸せそうに背もたれに身を任せてぐでっとしていると、空からさらに大きなメロンが振って来る。それは少年よりも大きな4mはある超巨大なメロン。
「うわぁっおっきい! すごいすごい!」
すると同じようにメロンが等分に切られ、少年はかぶりつく。
「おいひぃおいひぃ」
少年のお腹が漫画のように膨らみ手を止める。
「ぷはぁっごちそうさま!」
皿の上にはまだまだメロンが残っているが、少年はもう食べられないとお腹を撫でた。
『もうお腹いっぱい?』
「うん! ……だれ?」
少年が話しかけられたのに気づきキョロキョロと見渡すが誰も居ない。するとギョロリと残った巨大なメロンに目と口が現れた。
『じゃあ次はこっちがいただきまーす!!』
少年を一呑みできる程の大きな口を広げ、少年の視界は全て覆われ、メロンに食べられた。
「ひああああ!!?」
叫んだところで少年は夢から目覚め跳び起きる。
「はぁはぁ、はーーー……ゆめか~。びっくりしたー」
深呼吸して少年は寝汗を拭う。
「でもおっきなメロンだったなー。いつかあんなのたべてみたいな~」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
少年の声に重なり女性の声が部屋に響く。そして女性が手にした鍵が少年の胸に突き刺さり、少年は意識を失いベッドに寝転がった。
元々存在していなかったかのように音もなく女性はそのまま消え去る。そして代わりに大きな物体が現れる。
『ぶぁぁぁああ! おっなかすいたなぁー! オーイシーイにーんげーん♪』
音痴な歌を口ずさみながら、現れた巨大なメロンはとうっと床を蹴って跳躍すると、体を変形させてスポンッと窓から飛び出し、夜空へと舞い上がった。
「この間メロンパンのドリームイーターが出たでしょ、だからメロンのドリームイータも居るかも? と思ったのよ!」
それが見事的中したと葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)が嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「第三の魔女・ケリュネイアが少年から『驚き』を奪い、新たなドリームイーターを生み出す事件が起きるようです」
ケルベロス達へ向けてセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい説明を始める。
「生み出されたドリームイーターはグラビティ・チェインを奪う為に人を襲います。それを阻止して敵を撃破してもらいたいのです」
ドリームイータを倒す事で、眠りに落ちた少年を目覚めさせる事も出来る。
「敵が現れるのは東京の町で、4m程もある大きなメロンの姿をしたドリームイーターが現れます」
大きな口で人を丸呑みにしたり、メロンのジュースを飛ばしたりして攻撃してくるようだ。
「夜道で人々を驚かせるような行動をするようで、驚かない相手が居た場合、その対象を優先的に狙うようです」
驚かない事によって敵の狙いを引き付けるような作戦も可能かもしれない。
「これからメロンの旬ですね。ですがいくらメロンが好きでも自分がメロンに食べられるなんて恐ろしい夢ですね。そんな夢から現れたドリームイーターを撃破して、メロン好きの少年を助けてあげてください」
セリカが頭を下げて早速出発準備へと向かう。
「巨大メロンかぁ……きっと美味しいんだよね。食べてみたいなあ……」
静夏は大きなメロンを思い描いて頬を緩ませる。
「だけど被害が出るならちゃんと倒さないとねっ!」
みんなでがんばろーと静夏が掛け声をかけると、ケルベロス達も応じて出発の準備に取り掛かった。
参加者 | |
---|---|
ロゼ・アウランジェ(ローゼンディーヴァの時謳い・e00275) |
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116) |
ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774) |
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365) |
真昼間・狗狸狐(なにもかもなにもかも・e22743) |
スライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682) |
エレス・ビルゴドレアム(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e36308) |
●メロンの通り道
人通りも無くなった暗い夜道。そこにケルベロス達が到着し周囲を窺う。
「メロン!」
大きなメロンを想像してロゼ・アウランジェ(ローゼンディーヴァの時謳い・e00275)は笑顔になる。
「甘くて美味しいメロンは大好きです! けれど、メロンに食べられるのは嫌なのです。食べられる前にパカッと割ってしまいましょう!」
どんな味なのかと思い馳せながらメロンの姿を探す。
「巨大メロンですかぁ」
灰色熊の姿をしたワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)は巨大なメロンが街中を闊歩しているほのぼのした光景を想像する。
「何か、大きいだけなら、おいら的にも喰ってみたくなる果物ですけどねぇ。まぁ、ドリームイーターだしぃ、退治するしか無いんですけどねぇ」
何であれ敵であるなら倒すしかないと仲間から遅れぬようにのんびりした歩調を速めた。
「本当にメロンのドリームイーターがでてきちゃうなんて、ちょっとびっくりしちゃうね」
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)が仲間達と会話しながら道を歩く。
「しかも今は旬だよね。なかなか季節感があっていいけれど、デウスエクスなら倒さないとね」
美味しそうなメロンであっても容赦はしないとぐっと拳を握って気合を入れる。
「巨大メロンパンが出たからって、巨大メロンまで出なくてもいいのに」
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)はこの間出会った巨大メロンパンを思い出す。
「美味しそうだけど、食べるとダメージ受けるのよね。残念」
食べてみたいけど我慢我慢と言い聞かせ戦いに備える。
「おっきいメロンの敵とはのう……」
真昼間・狗狸狐(なにもかもなにもかも・e22743)はそんなものが人を襲う様子を思い描いて何とも云えぬ表情となる。
「それほど巨大なら見つけるのには苦労しなさそうだな」
鋭い視線でスライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)が静寂に包まれた夜道を見渡す。
「メロンなんてへーきのへの字、ロックなボクは怖くないデース!」
ギターを手にしたシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が、目立つようにギターを一掻きして自信満々に宣言する。
「食べ物のマスコットって可愛いですけど、食べたいとは思いませんよね。相手がドリームイーターなら尚更です」
どれだけ見た目が良くともドリームイーターを食べるのは御免だと、エレス・ビルゴドレアム(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e36308)は呟いた。
●巨大メロンは美味しいメロン
そうして探しているとどこからか甘く爽やかな香りが流れてくる。
「なんていうか、美味しそうな匂いがするんですよぅ。うん、メロンの匂いですよぅ」
鼻をくんくんと動かしたワーブは周囲を見渡す。するとその視線の先に大きな緑の球体が映った。それは小さな手足のようなもの器用に操り、道路を狭そうに進んで来る4mもある巨大なメロンだった。
