忍者乱闘劇

作者:ハル

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 東京の中でも、富裕層の多い世田谷区。今、その世田谷区には、危機が訪れようとしていた。
「はーい、集まったね。さっそく指令を伝えるけれど、準備はいい?」
 闇の中、配下の螺旋忍軍に、そう気軽な笑みを浮かべるのは、指揮官である魅咲・冴。
「なんと、螺旋帝の一族が、都心部に出現したって情報が入ったの。これが本当なら、とても凄いチャンス的な? って感じでしょ?」
 そして、何気なく続けられた一言に、近頃無個性に悩んでいる配下達の間で、どよめきが起こった。
「うんうん、モブキャラっぽい、いい反応。まぁ、それは置いておいて、私達、魅咲忍軍の総力をあげて捜索するから、あなた達にはいますぐ世田谷区に向かってもらうよ。なんとしても、草の根わけてでも探し出してきてね! 絶対よ? あっと、他の忍軍の捜索部隊に出会ったら……うん、考えるまでもないよね? 問答無用で皆殺し、当然分かってるわよね!」

 ほぼ同日、同時刻――。

「みんなぁ、元気してる♪ 今日は、私からのお願いがあるんだ!」
「ヒューヒュー! イェーイ!!」
 金髪の少女――霊金の河の、可愛らしいお願いのポーズに了解を意を示すのは、螺旋忍軍の配下達による歓声とPPPHであった。
「よく分かんないんだけどぉ、螺旋帝の一族って人が都内に隠れてるんだって! なんだか偉い人達みたいだから、私たちが見つけて保護したいの。みんなで協力して、世田谷区を一生懸命探してね。もし、邪魔する人がいたら……やっちゃってちょうだい♪」
 霊金の河は、チュッと投げキッスを配下に向けて送る。配下達は狂喜乱舞しながら、サンダースネイクを狂い踊るのであった。


「真偽は不明ながら、螺旋帝が地球へと落ち延びたという情報が飛び交った結果、螺旋忍軍に、新たな動きがあったようです。東京都を中心にして、複数の螺旋忍軍の組織の動きが活発化、内輪揉めに発展していて、このままではいつ一般の方々に被害が及ぶか分かりません!」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、集まったケルベロス達に、事態の緊急性を説明する。敵同士の同士討ちならば放置しておけばいいが、無関係の人々が巻き込まれるのだけは阻止したい。
「そこで皆さんには、争い始める螺旋忍軍の撃破をお願いしたいのです」
 だが、現場に現れるであろう螺旋忍軍の組織は、それぞれ敵対関係にある可能性が高い。そこで、主な作戦としては、次の二通りとなるだろう。
「一つ目は、両組織の闘いに割って入った後、どちらか片方の組織に与し、まずは一方の螺旋忍軍を撃破した上で、返す刀でもう一方の螺旋忍軍達をも撃破する方法です。二つ目は、市民の方々の避難活動を行いつつ、忍軍同士を戦わせ、疲弊した所を一気に叩く……というのが主な二つの作戦になるかと思われます」
 だが、問題点もある。前者の場合は、露骨な時間稼ぎや手加減を行って、双方の消耗狙いだと螺旋忍軍にバレてしまうと、両忍者組織が結託してしまう可能性が高い。
 後者の場合は、介入するタイミングがあまりに遅いと、それだけ一般市民の安全に対するリスクが高まってしまう。だが、敵の性質によっては非常に有効な作戦となるかもしれない。
「どちらにせよ、敵に気付かれないような戦闘を長引かせる工夫や、介入タイミングの熟考、もしくは何らかの有効な避難指示が必要になるでしょう」
 今回の事件は、東京都世田谷区の、閑静な住宅街で発生する可能性が非常に高い。
「敵の組織の詳細ですが、魅咲忍軍と銀山衆がぶつかるようです。それぞれの組織から出てくる配下は、4体ずつの合計8体。どちらの組織も、個々としての能力は低いですが、集団戦闘で真価を発揮するという特徴は似通っていますね。ただ、無個性……というのは失礼かもしれませんが、そのような感じの魅咲忍軍と、アイドルオタクのような人達が大部分をしめる、個性的な銀山衆。そこは正反対ですね」
 魅咲忍軍は、螺旋手裏剣や日本刀を装備した、王道の忍者スタイル。銀山衆は、螺旋忍軍としての能力の他に、ミュージーックファイターにも似た特徴を併せ持っているようだ。
「螺旋忍軍の勝手な都合、暴挙に、市民の方々を巻き込む訳にはいきません! まずは、取り返しのつかない被害を出さない事。後は、できれば螺旋忍軍から情報も得たい所ですが……きっと何も知らないでしょうね」


