首都、暗中に蠢く

作者:天枷由良

●忍びの気配
「――はーい、ちゃんと集まったね」
 首都東京の何処か。
 露出度の高い衣装で、拳銃と刃が一体となった武器を二丁ばかり握る女が、薄く白い布地を纏う配下の女子四人を前に語りだす。
「それじゃ指示だけど。螺旋帝の一族がねぇ、都心部に出現したって情報が入ったの。これが本当なら……とっても凄いチャンス、的な? そういう感じなのは分かるよね?」
 些か軽い喋り口に、配下は頷く。
「お利口さんばかりで助かるよ。絶好の機会を逃さないためにも、これから魅咲忍軍の総力をあげて対象を捜索するから。あなた達には東京二十三区の一つ、江戸川区に向かってもらうよ。……当然、他の忍軍たちも捜索部隊を出してるだろうから――」

「――出会ったら即、狩るのです」
 ところ変わって、また東京の何処か。
 髪も面も鉢金も装束も、腕を覆う布以外は全て白に染めた螺旋忍軍の指揮官が、同じように部下へ指令を出していた。
「幾つもの忍軍が動き出している今こそ、我ら白影衆の力を見せつける時です。都内二十三区で蠢く忍軍の姿を暴き、狩り尽くすのです。さあ行きなさい。螺旋忍軍滅ぶべし」
「「「螺旋忍軍、滅ぶべし」」」
 内部抗争の酷さを垣間見せる合言葉を唱え、白影衆と呼ばれた忍軍たちは首都の闇に溶け込んでいく。

●ヘリポートにて
「東京都心部で、螺旋忍軍が動き出したようなの」
 ケルベロスたちを前にしたミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は、びっしりと文字が記された手帳を開いて語り始める。
「活動はかなり大規模なものらしく、複数の螺旋忍軍組織が動き出したことが予知できたわ。何か争っているみたいで……螺旋忍軍同士の戦闘にも発展しているようなの」
 元よりそのような種族であるが、彼らが都心で争うことによって街が破壊され、一般人に犠牲者が出るような事態となっては不味い。
「そこで皆には、争い始める螺旋忍軍の撃破をお願いしたいの」
 場所は江戸川区、船堀駅周辺。
「出現する螺旋忍軍組織は二つ。一方は魅咲忍軍と呼ばれる七色の組分けが特徴の組織で、もう一方は白影衆という、上から下まで白ずくめの忍びたちよ」
 魅咲忍軍側の戦力は女子四人。
 七色全ての組に属する無色扱いの下位戦闘員だが、集団戦闘の巧みさには一日の長があるらしい。
「悩みは無色扱いらしく個性が弱いことで……髪型で差別化を図っているみたいよ。船堀辺りに現れる忍びも、ショートカットにツインテール、ポニーテール、お団子とまぁ、バラエティにとんでるわね」
 そして白影衆。此方はどうやら男性ばかりで六人。
「螺旋忍軍滅ぶべし、或いは螺旋忍者滅ぶべしが合言葉の、同族狩り専門集団と見えるわ。他の勢力と目的を異にするぶん、ちょっと気味が悪いわね」
 以上、合わせて十体の螺旋忍軍を殲滅しなければならないわけだが……。
「周囲の被害を抑えるためには、魅咲忍軍と白影衆の戦いに割って入った上で、彼らを連携させないようにしつつ一方の忍軍を撃破、返す刀でもう一方の忍軍を撃破する、といった作戦を取らなければならないかしらね……」
 または忍軍同士を戦わせて疲弊した所を叩くという作戦も視野に入るが、この場合は市民の死傷者が出る可能性が先の作戦よりも高くなってしまう。
 さらにはケルベロスの排除が同族で争うよりも優先されるだろうから、協力して対抗してくる忍軍相手に戦いが長引けば、かえって戦況は不利となり、被害も大きくなってしまうかもしれない。
「民間人に危害が及ばないよう、そして忍びたちに気取られないように上手く避難指示を出して同士討ちの時間を長引かせれば、割って入るよりずっと楽な戦いになるでしょうけれど……どちらの作戦を取るかは、話し合って決めてちょうだい。皆の足並みが揃わないことが、一番の不利となってしまうでしょうからね」
 それから双方の戦闘能力だが、これは概ね判明している。
「魅咲忍軍は四名それぞれが違う役割を果たし、連携して敵を一体ずつ仕留めていくという戦い方。白影衆は信念に違わぬ苛烈さで、とにかくなぎ倒していくといった感じよ。詳細は資料にまとめてあるから、目を通しておいてね」
 手書きの紙を配りつつ、ミィルは言葉を継ぐ。
「建物はヒールで直すことが出来るから、とにかく人的被害さえでなければ大丈夫よ。使いっ走りの螺旋忍軍が大した情報を持っているはずもないし、仮に何かを喋った所で同族すら欺く種族の言葉なんて信用の欠片もないのだから、皆は彼らから何かを聞き出そうとしたりせず、まずは敵の撃破に全力を注いでちょうだいね」
 彼らの目的を探るなら、事件が解決したその後で行動すればいい。
 ミィルは説明を終え、ケルベロスたちをヘリオンに乗り込むよう促した。


