春雪の怪

作者:ハル


 冬は終わり、あとしばらくすれば、春も終わろうとしている今日この頃。
 東北地方は、遅い春雪に見舞われていた。
「もう少しだけ早く降ってくれれば、桜並木に積もる雪が見られたかもしれないのに……」
 そんな中、薄ら積もる雪の上を歩く、一人の女性の姿があった。
「この辺りね」
 ふと、女性は立ち止まると、辺りを見渡す。そこは、とある東北地方の農村近くにある、山の麓だ。周辺には、不自然にも、無数の雪だるまやかまくらが並んでいる。
「この地域では、春雪が降ると、その原因は冬を終わらせたくない雪女の仕業であると言い伝えられているのよね。無数の雪だるま及びかまくらは、雪女に一時の冬の到来を伝え、心を静めるため作られると言われている……と」
 女性は持参したノートを読んで、情報を整理する。これだけなら、ただの伝承。だが、最近になって――。
「去年この地域を訪れた何人かが春雪に遭遇して、実際に雪女を見たって噂が立ったのよね。それで、今年も春雪が降った。これは、確かめずにはいられないでしょっ!」
 自分は目撃情報だけでなく、写真も撮ってやると意気込んで、女性はカメラを構える。
 その時!
「私のモザイクは晴れないけれど、あなた面白いわね? その『興味』には、とても興味があるわ」
「っ!?」
 驚く間もなかった。今まで穏やかだったはずの天候が急変し、吹雪になる。視界がホワイトアウトしていく中、女性の胸には鍵状の何かが穿たれていた。
 雪の上に、力なく倒れる女性。
 その変わりに……。
「まだ、冬は終わらない、終わらせたりしないわ……」
 白装束を纏った黒髪の美しい女が、雪の中から産声を上げるのであった。


「まさか、この時期に雪女の名前を聞くことになるとは思いませんでした」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、驚いたように目を見開いて、集まったケルベロス達を見回した。
「猫夜敷・千舞輝(地球人の猫代官・e25868)さんの懸念通り、不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 元凶となるドリームイーターは姿を消しているが、春に現れる雪女に関する噂を元に生み出されたドリームイーターは健在だ。
「どうか被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい! また、ドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるはずです!」
 セリカは、事件の概要を纏めた資料をケルベロス達に配る。
「姿形としては、皆さんが想像する通りの雪女と考えてくださって間違いありません。相当な和風美人のようですが、気に入った男性を凍り漬けにしてはコレクションとする、恐ろしい一面もあるようです」
 また、ドリームイーターは、自分の事を信じていたり、噂している人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。
「現場周辺には雪が積もっているため、滑らないように気を付けてくださいね」
 そこまで言って、セリカは資料を仕舞う。
「雪女は、雪から生まれると聞きます。つまり、雪が溶けると同時に消えてしまう……そんな儚い命なのかもしれません。ですが、だからといって春や夏の訪れを止められては困ります。もちろん、被害者の女性もの命も!」


参加者
藤咲・うるる(メリーヴィヴィッド・e00086)
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)
フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)
朝霧・美羽(アルカンシェル・e01615)
弘前・仁王(魂のざわめき・e02120)
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)
一羽・歌彼方(黄金の吶喊士・e24556)
猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868)

