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東京都練馬区。
「代表取締役社長、鈴木・鈴之助です」
きちっと背広を着込んだ若いサラリーマン達の前で、威厳と貫禄を併せ持つロマンスグレーの壮年男性が口を開いた。
「今、我が社は千載一遇のビジネスチャンスを掴みました」
大企業グループ『羅泉』の社長が綺麗に整列する社員へ訓示を垂れる様子は、一見したところ何の不審も感じられない、どこにでもありそうな日常風景だ。
「螺旋帝の一族が東京都内に潜伏しているという情報を得たのです」
だが、鈴之助の口から続けて語られたのは、彼らが普通の会社員では無いと思わせる内容。
「我々がこれから取るべき行動は明白です。お前達エリート社員は練馬区を虱潰しに捜索せよ。万が一、他者の妨害が入るようならば、速やかに排除せよ」
「はっ!」
鈴之助の号令に、社員達は幾分かの緊張感を持って答える。
「エリート社員ならば、給料分の働きをしてみせるが宜しい、解散!」
拳を振り上げて檄を飛ばす鈴之助は、流石螺旋忍軍と言うべきか、外見年齢にそぐわぬ若々しいバイタリティーに満ち溢れていた。
同じ頃。
「傾注! これより、我が部署は24時間残業体制に突入する」
『株式会社スパイラルハート』でも、螺心衆の指揮官たる上忍が、部下達へ指令を出していた。
「下忍社員は4~6名の班を作成、都内全域を分担して調査活動を行うように」
「御意!」
「調査対象は、東京都内に潜伏中と思われる、螺旋帝の一族その人である」
螺旋帝の一族——その名から任務の重要性を察した下忍達がざわつく。
「調査中、他忍軍の調査部隊を発見した場合は、最優先で他忍軍の排除を敢行せよ。検討を祈る」
淡々と命令する上忍の表情は、覆面に隠されて読めない。
●
「東京都心部で、螺旋忍軍が活発に活動を開始したようであります」
小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が、集まったケルベロス達を前に、説明を始める。
「しかも、複数の螺旋忍軍の組織が大規模に活動していて、螺旋忍軍同士の戦闘に発展し始めたでありますよ」
デウスエクス同士が争うだけなら放置しても良いのだが、この戦闘により都心が破壊され一般人の犠牲者がでるとなれば、当然放置する訳にはいかない。
「そこで皆さんには、争い始める螺旋忍軍の撃破をお願い致します」
周囲の被害を抑える為には、両者の戦いに割って入った上で、敵を連携させないよう片方の忍軍を撃破してから、返す刀でもう片方の忍軍をも討伐する必要があるだろう。
「忍軍同士を暫く戦わせて、疲弊した所を叩くという作戦も可能ではありますが……この場合、市民の死傷者が出る可能性、相当高くなってしまいます……」
さらに、呉越同舟となった敵は協力してケルベロスを攻撃してくる為、戦いを長引かせて敵を疲弊させる工夫が無ければ、却って戦況が不利になるかもしれないので、慎重に判断して欲しい。
「さて、皆さんへ向かって欲しい戦場は東京都練馬区。そこでは、大企業グループ『羅泉』の超エリート社員と螺心衆の下忍が戦ってるでありますよ」
『羅泉』の超エリート社員は、黒髪に角眼鏡が神経質そうな雰囲気の、スーツを着た青年達。
螺心衆(下忍)は、黒い忍び装束に身を包み頭には鉢金を巻いて、忍者刀を携えている。
「そして、螺旋忍軍一掃の為の作戦ですが、『どちらかの忍軍に味方して片方を撃破、返す刀で残りを撃破する』か、もしくは『双方の螺旋忍軍が疲弊した所を攻撃する』かを選んで頂きます」
どちらかの忍軍に味方する場合、螺旋忍軍同士の戦闘の序盤から参戦する。
市民に被害を出さない選択肢だが、両軍とも疲弊していない為、双方が協力してしまうと勝利が一気に難しくなる。
「この選択をなさるのでしたら、忍軍同士が協力してケルベロスに対抗しないような工夫が必要であります」
戦闘中の螺旋忍軍は、ケルベロスを利用して敵の排除を試みると考えられるので、それを上手く利用すれば各個撃破も決して難しくないだろう。
「ですが、あからさまに『双方の消耗狙い』のような行動をしますと、漁夫の利を狙っていると判断されて、双方の螺旋忍軍がケルベロスを共通の敵と認識する可能性が上がります。その点はどうかご注意くださいませ」