参加者
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
樒・レン(夜鳴鶯・e05621)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)
レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)
天変・地異(カステラの下の紙・e30226)
有頂天・独尊(酒池肉林・e33043)
ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)

■リプレイ


「東京で螺旋忍軍同士が争うなど、迷惑じゃのぅ」
 東京都世田谷区の、閑静な高級住宅街で、敵対する二つの螺旋忍軍の睨み合いは、すでに幕を開けていた。ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)は、その様子を眺め、深々と溜息を吐く。
「それにしても、隠密に事を進める螺旋忍軍とは思えぬほど派手で強引な手段に出たのぅ……? それほどまでに帝とやらが重要なのかもしれぬが……」
 果たして、螺旋帝とはどのような人物なのか、そもそも本当に地球にいるのか、アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)は首を傾げて思案している。
 だが――。
「彼奴ら、ついに得物を取り出したようだな。最早、一刻の猶予もないようだ」
 樒・レン(夜鳴鶯・e05621)の言う通り、戦端が開かれるまでは幾許もない。
「なんであいつらがこんな派手な真似を始めたのか、それについては置いとこうぜ。むかつくが、今はあいつらを潰す事が先決だ」
「じゃのう、これからする事に関しては、甚だ不本意じゃが。まぁ、利用してやると考えれば、少しはマシにもなるがのう」
 天変・地異(カステラの下の紙・e30226)と有頂天・独尊(酒池肉林・e33043)が螺旋忍軍に向ける瞳には、猛烈な嫌悪と殺意の念が籠もっていた。
「……まぁ、気持ちは分かる。だが、あいつらがどういう反応を示すか、興味もある」
 祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が、「クックック」と低く嗤った。せいぜい呪いをその身で受けて、足掻き苦しんでもらうとしよう。
「さて、そろそろ行こうやないの。奴さんのボルテージも最高潮みたいやで」
 ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)が言うと同時、閑静な住宅街に剣戟の音が響き渡るのであった。

「まてぃ、貴様ら、なにをしとるのじゃ?」
「ケルベロスだが街の被害を抑える為、一時助力する」
「何、ケルベロスだと! 貴様らが何故、銀山衆の助力を!?」
 銀山衆のDFに襲い掛かる弧を描く斬撃を、レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)がゾディアックソードで受け流す。そして、受け流した所をアデレードが、地獄の炎を纏った鎌で隙を突き、肉を抉った。
(せんせい、頼みますよ)
 次いで、レテの傍らに控え、目配せを受けたウイングキャットのせんせいが、羽ばたきでの浄化を試みる。
「ど、ど、どどどういう事でござるか?!」
 この場にいる魅咲忍軍、銀山衆共に、ケルベロス達とは相容れない存在だ。そんな自分達を庇ったレテの行為を銀山衆達は怪訝に思い、そして晒された無防備な背中に困惑を示していた。
「どうもこうもあらへん。このまま街や人に被害が出るのは、ウチらとしては見過ごせんちゅーことや。アンタらの手助けをする代わり、そっちは一般人にはノータッチ。この条件でイエスというなら、一時共闘と行こうやないの」
「……一般人の命が第一だ。巻き込むくらいならば、忍軍であれ手伝うまで」
「…………」
 都合のよすぎる展開に、しばし呆然とする銀山衆。その最中も、ガドとイミナは魅咲忍軍のMDを狙い、流星の如き煌めきと重力を宿した飛び蹴りに加え、氷結の螺旋を見舞い、侵攻を食い止めている。
「どうするか、とっとと決めろよ。オレ達だって、別に好きでお前達と組もうなんて言い出している訳じゃないんだぜ?」
「そういう事じゃ。わしらにとっても、苦渋の選択というのを分かって欲しいものじゃのう」
「なるほど、話しが見えて来たでござるよ」
 地異と独尊は、不快さを隠そうとはしない。だが、この状況においては、変に友好的に振る舞うよりは、利害を強調した方が銀山衆の理解を得るのは容易だ。
「でも、それなら何故我ら銀山衆を? 魅咲忍軍に与しないのは何故でござる?」
 ゆえ、そう問われるのは必然であった。両方を天秤にかけて、何故銀山衆を選択したのか。
「お主等の方が、楽しそうな者達じゃったから……ではダメかのぅ? それに、わらわ達にも役に立ちたいアイドルのような者がおるのじゃ。気持ち、分かるじゃろぅ?」
 その返答を、ミミがすると、
「なるほど、アイドルでござるか。ふひひっ、ようやく得心がいったでござる。確かに、魅咲忍軍のようなつまらぬ連中よりも、我ら銀山衆に与するのは当然でござるな!」
「誰がつまらないですって!?」
 魅咲忍軍のクラッシャーが放つ巨大光弾に対し、銀山衆はアイドルオタの絆を発揮させて耐える。
 要求が上手くいった事を悟ったケルベロス達は、口元に密やかな笑みを浮かべると、ミミの「砲撃形態」に変形させたハンマーから発射される竜砲弾、独尊が放つオーラの弾丸、地異のクロスさせたルーンアックスの一撃によって、本格的に援護を始めるのであった。