■リプレイ


「雪女的なんがうろついとるらしいから、外には出んように頼むでー!」
「特に麓の辺りには注意して欲しいんだよ!」
「私達はケルベロスだよ! だから、安心してボク達に任せてね!」
 白銀の雪をザックザックと掻き分ける、山の麓までの道中。周辺の農村を見かけては、
 猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868)、フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)、朝霧・美羽(アルカンシェル・e01615)の声が響き渡る。
「ふぅ、これで最後かしらね」
 麓までの道筋を脳裏に思い浮かばせながら、藤咲・うるる(メリーヴィヴィッド・e00086)がホッと息を吐いた。今のが、念のために周知を行うべき最後の農村のはず。村人達も異変を感じていたのか、こちらの話しをスムーズに受け入れてくれた。
 ただ――。
「……さ、寒いわね!」
 気の持ちようだけでは如何ともしがたい冷気の嵐に、うるるは両手を擦り合わせている。
「春の雪は消え去るのが相応しいってのにな……」
 御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)は、気を抜けば頭を白く染めてしまうそれを、煩わしげに指先で払った。
「どうにもアウェイな感じですが、まぁそれはいつも通りですね。皆さん、足元には十分に注意を――」
「うきゃああっ! うぅ……No Way」
「……遅かったようですね」
 一羽・歌彼方(黄金の吶喊士・e24556)が足元の注意を呼びかけようとした所、図ったようなタイミングですっ転ぶ美羽。呻く美羽に、まだ名無しのテレビウムが心配そうに寄り添うと、美羽は若干の躊躇の後、感謝と共にその頭を撫でた。
「それにしても、鎮めるための供物や雪だるまというのは聞きますが、かまくらも作ると言うのは珍しいですね」
 防寒着を忘れた美羽の肩に、弘前・仁王(魂のざわめき・e02120)がソッと上着をかけながら周囲を見渡すと、そんな事を呟く。その視線の先には、確かに無数の雪だるまやかまくらが存在感を主張していた。
「そうですね。でも、私は少しだけ雪女さんの気持ちも分かるかもしれません。だって、季節が移り変わるという事は、こういった雪だるまやかまくらも、全部なくなってしまうって事ですから……そこはかとない寂しさも、ありますよね」
 もしかしたら、雪女さんも繋がりを、温もりを求めているのかも……土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)が、白い息を吐き出しながら言う。
「ま、雪女の気持ちは俺には分からないが、春限定ってこと除けば、古風というか正統派雪女だよなあ」
 白装束に、ストレートロングの黒髪、和風美人。白陽の言う通り、多くの人々が思い描く姿をしているらしい。
「ええなぁ、雪女見てみたいわー。雪女コスの参考にするわ、うん」
 今の時代、テンプレこそ正義なんや! 冬の魔法使いをイメージしたコートの裾を翻しながら、千舞輝がワクワクするように瞳を輝かせて、雪女の姿に想像を馳せていると。
「千舞輝ちゃん、雪女よりも、この私! 神様のコスプレなんてどうかな!?」
 フェクトがその隣で、飛び上がるようにして自分アピールをしていた。
「時は巡り、暦は進んで季節は変わりゆく。出るなら今ですよ、雪女さん」
 今出てこなければ、コスプレの出番すら奪われてしまいますよ――その時、歌彼方の誘いに雪女が乗ったのか、一際冷たい風が吹いた。
「誰しも終わって欲しくない……そう思う時はあるわ。でもね、それって自然の摂理に反しているのよね」
「ええ、そしてそれは、自然から生まれた雪女なら、私達よりも余程よく知っているはずです」
 言葉を紡ぐうるると仁王の視線の先には、一つの影。黒髪、白装束、まるで雪のように白い肌。彼女こそ、雪女であり……。
「冬は、終わらせないわ!」
 世の道理など、知った事ではないと、雪女はケルベロス達に向かって手を翳すのであった。


