ここは、何処かの地下室であろうか。魅咲忍軍の指揮官の一人、魅咲・冴が目の前にいる部下の螺旋忍軍を見て頷いていた。その部下は全員が女性で体のラインが良く分かる白い服を着ていた。露出度は高い。彼女達にこれといった差は見受けられないが、髪型はそれぞれで違うようだ。
「さっそくなんだけど、指令よ。螺旋帝の一族が都心部に出現したって情報が入ったの。まあ、情報の信憑性は調査中……というか、それを調査するのが仕事よ。でも、本当ならチャンスって感じね」
そう言って、冴は座っていた椅子から立ち上がる。
「既に他の魅咲忍軍にも動いてもらっているわ。あなた達は、江東区に向かってもらうよ。草の根わけても探し出してきてちょうだいね!」
冴はそこまで言うと、忘れていたといった表情をして話を続ける。
「そうそう、他の忍軍の捜索部隊に出会ったら……問答無用で皆殺し、分かってるわよね!」
『はっ!』
そう言って部下の螺旋忍軍は部屋を出て行ったのであった。
一方所変わって、ここは何処かの寺であろうか。その奥深くの部屋で、黒螺旋忍軍・【黒笛】のミカドが持っていた笛を懐に仕舞いこみ、部下の紫色の陰陽師のような姿をした螺旋忍軍に指示を出していた。
「集まったようですね。では、指令を与えましょう。江東区に異変の兆しです。速やかにかの地に向かい、あらゆる異変をつぶさに調べ持ち帰るのです」
ミカドの声を俯き、じっと聞く部下の螺旋忍軍。
「他の忍軍の調査部隊を発見した場合は、速やかに排除。その目論見を阻止しなさい。さぁ、疾く行き、使命を果たすのです」
『はっ!』
そして、音も無くその螺旋忍軍たちはその場から消えていったのであった。
「皆、ちょっと聞いて欲しいねんけど、ええかな?」
宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が集まっていたケルベロス達に声をかけていた。絹の後ろにはリコス・レマルゴス(ヴァルキュリアの降魔拳士・en0175)が武器を携えていた。その様子から、ケルベロス達は依頼の話であると分かる。
「あんな、東京都心部で螺旋忍軍の活動が活発になってきた見たいやねん。螺旋忍軍は複数の組織があるっちゅうことは、知ってる人は知ってるかもしれんけど、どうやらそいつらがぶつかりあって戦闘になろうとしてんねん」
ケルベロス達は驚いた表情をするが、それなら戦わせておけばよいのではないか? という意見が出る。
「まあ、それもそうやねんけどな、あいつらもこっちの事なんかお構いなしやろ? 戦い始めたら何処かが破壊されたり、一般人の犠牲者がでる可能性もあるわけや。
その二つの螺旋忍軍両方の撃破をお願いしたい。
作戦やねんけど、周りへの被害を出さへんようにする為には、両者の戦いに割って入って、敵を連携させないように片方の忍軍を撃破し、返す刀でもう片方の忍軍を撃破する必要があるんちゃうかと言われてる。闘争が起こらんかったら一般人に被害は出えへんからな。
まあ、忍軍同士をわざと戦わせて、ある程度ダメージ負ってるところを叩くっちゅう作戦も出来るはできる。でも、この場合市民に死傷者が出る可能性が高くなってしまうねん。よっぽど上手くやらなあかんやろし、上手くいかんかったら二つの螺旋忍軍が共闘でうちらに向かってくるから、戦いはホンマに厳しくなるわ。戦いを長引かせて敵を疲弊させる工夫とかなんかが無いと、かえって戦況は不利になってしまうちゅう事や。作戦の内容は任せるけど、そこは慎重に判断してな」
成る程と頷くケルベロス達。それでは何処へ向かえば良いと絹に尋ねる。
「皆には江東区に行ってもらうで。そこに現れるのは、魅咲忍軍っちゅう白い服を着た女性の螺旋忍軍。もう一つが黒螺旋忍軍で陰陽師みたいな格好をしてるわ。両方とも6人ずつになるみたいやな」
指揮官クラスでは無い事でそれ程は強くないという事だが、この12人が一斉にケルベロス達に刃を向けるとなると、状況は厳しくなるであろう事は、予想できた。
