思惑ぐるぐる

作者:ヒサ

「螺旋帝の一族が東京へ落ち延びたという。その御身の保護の為、お前達に大田区での捜索を命じる。どんな些細なものであれ、情報を得られた時は都度報告するように。
 ──任務中、他の忍軍と接触する可能性もある。その際は最優先でこれを殲滅せよ」
 月華衆の指揮官『機巧蝙蝠のお杏』は配下である『黒鋤組』の者達を数名集めて告げた。

「我が精鋭達よ。此度お前達には東京都大田区での任務にあたって貰う。現在東京には螺旋帝の一族が御降臨なされておる。他の忍軍共に先駆けかの方の御前に参じねばなるまい。決して遅れを取るで無いぞ」
 テング党の指揮官『マスター・テング』は通信螺旋忍術における成績優秀者『シタッパ・テングズ』達の数名を集めてそう命じた。

「螺旋忍軍達が揉めているみたい」
 東京都心部で活発な活動を始めた複数の組織が衝突し、街や住民にも被害が出るようだと篠前・仁那(白霞紅玉ヘリオライダー・en0053)は言った。単なるデウスエクス同士の潰し合いには留まらぬこれを、周囲への被害を抑えつつ鎮圧して欲しいとケルベロス達へ依頼する。
 その為には、彼らが事を構えた所に介入し敵の連携を封じつつ一勢力ずつ撃破していくか、あるいは、両軍を戦わせ疲弊した所を一網打尽にするか、どちらかの方法を採るのが良いだろう。
 但し後者の作戦は、敵戦力が減じてからの行動となる為、戦いそのものは比較的易しくなるだろうが、それまでに暫しデウスエクス同士の戦闘が展開される為に周辺の被害を抑えるのに工夫が要るであろう事と、ケルベロス達が割って入った際に忍軍達が一時休戦して動くであろう事に注意が必要となるだろう。敵達をより消耗させるよう仕向けられれば良いかもしれない。
「今回、現場は日中の住宅街なので……、敵の消耗を待つのであれば先に、通り掛かるひと達を避難させて貰う必要があるでしょうね。人も車もそう多くはないようだけれど、報せを広げたり、新たに巻き込まれるひとが出ないようにしたり、辺りが問題になるかも。被害が建物だけなら、ヒールして貰えれば良いとして、も」
 仁那は思案するよう首を傾げてごち、次いで忍軍について語る。
 此度衝突する二つの勢力、その一つは『月華衆』。実働は『黒鋤組』と呼ばれる者達で、個々の能力自体はさほど高く無いようだが、仲間との連携を重んじ堅実に任務にあたるタイプだという。今回は六名が、短刀またはは手裏剣を用い戦うとのこと。
 いま一つは『テング党』、それに属する『シタッパ・テングズ』と呼称される者達が四名現れるようだ。彼らは通信教育の成績優秀者だそうで、鎖分銅および鎌を自在に使いこなすという。名から侮るのは危険だろう。
「彼らは忍軍の末端、なのでしょうね。スパイラスの事情は気になるけれど、彼らから情報を得られるとは考え難い、とのことよ。なのでその辺りはひとまず後回しで、まずは区民のひと達を護ってあげて貰えると嬉しいわ」
 周囲への被害に頓着しないであろう螺旋忍軍達に、他軍の排除にケルベロス達を利用出来ると思わせ二軍の連携を封じつつ早々に各個撃破へ持ち込むか。あるいは彼らに依る被害から区民達を護りつつ敵の疲弊を待ち、漁夫の利を狙うか。選択は皆に委ねたいと、ヘリオライダーはケルベロス達へ託した。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
ナディア・ノヴァ(わすれなぐさ・e00787)
八千沢・こはる(ローリングわんこ・e01105)
ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
神宮時・あお(惑いの月・e04014)
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)

