●無色の暗花、漢女の矜持
赤と黒で彩られた妖艶な装束に身を包む乙女、魅咲・冴は5人の少女達に軽く手を振る。
「早速だけど指令をだしちゃいまーす。螺旋帝の一族がこの都心部に潜伏しているって情報が入ったわ……これ、私達にとって超絶チャンス到来なの。わかる?」
こうべを垂れたまま沈黙を保つ少女達に冴は気にせず話を続けた。
「魅咲忍軍の名をあげる絶好の機会、利用しない手はないわ!という訳で、あなた達は新宿区を捜索してきて。目を皿にして探すのよ」
ひとしきり指示した冴だが最後、思い出したように一言。
「あ、そうそう。私達以外の捜索部隊と遭遇したら――皆殺し、鏖殺、殲滅でよろしくね?」
軽妙な口振りに反し、出てきた言葉は苛烈にして残酷極まりない。
冴が指令を下している頃――刻を同じくして、蠢く影アリ。
真っ白いボルゾイ犬に着流しを着せたような男、ヴァロージャ・コンツェヴィッチは煙管を吹かして背後に立つ5人にオンナ口調で語り掛ける。
装いは女性そのものだが、纏うのは30~40代くらいの屈強な男達。どうあがいても女性に見間違えることはない。
「遂に真理華道の力を本星に示すときが来たわ。これも螺旋帝の一族が地球に来てくれたお・か・げ・で……でも、面倒なことに潜伏してるっていうのよね」
スナッフマニアから仕入れたという情報にヴァロージャは口の端を釣り上げ邪悪な笑みを浮かべた。
「成り上がる為にも螺旋帝には犠牲になってもらいましょ、あなた達は新宿区を捜索なさい」
細く伸びる煙を吐き終えると陽気で冷酷な声を漏らす。
「もし邪魔するおブスがいたら肉団子にでもしちゃって、おねぇの恐ろしさを身を以て教えてやんなさい」
――この数時間後、熾烈な権力闘争によって新宿の歓楽街は多数の戦禍と市民の犠牲を被ることとなった。
オリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)は招集したケルベロス達が集まりきると挨拶もそこそこに状況説明を始めた。
「これまで動きが見えなかった螺旋忍軍ですが、東京都心部で不審な動きをしているようですわ。それも複数の派閥が大規模に活動しており、忍軍同士の戦闘にも発展し始めているようですの」
権謀術策、内部抗争など彼らにとっては日常茶飯事とも言えるが、その戦闘によって都心部、ないし市民に犠牲が出る可能性は高い。
「今回予知された敵は新宿区の二丁目界隈にあたる歓楽街で戦闘するようですわよ。人で溢れ返った場所で戦闘を行えば被害は確実に出ます、皆様は争い始める螺旋忍軍を撃破してくださいませ……ですが、今回は正攻法で挑むのは大変危険です」
ならば、どうすればいい? 当然の疑問にオリヴィアは一呼吸おいて答えた。
「私からの提案はふたつ。一つ目は両者が疲弊したところを狙い、第三勢力として介入する作戦ですわ。消耗した状態を狙えば攻略も難しくないでしょうが、螺旋忍軍は周囲の被害を省みません。避難誘導されている間も被害は拡大していくため、疲労度に比例して市民から死傷者が出る危険性も高くなっていきます。介入が早すぎても消耗が少なく、遅ければ被害も増えていく……割り込むタイミングが作戦の肝となるでしょう」
オリヴィアの立案は『ふたつ』だ、もう一方を尋ねると意外な返答がかえってくる。
「二つ目はどちらかの忍軍と協力して一方を素早く撃破し、返す刀で残った忍軍を撃破する作戦ですわ。開戦時点から乱入することで死傷者を出さないよう動きやすいですが、問題は両者にとってケルベロスが『共通の敵』であること。作戦を感づかれてしまうと呉越同舟となり、消耗も少ない状態で一斉に襲ってくる不利な状況に追い込まれましょうね。感づかれないようにする工夫が求められますわ」
どちらも厳しい状況に陥る可能性があるため、作戦は慎重に決めるようオリヴィアは勧めた。
問題の新宿区に現れる螺旋忍軍は、可憐な少女達による七色の大軍・魅咲忍軍、屈強な漢女達で構成された一派・真理華道。両者共に5人、計10人が争い合う。