「……皆は上手くやってくれているようだな」
 殺界を張り巡らせつつ避難誘導を行っているレンは、銀山衆と最低限の足並みを揃えつつある戦況を眺め、作戦の第一段階が無事終了した事を知る。
「後は、念のために俺が避難誘導を終え、合流するだけ也」
 その周辺の避難誘導も、大部分が終了している。レンは、逃げ遅れた老人を背中に背負うと、螺旋忍軍に気取られぬよう、行動を再開した。


「ガドよ、援護する!」
「おう、サンキューな、レンくん! さぁ覚悟はええか、これで仕舞いやっ!」
「こ、こんな事が……ああああっ!」
 合流したレンが、両手を組んで複数の型を作ると、ガドを守護するように木の葉が舞い散る。
 レンの後押しを受けたガドの放ったオーラの弾丸は、魅咲忍軍のMdの肉体に牙を剥くように食らい付き、ズタズタに切り裂いて沈黙させる。
「くっ!」
 そして、同じく追い詰められたJmには、銀山衆が連携して氷結の螺旋を放とうとしていた。
(……やはり、狙いや考える事は同じか)
 イミナも、銀山衆の後押しをするように、
「……これはワタシのオリジナルだ、痛みをもって味わえ。……祟る祟る祟る祟祟祟……」
 これでもかと呪力の込められた杭を深々と、魅咲忍軍の身に打ち込んでいく。
「ぎゃああああっ!」
 そのあまりの激痛に、魅咲忍軍のJmは絶叫する。
「……蝕影鬼、呪いを重ね掛けていくとしよう」
 トドメに、蝕影鬼が周囲の家屋の物品を操り、押し潰そうとした時――。
「させぬッ!」
 魅咲忍軍のDfが庇いに割り込み、蝕影鬼の攻撃を受け止めた。魅咲忍軍としては、このまま攻撃に反転し、なんとか光明を見いだしたい所ではあろうが……。
「どきなさいッ!!」
「おっと、そうはさせませんよ」
 肝心の魅咲忍軍の火力の要であるCrは、レテによって足止めされている始末。
「想起し祷れ。灰の十字を描かれたなら」
 悠々と、荘厳に祝詞を奏上するレテの姿を、歯嚙みしながら見つめるしかない。仮にレテを突破しようとも、イミナが、そして銀山衆のDfが控えているのだ。
 早々にMdを潰され、敵の動きを阻害するJmすらも虫の息である現状は、魅咲忍軍にとって絶望的とすら言えた。
「わらわは正義の告死天使! 我が正義の鎌にて汝らの罪を刈り取ってくれよう!」
 まさに、圧倒的優位。盛大な高笑いを発しながら、アデレードの振るう「虚」の力を纏った鎌が、レテと拮抗するCrの傷口を深々斬りつける。
「テレビウムよ、そろそろ虫の息のJmを仕留めるとするかのぅ」
 ミミの言葉に呼応するように、テレビウムが顔から閃光を放ち、魅咲忍軍の前衛の気を引きつける。
「わらわのぬいぐるみを特別に貸してやるのじゃ。楽しむといいのじゃ」
 注意がテレビウムに向いた事を感じたミミは、Jmに向かって強化された猫のぬいぐるみを投げつけた。
「……ッ! 魅咲様ーーー!」
 魅咲忍軍のJmは、断末魔の如き叫びを上げながら、追いかけてくる猫のぬいぐるみに轢き潰された。
「あとはお主等二人だけでござるな! 我らがアイドルにして女神、霊金の河ちゃんの名の下、天誅でござるよー!」
「まっ、そういうこった。とっとと死んでくれや!」
 サンダースネークを狂い踊りながら、銀山衆の一人が霊金の河を讃える歌を力の限り熱唱する。
 それにより、列減衰に加え、技の威力自体も弱まり、魅咲忍軍のCrが発射する巨大光線も、前衛の陣形を崩すまでには至らない。
 逆に――。
「スーパー天変地異キィイークッ!!」
 仲間と銀山衆が与えた氷の効力は、ジワジワと魅咲忍軍に蓄積しており、地異のジグザグがそれに拍車をかけていた。
「やるのう、地異。わしも、うかうかとはしていられまいて!」
 実質的な戦力差は、12対4。単純な銀山衆と魅咲忍軍の戦力差では、僅かに魅咲忍軍が上ではあったが、これでは勝負にならない。ひたすら堪え忍んでいた魅咲忍軍のDfではあったが、独尊の氷結の螺旋を受け、ついに崩れ落ちる。
「只命じられるまま、周囲の命を蔑ろに戦うは全う醜き也、覚悟!」
 残るただ一人の魅咲忍軍に向け、レンは影のように疾走する。
「オン・ハンドマ・シンダ・マニ・ジンバ・ラ・ソワカ 」
 唱えるは、如意輪観音の真言。呼応するように、レンの掌の中の手裏剣に螺旋力が込められていく。
 ――シャッ!
 投擲された螺旋手裏剣は、導かれるようにして、ガードする日本刀諸共、魅咲忍軍を穿つのであった。