■リプレイ

●触れ合えぬ
 人目を忍ぶのに適した、狭く陰った路地で二軍は遭遇した。
「お前達は……」
 常人のそれとは明らかに異質である相手方の様子に、まずテング党の者達が警戒を見せる。だが月華衆は即座に動いていた。
「──殲滅する」
 月下美人を抱く短刀が閃く。波状攻撃をとばかり展開する月華衆の目標はまず一人、
「少々、お待ち頂きたくー」
 しかしその刃は鈍い金属音を伴い阻まれた。傍らまで大きく踏み込んだフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)の大剣が壁の如く二者の間に突き立っていたのだ。動いたそのままに俯いた彼女の表情は長い黒髪に隠されたままではあったが、声は剣の無骨な様にも不似合いな柔らかい色。その異質に気圧されたかのよう、デウスエクス達は束の間静まる。その間にケルベロス達は、彼らの動きを警戒し且つそれを相手にも報せるべく各々配置につく。
 が、ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)のみ密かに退がる。このまま此処で事を構えられるであろうと見、周辺状況のケアを請け負った。敵を留め置く務めは仲間達に託す。
 視界内は何事も無くとも、路地を一つ二つ行けば人影はある。建物内にも人は居よう。ゆえ彼は、物々しくも頼もしい出で立ちで日向へと出た。
「聞けぃ皆の衆!」
 声に、気付いた人々が彼を見る。屋内の者にも届いたろう。
「此処より先は修羅の戦場で御座る、決して近寄ってはならぬ!」
 他のケルベロス達にはその声は遠く。無力な人らの不安が空気を揺らす事も承知で、敵と対峙する者達は、彼らの憂いを無為のものとすべく動く。
「また貴方達ですか、月華衆」
 静かな声に激しい怒気を纏わせ、ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)は華の意匠を刻んだ得物を持つ者達を見据えた。
「これ以上好きにはさせられません。此処で果てなさい」
 辛うじて抑えているといった風の低く落とした声と激情を示し燃ゆる淡色の瞳が、ケルベロス達が望む立ち位置を月華衆の者達へ知らせる。
「聞いての通りだ。此方には月華衆に怨みを持つ者も居るのでな、お前達、手を結ばないか」
 そうテング党を顧みたのはナディア・ノヴァ(わすれなぐさ・e00787)。月華衆への応対の為に既に抜いた刀を二振り構えた彼女の口元には笑みがあったが、青の瞳は剣呑な色を宿していた──断ったら、わかっていような?
「まだ刃も交えて居ない方々とー、戦うのは忍びないですしー」
 対照的にフラッタリーはおっとりと、事を荒立てるのは本意では無いのだとばかりの態度を示す。不穏の色にも動じる事無く、彼らを見遣るその表情は穏和な微笑みそのもの。
 彼女らの温度差にテング党が落ち着かぬ様子を見せるが、そこまで気遣ってやる余裕は無い。
「私達は街の人々が護れればそれで良い。貴殿らには何やら捜しものがあるとの事だが──」
(「! 団長」)
 真意を偽り無く、とシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が彼らへの一応の敬意と共に此方の希望を口にする。だが、私達はそれには関与しない、などと続けるより先に、敵達の反応が警戒の色に上塗りされたのを見、八千沢・こはる(ローリングわんこ・e01105)が急ぎ制止を囁いた。
 誠実は美徳ではあるけれど。螺旋忍軍達の事情にも通じているらしき様は、その関心のほどを問うより先に敵の不信を煽る。彼女達もまた狙っているのでは、などと、彼らが恐れているがゆえに疑心は容易く芽吹く。
 ゆえ、個々の意見が纏まらずケルベロス達への態度を決めかねている様子のテング党を説き伏せるには、目的だけを強調した方が早かろうと、途切れさせた文言はそのまま捨て置き彼女達は、重要な箇所だけに絞って言葉を重ねて行く。
「街や人に危害を加えず居てくれれば私達はお前達の邪魔はしない」
 ただ自分達は、月華衆を何としても倒したいのだとまずナディアが。
(「……そうだな、今『両軍共を相手取る気など無い』などと言っても危ういか」)
 それを他意なく信じさせ得るだけの信頼は築き得ぬ間柄。今は、テング党に刃を向けぬ事で信じて貰うほか無いと、シヴィルは口を噤む。
(「……あくまで対等に、利害が、一致したから……手を結ぶ、のだと、だけ」)
 それ以上を語っても、罠と勘ぐられかねなかろうと。神宮時・あお(惑いの月・e04014)もまた危惧を抱いた。下手に出てもつけ込まれない保証も無いと、せめて隙を見せぬように少女は武器を構える手をそのまま、きりりとして見せる。表情筋は動かなかったが背筋は幾らか伸びた。
「……保障は出来ない」
 人や建物を好んで傷つける気は無くとも、とテング党は彼らなりに慎重に応えた。
「なら、ボク達で勝手に護るよ」
 敵の敵は味方、それだけ合意出来ればと、アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)が譲る。
 背を預けろなどとは乞わず託さず、ただ互いの邪魔をせぬように。各人が承諾を求め、応え。共闘というよりは不干渉。それでも一応の同盟が、そうして成った。