「見るからに、大きいですよぅ。では、いただくですよぅ」
とりあえず食べてみようとワーブは近づく。するとメロンに目と口が描かれ、ケルベロス達を見下ろした。
『こ~んぶぁんるぁあ! にーんげーんさーん、たべちゃうぞぉ!』
人を丸呑み出来るほどの大きな口を威嚇するように開けた。
「わー! 大きいメロンです」
キラキラと瞳を輝かせてロゼは素直に驚きを露わにする。その足元ではテレビウムのへメラがビクッと驚きそうになるのを堪えていた。
「お、おおおお!? お、おっきいだけのメロンなんて怖くないデース! かかってこいデース!!」
驚きを隠しつつ、シィカはシャーッと威嚇しながら構える。
「すっごーい! こんな大きなメロン初めて! 手足はヘタで出来てるのかな? ちょっとシュールよね」
この前のメロンパンのが大きかったと思いながらも、おくびにも出さずにユーロは大袈裟に驚いてみせ、あれこれとメロンを観察する。
「わーーーすごーーーい!!! でっかいメロンじゃ!!!」
家ほどもあるメロンを目の前にして狗狸狐は興奮してはしゃぐ。
「あ、いかんいかん。今回はこれやっつけるんじゃったな」
そして我に返り、咳払いをして仕切り直す。
「すごーい! あなたはメロンのフレンズなんだね!」
驚きではなく歓迎の笑みを浮かべ、少し棒読みな台詞でメロンに向かい合う。
「美味しそうだねー」
ずっとメロンの事を考えていた静夏は、驚きよりも先に美味しそうという感情が飛び出して微笑んだ。
「……確か、驚かなければ攻撃を食らうのだったな……お、驚いた。これほど大きなメロンとは……これでいいか?」
ならば驚いておこうと、頬をピクリと動かしたスライは不器用な演技で何とか驚いた様子を作ってみせる。
「メロン退治を始めましょう」
エレスの放つオーラが星々の輝きの幻影となって仲間を包み込み耐性を与える。
『おどろかないにーんげーんはー……たべちゃうぞぉらぁ!』
メロンは驚かなかった中でも最も近くに居たワーブをぱっくんと食べてしまった。
「本日のケルベロスゲリラライブ、スタートデース! ロックンロール! イェイ!」
リズムに乗ってギターを掻き鳴らしたシィカは、音を響かせながらステップを踏み炎を纏った足で蹴り上げた。すると衝撃にもぐもぐしていたメロンの口が止まる。
「まずは、これですよぅ」
その隙に内部に囚われたワーブが力強く皮を破って鋭い爪のある獣の腕を突き出し、こじ開けて外へ脱出する。その口はもぐもぐとメロンを味わっていた。
「おおっ人間を丸呑みとはのう……と眺めておる場合ではないのじゃ」
狗狸狐は満月のような輝きを飛ばし、ワーブの傷を癒すと共に内に秘めたる野生を高める。
「どのくらい熟してるのかなー?」
興味津々に静夏は鉄塊をフルスイングで叩き込んで、メロンの傷口から甘い果汁が噴き出させた。
「甘ーいメロンを冷やして食べるのって美味しいけど、メロンシャーベットも美味しいわよね。これだけ大きいメロンだと、シャーベットどれくらい作れるかしら?」
メロンを前にそんな事を考えながらユーロは魔力弾を撃ち込み、メロンに悪夢を見せる。
『ぶあああぁっメロンは熟れ過ぎるとぅ味が落ちちゃうよぉ』
ゴロゴロと転がり始めたメロンを止めようとしたへメラはベタッと踏み潰される。
「食べられるドリームイーターか……出来れば上手く切ってみたくなる衝動が湧いてくるが……」
今は倒す事に集中しようと、スライはすれ違いながら炎のような波打つ刀身を持つ剣で斬りつける。刃が自然と傷口を複雑に抉って果肉を削り出す。
「これだけ大きければ食べ放題です。……食べちゃダメなのでしたっけ……残念」
我に返ったロゼは残念そうにしながら地を蹴り、塀を蹴って妖精のように舞い上がると頭上から踏みつけるように蹴りを叩き込んだ。
『ぶぅあああ!?』
連続で受けた攻撃にメロンは進路を歪まされ電柱にぶつかって止まる。