次に、双方の螺旋忍軍が疲弊した所を攻撃する場合について。
「螺旋忍軍同士を争わせて漁夫の利を狙う作戦でありますね……、……漁夫の利を狙ったケルベロスに対して、螺旋忍軍は協力して対抗してきますので、残存する忍軍両方との戦闘となります」
周囲の市民の避難も行われているが、螺旋忍軍同士は周囲の迷惑など省みずに移動しながら戦う為、戦いが長引けば市民に死傷者が出ると想定される。
「……介入タイミングが遅ければ遅いほど、螺旋忍者達は疲弊していきますが、介入タイミングが遅すぎると多数の死傷者を出す事になりますので、介入タイミングは慎重に判断する必要がありましょう……」
もし、現場に到着したケルベロスが有効な避難指揮を行う事ができれば、介入タイミングを遅らせてより一層の疲弊を誘う事も可能かもしれない。
「螺旋忍軍が争う理由を知りたい所ではありますが、戦場に現れる螺旋忍軍は重要な情報は持っていないでありましょう。尋問などをする必要は全くありませんので、どうか速やかな撃破をお願い致します」
かけらはそう説明を締め括って、深々とお辞儀した。
参加者 | |
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アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468) |
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112) |
七種・酸塊(七色ファイター・e03205) |
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392) |
ドロッセリア・スノウドロップ(レゾナンスウォリアー・e04730) |
ミスティアン・マクローリン(レプリカントの鎧装騎兵・e05683) |
久保田・龍彦(無音の処断者・e19662) |
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840) |
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東京都は練馬区。
ケルベロス達が戦場の路地へ駆けつけた時、『羅泉』の超エリート社員軍と螺心衆の下忍軍は、今まさに戦い始めた直後だった。
「あはっ、キミたちがボクらを攻撃しなければボクらも攻撃はしないからね」
「何ッ!?」
まずは螺心衆の信用を得るのが大切だと、アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)がフレンドリーに声を投げる。
白く柔らかなウェーブヘアと、開いてるのか閉じてるのか判らぬような糸目が印象的なサキュバスの男性。
性格は自堕落で面倒臭がり、主体性が無く他人の意見に簡単に流されてしまうとか。しかし怒らせると怖いらしい。
「ほーら、攻撃手伝ってあげるよ!」
アンノは言うと同時に跳躍、流星の煌めき宿りし重い飛び蹴りを、超エリート社員の顔面へ炸裂させた。
「彼奴……何者だ?」
「ケルベロスでないのか?」
突然現れた協力者へ困惑を隠せない下忍達の警戒心を解こうと、言葉を重ねるアンノ。
「三つ巴で戦えば消耗戦になるのは必至。たとえこの戦いに勝ち残ってもほぼ壊滅状態じゃキミたちの目的も果たせないんじゃないかな?」
「はぁ?」
「それなら先に1陣営を倒してからゆっく」
がばっ!
「それ以上はいけません。三つ巴だの1陣営倒してからだのと、こちらが『最終的に双方ぶっ叩く』腹づもりであると知られるのは、双方の消耗狙いと悟られるのと同じことでしょう……?」
すかさずラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)がアンノの口を塞いで、小声で囁く。
常に笑っているように見える顔つきと、青く透明感のある角が不思議な雰囲気を醸し出している、人派ドラゴニアンの女性。
透けた種族特徴や鮮やかな緑の髪、褐色の肌が、大層神秘的な趣だ。
性格はマイペースで偶に辛辣、誰かの為よりも自分の為に動き戦うという信念の元に動いている。
(「作戦だけ見るとゲスい気もしますが、両者だけならともかく、街に被害だすなら容赦いたしません」)