参加者
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)
斎・時尾(レプリカマリオネット・e03931)
田抜・常(タヌキかキツネか・e06852)
佐々木・照彦(レプリカントの住所不定無職・e08003)
モニカ・カーソン(木漏れ日に佇む天使・e17843)
時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)

■リプレイ

●狭間に立つ
 東京都江戸川区。船堀駅の近くに降り立ったケルベロスたちは、少々殺気立った喧騒に迎えられた。
「……あかんな。もう始まっとるんか?」
 佐々木・照彦(レプリカントの住所不定無職・e08003)の呟きを、逃げ惑う人々の悲鳴が掻き消していく。
 見る限り建造物などの被害はなさそうだが、既に忍軍同士は街中で人目も憚らず接触し、戦端を開く寸前なのだろう。
 敵勢力の消耗を誘うなら避難誘導に全力であたるべきだろうが、ケルベロスたちの狙いは戦闘への即時介入。
「道すがら呼びかけつつ、あとは逃げるに任せましょう」
「そうですね。――皆さん! 私たちはケルベロスです!」
 シルク・アディエスト(巡る命・e00636)の言に頷き、モニカ・カーソン(木漏れ日に佇む天使・e17843)が声を張る。
 形状に多少の差異があっても、モニカの纏うコートはケルベロスの証だ。
 緊急の事態に縋るべきものは、他に駅前の交番から出てきたらしき数名の警察官くらいしかない。人々はケルベロスたちを追い越していくように逃げ、またケルベロスたちも避難の呼びかけを続けながら、流れに逆らって路地をひた走る。
「忍びの戦いって、目に見えない闇の中でやるものだと思ってたわ」
 周囲を見回しながら、ぽつりと零すルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)。
 人もいれば建物の明かりもあり、此処で忍ぶという言葉を感じることは出来ない。
「忍びないひとたちは夜の世界へ還してあげないとね」
「ええ。螺旋忍軍を止めるため、がんばりましょう」
 ルチアナにモニカが返しつつ、路地を一つ曲がったところで求めるものは見つかった。
「あれが時雨くんの宿敵か! 聞いてた通りや……あれ? き、みらは……?」
「うえー、援軍がいるとは予想外……でも、あんま仲間っぽくないです?」
 まだ消耗は見られない忍軍の片方を指して、知らぬ顔でとぼける照彦と田抜・常(タヌキかキツネか・e06852)。
 その視線を受けて振り返った魅咲忍軍たちも、対する白影衆も、現れた八人がただの人でないことを悟って動きを止める。
「……ケルベロスか」
「彼奴ら、何故此処に」
 少々困惑した様子の闖入者から意図が掴めず、総勢十体の忍びたちはそれぞれに見合う。
 しかし、情勢が傾くまでにさほど時間は掛からない。
「なんやよう分からんけど、下がっとき!」
 照彦が魅咲忍軍に言って、槍を空高く放り投げる。
 一つだったはずのそれは彼方で無数に分かれ、白影衆を目掛けて勢いよく降り注いだ。
 これ以上に明確な敵意を示す行動などないだろう。
「……魅咲の、まず此処はケルベロスを滅ぼすべし!!」
 白影衆の一人が言い放ち、螺旋の手裏剣が一斉に空を飛び交う。
 それを受け、或いは斬り払い、銀髪を靡かせて最前線に躍り出る女性ケルベロスが一人。
「我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて、貴殿らを倒します!」
 セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)は言うが早いか、星辰の剣に空の霊力を込めて斬りかかる。