「美味しくとも喋るメロンでは食欲は湧きません」
エレスはオーラを放ち、へメラを布で覆うように包んで傷を癒していく。
「なかなかのロックデース! でもボクの方がもっとロックデスよ!」
敵が動く前にシィカはナイフを突き立て、メロンをカットするように切り裂いていく。
「攻撃する度に……美味しそうな香りがします!」
メロンの甘い香りに惹かれながらもロゼは鋼を纏い拳を打ち出す。星のように輝きながらメロンに腕が突き刺さる。傷口からプシューッとジュースが溢れ出し、ロゼや周囲の仲間に降り注ぐ。
『おいしいジュースを飲ませぇてあーげるぅよー!』
そのまま噴き出した果汁が近くのケルベロス達を濡らしていく。
「少しぐらいなら、メロン食べたりジュース飲んでもいいかな。こんなおおっきいメロンには2度と出会う事もないだろうしね」
メロンジュースを掻い潜りながらユーロはメタルの拳で殴りつけた。そして飛び散る果汁が頬を濡らすとペロリと舐める。すると芳醇なメロンの甘みが口一杯に広がった。
「美味しいメロンですよぅ。もっといただくんですよぅ!」
果汁を浴びるのも気にせずに近づいたワーブの右腕の爪にグラビティの力が集まり、大振りで振り抜くとメロンを切り裂き、5本の爪痕が深く刻まれる。そしてその爪についた果肉をぺろぺろと舐めとった。
「ううむ、確かにもっと食べたくなってしまう味なのじゃ。それゆえにたちが悪いのう」
果汁100%ジュースに顔を汚した狗狸狐はオウガ粒子を放出し、仲間達の傷を癒して感覚を鋭くさせた。
「……私の剣では美味しそうには斬れなさそうだが……デウスエクスだから大丈夫か」
スライは傷口を狙って剣を突き入れ、切り裂くように抜くと波打つ刀身が内部を深く抉り傷を広げた。
『そんな風に切ったらぁ、果肉が潰れちゃうぅ!』
小さな足で地面を蹴ったメロンがゴロンゴロンとローリングして突っ込んで来ると、静夏の体が吹っ飛ばされて宙に舞う。だがそこで家の壁を蹴りメロンの頭上を取った。
「中身を見せてよ」
振り上げた道路標識っぽい斧に体重を乗せて思い切り叩き込み、深い切れ目を入れた。
「離れていてもメロンの香りが凄いです」
すぐにエレスは着地した静夏をオーラで包み、果汁を拭うようにして治療を施す。
●もっとメロンを
『もっとメロンに愛をもってぇ! デリケートなぁデザートなんだよぉ!』
ドバッと果汁が噴き出し、豪雨のように降り注ぐ。それがケルベロス達の口へと入り込み、フレッシュで濃厚なメロンの味わいが心を満たす。
「このスイーツメロンの味わいは、ロックデース!」
目を輝かせて魅了されたシィカがメロンの切れ目にかぶりつく。
「今でも甘いけど、冷やすともっと美味しくなるよ」
頭を振って髪を濡らす果汁を払った静夏は冷夏の風を全身に纏い、背中から敵にぶつかって凍りつかせる。
「食えるのか……これ。私は食わないが」
美味しそうに食べる仲間を見ながらスライは僅かに肩をすくめ、翼を羽ばたかせると一気に加速してメロンを斬りつけて背後へと抜け、更に背中を斬りつけた。
「一度味わうとメロンを食べたいという誘惑に抗えないようですね」
エレスはオーラによって幻影の星座を描いて仲間を包み込んだ。続けてへメラも様々なメロンスイーツの映像を流して体と心をリフレッシュさせる。
「濃厚なメロンの味わいが……はっ!? いけません! 危うくメロンの虜にされてしまうところでした」
正気に戻ったロゼが白薔薇を手にすると、月光が弾けるようにメロンが爆ぜてその体を吹き飛ばす。
「とっても甘くて美味しいメロンだけど、だからこそ放置すると危険ね」
そこへユーロは魔力弾を撃ち込み、幻を見せて敵の注意を逸らした。
「ただのでっかいメロンであったなら歓迎されたじゃろうが、食べて害になるものはのーさんきゅーなのじゃ!」
背後から踏み込んだ狗狸狐は降魔の力を宿して拳を打ち込み、表皮を大きく凹ませる。
「メロンは大人しく食べられるんですよぅ」