「んでや、この敵の情報やねんけど、魅咲忍軍は集団での戦闘が上手い。各ポジションをそれぞれできっちり役割分担してるのが特徴や。グラビティは螺旋忍者のグラビティは勿論やけど、螺旋手裏剣でも武装しとる。
黒螺旋忍軍は、あんまり前に出ないタイプやな。状態異常とか、補助、回復をメインに戦ってくる。当然螺旋忍者のグラビティは持ってて、武装はエアシューズみたいやな」
絹がそう言うと、リコスが口を開く。
「リコス・レマルゴスだ。今回同行させてもらうことになった。宜しく頼む。とりあえず、作戦が重要であるかと思う。上手く両者が疲弊してくれた所を叩きたい所だが、その判断が遅れると一般人に被害が出てしまう。……難しいな」
「せやな。でも最悪建物とかはヒールかけたらええ。まずは一般人への被害を出さずに倒す。その見極めが重要や。意外と正攻法の方が戦果はええ時もある。みんなで話あって、ええ作戦考えてな。頼むで!」
こうして、絹の話を聞いたケルベロス達は、ヘリポートに向かって行ったのであった。
参加者 | |
---|---|
エルボレアス・ベアルカーティス(正義・e01268) |
御子神・宵一(御先稲荷・e02829) |
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896) |
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843) |
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871) |
比良坂・陸也(化け狸・e28489) |
グラナティア・ランヴォイア(狂焔の石榴石・e33474) |
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869) |
●東京ビッグサイト前にて
「あらー。貴方達は、黒の……」
「ほう。魅咲忍軍か……」
ここは東京ビッグサイト。その巨大な建物の陰で二つの集団が居た。とっくに日は落ち、開けた場所では街灯が煌々と輝いている。両者はにらみ合い、武器を抜き放ち無言のまま切り付けあい始めた。実力はどうやら互角のようだ。女忍者、魅咲忍軍と陰陽師のような姿をした黒螺旋忍軍がグラビティをぶつけ合う。
そこへ、別の影がその集団に突っ込んでいく。
「ちょっとお邪魔するわ。なんてね」
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)がドラゴニックハンマーの『ドラゴニックメイス』から狙い済ませた竜砲弾を打ち放つ。その砲撃で、一人の黒螺旋忍軍が吹き飛ぶ。そして、そのまま陰からエルボレアス・ベアルカーティス(正義・e01268)がその倒れた黒螺旋忍軍に対してウイルスカプセルを投射する。
「ケルベロス……」
その二つの螺旋忍者達は、いきなりのケルベロスの介入に、戸惑った様子も見せずに、それぞれの両者に対して構えを取る。
「コミケ参加には少々気が早いのでは?」
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)がボクスドラゴンの『ラグナル』と共に前に出る。
「え? 螺旋帝の一族って夏と冬の聖戦参加者な可能性、微レ存?」
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)が改造スマートフォンを両手に持ちながら、晟の言葉に驚く仕草をする。当然、芝居である。ケルベロス達は、まず『螺旋帝』という言葉を出した。反応を伺う為だ。だが、両者ともその言葉に反応する様子は無かった。
(「流石に、諜報のプロ……っていう所だな。簡単に騙せるような相手じゃなさそうだ」)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)はその両者の反応をみて思う。