 先鋒を務める白影衆は装束をバッサリと両断され、手裏剣を手に受ける暇もなく幾度か跳ねて退いた。
 けれども、その動きは突然止まる。するりと建物の影から湧き出たビハインド・一刀が、敵を縛り上げていた。
 引き寄せられるように一刀の方を向いて、斎・時尾(レプリカマリオネット・e03931)はアームドフォートを斉射。撃ち抜かれた白影衆はルチアナの元から飛び立った閃光にも貫かれ、焼け焦げて散る。
「っ……魅咲の! 何をしている!」
 白影衆から魅咲忍軍に向けて、より切迫した声が飛んだ。手を拱いていては、数の優勢を失ってしまう。
 だが、四体のくノ一は抜き身を構えたままで動かない。
 先の言葉どおり、ケルベロスたちは本当に自分たちの正体を知らないのか。そして、どのように動くことが任務遂行に最良かと、まだ逡巡している様子。
 そこで混乱に拍車をかけたのは、ライドキャリバーのシラヌイに激しいスピン攻撃を命じつつ、大量のミサイルを放っていた時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)の台詞。
「彼らは私の関係者。彼らの蛮行を許す事はできません!」
「何?」
「安心、してください。あなた方には攻撃しません」
 螺旋忍軍とはいえ女性の姿をしているからか、乱舞は少々ぎこちなく付け加える。
 しかしケルベロスでありながら、白影衆とも通ずるとはますます解せない話だ。
 魅咲忍軍は戸惑いを、或いは目を細めて嘲りを示す。
 権謀術策と内部抗争にどっぷりと浸かりきった螺旋忍軍において、安心しろなどという言葉は最も疑わしいものなのだろう。
 白影衆に因縁ありというのも、言うだけなら如何様にも言える。
「利害の一致です。深く考えないでください」
 とにかく敵意はない。それが伝わればいいのだと、黒鎖で魔法陣を描きながらモニカが呼びかける。
「そうよ。あなたたちに攻撃するつもりはないわ」
 猜疑と欺瞞に溢れるデウスエクスに人当たりの良さは効果を及ぼさなかったようだが、ルチアナも言葉で念を押す。
「……おい、どうする」
 問いかけてくるポニーテールの仲間に対し、ショートカットの魅咲忍軍は僅かに間を置いて答えた。
「奴らの言葉など信用に値せん。だが、未だ我らに仕掛けてこぬのは確か」
 刀が街の灯りを返して光り、魅咲忍軍の声音に不遜なものが滲む。
「精々、白影衆討伐に励んでもらおうではないか」
「おのれ……! ならば共に滅ぶべし!」
 共闘が成り立たなかったことに唸る白影衆。
 しかし、もう魅咲忍軍の行動に惑うところはない。緩やかな斬撃と居合いの一切りを織り交ぜ、ケルベロスたちを上回る連携攻撃で白装束の一体を翻弄してみせる。
 ケルベロス側からも、大腿部辺りを派手に露出させたくノ一姿のシルクが、闇のような色合いに変化したアームドフォート・適者生存を背に隣接する建物の壁を蹴り上げ、宙から地上へと主砲を発射。幾度も斬られてずたぼろになっていた白影衆を塵も残さず消し飛ばす。
(「ひとまず、作戦通りにはなったですか」)
 仲間を癒すための光球を幾つか作って弄びつつ、常は狐面の下から魅咲忍軍を見た。
 肩を並べて戦うことになったとはいえ、欠片も心は許していない。なにせ、相手は騙す裏切るを体現した忍びたち。いつ後ろから斬りかかってこられるかと思えば、警戒するなと言う方が難しいのだろう。
 それは相手も同じかもしれない。ツインテくノ一が、ちらりと視線を向けてくる。
(「狸にしろ狐にしろ、化かし騙しでは負けられません」)
 狙いを悟られないよう不自然さを消すことに努めつつ、常は手裏剣に傷つけられていたセレナに対して光球を投げた。