「……さて、ここまでの戦い振り、さすが噂に名高い銀山衆……といってやりたい所だがな」
 レンの呟きに、銀山衆の目が細まる。何てことはない。彼らも、レンとまったく同じ事を考えていた所なのだ。
「すまぬが、次は銀山衆の番じゃ。短い間じゃったが、お主等のことはそう嫌いではなかったぞ。だが、これも仕方の無い事。すまんのぅ」
「ですね。少なくとも、魅咲忍軍のように自分の素を隠してって奴よりは、ね」
 ミミが、ドラゴニックハンマーを構える。レテは一旦リラックスするように肩を回すと、相棒のせんせいと共に、敵意を露わにした。
「まあ、元々は敵同士。ここで見逃すほど、上手い話もないってことさね」
「世知辛いでござるな。しかーし、我らがアイドル霊金の河ちゃんのためにも、拙者達は負けるわけにはいかぬでござる! ご褒美のためにも!!」
 ガドと銀山衆が、最後の言葉を交わす。そして、それ以上の会話は、もう必要ではなかった。次に交わすならば、ただ一つ――!
「気にいらねぇんだよ、てめぇら! ぶっ潰してやる!!」
「こっちの台詞でござるよ!」
 得物と得物のみ。地異が高々と振り上げた二振りのルーンアックスが、銀山衆の放つ氷結の螺旋とぶつかり合い、火花を散らした。