●華手折り
 付近の住人を避難させ終えたディバイドが戻る。ならばとナディアが入れ替わりに離脱した。張る暇の無かったテープを片手に、念には念をと。
「この金剛破斬、代わりはしかと務めてみせよう」
 ケルベロスとテング党が手を組んだ事に依る不利を悟り、月華衆が戦意を露わにより激しく攻め立て来る中。此方は未だ万全の態勢とは行かぬが、仲間が不在の穴は己が埋めると彼は豪快に笑う。ミミックをどちらで数えるかにも依ろうが、推定黒一点ともなれば女子の為に奮闘せねばならぬとは、矜恃に生きる侍の弁。
 彼らはまず短刀使い達に狙いを定めた。こはるの傍に分身達が出で、月華衆へ襲いかかる。前に居た二体に斬撃を浴びせた直後、空からロベリアがその一体へと槍を向けた。翼で風を切り弧を描き貫いて、ケルベロス達は傷の深いそれへと攻撃を集めんと動く。が、傍のもう一体が庇いに入った。
「ぬう、小癪な」
 ディバイドが唸る。だがその声色は、ならばどう攻略しようかとばかりの不屈。
「デハ、真正面カラ打チ崩シテ参リマセUkA」
 晒した額を地獄に焦がすフラッタリーは金の眼に獲物たる『壁』を捉えて唇に弧を描いた。応じてロベリアが手裏剣が飛ぶ中を駆け抜け拳を握る。だが狙われた短刀使いは動きを読んでいたかのようにかわし彼女へ刃を振るう。主の命を受けたミミックがそれを代わりに受け止めて、束の間動きが止まった敵を、飛来した二つの衝撃波が刻んだ。
 為した刀を翻してナディアは、周辺の封鎖作業を終えた事と、憂いは無いであろう事を仲間達に報せた。
「何事も無く済みそうだね」
「ええ、何よりです」
 超速でスマートフォンを操作し続けるアストラが顔を輝かせる。小細工も馬鹿にはならぬかと思い直し冷気を纏うロベリアが安堵する。とはいえ人々の為の建物が此処にある以上、テング党との約束は未だ有効だ、と気を引き締め直したシヴィルは同盟相手を見遣った──物に残る想いをも護りたいと願ったところで、このデウスエクス達が理解してくれるかは解らないけれど。
 ともあれ今は出来る最善をと彼女は黒く輝く剣を構え、守護の獅子座を刻む。揺らめく光は炎にも似て、前衛の裂傷を癒して行く。
(「だが、いずれ競り負けるか……?」)
 アストラと手分けしてバックアップに努めているものの、敵が此方同様に攻撃を集中して来たならば個々に手厚い治癒が要るだろう、との懸念もある。敵の手裏剣使いがひたすらにばら撒く毒やら何やらが存外厄介であるから尚更だ。今はテング党も居るがゆえに差し迫ったものでは無いが、油断は出来ない。彼らをも手当するほどお人好しでも居られない事であるし。
 それに、テング党の者達も此方への警戒は緩めていない様子だった──戦況が変わって万一撤退を試みられても困るからと、彼女達が彼らについても常に注意を払っているのだから仕方の無い事ではあろうけれど。
(「……ですが、どう、しましょうか」)
 そして今は、それより間近に迫った問題があり、あおは密かに悩んでいた。敵前衛は短刀使いが二体、それはじき殲滅出来ようが、早々に仕留めておきたい残り一体の前には手裏剣使いが立ちはだかるのだ。手も足も出ない、わけでは彼女に限らず無いけれど、何名かは攻撃の手を緩めざるを得なくなるだろう。此方の手を見切られようとも力業で撃ち抜ける者となると、こはるとアストラの補助を計算に入れても限られて来る。
「退いていろ」
 少女の逡巡を知って、では無かろうが──何しろ表情にすら出ていない──、先に答えを出したのはナディアだった。振るったばかりの刀を下げて、彼女は銀色を纏った爪先を手裏剣使いの一体に叩き込む。相手をよろめかせて空けた隙間を通すように、長射程の攻撃を撃てる者達が後方の短刀使いを狙った。刃に呪力を纏い此方の加護を打ち消しに掛かっていた相手でもあり、此方の癒し手達を悩ませていた返礼も、幾らか込められていたかもしれない。