「さっさと見つかって終わってほしいわね。後で私達も帝、探してみましょうか……」
舞彩はそう言葉をかけるが、反応は変わらない。三者とも、無言を貫き、気を抜く様子はない。
その様子に、グラナティア・ランヴォイア(狂焔の石榴石・e33474)と御子神・宵一(御先稲荷・e02829)が動く。
「黒螺旋忍軍は、一人たりとも生かして帰しません!」
宵一がそう言いながら、黒螺旋忍軍を魅咲忍軍と挟み込むように移動する。
「そうそう、あたい達はコイツラを倒したいんだぜぇ」
グラナティアがそう言うと、他のケルベロス達もそれに続く。
「まあ、本音を言いますと。我々は黒螺旋忍軍に少々恨みがありましてね……!」
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)はそう言って、鉄塊剣から空の霊力を黒螺旋忍軍の一人に打ち放つ。
『聴け』
続けて、轟音と共に爆音が発生する。その音の主、エルボレアスが両手を合わせて激しい音を発生させたのだ。
それが戦闘開始の合図となった。
お互いに素性は分からない。だが、今は目の前の敵を打ち倒すという目的だけが一致したのであった。
●二対一
「始まったな……良し。我々も動こう」
更にビッグサイトの奥の物陰から様子を窺っていたリコス・レマルゴス(ヴァルキュリアの降魔拳士・en0175)が、そっと立ち上がる。
「本当は、早く加勢しに行きたい所なのだが……」
相馬・泰地が、遠くでのグラビティの打ち合いを眺めながら言い、拳を握りこむ。
「ラーヴァから、まずはこの辺りの一般人を避難するように頼まれたんだ。これも、作戦だな」
「作戦……ならば仕方が無い、か」
泰地はそれを聞いて渋々頷く。その様子を見て、リコスがふと笑う。
「ふっ……。泰地は分かりやすいな。早く任務を遂行し、助けに行こう。これならば問題はないだろう?」
「そうだな! じゃあ、リコスはあっち、俺はこっちだ。ひと段落したら落ち合おうぜ」
頷きあった二人は、そう言って市街地方面へと駆けていった。
「ビッグサイトには、手出しさせない!」
まりるが改造スマートフォンに地獄の炎を遷し、炎弾としてはじき出す。
ケルベロス達は魅咲忍軍を無視し、黒螺旋忍軍を三人相手取った。もう半分は魅咲忍軍と戦闘を行っていた。
特に相談をしたわけではないが、自ずとそうなった。
「チッ! 多勢に無勢か……」
黒螺旋忍軍はまりるの炎弾を避けながら、悪態を吐く。だが、宵一が雷の霊力を帯びさせた斬霊刀『若宮』で突きを敢行し、晟が超硬化させた拳で殴りつける。
ドゴン!
派手な音を立ててビッグサイトの壁に打ち付けられた黒螺旋忍軍は、よろよろと起き上がる。それを確認した黒螺旋忍軍が回復を施そうとグラビティを投げつけた。だが、少し様子がおかしかった。
「私のウィルスが効いているのだ……。容易く回復できると思うなよ」
エルボレアスがそう言って、ケルベロス達が受けたダメージを薬液の雨で回復させる。
「サヨウナラ」
舞彩が轟竜砲を至近距離で放つと、ダメージの受けていた黒螺旋忍軍は消滅した。
「おっと、動くなよ……」
陸也が、その消滅をみて距離を取ろうとする黒螺旋忍軍に対して、半透明の『御業』を纏わり突かせ、縛る。
そう言いながら陸也がもう片方の魅咲忍軍を確認する。お互いにこちらを気にしながらの攻撃を行っているが、確実に数を減らしているようだ。
「もう少し迷惑のかからない場所で……いえ。何でもございませんとも……」
ラーヴァがエアシューズの炎を上げながら滑走し、そのまま蹴りを放つ。
「残念だったな、ブッ殺すぜぇ!」
グラナティアのドラゴニックハンマーが火を噴いた時、もう一人の黒螺旋忍軍も消滅した。
対戦力の半分となったケルベロスと黒螺旋忍軍の戦いは、圧倒的な勢力をもって、ケルベロス達が攻め入った。
それはどうやら、魅咲忍軍も同じようであった。