「正義は、妾達の元にあり!」
 光の翼を一際輝かせたアデレードが鎌を振り上げると、鎌は瞬く間に地獄の炎に包まれる。右目からも地獄化した炎の軌跡を残しながら、アデレードの鎌は銀山衆の後衛を見事一刀両断にしてみせる。
「……霊金の河ちゃん……ば、……万歳……イ、イェーイ……」
 倒れ伏す間際、銀山衆はそんな言葉を残した。彼らは、ケルベロス達の想像を超えて、余程霊金の河を敬愛しているらしい。
「軽い気持ちで『役に立ちたいアイドルのような者がおる』……などと言ってしまって、少しだけ申し訳ない気分になってくるのぅ」
 任務のためだ。仕方が無い。だが、こうして躊躇なく誰かのために死地に赴くアイドルオタクに、騎士道精神からミミは僅かばかりの敬意を示し、
「テレビウム、手加減は無用じゃぞ!」
 テレビウムが凶器で襲い掛かるのに合わせ、ミミは全身を光の粒子に変えて、銀山衆へと真っ向勝負を挑みかける!
「分かってると思うけど、恨みっこはなしやで!」
 ガドは、朽ちた黄金の槍を構えた。武術の心得から得た動物的な勘や、曖昧な物理学の知識を利用し、
「位置よし、気合よし……せーのっ!!」
 ガドは、一点の『ここ!』という突破口を見つけ、そこに槍を打ち込んだ。彼女の類い希な感性に応えるように、衝撃の槍が銀山衆の身を貫く。
「我ら霊金の河ちゃん愛するDf三人衆、死すときは同じでござる!」
「「無論でござる、同志よ!」」
 対する銀山衆の戦略は、魅咲忍軍を相手にする時と変わらない。防御重視で、敵の攻撃力を減衰させ、長期戦を狙う。そして、氷結な螺旋で火力の大幅な底上げを狙うというもの。
「忠義を尽くす様はいいが、さすがに盲目がすぎるな。特に、犠牲を意に介さぬその心根は哀れなり!」
 従うだけが忠節ではない。その事を、今俺達が教えてやろう。そう告げながら、レンは木の葉の紙兵を大量散布する。まるで銀山衆の戦略など、お見通しだと言わんばかりに。
「……螺旋忍軍との共闘、なかなか興味深い体験だったぞ。おかげで、猛烈に祟りたい気分だ」
「お、お主、言おう言おうと思っておったが、本当に地球人でござるか!?」
「……失礼な。ワタシは歴とした地球人だ。ただ、祟りたいという個性をもっているにすぎない。……螺旋忍軍、祟るべし」
「一体どんな個性――ぐあああっ! 祟り殺されるううう! 霊金の河……ちゃん……」
 蝕影鬼の金縛りを受けた銀山衆は、無表情のまま放たれるイミナの音速を越える拳を受けきれず吹き飛ぶと、その意識をも永遠に刈り取られた。
「このままでは終われぬでござる! 霊金の河ちゃんに合わせる顔がないでござる!」
「地異さん、ここは僕とせんせいが!」
「ありがとな、レテ!」
 狂い踊るサンダースネイクと共に奏でられる旋律を、レテとせんせいが、地異に変わって肩代わりする。
 地異はレテの横をすり抜けると、
「スーパー天変地異キィイークッ!!」
 ハイジャンプからの、自然落下に任せたヒーロの如き足蹴りを、銀山衆に披露した。
(さて、そろそろ僕も、攻めに切り替えていきましょうか)
 レテは、せんせいと視線を交錯させる。以心伝心、それだけで、互いの意思は伝わる。まずは、せんせいが自慢の爪で銀山衆に襲い掛かった。
「ぐあっ!」
 顔を切り裂かれ、怯んでいる所に、冥府深層の冷気を帯びたレテの手刀が決まり、銀山衆がまた一人逝く。
「独尊さん、後は頼みます!」
「独尊、殺ってやれ!」
 最後の一人となった銀山衆と相対する独尊の背に、レテと地異の声がかかる。
「言われるまでもないのう。むしろ、この時を心待ちにしておったくらいじゃ」
 壊してやる、叩き潰してやる! そういった念を僅かも隠すことなく、独尊は唇を吊り上げて嗤う。
 あえて独尊が選択したのは、氷結の螺旋。自分と銀山衆、力の違いを見せてやるといわんばかりのその攻撃は、銀山衆の放つ同種の攻撃を圧倒し、
「たとえ我ら死すとも……霊金の河ちゃんは……永久に、不滅……なり……」
 ケルベロス達に勝利をもたらしたのであった。

「これで勘弁してくれや」
「忍軍の宿命に殉じた哀れな輩よ。その魂の安らぎと重力の祝福を願う」
 静寂を取り戻した世田谷区に、ガドとレンの黙祷が捧げられる。
 少なくとも、彼らの忠義だけは、間違いなく本物であった……。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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