●飛べぬ片翼
 残る敵のうち妨害に特化した二体の攻撃に悩まされ、あおが結構な頻度で攻撃を緩めたものの、こはるが敵の行動を封じるよう動き続けた甲斐もあり、手裏剣使い達を殲滅するのにそう手間は掛からなかった。
 月華衆最後の一体を討ち崩し、テング党達が息を吐く。それを隙とこはるは敵の不意を突くため動き──警戒を緩めずにいた一体に防がれる。
「そこまで甘くないって事ですか。……ですけど」
 月華衆がそうであったように、彼女達とて連携はお手の物。彼女の台詞が終わるより早くにシヴィルが撃った凍気が爆ぜて、保った緊張はそのままに、ケルベロス達は次なる標的へと刃を向ける。
「──ヨリ、視彫ルヤフNi」
 金瞳に炎が揺らめく。彼女は一時影となり、標的へ呪いを刻む。やはりか、などと驚愕半分の敵の声が可笑しかった。多くを語らう暇など無く、だからこそ、これは彼らが招いた流れとばかりの顔をしていれば良いのだと──フラッタリーのそれは変わらず陶然と殺意の露わな笑みのままであったけれど。
 獲物を煽り、己をより盾として機能させるべく歩を刻む彼女の陰に炎を纏う刀が踊った。巨躯の割には軽やかにディバイドがゆるりと舞を紡いだ。浄めた霊炎が敵を焦がし、続けてあおの拳が白華の色と共に高速を帯びる。敵が纏う鎖の護りを砕く手の一つをぶつければ、鳥の面の下で敵達がおののくのが判った。
 だが未だ足りない。敵には既に此方の手の内がばれている。月華衆に比べれば連携に長けてはいない様子である事がつけ込む隙になっており、遅れを取るほどでは無いけれど──このまま圧倒してしまいたい。
(「通信教育じゃチームプレイは座学だけだったんだろうね」)
「通信速度なら負けないよ」
 胸中で分析しつつ、スマートフォンを操作する手を更に速めながらアストラが敵へと強気な眼差しを向ける。見た目にも傷の深い者が居ようと、それを弱みとは気取らせぬよう注意を払った。
「なら私は詠唱速度で張り合ってみせようか──頼むぞ、二人共」
 冗談交じりにシヴィルが小さく笑んで、信を置く団員達へ声を。書を繰り彼女は術を紡ぎ、支援を受けたロベリアが槍を携え舞い上がる。その空はこはるが展開した刀が雨と降らんとする最中で、注ぐ様は獲物を捕らえる檻のよう。敵を翻弄する中、槍は杭の如く標的を穿った。
「次はどなたでしょうか」
「これで良いだろう」
 敵に返答する余裕など既に無い。ナディアの刀が炎を纏い次の犠牲を適当に選んだ。
 個々の能力自体は侮れるものでは無い敵を、皆で少しずつ追い詰めて行く。ある時、鎌の刃が深々仲間を抉るのを見、案じたあおが迷うが、
「そっちはボク達に任せて、ガンガンお願い!」
 アストラの、常を思えば珍しい、冴えた強い声を受けて少女は高火力を叩き込みに動いた。気遣う思いは同じで、けれど選んだ役目は違う。ゆえに、癒し手が足りると判断した以上は攻め手は務めに専念するのが最善だ。時として信頼とも呼び得るであろうそれを、口を閉ざす少女が正しく知るのはきっと未だ先の事だろうけれど、戦いに馴れた体は惑う心を置き去りにして正確に応えた。敵へと迫り、吐息すらも届く間近で術の風を撃ち放つ。不可視の刃は血に染まり、敵達は最早誤魔化しようも無く不利を悟る。
「お前は行け、せめて報告を──」
「させませんよ、全員ブチ倒します!」
 一人だけでも生還を、とテング党が動きを変えるのは想定内。ケルベロス達は数を頼みに敵陣を包囲し次々叩いて行く。潰しきれない隙を突かれ危ない局面も多少はあったが、誤差の範囲とばかり彼らは互いを支え合い、一人も欠けることの無いままに。
「影ノ輩、獄炎ニテ照ラサレ影ニ還レ」
 軋るフラッタリーの声は裏腹に高らかに。炎は昼より眩く盛る。
「──泥黎に」
 ナディアの足が今一度凶悪なヒールに包まれた。堕ちよとばかり、鋭く地へと踏みつける。瀕死の獲物をぼろ切れのように汚して、そして。
「焼いて祓うは金剛破斬!」
 快活な声と共に、ディバイドの霊刀が陽炎めいて弧を描く。
 影は焔に焼き尽くされて、路地にはほどなく静寂が戻った。