メロンに酔っているのか素なのか分からぬ平静な態度でワーブが両腕を広げて押さえつけ、両腕に力を込めて締め付け傷口から果汁を噴き出させた。その勢いでメロンが地面を転がって塀にぶつかる。
『このキュートなスゥィーツメロンをぅ、たべるのかたべないのかハッキリしろぉぃ!』
食べられたり攻撃されたりと、滅茶苦茶にされたメロンが怒って大きな口を広げて襲い掛かり、シィカを丸呑みした。
「大きなメロンは惜しいですが、悪いメロンにはお仕置きです……運命紡ぐノルンの指先。来たれ、永遠断つ時空の大鎌──あなたに終焉を」
ロゼが伝承の詩の一節を紡ぐと光纏う終焉の大鎌が喚び出され、運命の糸を断ち切るように一閃しメロンを大きく斬り裂いた。
「最初からドリームイーターのメロンなんて食べないと言っています」
続けて反対側からエレスのオーラが如意棒の幻影となって飛翔し、メロンを打ち据える。すると切り口から押し出されるようにシィカがゴロリと転がり出る。
「美味しいメロンは最高にロックデース! もっと食べるデスよ!」
元気にシィカが飛び掛かり、鋼を纏った拳を傷口に突っ込んで皮を引き剥がし果肉を抉り取る。
「食べ物を粗末にする気分になってしまうのじゃが、覚悟するのじゃ」
狗狸狐はナイフで幾重にも切り裂き、メロンの表皮をズダズダにした。
『傷物になるぅからぁ! やーめろぉ!』
メロンが果汁を吐いて狗狸狐を吹き飛ばす。そのままメロンは果汁を飛ばし続けて威嚇する。
「どうしても汚れてしまうな……我慢するしかないか」
体を濡らす果汁を気にしつつ接近し、スライは極限まで精神を高めると、その瞳に緑の線が映る。その線の通りに刃を走らせると、始めから切れていたように何の抵抗も無くメロンが解体されていく。
「メロンは大人しく、切られて食べられなさい!」
4人に分身したユーロが敵を取り囲み、それぞれ色の違う魔力弾を撃ちまくって滅多打ちにした。
『ぶあぁぁっ中の果肉がぐちゃぐちゃになるぅ……』
よろめき転がって距離を取ろうとするメロンの上に静夏が飛び乗った。
「食べやすいようにカットしてあげるね」
そして斧を振り下しメロンを真っ二つに叩き割った。
「いただきまぁす」
そこへ襲い掛かったワーブが牙を突き立て、むしゃむしゃとメロンをむさぼり食う。
『あっああ~たべられちゃうぅぅ!』
メロンは天に向かって果汁を噴水のように放出し、風船のように萎んで皮だけになり消滅した。
●メロンの香り
「ひえー……メロンでべたべたになってしまった。片付け終わったらおふろいくのじゃ……」
ヒールを掛けながら狗狸狐はべとべとになって甘い香りを発する髪や服を気にする。
「本当におっきなメロンだったデース」
あんなメロンにはもう出会えないだろうと、シィカはもっと食べれば良かったと残念そうに肩を落とす。
「美味しかったですね……普通に食べられるならお土産にしたのですけど……」
愛しい恋人にも食べさせてあげたかったと、ロゼはあーんをして食べさせる場面を思い浮かべて心ときめかす。
「帰りにスイーツを買って帰りましょうか」
エレスが何か甘いものが食べたくなったと皆を誘う。
「本物のメロンが食べたくなっちゃうね」
それに同意して静夏が普通のメロンが食べたいと手を上げた。
「メロンのシャーベットを食べに行こうかしら?」
少し舐めた程度では物足りないとユーロも何を食べようかと相談を始めた。
「もうすぐで夏ですよねぇ。メロンもいいけど、スイカも食べたくなってきたですよぅ」
ワーブは顔のメロン果肉を腕で拭いながら、夏らしい果物を思い浮かべた。
「…………お土産にメロンでも買って帰るか……甘いやつを」
賑やかに夜道を歩き出した仲間の後にスライも続き、何も変わらぬ街中に甘いメロンの濃厚な香りだけが残った。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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