「雪女ー……と見せかけて、雪男の娘やったりするんやろ? 今時の男の娘はホンマ、レベル高いなぁ」
『私が何者か、貴方達に分かるかしら?』そう問いかけてくる雪女に、千舞輝はあえて誤った返答を返した。
 すると――。
「誰が雪男の娘よッ!」
 瞬時に怒りを瞳に漲らせた雪女が、千舞輝に掴みかかってくる。
「ちょ、ちょい待ちいや! ウ、ウチに百合趣味はないで!?」
 そして、口紅を引いていないにも関わらず、艶々で薄ピンク色の唇を千舞輝に突きだしてきたのだ。抵抗する千舞輝の手足が、徐々に凍りついていく。
「なら、真夏のビーチに輝く水着のお姉さん!」
 激昂する雪女の狙いを分散するため、その背に美羽の返答が突き刺さる。
「私がそんな程度の低い女に見えるなら、その目を抉り出す必要があるようね!」
 雪女は一旦千舞輝を突き飛ばすと、今度は美羽の頰に優しく口付けを。
「ボ、ボクの顔が!?」
 だが、優しいのは唇の感触だけであり、そこを中心に浸食する氷は少しも優しくはなかった。
「雷光の守護を!」
「あの口付けには気を付けて!」
 耐える千舞輝と美羽を中心とした前衛の前に、うるると岳の生み出した、ビリビリと帯電する壁が生み出され、冷気を阻む。
「さぁ、今こそ貴女にとっての雪解けの時――いきます、全身全霊で!」
 普段のフワフワした印象とは一変した、凜とした気配を纏いつつ、歌彼方は上空へと飛翔する。
「往くは風・雷・星が如く。我、一閃となりて氷雪を打ち砕かん――ッ!」
 そして、ルーン魔術を用いて超推進力を得た歌彼方は、上空からの急降下特攻によって雪女を叩き潰した!
 ドーン! という鈍い音が辺りに響き、キラキラと雪が粒子状になって空へと舞い上がる。
「このッ!」
 その一撃は、雪女に冷静さを取り戻させるのに十分なもの。吹雪でケルベロス達を一網打尽にしようと、雪女が精神を集中させていると……。
「大方、消え去るのが怖くなったんだろ。夜を怖がる子供みたいなもんだ。アンタもそう思わないか、雪女?」
 雪女の心の奥を露わにさせる白陽の声が、その耳に届いた。
「もしそうだとしたら、貴方は私を笑うのかしら?」
「いや、眠らせてやるだけさ。二度と恐れを感じずにすむようにな」
 自嘲気味に笑う雪女に、白陽は皮肉げな笑みで返す。そして白陽は、一瞬で雪女との間合いを詰めると、その動きを捉えられずに目を見開く雪女の身体に、電光石火の蹴りを叩き込んだ。
「雪のようにつかみ所の無い相手ならどうしようかとも思いましたが、幸いにもそうではなさそうですね」
 仁王は、雪女の動きを後方から観察しつつ呟いた。そして、蔓触手形態に変形させた攻性植物で、雪女の下半身を締め上げると。
「捕まえましたよ! 相棒、フェクトさん!」
「うん、私に任せて!」
 合図を受けたフェクトが杖を振る。そこから放たれる雷に続き、仁王の相棒であるボクスドラゴンのブレスが炸裂した。