●白装束と斬り結ぶ
(「この動き……やはり……」)
 戦いの最中で既視感と違和感に挟まれた乱舞は、白影衆へ問いかける。
「もしかして、あなた達、私を知っていますか?」
 返ってきたのは沈黙。それ以上に何を確かめる術もなく、乱舞は螺旋を込めた掌を白装束へと叩きつけた。
 凝縮された力が敵の体内に移って暴れまわり、その圧力に屈した白影衆はせめて一太刀と手裏剣を振りかぶるも、撃ち出すより先に高所より落ちてきたシルクから燃え盛るドラゴンの幻影を喰らって力尽きる。
「ちぃっ……」
 数度斬り結んだだけで追い詰められた真白い螺旋面たちから、苦渋が漏れた。
 数の差を埋められるほどの力を持ち合わせてはいないのだろう。もはや、大勢は決したと言っていい。
 それでも、白い忍びたちに引き下がるという選択肢は与えられていないらしい。一体がシルク目掛けて、毒を仕込んだ手裏剣を投げようと構えた。
 標的とされたシルクは、重力の軛から解き放たれたように路地を跳ぶ。白影衆はそれを追って――照彦のテレビウム・テレ坊が放つ強烈な光に当てられる。
 途端、殺気はテレビウムに向けて集中した。三体の白影衆は手裏剣をもう一つ取り出して、高速回転させることにより生じた大竜巻をけしかける。
 ライドキャリバー・シラヌイとセレナが庇いには入るが、アスファルトも街路樹も巻き上げて迫る竜巻全てを阻むことは難しく、柴の成犬ほどしかないサーヴァントはいとも簡単に捉えられて宙を舞った。
「テレ坊!」
「すぐに回復します!」
 照彦を制して、モニカが手を組み目を瞑る。祈りによって現れたのは空に消えた木々よりも大きな樹の幻影で、錐揉みして地面に叩きつけられたテレビウムを優しく木陰に包み込む。
 更には常が光球を投げて、治癒に加わる。二人から癒やされたテレ坊はまだ大きな傷を残しつつも、ひとまず力を取り戻して起き上がった。
 そこで白影衆は、テレビウムを仕留め損なったことと合わせ、自分たちが策略に嵌められたのだと気付く。
 だが、気付いたところでどうしようもない。僅かな時間とはいえ、乱戦の中で一点を凝視したために生まれた隙は大きかった。
 槍を手にした照彦が相棒の分までやり返さんとばかりに敵中へ飛び込み、目にも留まらぬ速さで斬撃を繰り出して白影衆を薙ぎ払う。
 それに耐えようと一瞬ばかり踏ん張ってしまったのが、また不用意な行動だった。ルチアナは白装束の正面に難なく位置取ると、突き出された腕を掴み取っていなし、少女らしからぬ拳撃で叩き伏せる。
(「……あと二人ですか」)
 待ち受けることへの後ろめたさを少しばかり感じつつ、セレナは頭を振って集中し直す。じっと見定めた敵の下からは間もなく爆炎が噴き上がり、黒く焦げた忍装束はふらふらと建物の狭間に追いやられていった。
 そして、そのまま死を迎える。ビハインド・一刀の飛ばした石片を標代わりに、物陰へ潜んでいた時尾がガトリングガンから大量の弾丸を浴びせ掛け、文字通り蜂の巣にして生命を終わらせる。
 最後の一体は苦し紛れに毒の仕込まれた手裏剣をセレナへと撃ち当てたが、その成果を見る前に四方から攻撃を叩き込まれ、露と消えた。
「さて……」
 あとは残ったくノ一たちを片付けるだけ。
 休む間もなく魅咲忍軍に向き直り、シルクは主砲を撃ち放つ。
 しかし、砲撃は容易く受け流され、ほとんど消耗のないくノ一たちはせせら笑う。
「……化かしきれてはなかったですか」
「すまぬな。理由もなく加勢する者など信ずることは出来ぬよ」
 常の言葉に、ツインテくノ一が至極当然といった様子で答える。
「貴様らが妙な動きをするならばとは考えたが……ふっ、白影衆討伐ご苦労であったな」
「一応、聞いとこか。定命化のご予定は?」
 照彦が髭たっぷりの顎を撫でつつ尋ねた。
「あるわけがなかろう。嘘でないぞ」
「それなら……ごめんなさいね。あなたたちも倒させていただきます」
「その命、露と散り地に還りなさい」
 黒鎖を手にモニカが言って、シルクは足元を蹴り上げ闇の中に舞う。
「どんな絡め手で来ようと、この剣で一刀両断するまでです! ……我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて、貴殿らを倒します!」
「名乗り直すとはまぁ、律儀なことだ」
 武器を手に構えるセレナに対して呟き、魅咲忍軍は四人が一塊であるように動き出した。