「魅咲忍軍は『無色』と呼ばれる下忍の少女達が捜索に当たっています、集団を個とした集団戦闘のエキスパートのようです。裏を返せば、個人の実力に秀でた部分は少ないかと。螺旋忍者と日本刀のグラビティのうち3つを使用してくるようですわね」
連携主体の戦術ならば、切り崩すことが出来れば突破口を開くのは容易かもしれない。しかし、障害となるのが皮肉にも魅咲忍軍と争う真理華道の面々だ。
「真理華道は頭目のヴァロージャ直属の……いわゆる、おねぇ忍者ですわ。女装しておりますが女性と見紛うほうが難しいでしょう……。風変わりな容貌に反して個々の実力は優れていますが、個性が強すぎるためか連携は積極的にとらないようですわよ。こちらはエアシューズ、バトルオーラのグラビティのうち3つを使用してくるようです」
双方が対峙する分には膠着必至だが、両者とも協力したところで波長が合うか怪しいところ――全てはケルベロスの妙策にかかっているようだ。
「疲弊させた隙に第三勢力として一網打尽していくか、被害を抑える為に一方と協力して倒しつつ返す刀で各個撃破していくか。敵の特性を踏まえて考えてみてくださいませ」
螺旋忍軍の目的は不明だが、全く無関係な市民に害を及ぼすならば早急に鎮圧せねばなるまい。
「情報を集めたい方も多いと思いますが、聞いたところで答えるような者もいないでしょう。今は螺旋忍軍による無用な被害を食い止めることに専念してくださいますように」
参加者 | |
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神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663) |
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470) |
市松・重臣(爺児・e03058) |
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108) |
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388) |
紺崎・英賀(自称普通の地球人・e29007) |
本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557) |
ブラッディ・マリー(鮮血竜妃・e36026) |
●眠らぬ街のデカダンス
新宿、夜の繁華街。今宵もネオンに彩られ人波が雑踏をひしめき合う。そんな中、見るからに逞しい肢体を妖艶なドレスで着飾る五人組と、揃いの白いチャイナ風ワンピースをまとう少女達が火花を散らしていた。
「魅咲んとこの……なんだっけ?職安なら反対方向よ」
「そ、その無職じゃないから!?」
律儀に抗議する『無色』の少女は得物を引き抜き、真理華道の『おねぇ忍者』も踵を踏み鳴らす。異様な光景を遠巻きに避けていく人々の頭上、照らされた広告看板を踏み越えてケルベロスが現れる。
――夜の新宿に相応しく、黒い装いで統一した一団に螺旋忍軍の視線が集中する。
「ふ、ふふふ……殺し合い、いいわねぇ……私も混ぜて!」
着地と同時にブラッディ・マリー(鮮血竜妃・e36026)が真理華道に詰め寄り頬を裂く。隠すことなく殺意を向ける彼女におねぇ忍者達は迎撃体勢に移る。
「どこのブスよこいつ!?」
「おねぇを舐めんじゃないわよ小娘!」
ただの喧嘩ではない、ギャング同士の抗争でもない――突如始まった戦闘に市民達から悲鳴が上がり始めた。
「この場はわたくし達が引き受けますわ、早く離れてくださいませ!」
「大通りはさけて避難して!」
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)と紺崎・英賀(自称普通の地球人・e29007)の呼びかけている隙にウイングキャットのエクレアが集中攻撃を受けるマリーを庇おうと前に出る。
「そこから動くな!」