 前衛全体を覆うように、吹雪が吹き荒れていた。膝の辺りまでが積もった雪に囚われ、視界が一面の白に染まっていく。
「……まるで、病室のようね」
 その光景は、うるるに真っ白な病室の壁を想起させる。窓から太陽をただ眺めるだけしかできなかった自分の姿を……。
「でもね、残念だけどあの頃の私とは違うのよ?」
 そう、今のうるるには、対抗できるだけの力がある。うるるの口元に、薄らと笑みが浮かぶと――。
「ちょっと熱いわよ、お気を付けて?」
 猛り狂う吹雪を押しのけるような熱エネルギーが、うるるの身から放射される。美しい炎は吹雪と拮抗し、光となって周囲を照らし出した。
「うるる、感謝やで!」
 それによって、ようやく吹雪が止む。半ば全身を雪に埋もれさせるような形になりながらも、仲間に覆い被さるように庇っていた千舞輝と火詩羽が起き上がり、生きる事の罪を肯定するメッセージと羽ばたきで、自身と仲間の補助に徹する。
「ちょー寒い……No Way」
 美羽はブルブルと震えながらも、テレビウムに視線を送る。すると、テレビウムはその意図を汲み取り、「諦めんな!」と連呼する応援動画を流してくれた。それが流れるだけで、まるで体感温度が2、3℃は違ってくるようだ。
(こっちの気持ちは汲み取ってくれるんだけど、ボクは……)
 2年一緒にいた姉とは違う。だが、まだこれがお互いの初めての仕事だ。
「よーし、元気出た、行くよー!」
 美羽は大声と共に気合いを入れ直すと、妖精弓から追尾する矢を雪女に放つ。
「くっ!」
 雪女は、追尾する矢からなんとか逃れようと、一度、二度とその射程から逃れる。だが、いつまでもホーミングしてくる矢。さらに、それに加えて、
「さて――」
 一切の前置きも気配も感じさせずに、矢とは逆方向からは、白陽の空の霊力を帯びた短刀二振りが襲い掛かっている。挟まれた雪女は、為す術もなく、両方の攻撃をその身に受けてしまった。
「ああああっ!」
 轟く悲鳴。白い雪に、朱が混じる。
「よし、じゃあ、次は私の出番だね!」
 と、フェクトが大規模なグラビティを放とうとしているのか、空に両手を翳す。
 それを見て取った仁王、岳、歌彼方の後衛3人は、それぞれ顔を見合わせて頷き会う。
「気に入った男を凍漬けにしてコレクションにしているようですね、些か趣味が悪いですよ!」
「あら、自分が標的にされないからって嫉妬しているの?」
「まさか」
 仁王が、降魔の一撃を放つ。
「うっ、ああっ!」
 雪女は身体の一部を抉られる苦痛に喘ぐ。だが、反撃に吹雪を呼び出すと、仁王の姿が吹雪の中に消えていく。
 後衛がホワイトアウトしていく中、類い希な機動力を生かした歌彼方が、吹雪の嵐を搔い潜ると、
「ぶち穿て――!」
 強靱な踏み込みから、稲妻を帯びたフェローチェで、雪女の白い肌を貫いた。
「ありがとうございます、火詩羽くん!」
 メディックである岳は、吹雪から火詩羽に庇ってもらいながら、
「戦いの力を!」
 仁王に電気ショックを飛ばした。
 その時!
「天候を操るのは神様の領分! 神様の天候操作を見せてあげるよ!」
「そんな!?」
 フェクトの言葉に、ハッと空を見上げる雪女。彼女はそこに、雪雲を覆い尽くすような雷雲を見た。そして、フェクトが天に伸ばした腕をガバッと下に下ろすと――。
 ズゴゴゴオォォ!!! 閃光と同時、雪女の身体は稲妻に打たれていた。