それは即ち、ケルベロス達と、魅咲忍軍の力の差が余り無い事を示していた。だが、決して共闘などという事はしない。互いに互いの敵を迎え撃つ。
(「俺らに信頼はねぇ。根本的に敵だからな」)
陸也が思った通り、それぞれが目の前の敵を片付ける。それは、お互いに信頼しあっていない証拠であり、腹の探りあいでもあった。
任務をこなす。共通しているのはそれだけであった。
●互いの利
「ぐ……あ……」
お互いの相対する最後の黒螺旋忍軍が断末魔を上げたのは、ほぼ同時であった。
そして、両者は静かに向き合い、構える。
「貴様たちの目的は我々ではないのだろう? 臨機応変に対応しようとするのは感心だが、成すべきことは別にあるのではないのか?」
晟がそう言いながら、じりじりと間合いを計る。
「そうそう。忍軍なら忍軍らしく忍んでてー。他者を巻き込まないでほしいわー」
まりるも冗談を挟みつつも同意する。しかし、その白い忍び服を着た彼女達は喋ろうとはしない。
「……ま、騙して悪いけど、やっぱり敵なのよね」
舞彩の言葉を否定するものはいなかった。少なくとも、ケルベロス達は利用しているのだ。
「いきなり仲良しこよし出来るだなんて思っちゃいねぇだろ、お互いによ」
陸也がシャーマンズカードを構え、氷の騎士を召喚し打ち放つ。すると、狙った魅咲忍軍を庇うように、前に立った一人がそれを受ける。その一撃から多くの氷が発生していく。そして、その前に立った魅咲忍軍をすり抜け、グラナティアがドラゴニックハンマーから超重の一撃を放った。
「悪ぃなぁ。喧嘩両成敗ってやつだ。あたいは不公平はしねぇ……どっちも戦ってボッコボコにするまでよ!」
その二人の攻撃が、再び現場を戦場へと変化させる。
最前列の二名と中央と後方に立つ魅咲忍軍が、グラナティアに対して螺旋手裏剣を投げつける。
ギィン!
その手裏剣の一つを宵一が無言で弾き、ラーヴァが鎧で受け止める。
だが、二つの狙い済ませた螺旋手裏剣が、グラナティアの背後に突き刺さった。
「……ってぇ!!」
そのまま膝をつくグラナティア。そしてそのまま嗚咽を漏らす。
「毒か!? エルボレアス君!」
「……深いな。すぐに治療を行う。神崎君、サポートを頼む」
エルボレアスはグラナティアに対して、縛霊手『天照・大神御手』を広げると、晟がその前に立つ。
「ぎゃああああああ!!」
「安心しろ。これは治療だ……。まあ、痛いかもしれんが、そのうち治る」
エルボレアスの強引な治療に、思わず叫び声を上げるグラナティア。だが、その突き刺さった手裏剣がぽとりと落ちると、血を上げる暇も無く傷口が一気に治っていく様子が分かった。
「ああぁぁ……って、あれ、痛くねえ。ありがとよ」
グラナティアが立ち上がるのを確認し、舞彩がファミリアの『メイ』をグラナティアが先ほど傷つけた一人を狙い打ち放ち、まりるが獣化した手で殴りつける。
「ぐ……」
切り裂かれた忍び装束から氷が更に発生していく。だが、その氷をすぐさま最後方の一人がグラビティにより小さくしていく。
「……お互い、分かっていたこと、ですか」
宵一はそれを見て、敵にも敵の事情があるのだと悟った。だまし討ちのようで少し罪悪感があったのだが、だまし討ちには彼らのほうが上手なのである。
「手加減……無用、ですね」
宵一は若宮の切っ先を彼女等に向けて構え、白狐の霊を呼び出した。
●紙一重
魅咲忍軍のコンビネーションは見事であった。こちらとの強さは、ケルベロス達と互角と思えた。
その戦いは、お互いに消耗戦の様相を呈してきた。両者とも倒れる事無く、ただ体力のみが奪われていく。そのパワーのバランスが崩れたほうが、一気にやられる。そんなヒリヒリとした、戦闘となっていた。
「ぐ……!」
しかし、ラーヴァが膝をつく。ダメージの分散を分けあっていたケルベロス達であったが、その中の一人である彼の体力が底をつこうとしていたのだ。
「ラーヴァ君。少し後ろに下がるんだ。ラグナル!」