街や人々の命を守る決意も新たに、下忍軍と超エリート社員軍を交互に見やるラーナ。
「これは一体何の争いでしょうか?」
敢えて問うのは、両方の意見を聞いた上で下忍へ肩入れして奴等に『意見の純粋な賛同者故に味方』だと信じ込ませる策だ。
「部外者に話す訳にはいきません! 取引先に舐められたとあっては、我が社の信用に関わりますのでね!」
「何を!? ——舐めてるのは貴公らの方であろうが、人の足元を見るような真似をして!」
超エリート社員も下忍も、螺旋帝について漏らすつもりは無いらしく、恐らくでっちあげのトラブル話をして、口汚く罵り合った。
「なるほど……そうですね、いかにもエリートそうにお見受けしますが、であれば私達もお相手してもらいましょうか。逆境は燃えるでしょう?」
ラーナはいかにも超エリート社員へ反感を覚えた態に振る舞い、ルドラの子供達を振りかざして迸る雷をぶち当てる。
「うぅん、状況分からないけど正直螺旋忍軍同士の仲間割れで地球に迷惑かけられると困るんですよね」
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)も、自然に螺心衆へ味方したと思わせる為に、街での戦闘自体迷惑だと眉を顰めた。
艶のあるセミロングの黒髪と円らな瞳が愛らしい、浅黒い肌を持つ人派ドラゴニアンの女性。
顔立ちが美形なだけでなく、愛用のフィルムスーツから浮き立つスタイルの良さも目を引く、凛とした風情の美女だ。
一見大人しそうに見えるも、恋人の気持ちを惹きつけた上で彼女を翻弄するような茶目っ気も持ち合わせた人物である。
(「またなんかめんどくさいことになってますね。まあとにかく目先にある危機を破壊することが先決です」)
はぁ、と抑えきれない溜め息をも、演技に使うレベッカ。
「一応協力してあげるんで周囲に大きな被害出す前にさっさと相手倒しちゃってくださいね」
下忍達へ発破をかけるのも堂に入っていて、折り畳み式アームドフォートの主砲を超エリート社員に撃ち込んで倒す様など、実に頼もしい。
(「螺旋帝がなんだか知らねえが傍迷惑なやつらだなあ。さて、被害が出る前にささっと片づけるか」)
と、フットワークも軽く超エリート社員へ向かっていくのは、七種・酸塊(七色ファイター・e03205)。
明るい橙色の髪と澄んだ藍色の瞳が可愛い人派ドラゴニアンの少女。
好戦的かつストイックなようでいてざっくばらんな性格、感情が昂ると翼を出してしまう癖を持つ。
数々の武術や戦闘術を学んで自分のものとすべく、日夜修行に明け暮れているのだとか。
「お前等みたいなチマチマした奴ら、なんか気に食わねえんだよ!」
酸塊の下忍へ取り入る手段は、さっぱりした彼女らしく単純明快。
超エリート社員へ真っ直ぐ喧嘩を売るや、奴の股間を電光石火の速さで思いきり蹴り上げたのだった。
「……」
声もなく蹲って激痛に悶える超エリート社員。
「ははは、良い気味だ」
下忍達が笑う。期せずして奴等の信用を得た酸塊。他の超エリート社員が風林火山で反撃して来ようと気にもならない。
「忍者が高級スーツなんか着ていちゃダメだよね。君たちみたく忍者らしくしないとね」
ミスティアン・マクローリン(レプリカントの鎧装騎兵・e05683)は、超エリート社員を貶す傍らで下忍をおだてて良い気分にさせ、信じて貰う作戦をとった。
鮮やかなピンク色の三つ編みと大きな瞳が可愛らしいレプリカントの少女。
その露出度の高い出で立ちは人間にしか見えず、特に男性の視線を惹きつけそうな巨乳が存在感を放っている。
「全くである! そこな娘御は良い事を言う」
「でしょー? ありがとう!」
下忍に褒められつつ、胸部を変形展開して発射口を露出するミスティアン。
必殺のエネルギー光線をぶっ放して、超エリート社員の腹に風穴を開けた。
他方。
「どきな、危ないぜ?」
ディフェンダーの立ち回り方を上手く利用して、下忍を不問の殴打から庇うのは久保田・龍彦(無音の処断者・e19662)。
漆黒の髪と赤茶の三白眼が軽薄な雰囲気をより強めている、地球人の青年。
敵と苦戦中でも軽口を叩ける程に楽観的な性格だが、その反面、心の奥底に優しさと熱いものも秘めている。
ボクスドラゴンのコラスィとは心こそ通っているものの、絆はゼロに等しい——とは本人の弁。