● 
「……まだ、まだ……冬は終わらない、終わらせないッ!」
「そう言う割に、雪の勢いは弱まってるぞ。どうした、口だけか雪女」
 白陽が目を瞑る。そうして自己の存在を意識レベルで拡張し、自身に同調した魂の総力をもって、雪女の自我を侵略する。
「うるさい、冬はずっと続くんだ、私は……消えない!」
 先程から、雪女はキュアの頻度が飛躍的に増えている。その原因は、BSを打ち消す以上に、BSを付与されているからに他ならなかった。
「まずは、お前よ!」
 雪女は、ジャマーであるうるるに抱きつくと、氷のように冷たい唇を寄せようとする。
 しかし――。
 雷に穿たれた時のように、雪女の身体は静止した。
「どうやら限界のようね――ほら、雪解けの時間よ」
 うるるは言うと、無防備な雪女に、電光石火の蹴りを急所に見舞った。
「そろそろ、お休みのお時間です」
 さらに追撃に、豊富なグラビティ・チェインを纏った仁王の攻性植物が、雪女に鞭の如く叩き付けられる。
「い゛ぎっ! ……終わり、おやすみ? 冗談じゃないわ!」
 だが、雪女は諦めずに抵抗する。雪女としての存在意義のため、雪が止むその時まで、彼女は止まれない。吹雪が、再び前衛を包み込むと、
「ぶえーっくし!」
 視界の悪いその中から、フェクトの色気のないくしゃみの音だけが響き渡る。
「ちまき、もう一踏ん張りだよ!」
「分かってるで! 火詩羽がウチの分も……って火詩羽おらんやん!?」
「だから、わざわざちまきに言ったのっ!」
 恐らくは、これが最後の耐える時間。雪塗れになるのも、これが最後だ。
 美羽と千舞輝が身体を張る中、庇いに入るのが遅れた火詩羽の尻尾の輪が飛び、
「神様の守護ご苦労様だよ、二人とも!」
 庇われながら、偉そうに「んっふっふ」とご満悦の表情でふんぞり返るフェクトの、杖による雷を宿した物理攻撃が炸裂し、雪女の身体から力が抜けていく。
 その瞬間、分厚い雲に覆われていた空に、一筋の日光が射しこむ。
「――終われ、儚き夢」
 その光を背に浴びた歌彼方の一枚羽は、一際輝いて見えた。目にも留まらぬ高速急降下特攻に合わせ、千舞輝の炎を纏った蹴りが、テレビウムの応援動画に背中を押された美羽の起こす遠隔地爆発が、合わせて雪女を叩きのめす。
 そして……。
「季節は巡り巡ります。自然は循環し調和しています。どうか、次の冬まで暫しお休み下さいね」
 岳が出現させた翡翠が、穏やかな光を纏って雪女の身体を包み込む。その瞬間、雪女の表情が、緩んだように見えた。それは、地球に抱かれ、自分が孤独ではないと知った証。雪女は、笑顔を浮かべたまま、翡翠と共に砕け散った。
「翡翠の石言葉は、安定、調和です。どうか、心安らかに、また今度の冬に会えたらいいですね」
 雪解けの麓に、岳の小さな祈りが染み渡っていく……。


「大丈夫ですか、風邪をひいてはいないですか?」
 歌彼方達が女性の眠るかまくらに向かうと、彼女はすでに目を覚ましていた。
「毛布があります、どうかこれを」
 雪は止んだとはいえ、周辺は未だに寒い。女性の体調を気遣った仁王が毛布を手渡すと、「ありがとうございます」女性はそう感謝を告げながら毛布で身体を包んだ。
「一先ず、これで一見落着だな」
 白陽は言いながら、周囲を見渡した。そこには、最早無用の長物となった雪だるまにかまくら。だが、何もせずとも消えてなくなるだろうそれには、手を付けずにおく事にしたのだ。
「はー、早く帰って暖かい紅茶とか飲みたい……」
「たくさん頑張って、ボクもお腹ぺこぺこ! 帰りにご飯食べよっ」
 フェクトと美羽が、そんな事を話していると。
 グゥゥ……と、どこかで腹の虫が鳴った。その正体は、女性のお腹から聞こえてきたもののようで、
「おぉ! えらいでっかい――」
「さっ、早くご飯にしましょう、私もお腹すいちゃったわ」
 顔を紅潮させる女性に対し、千舞輝がデリカシーのない発言をする前に、うるるがフォローを入れる。
「でも、すごいバイタリティですよね。雪女の噂をリサーチして、撮影を試みようだなんて!」
「そうですか? 雪女の目撃談、それも春に! 興味を引かれずにはいられないじゃないですか」
 さらに、空気を読んだ岳の活躍により、話題を変える事に成功したようだ。
 そんなやりとりの中で、千舞輝は癖毛を指先で弄びながら、ある事を考えていた。
 反省していると思いきや、その内容とは――。
(雪女コスするなら、ストパーあてんとあかんかもなぁー)
 そんな、どうでも良い事。だが、それこそが、平和の証なのである。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 2
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