晟がラグナルに指示を出し、ラーヴァの前に立たせる。そして、エルボレアスが治療を開始する。
(「とは言うものの、次は私かもしれんな……」)
「チャンス的な感じね! 一気にいくよー!」
それを見た魅咲忍軍が勝負に出る。だがその時、暗闇から飛び込む二つの陰があった。
「神崎!」
『いくぜ降魔捷拳!』
リコスが晟に分身の術を施し、相馬・泰地が前の一人を吹き飛ばす。
「待たせたな!」
「新手ね……。皆、まずはその倒れているヤツから!」
魅咲忍軍はそれでも手を緩めずに、ラーヴァに向かって攻撃を行おうとする。
『誰にも 何処にも 何時かは 廻(もとお)れ』
まりるが、改造スマートフォンの角をぶつける。
『特攻、お願いね』
舞彩がメイを特攻させると、その魅咲忍軍は消滅していった。
「化かし合いも、これで終わりだな。ぶっ殺すぜ」
陸也が勝機と見て、巨大な角を持つ牡鹿のエネルギー体を召喚する。
『始まりの洗礼、踏みにじれ――汝、野生の暴威』
その凶暴な牡鹿が魅咲忍軍の中央に向かって暴れまくる。すると、その中央の二人は呆けたように呆然と立ち尽くした。
ひとたびその連携が崩れると、魅咲忍軍の崩壊は早かった。一人、また一人と消滅していく。
「最後に残ったてめぇはどうする? 尻尾を巻いて逃げるか?」
そう言って、グラナティアが『帯焔』を発動させる。
『逃がしません、よ?』
「ま、逃がさなねぇけえどよ」
宵一が再び白狐の霊を投射し、グラナティアが持ったドラゴニックハンマーに沸きあがらせた煉獄の焔を巻きつける。
「私も参りましょう!」
エルボレアスから、最後の治療を受けたラーヴァも、渾身の力を振り絞り、眩しく輝く灼けた金属矢を投げつける。
『我が名は光源。さあ、此方をご覧なさい』
一本、そして二本、三本とその矢を一点に叩き込むと、最後の魅咲忍軍は、よろよろと後ろに下がる。だが、上空から炎の灯りが彼女を照らす。
『踊り狂いなァ!煉獄の焔!あたいの焔からは誰も逃れられねぇのさ。万象一切すべて灼き尽くすまでなァ!』
グラナティアの一撃は魅咲忍軍に叩き付けられ、焼き尽くすように、消滅させたのだった。
「ふう……。何とか、勝ちましたね」
宵一が安堵の息を吐く。
「何とかなったな、リコス君、相馬君。助かった、礼を言う」
「勝てて何よりだ」
晟の言葉にリコスがそう返したが、それ以上話は続かず、ケルベロス達は暫くその場で座り込んだ。
勝つには勝ったが、どちらに軍配が上がるのかは紙一重の差であった。ケルベロス達は組織だったデウスエクスの集団が、侮れないという事を強く思った。
そのほかのケルベロス達も、螺旋忍軍との戦いに挑んでいると聞く。果たして他のケルベロス達は無事であろうか。
それに、絹の話にあった螺旋忍軍の『帝』とはいったい?
そんな事を思いながら、ケルベロス達は戦い、強かった敵を振り返った。そして漸く、グラナティアが口を開く。
「さて、帰るか……」
そう言って立ち上がる。
「と言いてぇ所だが、長丁場で空腹だ。何か食ってくか? 江東区は美味ぇ店も多いって聞くぜ?」
その声に、他のケルベロス達から思わず笑みがこぼれる。
「そうね。まずは、食べないとね」
「賛成だけど、もうあんまり動きたくないから、近場がいいなあ」
舞彩とまりるも、重い腰を上げた。
「食うってのは、本能だ。従う他ねぇな」
「では、少し検索いたしましょう」
陸也の声に、ラーヴァがアイズフォンで検索し、一行は近場の料理店へと向かうのだった。
道中、ぽつりと雨が降り始めた。ケルベロス達は、思い思いにその雨を受けた。
海の方向から潮の香りを纏った風が、湿度を伴い吹き抜けていく。
いつの間にか春が終わり、夏へと向かっていく。それは、速すぎる時の流れを感じさせた。
作者:沙羅衝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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