「ったく、やっこさんもなかなかやるな! ……回復すっぞ!」
龍彦は、生きる事の罪を肯定するメッセージが込められた『ブラッドスター』を高々と歌い上げて、下忍達の傷を癒してやった。
「怪我の治療までしてくれようとは……」
「本当に味方……かもしれぬな」
(「螺旋帝、か。仲間割れ上等な螺旋忍軍を束ねる力があるんなら、怖ぇもんだぜ」)
下忍達の一部がケルベロス達を信じ始めた様子なのを、冷静な目で見つめる龍彦。
実際、皆が懸念していた通り、下忍より超エリート社員の方が厄介な状態異常を用いてくる。その差が火力の差に直結するからだろう、羅泉よりも螺心衆の方が疲弊しているように感じられた。
コラスィは、龍彦と同じく超エリート社員の逆転亀熊からアンノを守る一方、属性インストールを酸塊へ試みて彼女の傷を癒している。
「大丈夫? あいつら倒すまでもうちょっと手伝ってほしいな」
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)も、下忍1人の体力を気力溜めで回復、風林火山による大火傷を治療してあげた。
ゲームのできる環境を自宅と定める自宅警備員の少女で、真っ赤なショートヘアと大きな茶色の眼を持つレプリカント。
軽いノリと適当な戦術を武器に、勝ったり負けたりを繰り返すゲーマー。楽しければそれでいい、が信条らしい。
また、スマホが手放せない現代っ子なせいか、ゲームアプリのみならずSNSにも精通しているようだ。
「あんまり夜中にうるさくしちゃダメだよー」
そう注意を呼びかけながらも、ケルベロス前衛陣の背後でカラフルな爆発をドカンと起こす、いつでも笑いを忘れない聖星樹。
爆風を背にした仲間の士気を高めると同時に、龍彦が超エリート社員から殴られた傷もしっかり治した。
「マー、あなた方の目的が街やこちらにない事は察しがツキマス」
ドロッセリア・スノウドロップ(レゾナンスウォリアー・e04730)は、抑揚のない声で冷静に言い放つ傍ら、何やらスケッチブックへさらさらと文字を書きつけて、超エリート社員軍へ見えるようにばっと掲げた。
『……知ってるガ、お前らの態度が気に入らナイ』
「何を!? 我々『羅泉』の未来を背負って立つ超エリート社員を愚弄するのですか!?」
「超エリートに逆らうとどうなるか、身の程を体で解らせて差し上げましょう!」
超エリート社員どもの神経を瞬時に逆撫でさせる彼女は、機械的な音声と語り口が特徴の、実に分かりやすいレプリカントだ。
本人は面白がってステレオタイプなロボットめいた喋り方をしているだけで、実のところ普通に喋る事も出来るそうな。
常に無表情で冷淡そうに見えるも、結構陽気でお調子者な性格だったりする。
「自分は仕事出来ます! みたいなオーラ出してる所が特ニ」
ドロッセリアは、わざと嫌悪感を滲ませて因縁をつけると、ゾディアックソードの刃先を地面へ向けて守護星座を描く。
完成した双魚宮のシンボルが光を放って前衛陣を守護、彼らの異常耐性を高めた。
戦闘開始から十数分。
「ぐっ……私は、社長にのし上がる男、こんなところで……」
「一丁上がりっと」
超エリート社員の1人を雷刃突で地面に沈めて、聖星樹が笑う。
まさにケルベロス達の奮闘のお陰で、螺心衆(下忍)軍は、『羅泉』の超エリート社員集団を殲滅する事が出来たのだった。
●
「螺旋帝捜索の障害を見事取り除けたな!」
「我が隊も無事には済まなんだが、これで捜索に集中できるとあらば、悪くない戦果であろう!」
螺心衆(下忍)達は、争奪戦のライバルの戦力を削げた喜びに沸き立つ。
「さて、本当に強い方を決めようぜ」
しかし、龍彦が戦闘態勢を解かないままさっぱりした顔で言い、彼らを驚かせた。
「何!?」
「つーか、もっと仲良く喧嘩してろよ、一般の人が困るだろ?」
と、新時代を築く力強き楽曲を奏でては、ケルベロス達に数で勝る下忍達をも言い知れぬプレッシャーで圧倒してみせる龍彦。
「悪いが、これも仕事なんでな」
主の呟く傍ら、コラスィはかぱっと開いた口からボクスブレスを吹きつけ、羅泉との戦いで一番消耗していた下忍1人を、見事討ちとった。
「確かに奴らは気に食わないト言いました……」
ドロッセリアは、機械的な声音を段々と普通の声に変えながら、下忍達へ語りかけた。