●緩む寂び色
 軽く周囲を見回した限りでは異常は見つからず、ひとまずケルベロス達は事を終えたと息を吐いた。
「大丈夫か神宮時殿、血まみれだぞ!」
 そう言うシヴィルの衣類も随分な血染めだったが、傷は塞いだ後らしく彼女は、真新しい切り傷から結構な勢いで血を零す少女を急ぎ治癒した。あおは声に驚き彼女を見上げた後、案じるよう手を翳された傷を見遣り、再度相手を見上げ、幾らかの逡巡を経て小さく頭を下げた。他に痛む箇所は、と問われるが、首を振るのがやっとの様子。
「護りきれずー、申し訳ございませんわぁー」
「出来ててもそれはそれで危険だね」
 額と瞳の金を覆い隠したフラッタリーへヒールを施しつつアストラがやんわりと苦言を呈す。一人と一体で護りきるには敵の数が多過ぎた、と少女は疲労に口を閉ざすボックスナイトをちらりと見遣り、皆自力で動ける様子ではある事に安堵した。
「先にこの場を整えねばな」
 封鎖を解くのはその後、とナディアが眉をひそめた。地面が抉れていたり、傍らの塀が崩れたりしているが、これらは主に月華衆(と自分達の大技)に依るものだ。テング党は一応約束を守った事になる。
「一体どれ程居るのか……」
「なんとか元を断ちたいですねえ」
 物憂げにロベリアはごち、電柱に刺さった手裏剣を引き抜いた、と思ったら半ばで折れて切っ先が埋まったままになった。ああ、と僅かに目を瞠ったこはるは相槌と共に首を捻る。
 とはいえ今は、今回護るべきものを護り抜けた事を喜んでも良いだろう。
「ひとまずはこれにて一件落着で御座ろうな!」
 ディバイドの笑う声が、人気の未だ戻らぬこの場に明るい色を添えた。

作者:ヒサ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。