スーツから赤いシャツを覗かせるアジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が踏み込みと同時におねぇ忍者に怒号を飛ばし、神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)が急加速による突撃で攪乱を試みた。
「もうっ!なんなのよあんた達っ!?」
「因縁等知らぬとされても、主らに覚えがなくとも儂らにはある」
流れ弾を叩き落とす市松・重臣(爺児・e03058)が『因縁アリ』と宣言して居酒屋の立て看板で豪快に殴りつけ、オルトロスの八雲も加勢していく。尻尾をまわし代わりに巻きつけて本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)が気合をこめて四股を踏む。
「同じ土俵に立った以上、えみかの相撲に付き合ってもらうっすよー!」
「やかましいわよブスゥ!!!」
えみかの蹴り足をいなして音速ビンタではたき倒す真理華道に旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)は呆れ気味に端正な眉を顰めた。
「ふぅ、あんなに騒ぐなんて優雅じゃありませんわ…………共闘するにしても、やはり漢女な方よりは可愛らしい子達の方が宜しいですね……♪」
初心そうな少女忍者達を一瞥し、念鎖を縫うように走らせ敵を捕らえる。瞳を怪しく光らせ視線に含む幻惑は精神を揺さぶっていく。
突然の乱入者達と同士討ちし始めるおねぇの様子に、呆気にとられていた無色らも状況を把握し始めたようだ――デウスエクスならば一般人を考慮する必要はない。ならば、思い当たる勢力はひとつ。
「け、ケルベロスがどうして……でも、これって」
互いの顔を見合わせた少女達は各々頷きあうと、構えなおした武器を真理華道に振るうべく一斉に散開。無傷のおねぇ忍者を相手に得意の螺旋忍術と抜刀術で一気に追い詰めていく。
「ちょっとこっちに攻撃してんじゃないわよブスッ!」
「ブスがブスブスうるさいわよブスゥ―ーーーーーー!!」
催眠状態の同胞を見かねて気合のオーラを放つが感謝どころか抗議する、もはやブスのゲシュタルト崩壊を起こしているが彼らにとっては単なるスラングに近いようだ。
(「あーもう!内輪揉めも仲間割れもどっか遠い星でやってくれればいいのに!」)
突出するマリーへの攻撃を受け止めながら焔は口喧嘩を続ける様子に毒づく。シルバーのイヤリングを揺らし、鋭い一撃で脇腹を抉りとると茶色い悲鳴があがり更に顔をしかめる。
直前まで緊張していた英賀もすっかり冷静になっているが、真理華道の連携度外視な自由過ぎる攻めに目を白黒させていた。
「な、なんてでたらめな戦法……ぐっ!?」
気弾が英賀の肩を掠め赤が滲む、浴衣の裾を翻して間合いをとると薬瓶を放り投げる。薬液の雨に熱傷を取り除かれたちさは壁を蹴り上げながら不可視の地雷をばら撒く。
「そ、想像以上に濃ゆいですわね」
握り締めたスイッチに連動してアスファルトが発破する。白煙の中で足を止めた巨漢にえみかが腰を落として踏みこむ。
「はっけよーい……のこったー!」
地面を踏み砕くほどのぶちかまし――チャームポイントのおでこを鳩尾めがけかち上げ瀕死のおねぇは息を詰まらせたまま絶命していく。
個々の実力が高く遊撃に優れた真理華道に対し、集団での戦術に秀でる無色達はケルベロスに与せずチーム内行動に徹しているようだ。3人の前衛を2人で支援するという堅実な戦術で徹底的に集中攻撃を仕掛けて前衛を一人仕留めている。
残るは3人だが、一人に集中攻撃する間に無防備な対象が建物を踏み台に割り込んでくる。いまだ健在の漢女は自由気儘に、大嵐のように戦場を掻き乱していた。
「あぁぁん!相手するならお目目パッチリ美少年がいいのにぃっ!!」
巨躯に見合わぬ機動力で隙をついたおねぇ忍者がちさに肉薄する。丸太のような脚で腹部を蹴り上げ、アジサイの放つファミリアを避けて再び間合いをひらく。
「すばしっこいおねぇとか……色々、ムカつくんだけど!?」