「……言いましたが、気に食わないのはあなた方も同じに決まってるでしょう?」
指で口角を上げて無理やり笑顔を作る様子も怖いが、次第に人間らしい侮蔑の感情篭った声色になる辺りなどは、下手なホラー映画よりずっと恐ろしかった。
「な、何を言い出すのだ、この、う、裏切り者めっ!」
「イグニッションエフェクト! 仲間達との絆で、数多の技術と共鳴せよ! レゾナンス オブ フェローズ!」
今まではメディックとして仲間の回復に努めてきたドロッセリアだが、下忍撃破の意志を示すと共に、搭載されたブラックボックスシステム『デディケーションサンクチュアリ』へ同調。
「此奴等……まさか最初からそのつもりで……ギャアアア!」
超高速演算によってレベッカのグラビティを分析・再現、ブレイジングバーストをぶちかまして——本物でない故に火傷こそ負わせられないものの——それでも下忍1人を爆炎に巻き込み絶命させた。
「両者の言い分はお聞きしました、しかし、ケルベロスとしては一般市民の方への被害は阻止します——故に、螺心衆も敵に違いなく」
ラーナも静かに、心から考えて裁定した風に装って、下忍達へ宣告する。
「雨、アメ、降れ、降れ、ケロケロケロ♪」
そして軽やかな歌声を響かせて怪雨を降らせ、下忍数人へダメージと毒を染み渡らせた。
アンノはアイスエイジで凍傷を齎さんと、ラーナやドロッセリアはドラゴンブレスやキャバリアランページでより多くの下忍へダメージを与えんと奮闘する中、戦いは続いた。
「どうせここで見逃しても別の場所で別の螺旋忍軍と戦うんでしょう」
レベッカは、呆気に取られた様子の下忍達を見渡し、冷静な声音で断じる、
「なら、周囲へ被害を出す前にここで死んでくださいね」
きっぱりと言い放つや、レインボーバスターライフルの太く長大な銃身から虹色の魔法光線を発射。下忍の1人へ命中させて強烈な威圧感に襲わせると共に、引導も渡した。
「顔も分からないやつを探すなんて下っ端も大変だとは思うが、それはそれこれはこれだ。さっさと倒されろ」
酸塊もコロリと態度を変えるや、気魄のこもった雄叫びを上げる。
「うおおおおおッ!!」
「ひっ……!」
闘気漲る大音声に思わず下忍が怯んだところを、酸塊は両手に嵌めたバトルガントレッドですかさず殴りかかり、畳みかけるように打撃を入れた。
「ゴメンね。でもまわりの迷惑を考えずに自分のことだけで動いたあなた方が悪いんだよ」
と、五芒星の形をした光の手裏剣を構えるのはミスティアン。
「星よ、切り裂け! スターショット!」
顔より大きな手裏剣を力一杯投げつけて、尖った角を下忍の腹部へ深々突き刺したのだった。
「バチバチするよー、日頃の疲れにビリッと効くかな?」
聖星樹は無邪気に言い放つや、ゾディアックソードを構えて肉薄。
「がはッ!?」
雷の霊力帯びし刃先で神速の突きを繰り出し、下忍の1人を刺殺せしめた。
「さて、キミたちに恨みはないけど一般人の安全がかかっているからね。これで終わりにさせてもらうよ」
アンノは朗らかに下忍達へ笑いかけると、反発する2つの領域を同時に展開する。
「終焉の刻、彼の地に満つるは破滅の歌声、綴るは真理、望むは廻天、万象の涯にて開闢を射す」
周囲の空間ごと下忍の1人を呑み込んで、そのまま奴の存在ごと命を奪った。
長期戦を耐え抜いての、この場にいた螺心衆(下忍)殲滅完了である。
「ふぅ……ようやく一段落ですね」
レベッカが自分の肩をトントン叩きながらひと息ついた。
「いやはや、これからしばらくは忍者掃除で大変な事になりそうですねぇ」
ドロッセリアは、ぐーっと人間らしい所作で伸びをしつつ、機械音声に戻って呟く。
「やれやれ。まさかあらゆる企業にいるのかね、螺旋忍軍って奴は」
苦笑まじりに冗談を言うのは龍彦だ。
「ところで、この人たちどうやって探すつもりだったんだろうね」
聖星樹は——流石に敵とはいえ遺骸を写真に撮るのは自重して——慣れた手つきで戦場に立つ己を自撮り。
「こうやって情報を拡散できるならともかくさ」
お気に入りのSNSへスマホのアプリ経由で写真を投稿したのだった。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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