●くノ一と相打つ
 画面を明滅させたのも束の間、テレ坊が居合いの一太刀で両断されて消える。
 苦戦しなかったとはいえ、白影衆とまともに戦ったケルベロスたちには――特に敵の攻撃を引き付けたテレ坊や盾役に勤しむセレナなどには、常とモニカが手を回しても癒やしきれない傷が残っていた。
 それでもセレナは気を吐き、剣を構え直す。弧を描く斬撃から、水の流れるような動きで振るわれた刀に襲われ、すれ違いざまに居合いの一切りを受けても、強い意志と防具の力によって踏みとどまる。
「民を守る騎士が、この程度で屈するわけには……!」
「なに、意地を張らず楽になれ」
 にっこりと目を細めたポニテくノ一が言うなり、魅咲忍軍たちはまだ遠い間合いから一斉に二振りの刃を振るった。
 四方から空間ごと斬り捨てる技にはさすがに耐えきれず、セレナの身体が前のめりに倒れていく。
 手負いの相手ならこの程度。魅咲忍軍には、そんな余裕すら感じられた。
 ――が、それは油断でもあったのかもしれない。
「こういうのなんて言ったっけ……てんもうかいかい、そにしてもらさず?」
 不敵に微笑み囁いたルチアナの手元から、稲妻が竜の姿を成して飛び、魅咲忍軍の一人を貫く。
 盾役が動く暇すらなかった鋭い一撃は、他の者に追随を許さないほどの恐ろしい威力で炸裂し、ポニーテールをあっさりと灰に変えてしまった。
 途端に走る動揺。その一瞬を突いて、一刀がお団子頭のくノ一を縛り付ける。
 ビハインドはあちこちに隠れて動き、まだ余力十分。彼を従える――というよりも従えられているように物陰を行き来する時尾も同じく万全に近い状態で、ガトリングガンから苦もなく炎弾の雨を降らせた。
 的となったお団子は弾を余すところなく飲み干す。
 それから見た光景は、忍びに馴染みのあるものだったろう。印を結んだ乱舞の姿が無数に増え、お団子を取り囲んでいた。
「さあ、我が幻影達よ……踊りなさい!!」
 号令をかけた乱舞の本体がどれなのか確かめることも出来ないまま、お団子は全方位から刀に斬り裂かれた後に照彦の気咬弾を受けて吹き飛ばされ、土に還る。
「こ、このー!」
 強者を装うことも忘れたツインテが力任せに刀を振って、ライドキャリバー・シラヌイを斬り伏せるも、後の祭り。
 忍軍のお株を奪う素早い身のこなしで跳び跳ね、前に後ろにと動き回って翻弄するシルクが、鏃の如き鋭さを得た適者生存でツインテの懐を穿ち仕留める。
 残るショートカットは一人きりになったことですっかりポンコツと化し、何も出来ずにいるところで常に接近を許した。
「その化かされたような顔、もう少し早く見たかったです」
 ふふ、と笑う常の狐面を弾き飛ばしてやろうと、我に返った魅咲忍軍は刀を振り上げたが、それを下ろす前にケルベロスから砲撃斬撃拳撃と選り取りみどりの技を浴びせられ、か細い悲鳴を漏らしつつ死んでいった。

「街の人たちは無事みたいね」
 後始末をしながら戦場から駅前までの様子を確かめ、ルチアナが言う。
 テレ坊やシラヌイも既に復活を果たし、セレナも備えが良かったことと二人の癒し手が回復に努めていたことで、重傷とまでは至らなかったようだ。
 路地や建造物に出た被害もヒールして、ケルベロスたちは帰途につく。
 そうして落ち着くと、再び湧き出てくる違和感。
(「白影衆……彼らは……」)
 過るものに答えを出すことは難しく、乱舞の顔は渋いままであった。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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