もはや黒い悪魔に匹敵する不快指数に焔も我慢の限界とドローンを飛ばして全砲門、全銃口を一点に向け、再装填しながら隙を伺う――。
「Was gleicht wohl auf Erden dem Jaegervergnuegen?」
重臣の一撃で怯んだ隙に零距離まで詰める――引き金を引く寸前、飛来した気咬弾をエクレアが受け止め霧散していく――放たれた対戦車猟兵術によっておねぇはまた一人爆発四散し肉塊と化す。
「ふ、ふふ……なかなか、斬り裂き甲斐のある体……たまらなく殺したいわぁ!」
集中砲火を浴びてなお攻撃を続けるマリーは全身から来る激痛にニヤリと口角を上げる。ドレスごと傷口を抉り返したナイフを慣れた手つきで持ち直す――それは母から継いだ必殺の構え。
「――『硬い』と言うことは。即ち、『脆い』と言う事よ」
帯電した刃は筋肉の鎧を斬り裂き、赤い筋を幾重にも刻みこんでいく――しかし正確無比な攻撃は肉壁を砕くには至らない。
マッチのように細いヒールを地べたに擦らせ、灼熱を巻き上げるソバットが腹部を突き刺さる。内臓まで響く一撃がマリーをはじきコンクリートごと穿つ。
「っ!?あ、マ、マリーさん!」
前衛に気を取られていた英賀は急ぎ治療に向かう。近接攻撃の多い相手なら必然的に前中衛への攻撃が集中しやすい上、最優先対象を多く想定したため迷いが生じていた。
「こちらはわたくしにお任せを、これを食べてもうちょっとがんばりましょう!」
アジサイを庇いながらちさが一口サイズの菓子パンはオーバースローで放つ。華麗な一投は放物線を描きながらえみかの口にスローイン。
「ふぁいとですの!」
「ふぁひっ……がんばる、っす!」
もぐもぐ頬を膨らませるえみかだが、一発の勢いに押されて回復が追いついていない。懐に飛び込み拳の乱れ打ちを突っ張りで相殺していたが、不意に襲いかかる中段蹴りまで対処しきれず――。
「か、ぁ……!?」
肋骨から鈍い音が響く。呼吸するたびに鈍痛が走り、蹴られた勢いで雪崩るように転がっていく。
深いスリットのはいったドレスを振り乱す竜華に、おねぇ忍者は毛深い生足による軽快な連撃を繰り出していく。視覚的なもの以上に一撃は鋭く、気を抜けばすぐに打ち上げられてしまいそうだ。
「ほらほらどうしたのかしらぁ!」
「やれ、同じ脚でも旋堂とは真逆だな……――喝ッ!!」
露骨に嫌悪を表しながらアジサイは龍ノ大筒を放つ。一喝により弾け飛ぶガラス片の中、一瞬の隙が生まれる――ガラスの雨を抜けて8本の鎖が獲物を雁字搦めにする。
「炎の華と散りなさい……!」
弓のように引き絞った大剣を手に竜華が怒涛の勢いで駆けていく。なす術もなく貫かれた漢女の心の臓から血飛沫が噴く。
残る一人を相手に重臣は八雲と大立ち回りをみせていた。
「んんまぁぁぁぁぁぁっっ!散歩なら御苑行きなさいよブスぅぅぅ!!!!!」
「えぇいじじい扱いするでないわぁーーーー!!」
洗脳電波を拳の風圧が相殺し、飛びかかった八雲をバックフリップで蹴り飛ばす。
ボロキレと化したロングドレス姿を前に重臣の忍耐力が保ちそうにない。視界からさっさと消去したかったか、あるいは重臣を不憫に思ったか。無色達も次々と飛びかかる。
――太い首から噴水のように血が湧き、四肢の力がだらりと抜け落ちた。
乙女の心を持つ漢達は新宿の地に沈んだ――残る無色達は手堅い戦法によりさほど消耗していないようだが無傷ではない。無軌道なハリケーンに巻き込まれていたのは彼女達も同じようだ。
「こ、このまま帰ったら冴様怒るよね……?」
「……て、手柄を立てれば、冴様も許してくれるはず!」
おぞましい懲罰を想像したのか、忠義に篤い下忍達は青ざめた顔で刃を向ける。
「ああ、あ……もっと、殺したい、のに……!」
瓦礫の中から身を起こしたマリーは序盤から集中攻撃にさらされ、被弾率の高かったえみかも負傷をグラビティでは補いきれない域に達していた。
双方、仕切り直しと劇場跡地を背景に対峙する。駆け抜けてきた通り道は瓦礫が散乱して、そこだけ暴風が吹き荒れたかのようだ。
――――カランッ!
そよ風が吹き落とした空き缶を合図に一斉に動きだす。
「くす、多彩な戦技が楽しめて良い夜ですわ……♪」
アジサイの怒号が支援役の動きを止め、竜華が先陣を切る少女の中で負傷が多い者を目で探し――主力を掩護する三つ編みの少女に鎖を伸ばす。絡めとった隙に仕掛けた不可視の地雷をちさが起爆させ足止めを試みる。
「さて、喧嘩両成敗と行こうかのう……刮目せいっ!儂の本気を見せてしんぜよう!!」
老若男女、暴れん坊の無法者ならば問答無用! 重臣が振り抜いた大槌はゴミ箱に直撃しけたたましい音をあげながら吹き飛び、おかっぱ頭の少女がそれを小刀で両断する。
気が逸れた隙に焔が縛霊手で殴りかかって鍔迫り合いになった隙にマリーが側面に回り込む。互いに押し合い離れ際をナイフで追い打ちをかけると、不意にはらわたを混ぜ返すような激痛に意識が飛びかける――見ると、脇腹に捻じれた痕跡がくっきりと付いていた。
集中攻撃を受ける三つ編みの無色を援護しようと、他の少女達も竜華に狙いを絞って攻撃を仕掛けていく。
(「向こうも同じ戦法……なら、僕よりも竜華さん達のほうが危険だ」)
相手の動きを見ながら深く息を吐くと英賀は薬液の雨を振りまいていく。同じ戦術ならば、決着は純粋な地力でつく。実力勝負ならばこそ、後方支援は重要になってくる。
ちさと焔が竜華に迫る猛攻を、無色達もまた二人の少女が攻撃を捌いて互いにしのぎを削っていた。
――次第にアジサイの怒号に気圧された無色達の手が止まり始め、前に立つ一人が焔の対戦車猟兵術に血反吐を漏らし膝をつく。
「咲き乱れなさい、炎の華よ……!」
「そろそろ終いにしようじゃないか、なぁ!」
竜華の大蛇・狂華炎月が炸裂し、アジサイの放つ火球が少女を火達磨にする。華奢な肉体は耐え切れず爆散し、防衛役が倒れるや一気に攻勢へ打って出た!
「あわわわ……ふ、二人とも、援護して!」
慌てふためきながら三つ編みの少女がシニヨン頭の少女達に救援を求め、脇差から鋭い一閃を放つ。
「往生際が、悪いですわよ!」
オウガメタルが剣筋を逸らした所でちさが刀を持つ手を蹴り上げる、無防備な懐に八雲の神剣が迫り背筋まで切先が刺し貫かれる。ごぼ、と血の泡を吐き出した直後、螺旋氷縛波の勢いに飲まれるように八雲は姿を消していった。
「あと二人だよ、このまま押し切ろう!」
英賀もグラビティによる応急処置を続けて凍傷の悪化を抑える、血に濡れるグリップを握り直して焔はガトリングガンをとり回す。
「喧嘩するならこっちを巻き込まないでよね!!」
小刀を銃身で払い退けマズルを押しつける。一発撃ち抜くごとに体を跳ねさせ、文字通り蜂の巣にされると腹部から内臓がこぼれ落ちた。
残る一人も螺旋忍術を駆使して対抗しようとするが、既に焼け石に水。竜華が鉄塊剣を振り上げ、アジサイと重臣がフォローしようと左右に走りだす。
「さぁ、散らせてあげましょう……♪」
蠱惑的な笑みにギラつく瞳が妖しく映る。間一髪で避けると大剣は地面に突き刺さり、続けざまにアジサイがファミリアを振りかぶった。
「やるなら地球じゃなく他所でやれ、螺旋忍軍!」
「制裁するなら男女平等じゃ!受けぃ!!!」
絡みつくファミリアが全身を噛み砕き、重臣の竜の拳が顔面を捉える――頭蓋にそのまま食い込むと一気に弾け飛び、残された死骸はぐにゃりと崩れ落ちた。
ライトアップされた看板ホストの写真は見事に陥没させられ、煌々と輝くネオンも所々から火花が散っている。これで被害が抑えられた方なのだから、螺旋忍軍がいかに周囲を省みていなかったがよく解る。
先ほどより短くなったスカートを摘まむと、竜華は恭しく一礼する。
「修復は念入りにおこなった方が良さそうですわね……それと負傷した方々の治療も」
眉間のシワを指先でほぐすちさの提案に重臣と焔が搬送を申し出た。
「うぅ……恩に着るっす」
まっすぐ帰ろうと思ったが動ける状態ではなく、えみかは手を借りることにしてマリーと共に一足先にその場を離れる。後ろ姿を見送ると英賀は戦禍の爪痕に手を伸ばした。
「……平和が一番、なんだけどね」
「内輪揉めで俺達が被害を被るこの構図、なんとかならんもんかね」
アジサイもぼやきながらグラビティを放ち、真空管に蛍光色の花が咲く。
暗躍する螺旋忍軍達の真意は読めない、東京23区を巻き込んだ熾烈な抗争は一層激化していくだろう――スパイラス政変による余波はまだ続きそうだ。
作者:木乃 |
重傷:本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557) ブラッディ・マリー(鮮血竜妃・e36026) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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